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おっさん、先生と再会
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「どこかで見たような面かと思えば……
なんだ、カルんとこの小倅じゃねえか」
就任式終了後、歓談を兼ねた祝賀会に俺達は参加していた。
主役は一応俺の筈なのだが……悲しいかな、会場でも一際目を惹くシア達の容姿に群がる男共に対するボディガード役を務める時間が多い。
貴族特有の遠回しな誘いへの返答に辟易していた所、突如としてその言葉が投げ掛けられた。
群がっていた貴族共の人垣が割れていく。
まるで、いにしえの聖者が大海を前に起こした奇跡の様に。
避ける者達の顔は全て忌憚すべき畏怖に染まっていた。
無理もあるまい。
この人を前にしたら誰しもが人間としての格の違いを感じ、自然とそうなる。
生物としてのステージが既に違い過ぎる。
更に恐るべきは達人のみが持つ殺気を超越した鬼気とでもいうべき雰囲気か。
戦闘経験のない者なら生存本能が悲鳴を上げて回避するだろうし、戦闘職ならば相対的な実力差を感じて強張るだろう。
だというのに、俺は委縮することなく平静な気持ちで迎え入れられた。
以前とは違う自分の強さに……少しだけ戸惑いながらも。
「お久しぶりです、先生」
近付いてきた着流しと呼ばれる東方装束を身に纏った白髪の老人に対し、俺は深々と頭を下げる。
老人はニヤリと物騒な笑みを浮かべると俺の全身を上下に見回した。
「久方ぶりだが……堅苦しいのは変わらねえな」
「性分なので」
「はっ! 洟垂れだった小僧も随分一丁前な口を利くようになったもんだ。
まあ壮健そうで何よりだがな。
それにしても……随分と腕を上げたじゃねえか! 見違えたぞ」
「先生の教えが良かったんですよ、きっと」
「よせよせ、おべっかは。
おめえの師匠はあの天仙だろうが。
俺は基礎中の基礎を教えたに過ぎねえ」
「それでも先生の教えは俺の中に根差していますよ」
「おっ見え見えでも嬉しいねぇ」
率直な俺の言葉に老人は顔をクシャクシャにして笑い応じる。
良かった、先生も変わりないようだ。
その時、俺達のこの一連のやり取りを手ぐすねを引いて見ていたシアが、そこで割って入ってくる。
「ねえねえ、おっさん。
この方はどなたなの? 紹介してよ~」
「ああ、放っておいてすまない。
この人は親父の知己にして俺の戦闘スタイルの先生……」
「え!? おっさんの!?」
「ああ、親父との修行の合間に弟子入りさせられた感じだな」
「懐かしい話だ。
こいつは昔から物覚えが悪くてよ。
基礎修業を叩き込むのに通常の倍以上の時間が掛かりやがる。
その癖モノにしたら三倍以上の成果をあげるんだから文句が出ねえ。
まったく可愛げのない奴だったよ」
「それは言わないで下さいよ。
ああ、話の腰を折ってすまない。
この方はかの有名な【山薙ぎ】……マウンテンスレイヤーにして地底都市の達人、剣聖ことイゾウ先生だよ」
「えっ! あのイゾウ・ミフネ先生!?」
「そうだ」
「ぼ、ボク、ファンです!
ずっと前から憧れてました!」
「噂に名高き生きる伝説、ですわね」
「地底を襲った妖魔師団を一人で壊滅させた剣鬼。
比喩抜きに一騎一軍と形容」
「なんだなんだ、今日は褒められる事が多いな。
まあ、嬢ちゃん達みたいな綺麗どころに褒められるのは悪い気はしねえ。
確か……ガリウスの嫁さんだったか?」
「はい!」
「ええ、まだ婚約のみですが……(チラリ)
もっと踏み込んで頂いても構わないのですけど」
「往生際が悪くて困る。早く籍を入れるべき」
「ははは、今から手綱を握られてるじゃねえか!
こりゃ~幸せにしてやらねえといけねえな、小僧」
「勿論、言われなくともそのつもりですよ。
しかし……先生は何故ここに?
世俗との関わりが嫌いで隠居なされたと伺いましたが……」
「ああ、どいつもこいつも儂を政治的利用しようとするからな。
御大層な肩書なんざ重いだけだ。
無心で剣を振るう方が楽でいい。
ただ……世知辛いのは世の中ってヤツでよ。
ウチの倅に任せた道場の運営が上手くいってないらしく、泣きつかれた」
「まさか、トーナメントに出られるのですか!?」
「おう、地底都市代表としてな。
まあ儂も体が鈍らない様に体を動かしたかったから丁度いい機会だったしよ。
それにだ――」
鬼気迫る表情で周囲を見渡す先生。
閃光の剣姫。
王室の近衛。
無敵の拳帝。
巨人族の戦士。
凄腕の暗殺者。
魔弾の射手。
今回俺と共にS級を叙任した数々の猛者達。
しかし先生の視線は最終的にただ一点に絞られた。
王族に囲まれ静かにグラスを傾ける隻眼の武神。
先生と並び立つ、もう一人の生きる伝説。
枯れ木のような先生の身体から放たれていく圧倒的な闘志。
「借りを返さなきゃならねえ奴が参加するしよ……
おめえと当たるのも楽しみだが、一番はそれが理由だ」
そう言って先生は先程とは違う、獰猛な顔で嗤うのだった。
なんだ、カルんとこの小倅じゃねえか」
就任式終了後、歓談を兼ねた祝賀会に俺達は参加していた。
主役は一応俺の筈なのだが……悲しいかな、会場でも一際目を惹くシア達の容姿に群がる男共に対するボディガード役を務める時間が多い。
貴族特有の遠回しな誘いへの返答に辟易していた所、突如としてその言葉が投げ掛けられた。
群がっていた貴族共の人垣が割れていく。
まるで、いにしえの聖者が大海を前に起こした奇跡の様に。
避ける者達の顔は全て忌憚すべき畏怖に染まっていた。
無理もあるまい。
この人を前にしたら誰しもが人間としての格の違いを感じ、自然とそうなる。
生物としてのステージが既に違い過ぎる。
更に恐るべきは達人のみが持つ殺気を超越した鬼気とでもいうべき雰囲気か。
戦闘経験のない者なら生存本能が悲鳴を上げて回避するだろうし、戦闘職ならば相対的な実力差を感じて強張るだろう。
だというのに、俺は委縮することなく平静な気持ちで迎え入れられた。
以前とは違う自分の強さに……少しだけ戸惑いながらも。
「お久しぶりです、先生」
近付いてきた着流しと呼ばれる東方装束を身に纏った白髪の老人に対し、俺は深々と頭を下げる。
老人はニヤリと物騒な笑みを浮かべると俺の全身を上下に見回した。
「久方ぶりだが……堅苦しいのは変わらねえな」
「性分なので」
「はっ! 洟垂れだった小僧も随分一丁前な口を利くようになったもんだ。
まあ壮健そうで何よりだがな。
それにしても……随分と腕を上げたじゃねえか! 見違えたぞ」
「先生の教えが良かったんですよ、きっと」
「よせよせ、おべっかは。
おめえの師匠はあの天仙だろうが。
俺は基礎中の基礎を教えたに過ぎねえ」
「それでも先生の教えは俺の中に根差していますよ」
「おっ見え見えでも嬉しいねぇ」
率直な俺の言葉に老人は顔をクシャクシャにして笑い応じる。
良かった、先生も変わりないようだ。
その時、俺達のこの一連のやり取りを手ぐすねを引いて見ていたシアが、そこで割って入ってくる。
「ねえねえ、おっさん。
この方はどなたなの? 紹介してよ~」
「ああ、放っておいてすまない。
この人は親父の知己にして俺の戦闘スタイルの先生……」
「え!? おっさんの!?」
「ああ、親父との修行の合間に弟子入りさせられた感じだな」
「懐かしい話だ。
こいつは昔から物覚えが悪くてよ。
基礎修業を叩き込むのに通常の倍以上の時間が掛かりやがる。
その癖モノにしたら三倍以上の成果をあげるんだから文句が出ねえ。
まったく可愛げのない奴だったよ」
「それは言わないで下さいよ。
ああ、話の腰を折ってすまない。
この方はかの有名な【山薙ぎ】……マウンテンスレイヤーにして地底都市の達人、剣聖ことイゾウ先生だよ」
「えっ! あのイゾウ・ミフネ先生!?」
「そうだ」
「ぼ、ボク、ファンです!
ずっと前から憧れてました!」
「噂に名高き生きる伝説、ですわね」
「地底を襲った妖魔師団を一人で壊滅させた剣鬼。
比喩抜きに一騎一軍と形容」
「なんだなんだ、今日は褒められる事が多いな。
まあ、嬢ちゃん達みたいな綺麗どころに褒められるのは悪い気はしねえ。
確か……ガリウスの嫁さんだったか?」
「はい!」
「ええ、まだ婚約のみですが……(チラリ)
もっと踏み込んで頂いても構わないのですけど」
「往生際が悪くて困る。早く籍を入れるべき」
「ははは、今から手綱を握られてるじゃねえか!
こりゃ~幸せにしてやらねえといけねえな、小僧」
「勿論、言われなくともそのつもりですよ。
しかし……先生は何故ここに?
世俗との関わりが嫌いで隠居なされたと伺いましたが……」
「ああ、どいつもこいつも儂を政治的利用しようとするからな。
御大層な肩書なんざ重いだけだ。
無心で剣を振るう方が楽でいい。
ただ……世知辛いのは世の中ってヤツでよ。
ウチの倅に任せた道場の運営が上手くいってないらしく、泣きつかれた」
「まさか、トーナメントに出られるのですか!?」
「おう、地底都市代表としてな。
まあ儂も体が鈍らない様に体を動かしたかったから丁度いい機会だったしよ。
それにだ――」
鬼気迫る表情で周囲を見渡す先生。
閃光の剣姫。
王室の近衛。
無敵の拳帝。
巨人族の戦士。
凄腕の暗殺者。
魔弾の射手。
今回俺と共にS級を叙任した数々の猛者達。
しかし先生の視線は最終的にただ一点に絞られた。
王族に囲まれ静かにグラスを傾ける隻眼の武神。
先生と並び立つ、もう一人の生きる伝説。
枯れ木のような先生の身体から放たれていく圧倒的な闘志。
「借りを返さなきゃならねえ奴が参加するしよ……
おめえと当たるのも楽しみだが、一番はそれが理由だ」
そう言って先生は先程とは違う、獰猛な顔で嗤うのだった。
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