勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、助言される

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「いよぅ、見てたぜ。
 残念ながら振られたようだな」
「マウザー……」

 近くを通り掛かったボーイを呼び止め無くなったシャンパンのお替りを貰っていると、スキンヘッドのスーツ中年ことマウザーが話し掛けてきた。
 最初は場にそぐわない服装なのではと思ったが……
 スタイリッシュに上手く着崩しており、俺よりも充分様になっている。
 さすがは裏社会所属。
 こういった派手な催しに呼ばれる機会も多いのだろう。

「あれって確か、メイアだろう?
 へえ~精霊都市勤務になったのか」
「とぼけるなよ、全部把握してる癖に」
「バレたか。
 まあお前相手に隠しても仕方ないしな。
 お前の昔の女という事で何か悪さ出来ないかと思ったんだが」
「もう終わった話だ」
「はん、クールだね。
 噂の英雄様はオンナ関係も含め品行方正か」
「……どういう意味だ?」
「言葉通りの意味さ。
 同じ日に冒険者になった二人。
 それが片や英雄、片や薄汚れた裏稼業のまとめ役。
 いったいどこで差がついたのやら」
「俺は英雄なんかじゃない」
「謙遜するなよ、ガリウス。
 お前のそういうところ……昔からオレは嫌いだった」
「マウザー」
「お前はさ、何だかんだいってオレ達とは違うのさ。
 英雄になるべくして生まれ――然るべき定めを辿る。
 お前が何かオレの為に手を尽くそうとしてしてくれてるのは部下から聞いた。
 それは勿論感謝しているさ。
 けどな――オレみたいなのに関わるのはもうやめろ。
 オレは自身が望んで我が道を行っている。
 待ち受けるのが破滅だとしても後悔はしてない」
「だが――」
「お節介も度が過ぎると身を滅ぼすぞ。
 S級昇格には力量以外に個人の風評や醜聞も含まれる。
 オレとお前の腐れ縁も残念ながら今日までだ。
 あとはビジネスライクな関係に訂正させてもらおう。
 オレの子飼いの部下に優秀なのがいる。
 暗部出身のくせに闇に染まり切らない中途半端で気真面目なヤツだ。
 盗賊不在で苦労してるお前らのパーティで面倒をみてやってくれ。
 連絡は追ってするから、以後はそいつを通してウチに関われ。
 お前が手を汚す必要はもうない」
「でも俺は――」
「じゃあな、英雄殿。
 お前は馬鹿で間抜けでお人好しで――最高に気の合う友だった。
 これからの活躍を陰ながら祈ってるぜ」

 最後まで軽薄そうに手をヒラヒラさせ去っていくマウザー。
 憂いを帯びたその背に何も声を掛けれず俺は見送る。
 今日はどうやら別れの日らしい。
 くそっ、不器用でお節介なのはお前も一緒だろうが。
 友との別離を惜しみながら――俺は温くなったグラスを傾ける。
 美味いのに酔えない絶妙な度数が本当に今は恨めしい。

「――どうしたのですか?
 あまり楽しんでらっしゃるようではないみたいですが」

 余程酷い顔色をしてたのだろうか?
 近寄るなり顔を覗き込んできたのはし教団のシスター、マリアンヌだ。
 特徴的な目の覚める金髪を丁寧に編み込み僧衣を纏っている。
 身体の線が出るとフィーナに不評な祭典用の僧衣もよく似合っていた。
 彼女は清楚な面立ちの女性なのだが――
 綺麗なその顔が、今は心配そうに曇っていた。
 俺の身を案じてるのだろう。
 咄嗟に顔を装い何でもない風に振る舞う。

「――いや、少し飲み過ぎただけだ。
 心配を掛けたな」
「それは嘘ですね」
「嘘――とは?」
「フィーから手紙で伺っておりましたもの。
 ガリウス様は他人に弱みを見せない御方。
 なかなか本心を晒せない方である、と。
 今も無理をしてわたくしに合わせてくれてるのでしょう?」
「それは――」
「まだまだ未熟で不甲斐ない身ではございますが――
 少し踏み込んだお話を致しますね。
 辛い時は、辛いと言っていいのですよ?
 やせ我慢をする必要はないのです。
 先程、幸せそうに語るフィーから聞きました。
 彼女と婚約をされたのでしょう?
 これからお二人は互いに支え合う仲になるのです。
 なのに――ガリウス様は御自分が嫌いであると仰られる。
 わたくしはそれが残念に思います。
 もっと自分を肯定してあげて下さいな。
 貴方に英雄という役を望む者も多いでしょうが――
 あの娘(フィー)はただ、ガリウス・ノーザンという個人と共にいる事を望む。
 どうかその事を忘れないで下さい」
「……ああ。充分理解したよ。
 これから家族を持とうとする者がこんな情けない様を見せてては駄目だな。
 君に言われたことはフィーにも指摘されてたし、改めようと思う。
 ありがとう――マリアンヌ。
 さすがは教団のシスターだな。
 胸のつっかえが取れたみたいだ」
「ウフフ。
 ならば良かったです」
「それにしても本当に的確な助言だな。
 説法慣れしているというか何というか……
 教団関係者っていうのは皆そうなのか?」
「――え?
 それは違うと思いますわ。
 だってわたくし、見てましたもの」
「――はっ?」
「一人な佇むガリウス様に忍び寄る不埒な影。
 すわ浮気かと耳を澄ませてましたの。
 やっぱりフィーの親友としては心配ですし。
 幸い昔の彼女程度の関係性で、続きが無さそうだから安心しましたけど……
 そうしたら殿方も絡み始めるじゃありませんか!
 しかも明らかに素直になれない系のツンデレ配分!
 こりゃ~もう堪りませんわ!」
「あの~マリアンヌさん?」
「僭越ながらお聞きしますね。
 どっちが攻めでどっちが受けなんですの!?」
「せ、攻め? 受け?」
「――攻撃の反対は何でしょうか、ガリウス様?」
「防御」
「ちっ……一般人ですのね。
 フィーの相方ですから腐ってるかと思いましたのに。
 まあいいですわ。わたくしの察するところ――ガリウス様が誘い受けで、あの方がオレ様攻めだと思うんですが……真相はどうなんでしょう?」
「い、言ってる意味がよく分からんのだが……」
「――ああ、ホント妄想が捗りますわ!
 フィーにこの道を教えた(引きずり込んだ)のも、実はわたくしなんです!
 早く彼女に知らせなくては!」

 止める間もなく加速度的にヒートアップしていく口調。
 上気した顔で独白しまくり――晴れ晴れとした顔で颯爽と去っていくマリアンヌ。
 お前が諸悪の根源か。
 何が何だかよく分からんまま……俺は彫像の様に立ち尽くすのだった。
 
 



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