勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

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「生まれて初めてかも」

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「さすがにそろそろ限界だな。
 お昼になるし、少し休憩しないか?」
「え~~~~~~!
 まだ半分も見て回ってないなの」
「私も気になるものがあるんだけどなぁ……」
「安心しろ、二人とも。
 この露店市は夕刻まで開催されるそうだ。
 休憩の為、少々場を離れても逃げてはいかないぞ」
「そうなのなの?
 む~~~~マスターが言うなら我慢するなの」
「ん~仕方ない。ここは納得してあげようかな」
「俺の意見って……しかしまあ、随分買い込んだな」

 喜劇俳優の様に買った品々を沢山抱えた俺は白旗を上げる。
 大分制限したとはいえ、かなりの荷物になってしまった。
 旅に必要ない物はいらない、と強く申し出たのだが女性には必要なの! という強固な主張の前には敢え無く玉砕。
 発言力の差をまじまじと見せられ、俺はそっと心の中で涙する。
 常々思っていたのだが……
 このパーティにおけるヒエラルキーは俺が最底辺じゃないだろうか。
 師匠が召喚してくれたとはいえ従者より下なのはどうなんだ……?
 まあ、今は何より休憩が優先だ。
 朝食はしっかり食べたとはいえ……ずっと動き回っていた為か空きっ腹が激しく自己主張をし始めている。
 特にこの露店市は食べ物の露店も出ており、凶悪なまでに食欲を刺激するしな。
 食べ盛りの俺にとって、それはある意味一番の拷問だ。
 無論バザーを見て歩く際中も定食屋っぽい店はあった。
 ただそれとなく露店の商人に訊いたら今の時期は下手な店に入るよりも旬の食材を露店で売る出店の物を食べるのが一番美味いとの事。
 そういった客をターゲットにした、飲み物をオーダーするだけで休める店も何軒か聞いておいたので、さっそく向かう。
 道中各自が好きな物を買い込み、まるで祭りの屋台巡りの様だ。
 最近のセラは気負いが抜けたせいか雰囲気が柔らかくなり親しみやすい上に目を惹く美少女であるしリンデも愛らしい外見のお陰でどこに行っても可愛がられた。
 というか、おまけの方が多いくらいだ。
 その分話し留められ、買って回るのに時間が掛かってしまうのだが。
 これは恐らく店主の戦略で要はセラ達を客寄せのマネキンにしているのだろう。
 確かに笑顔で談笑する美少女を見るとついその場に立ち止まってしまう。
 そこにすかさず売り込むのである。
 巧みな手口と逞しい商魂に苦笑せざるをえない。
 早く休みたいというのが正直なとこだが、セラとリンデはご満悦だ。
 人里を避けるように移動してきた為、今現在の活き活きした姿が眩しく――何も言えなくなってしまう。

「お、ここだ」

 うろ覚えな記憶を頼りに辿り着いたのは、洒落た雰囲気のカフェだった。
 せっかくのオープンスタイルだが……生憎の雨のせいか客の入りはまばらだ。
 俺達は取り合えず庇のある席に腰を下ろし一息をつく。

「いらっしゃいませ~」

 するとよく訓練されたウエイトレスが間を置かずに注文を取りに来る。

「3名様ですね。
 お飲み物は何になさいますか?」
「果物を搾った適当なものを3つ貰えるかしら?
 昼食は既に購入してきたので」
「ではフレッシュジュースを3つ、オーダー承ります。
 持ち込みですと別途料金が掛かってしまいますがよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
「ありがとうございます。
 それではごゆっくりお過ごし下さ~い」

 軽やかな一礼と共にウエイトレスは厨房へ向かう。
 先程述べたが、持ち込みも可能なのがこういったカフェの特色だ。
 店内には俺達の他にも同様に軽食を持参している客がちらほら見える。
 こういったスタイルでは売り上げに響きそうだが、ジュースの料金を少し割増し、回転率を上げる事で機会損失を補う方針なのだろう。

「ふう、疲れた~(ぐでー)」
「もう~ガリウスったら。
 男の子なのにだらしないわね」
「仕方ないだろう。
 鍛錬とは違い、精神的にも疲労するし」
「セラの言う通りなの、マスター。
 紳士だったら不眠不休で淑女に尽くす体力が求められるの」
「いや、俺は一介の剣士だし。あとそれ、紳士という名の奴隷だし」
「ん。でもありがとなの、マスター。
 今日は凄く楽しいなの」
「私もよ。
 こんなに自由を謳歌したのは生まれて初めてかもしれないわ」
「そうか……ならば良かった。
 俺も苦労した甲斐があったよ」
「うん。
 だから『今は』ゆっくり休んでなの」
「そうね。
 午後からもまだまだ付き合ってもらいたいし」
「……勘弁してくれ」

 机に突っ伏してヤサぐれる俺。
 そんな俺を労う訳でもなく、どこかおかしそうに微笑み合うセラ達。
 閉口してる間も女同士、よもやま話に会話を弾ませる。
 午後からの苦役を思い気力を失い掛けていた俺だったが、セラの声に復活する。

「あ、ほら。ジュースが来たみたい。
 不貞腐れてないで、さっそくお昼をいただきましょうよ」

 屈託のない笑顔を浮かべると俺の腕を抱えて食事へ誘うセラ。
 他意はないのだろう。
 ただ服越しとはいえ極上の感触が伝わり……俺は慌てて身を起こす。
 無防備というか何というか――まったく、もっと自分の魅力を自覚して欲しい。
 まあいい、ここは思考を切り替えよう。
 さあ、待ちに待った昼ご飯だ。
 狂騒曲を奏でる胃袋が、買ってきた串肉やら炒め物やら甘いスイーツやらの到着を今か今かと待ちわびている。
 獲物を前にした狂戦士のように――俺は本能(食欲)を解放するのだった。
 
 


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