勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、見送られる

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「行ってらっしゃいませ」
「お気をつけて」

 お酒を飲んだ翌朝――
 しっかりとした朝食(大変美味だった)を摂取後、軽いウオーミングアップを済ませた俺達はウォルターとクレアさんに見送られ屋敷を出る。
 出発してからも大騒ぎだ。
 未だ頭を下げ続けている二人に大声でお礼を述べたり、歩きながら装備の再点検に余念がなかったりと各自大騒ぎである。

「行ってきま~す!」
「わん!」
「ん。朝食も御馳走様」
「お見送りありがとうございますね~」
「ふむ、開錠器具の状態は良好。
 気合いを入れて臨むでござる」
「朝から元気だな、お前ら。
 ピクニックじゃないんだぞ。
 何か良い事あったか?」
「ハア……
 おっさんはこれだから」
「む。どういう意味だ、シア?」
「だって――新ダンジョンだよ?
 熱が入らない方がおかしいって」
「ん、同意。
 時間制限で焦燥感のあった天空ダンジョンとは違う。
 今のパーティが万全の状態で挑む迷宮探索」
「これでテンションが上がらない方が嘘ですわ」
「拙者も同感でござる」
「確かにそうだな。
 つまらない事を訊いて悪かった。
 ならば準備は万端だし、早速ダンジョンへ向かうぞ!」
「「「「おう(わん!)」」」」

 俺の掛け声に元気よく返答する一同。
 昨日の休暇を経たせいか、気合いは確かに充分のようだ。
 今日からいよいよ俺達も海底ダンジョン攻略に取り組む。
 用心するに越したことはないのだが……実は俺も気分は高揚している。
 何せシアの言う通り新しいダンジョンに挑戦するのだ。
 これで心躍らない者に冒険者は務まらないだろう。
 未知なるものに挑む気概。
 未知なるものを知る好奇。
 それこそ俺達が冒険者を続けている原動力なのだから。
 人の手の及ばぬ魔境。
 困難な罠に強大な敵。
 そして手に入る報酬。
 危険と苦労の対価として得られるのには見合わない内容かもしれない。
 それでも俺達は冒険に魅せられる。
 一番分かりやすいのは、魔境を開拓をした伝説のS級冒険者ウィリアムの仲間勧誘広告だろう。

「求む冒険者。 
 至難の旅、僅かな報酬。
 妖魔蔓延る地を探る暗黒の長い日々。
 絶えざる危険、生還の保証無し。
 成功の暁には名誉と賞賛を得る」

 意図的に待遇を悪くしている訳ではない。
 ありのままの現実をただ率直に述べただけだ。
 こんな言葉に釣られるのは詐欺師か狂人ぐらいしかいないだろう。
 だがハッタリ屋じゃない冒険野郎(マッドマン)は数多くいた。
 彼の言葉に賛同した冒険者は当時500人を超えたという。
 誰も彼もが恐れ知らずで礼儀知らず。
 つまらぬ拘りに命を懸ける最低最高の冒険者達。
 彼らに掛かれば難航と言われた魔境の開拓も安泰かと思われた。
 膨大な資金と各思惑のバックアップを受け開始された開拓探索業。
 しかし――現実は非情だ。
 魔境に挑み生還したのは僅か38人。
 生還率7%以下――絶望の苦行。
 でも彼らは恨み言をいう訳でもなく開拓をやり遂げた。
 今の人類の繁栄があるのはそういった冒険者達の偉業のお陰だ。
 後輩として俺も彼等を見習いたいと思う。

「あ。見えて来たよ、おっさん!」
「わん!」
「外見は完全に一致」
「確かに執事殿と侍女殿に聞き込みしておいた通りでござる」
「何より雄弁に語っているのは――
 ここにいながらにしてでも感じ取れる神気。
 間違いございませんわ」
「なるほど。
 あれが【静寂の祠】に繋がるという龍の宮、か……」

 俺達の視界にあるのは大理石で組み上げられた荘厳な雰囲気の漂う神の社。
 ここに海底ダンジョンに繋がるという出発点、ゲートがあるという。
 いかなる冒険がこれから先、俺達を待ち構えているのだろうか?
 心配性な俺だが――不思議と不安はない。
 今の俺達ならどんな困難も潜り抜けられそうな気がするからだ。
 だからこそ熱い思いは胸に秘め、探索に挑むとしよう。
 先人の偉業を少しでも後追いする為に。

 


 
 
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