勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、賞賛される

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「度重なる危機から精霊都市を救った英雄こと【気紛れ明星】達――
 戦士ガリウス・ノーザン
 賢者ミザリア・レインフィールド
 聖女フィーナ・ヴァレンシュア
 そして何より魔剣の勇者アレクシアの為し得た偉業に、惜しみない賞賛を!」

 精霊都市の委託領主ノービス伯爵の声に会場からは万雷の拍手が鳴り響く。
 都市運営に関わる重鎮達が集った会場。
 その中には精霊都市の祭事を司る姫巫女であるレイナと護衛のハイドラント、共に戦ったS級冒険者ヴィヴィとブルネッロ、冒険者ギルド名代のメイア、盗賊ギルド名代のマウザー、教団名代のマリアンヌ、そして驚いた事にどこか見た事のある幼女を伴ったミスカリファの姿もあった。
 俺達がこの都市に来てから関わった多くの人達。
 自分達の行ってきた事が正当に評価されたとはいえ、これは照れる。
 慣れない雰囲気に仲間達も緊張を隠せない。
 かくいう俺もこういった華やかな場にはそぐわないおっさんだ。
 叙勲の場を設けたレイナを恨めし気に見やるが……紅い舌を出しやがった。
 全然反省してないな、あいつ。
 俺は思わず苦笑してしまう。
 お偉いさん特有の長い話を聞きながら、俺はこうなった経緯を思い返す。
 紆余曲折やトラブルがあったものの――
 無事期限内に天空ダンジョン【降魔の塔】のコアを砕く事に成功した俺達。
 転移の鈴で空中庭園に戻った俺達が見たもの、それはまるで迷宮主であった【蜃】を彷彿させる蜃気楼のように異次元へと消えていく塔の姿だった。
 あの塔が具現化して精霊都市に落ちることも、また封印としての楔を失い魔神皇に続く逆魔城【シャドウムーア】へ続く事もない。
 危機は去ったのだ。
 庭園で待機していたハイドラントに俺は上記内容と依頼完遂の伝達を行う。
 クールなこの男にしては珍しく血相を変えて報告へ向かうハイドラント。 
 てっきり感謝の言葉と依頼料を貰って終わりかと思ったら、呼び出されたレイナに少し時間が欲しいとお願いされた。
 疲れていたこともあり確かに少し休みたい。
 気兼ねなく了承したのだが……あの時悪戯を企む小僧みたいな彼女の顔に気付けば良かった。まあ俺も余裕がないくらい疲労困憊していたのだろう。
 秘密裏に関係者を自らの屋敷に招き叙勲パーティの準備を進めるレイナ。
 用意が整ったからと、正装させられ呼び出された俺達を待ち受けていたのが――
 伯爵によるサプライズなこの挨拶である。
 この人も貴族にしてはノリが良いというかユーモアを介する人だ。
 人付き合いの難しそうなミスカリファと懇意に出来る訳が分かった気がする。

「さあ、余の下らぬ話はこの辺にして――
 あとは各自ご歓談と参りましょう! 乾杯!」
「乾杯!」

 自分で下らぬとか言うし。
 まあ延々と長話を聞かされるより歓談していた方が気が楽だ。
 幸い立食パーティの体裁を取ってるので気負いなく動ける。
 都市の有力者らに囲まれ質問攻めに合う女性陣に申し訳なく思いつつ、おっさんはのんびり会場を回る様にしよう。
 近くにいたボーイからシャンパンの入ったグラスを受け取り会場の隅へ移動。
 未だヒートアップしている脳と身体を冷ましながらのんびりグラスを傾ける。
 淡く輝くような黄金色の泡がきらきらとグラスの中を立ち上っていく。
 ふむ、舌触りといい泡立ちといいかなり上等なシャンパンだ。
 おそらくは業界最高峰、ルイ・ド・ペリニヨンか。
 庶民の数年分の年収を超える額面のスパークリングワインだった筈だ。
 さすがは金持ち――金の掛け方が違う。
 お替り自由なのに生来の貧乏性のせいか、チビチビと舐める様に嗜む。
 そんな俺を見兼ねたのか苦笑を浮かべたメイアが近付いてきた。
 今日は長い髪を巻き上げアップにし、シックな色合いのドレス姿である。
 ギルドの名代とはいえ随分気合いが入ってるな。

「――どうしたの、ガリウス。
 仮にもパーティの主役がこんな所で油を売ってちゃ駄目でしょ?」
「いいや、主役はあいつらだよ。
 俺は添え物というか……まあ壁の花だな」
「相変わらず自己評価が低いのね。
 貴方達がこの短期間で成し得た功績を冒険者ギルドは高く買ってるわ。
 パーティのランクが上がったばかりで、まだ貢献度が足りないから昇格はないけど……この調子なら晴れて個人のS級も夢じゃないそうよ」
「それはめでたい話だな。
 あいつらが正当に評価されるのは嬉しい」
「――もう。
 ワタシを前にしてるのに、あの娘達の話ばっかりね」
「いや、君が無事とは聞いてたけど本当に安堵した。
 災難だったな、メイア」
「そうじゃなくて!
 こういったパーティで女性に会ったら、最初にまず相手の事を褒めなさいって教えたでしょう?
 皆、頑張ってお洒落をしてきているのだもの。
 まったく気が利かないんだから」
「性分でね」
「フフ、無駄にカッコつけたそういった所――変わってない。
 ワタシは大丈夫よ、ガリウス。
 色々厄介な事態に巻き込まれたけど……面白い子と懇意になってね。
 公私共に興味深いわ」
「あの召喚術師の少年か?
 受付嬢だけでなく秘密捜査員(アッチ)の仕事もあるんだろうが……危険もある。
 君を信頼してない訳じゃないが、あまり羽目を外すなよ」
「それは貴方もでしょ、ガリウス。
 あの娘達の指に光る指輪、見たわよ。
 やるじゃない。
 昔と違い――きちんと男を見せたのね」
「同じ失敗は繰り返さないさ」
「ん。反省してるなら良し。
 じゃあ――ワタシは他の方への挨拶もあるから失礼するわ。
 ちゃんと幸せにしてあげてね。バイバイ」

 さりげなさを装い離れていくメイア。
 その目元が少し赤かったような気がするのは――俺の気のせいだろう。
 男は弱いな、本当に。
 とっくに終わってしまった恋で、今現在充分幸せなのに――過去を引き摺る。
 あいつらに申し訳ない。
 シャンパングラスの残りを一気に飲み干す。
 高級ブランド故か、悪酔いしないよう微調整された絶妙のアルコール度数。
 丁寧な造りのその出来栄えが――今は少しだけ忌まわしい。
 いつぞや彼女に語った、究極のマティーニ。
 アレが急に欲しくなった。
 満たされない渇きを求めようとする――情けない自分の想いを断ち切る為に。
 
 


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