勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、感想を伺う

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「おっさん……
 何、その動き……」

 雫を掃う様に流麗な動作で納刀した俺。
 一連の動きを間近で見ていたシアが背後で呟く。
 振り返った俺は呆然としているシア、そしてショックで固まってるリアとフィーの姿を確認する。
 無理もないか。
 迎撃した俺ですら自身のスペックの高さに驚いたくらいなのだから。
 なので殊更何でもないかのように感想を伺ってみる。

「ふむ……
 皆の目から見て、どうだった?」
「――うえ?
 え~と、巧く言えないけど……
 何だか数段上の技量に到った感じがした!
 勿論、おっさんは昔から凄かったんだけどさ。
 何というか積み上げてきたものが綺麗に収束されたみたいな」
「ん。戦闘職でないから先程までは気付けなかったけど……今なら理解できる。
 ガリウスの各動作が最適化されている。
 合理的で無駄のない動き――それはさながら舞踏のようだった」
「わたくしも率直に申し上げますね。
 綺麗なのに怖い。
 まるで神話に出てくる豪華絢爛たる死を呼ぶ踊る死神のようです」
「ボクは初めておっさんと会った時を思い出した。
 あの時はおっさんが偽物の魔の手から救ってくれたんだけど……
 鮮やかな剣筋はまるで流星みたいでさ。
 いつかこういう風になりたい! って思ったもの」
「それはきっと所作にラグがないから。
 今のガリウスは自身が望む動きを完全に体現できる筈」
「はは、お褒めに預かり恐悦至極。
 クラスチェンジ後初の実戦だったが……
 うん、悪くない」
「悪くない、じゃないよ!
 おっさん凄過ぎでしょう!?」
「言い難き『凄み』のようなものを肌で感じましたわ」
「多分前衛職として一皮剝けたと推測」
「同感だよ!
 魔力による強化付与も無い闘気だけの身体強化だけで今の動きなら、両方併用したらもっと凄い事になるでしょう!
 あ、もしかして今ならイケそうなんじゃない?」
「どういうことですの?」
「ガリウスは以前から純粋な闘気だけによる肉体強化と戦闘の端々で魔力を使用して個別機能の能力強化を行ってきた。
 本来これらは併用できず、どちらかしか扱う事が出来ない。
 より効果の強い方に打ち消されてしまうから。
 勇者であるシアですらこの原則からは逃れられない。
 でも――ガリウスは例外。
 理屈は不明だけど、何故か併用する事が出来る。
 膨大な努力で積み上げられた鍛錬とスキルや特技で後打ちされた特性の数々。
 おそらくこれこそがガリウスの強さの秘密」
「その話、確かに聞いた事がありますわ。
 けど――無理に併用すると体内で飽和した闘気と魔力が互いに弾け合うとも」
「普通ならそうだ。
 しかし俺が師匠から体得した技術はその矛盾を解決する。
 本来反発し合ってしまう力を融合し昇華させるのさ。
 俺の魔現刃の体系にも組み込まれている」
「わんわん!」

 俺は解説をしながら近寄ってきたルゥの頭を撫でる。
 眼を瞑ってくすぐったそうに身を震わせるルゥ。
 素晴らしいモフモフ具合だ。
 主であるシアの前だというのに全てを忘れて堪能したくなるな。
 何故か羨ましそうな顔で見ていたカエデが小首を傾げ尋ねてくる。

「それはもしかして……【仙道】でござるか?」
「せんどー?」
「仙人という境界の踏破者に到る為の修行。
 それは自然との調和でござる。
 修行者はあるものをあるがままに受け入れ、循環させていくという」
「詳しいな、カエデ。
 さすがは東方出身なだけある。
 そうだ――俺が学んだのは【仙道】に通じる概念だ。
 実際は師匠の手により実戦風に磨き上げられた外法だけどな。
 修行と称して石を括られたまま湖に沈められたり……崖からロープ無しで蹴り飛ばされたり、休みなしで滝に数日間も打たれ続けたりした。
 あの地獄の日々は……どうやら無駄じゃなかったらしい……」
「そんな事をしてたんですの!?」
「普通に虐待じゃ……
 おっさん、どこか遠くを見つめてるし」
「――ま、まあ。
 それを熟しているからこそ……今のガリウスがある。多分」
「く、苦しいフォローでござるな」
「だが方法はともかく――肝心の俺に才能が無くてな。
 何とか一番下っ端の【地仙】レベルになるのが精一杯だったんだ。
 けど今回のクラスチェンジでそれも【天仙】へとランクアップしていた。
 確かにシアの言う通り、今の俺なら出来るかもしれない。
 前衛職究極の闘技法に」

 心を静め全身を研ぎ澄まし意識を張り巡らす。
 すると体内で渦巻く、仄かにあたたかいものを感じ取れる。
 これが生体エネルギーである気だ。
 前衛職はこれに自らの闘志を込めて循環させる。
 たちまち全身から立ち昇る湯気みたいなもの。
 そうして生み出されたのが闘気【オーラ】だ。
 身体機能の強化や扱う武具に纏わせる【闘刃】等、その使用方法は多岐に渡る。
 S級の冒険者ブルネッロは卓越した【肉体言語】の遣い手だが恵まれた肢体の性能に頼り切っているだけではない。
 最高の肉体から生み出される最高の闘気を纏い己を強化していた。
 でなければあの肉体は自らの攻撃に耐えきれず己を傷つけてしまう。
 なので俺もそれに倣い、まずは全身に闘気を纏い強化していく。

「ここからが本番だ」

 深く長い呼吸の後――
 丹田と呼ばれる、臍下三寸にある箇所を意識しながら俺はついに魔力を起動。
 気を生み出すチャクラにゆっくり流し込む。

「ぐっ……」
「おっさん!」

 瞬間、全身を覆う灼熱感。
 体内で台風みたいに暴れ反発し合う気と魔力。
 あまりの激痛に声が漏れる。
 相反するものを強引に融合させようというのだ。
 この結果はむしろ当然。
 心配して駆け寄ろうとするシア達を片手で抑制し俺は工程を進める。
 大事なのは調和だ。
 そう、ヴィヴィに教わった【スキル覚醒】を意識しながら融合を始める。
 肉体から生み出される闘気。
 精神から生み出される魔力。
 どちらも俺自身が発生させたもの。
 ならば俺自身の手に負えない訳がない。
 なので【闘気操術】に【魔力操作】スキルを融和、徐々に暴風を宥めていく。
 そして――その時が訪れた。

「おっさん……凄い……」
「わん!」
「あり得ませんわ……何と神々しい……」
「ん。全身から立ち昇る黄金の光。
 文献で読んだから間違いない。
 伝承通りなら今のガリウスは身体機能が倍速どころではなく累乗。
 何より、ありあらゆる肉体的・精神的バッドステータスを無効化する」
「これが前衛職究極の闘技法――【気と魔力の収斂】でござるか……」

 じゃじゃ馬のように跳ねる身体の手綱をどうにか取りながら、俺は派手な黄金色のエフェクトを放ちつつおっさん臭い笑みを浮かべサムズアップするのだった。
 
 
 


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