勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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新米の面倒を見る事になったおっさん冒険者34歳…… 実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていく⑨

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「ら、【稲妻】ライトニング!」

 突進攻撃を仕掛けてくるゴブリンライダー【亜種】へ目掛けて――三度放たれるミザリアさんの稲妻の魔術。
 けど訓練の合間に行われる、冒険者にとって必要不可欠な魔術やスキルについて教授してくれるおっさんの授業で学んでいたからこそ分かる。
 雷系の魔術は高難度で魔力消費が大きいものの、術式構築が圧倒的に速いという素晴らしい利点があるけど……しかしこの時に限ってそれは悪手だった。
 何故なら杖から放たれた稲妻は直線的な動きしか敵を補足できない。
 つまり――避けられたら後がない。
 この場合、威力は二の次でまずは足止めを優先するべきだったのだ。
 そうすれば二の手三の手と魔術を紡げるし、ボク達とも連携が図れる。
 しかし全ては後の祭り。
 自らに杖を向けられた瞬間――殺気を感じた訳じゃないだろうけど、何か危険が迫っていることを直感的に悟ったゴブリンライダー【亜種】は斜め前へ急加速。
 強引に射線上から自身を緊急回避させてしまった。
 紫電を纏った稲妻が奴の脇を通り抜けていき……虚しく空を切る。
 
「えっ……そんな――」

 放った魔術の結果を眼にして呆然とその場に立ち尽くすミザリアさん。
 そんなミザリアさんへ無慈悲にゴブリンライダー【亜種】の魔手が伸びる。
 正魔術師試験で行われた探索で、唯一実戦経験があると以前に話してくれた。
 でもそれは戦いというより、おっさんの庇護を受けてアウトレンジから一方的に敵を叩くだけだった――と自嘲もしていた。
 実力はあるし機転も利く。
 だからこそ、危機に関して覚悟が足りなかったのだろう。
 未熟なボクでも分かる。
 殺意剥き出しの敵の前で無抵抗に立ち尽くすなんて、自殺行為もいいところだ。
 誰かと共に戦った訳じゃない、孤高(ぼっち)を貫いた故の弱点が露見してしまった。
 でもね、それでいいと思う。
 ボク達は今……パーティなんだから。
 ミザリアさんの――ううん、リアの足りない部分はボク達で補う。
 猛ダッシュで駆け寄ったボクは立ち尽くすリアを抱えるや草むらに押し倒す。
 対象を失った魔手がボクの額を掠め流血する。
 くそっ、完全に避け切れなかったか!
 でも髪の毛数本と擦過傷程度でリアの命を救えたなら万々歳だ。
 今の攻撃がもし直撃してたら、下手をすれば首を刎ねられていた可能性がある。
 しかし無防備を晒している事に変わりはない。
 追撃を恐れ急いで体勢を起こそうとするけど――そこは有難い仲間という存在。
 フィーの唱えた【聖壁】プロテクションの祝祷術に阻まれ奴は接敵できない。
 諦めたゴブリンライダー【亜種】は再度攻撃を仕掛けるべく離れていく。
 ホント、ここが森中の洞窟前で良かった。
 もし草原の様に開けた場所だったらあの機動力に蹂躙されていたと思う。
 ボクの腕の中で血の気を失い蒼白になり汗ばむリア。
 理知的で聡い彼女の事だ。咄嗟に下した判断の誤りを責めているのだろう。
 涙目で唇を震わせ謝罪しようとする彼女に――強がりでも笑顔で応じる。

「ご、ごめんなさ――」
「ううん、大丈夫だよ」
「えっ……」
「ボク達は生死を共にするパーティなんだ。
 何かあってもそれは誰かのせいなんかじゃない。
 皆で考えて、皆で立ち向かおう!」
「シア……」
「あら、良い事を言いますねシアさん。
 わたくしも同意見ですわ。
 誰かの失敗を責めるのではなく――共に生き延びる為、力を尽くしましょう」
「フィー……」
「うん、そういうこと。
 それに離れた奴はさ、また突進攻撃を仕掛けて来るよ。
 こういう時に頼りになるおっさんはさっきから全然姿が見えないし。
 逃げた訳じゃなくて、隠形スキルできっとボク達の事を見守っていると思う。
 でも公言した以上、きっと手は出してこないよ……
 おっさんはそういうところ自分に課しているというか、律儀だから。
 ボク達はまだ人としても冒険者としても未熟……けど、あいつを何とかしたい。
 おっさんを見返すとかじゃなくて、困っている人を救う為に。
 だからさ、あいつをどうにか出来る案を出せるのは、駆け引きや戦術論に長けたリアだけなんだ。何か上手い手立てはある?」

 優しく投げ掛けられたボク達の言葉にリアの綺麗な翠の双眸から涙が零れ落ちていくも……慌ててローブの袖で顔を拭った彼女は不敵な貌を覗かせる。

「ん。皆の覚悟は受け取った。
 一つ勝算の高い策があるけど……命を預けれる?」
「勿論だよ!」
「その言葉を待ってましたわ♪」

 物怖じせず瞬時に応じるボク達の返答にリアは唇を綻ばせた。
 さあ、自らの至らなさや焦燥に駆られるような暗い時間はここでおしまい。
 ここからはいよいよ冒険譚でお馴染みのカタルシス――反撃の時間だ!







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