勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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おっさん、二人で黄昏

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「旦那……ガリウスの旦那?
 ちゃんと聞いてやすかい?」

 困惑したようなドラナーの声に俺はふと我に返る。
 意識しだすと会場を揺るがす大歓声が脳裏へ響き渡り……自分が闘技場、勇者隊の隊長選抜トーナメントに参加している状況を再認識する。
 俺としたことが先日の出来事を思い返し、随分と呆けていたようだ。
 勧誘以外にも何やら話し掛けてきてくれていたドラナーに申し訳ないな。

「――ああ、すまない。
 ちょっと呆けていたようだ。
 お前と再会した庭園での事とか、叙任式の出来事とか――色々思い返していた」
「なるほどねぇ……確かに色々ありやしたから。
 まあ、あっしは旦那とこうやって交流を持てるようになったのが一番の報酬かもしれやせんね。
 肝心の旦那が随分つれない態度なのは残念ですが」
「男に熱心に口説かれても嬉しくはないぞ。
 まあお前にも目的があるように、俺にも目的があるんでな。
 俺の腕を買ってくれているのは嬉しいが……」
「まったく残念ですよ」
「悪いな。
 それで、何かあったのか?」
「いや、だから遂に対戦の組み合わせが発表になるみたいですぜ。
 おそらくさっきのくじの結果だと思いやすが」
「おお、それは重要だな」

 シード枠や実質上の決勝である挑戦枠は決まっているものの、トーナメント参加者や賭け事に参加している民衆の為、ギリギリまで対戦表は伏せられている。
 個人の人気が倍率となり対戦表によってオッズも変わるので当然だ。
 大袈裟で勿体ぶった司会者の紹介の後、貴賓席中央に設けられた魔導電光板に各対戦の順番と相手、オッズ表が掲示される。
 会場を埋め尽くす怒号と嘆き。
 その結果はこんな感じだった。

【第一回戦】
 精霊都市代表、ガリウス VS 工業都市代表、リーガン

【第二回戦】
 賢園都市代表、マドカ VS 森林都市代表、ズール

【第三回戦】
 沿岸都市代表、ジェクト VS 地底都市代表、イゾウ

【第四回戦】
 湖上都市代表、テリー VS 交易都市代表、ヴァルバトーゼ

【第五回戦】
 要塞都市代表、セリス VS 衛星都市代表、ミサカ

【第六回戦】
 越境都市代表、セーリャ VS  浮遊都市代表、シャリス

【第七回戦】
 魔導都市代表、レインフィールド VS 山岳都市代表、ゴウキ

【第八回線】
 霧煙都市代表、シャドウ VS 砂礫都市代表、ドラナー

【シード枠兼オブザーバー参加】
 聖域都市代表、ソーヤ

【決勝挑戦枠】
 天空都市代表、リカルド



「いきなり初戦とは……
 しかもよりにもよって、巨人の壊し屋リーガンが相手ですかい。
 ツイてないですね、旦那も」

 掲示板の結果を見たドラナーが同情するような声で話し掛けてくる。
 俺は肩を竦めると苦笑しながら応じた。

「確かに面倒なのが最初に来たな。
 それに多分、会場に対するデモンストレーションも兼ねているんだろう」
「というと?」
「でかいくて強いのが、うだつの上がらないおっさん冒険者を蹂躙する。
 初手としては分かりやすい構図だろう?」
「ああ、そういう意図があるんですねえ」
「対戦の組み合わせは公平でも、試合順は多少弄れるだろうしな。
 魔族の復活と侵攻は民衆に隠しきれるものじゃなく、既に公然の秘密だ。
 ならば今後、勇者隊の一員として組み込まれていくメンバーの実力を示すのにこのトーナメントは最適だし、戦う俺達の力を見て皆も安心するだろう。
 ヴィジョン系の術式で各都市にも試合内容が中継されているようだし」
「体の良い当て馬、ってやつですかい」
「分かりやすく言えば、な。
 とはいえ運営の思惑に乗ってやる気はない。
 無論、負ける気も。
 精々一泡吹かせてやるさ。
 まあ順当に勝ち進んだら――それはそれで問題があるんだが」

 俺はドラナーに応じながら先生に視線を送る。
 先生こと剣聖イゾウは、俺の目線にすぐに気付きニヤリと男臭い笑みで応じる。
 そう、順当に勝ち進めば俺は決勝を前に先生と当たる。
 先生には先生なりの戦う理由があるのは十分承知している。
 だからといって手を抜くのは間違っているし、先生も絶対に許さないだろう。
 ならば不詳の弟子に出来るのは唯一つ。
 今まで培ってきた鍛錬の成果をその身に見せつけてやるだけだ。

「負けても地獄、勝って進んでも地獄か。
 まったく嫌な大会だな、おい」
「ホント、世知辛い世の中ですねえ(しみじみ)」

 俺の愚痴に深々と相槌を打つドラナー。
 一方、貴賓席に設けられた壇上では拡張魔導機を前にしたリヴィウス王が高らかに大会の開始を宣言していた。
 こうして怒号飛び交う闘技場で黄昏れるおっさん二人をよそに、歴史的な一戦となるトーナメントは勇壮なファンファーレと共に開始されたのだった。





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