勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
344 / 398

「生まれて初めてかも」

しおりを挟む

「さすがにそろそろ限界だな。
 お昼になるし、少し休憩しないか?」
「え~~~~~~!
 まだ半分も見て回ってないなの」
「私も気になるものがあるんだけどなぁ……」
「安心しろ、二人とも。
 この露店市は夕刻まで開催されるそうだ。
 休憩の為、少々場を離れても逃げてはいかないぞ」
「そうなのなの?
 む~~~~マスターが言うなら我慢するなの」
「ん~仕方ない。ここは納得してあげようかな」
「俺の意見って……しかしまあ、随分買い込んだな」

 喜劇俳優の様に買った品々を沢山抱えた俺は白旗を上げる。
 大分制限したとはいえ、かなりの荷物になってしまった。
 旅に必要ない物はいらない、と強く申し出たのだが女性には必要なの! という強固な主張の前には敢え無く玉砕。
 発言力の差をまじまじと見せられ、俺はそっと心の中で涙する。
 常々思っていたのだが……
 このパーティにおけるヒエラルキーは俺が最底辺じゃないだろうか。
 師匠が召喚してくれたとはいえ従者より下なのはどうなんだ……?
 まあ、今は何より休憩が優先だ。
 朝食はしっかり食べたとはいえ……ずっと動き回っていた為か空きっ腹が激しく自己主張をし始めている。
 特にこの露店市は食べ物の露店も出ており、凶悪なまでに食欲を刺激するしな。
 食べ盛りの俺にとって、それはある意味一番の拷問だ。
 無論バザーを見て歩く際中も定食屋っぽい店はあった。
 ただそれとなく露店の商人に訊いたら今の時期は下手な店に入るよりも旬の食材を露店で売る出店の物を食べるのが一番美味いとの事。
 そういった客をターゲットにした、飲み物をオーダーするだけで休める店も何軒か聞いておいたので、さっそく向かう。
 道中各自が好きな物を買い込み、まるで祭りの屋台巡りの様だ。
 最近のセラは気負いが抜けたせいか雰囲気が柔らかくなり親しみやすい上に目を惹く美少女であるしリンデも愛らしい外見のお陰でどこに行っても可愛がられた。
 というか、おまけの方が多いくらいだ。
 その分話し留められ、買って回るのに時間が掛かってしまうのだが。
 これは恐らく店主の戦略で要はセラ達を客寄せのマネキンにしているのだろう。
 確かに笑顔で談笑する美少女を見るとついその場に立ち止まってしまう。
 そこにすかさず売り込むのである。
 巧みな手口と逞しい商魂に苦笑せざるをえない。
 早く休みたいというのが正直なとこだが、セラとリンデはご満悦だ。
 人里を避けるように移動してきた為、今現在の活き活きした姿が眩しく――何も言えなくなってしまう。

「お、ここだ」

 うろ覚えな記憶を頼りに辿り着いたのは、洒落た雰囲気のカフェだった。
 せっかくのオープンスタイルだが……生憎の雨のせいか客の入りはまばらだ。
 俺達は取り合えず庇のある席に腰を下ろし一息をつく。

「いらっしゃいませ~」

 するとよく訓練されたウエイトレスが間を置かずに注文を取りに来る。

「3名様ですね。
 お飲み物は何になさいますか?」
「果物を搾った適当なものを3つ貰えるかしら?
 昼食は既に購入してきたので」
「ではフレッシュジュースを3つ、オーダー承ります。
 持ち込みですと別途料金が掛かってしまいますがよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
「ありがとうございます。
 それではごゆっくりお過ごし下さ~い」

 軽やかな一礼と共にウエイトレスは厨房へ向かう。
 先程述べたが、持ち込みも可能なのがこういったカフェの特色だ。
 店内には俺達の他にも同様に軽食を持参している客がちらほら見える。
 こういったスタイルでは売り上げに響きそうだが、ジュースの料金を少し割増し、回転率を上げる事で機会損失を補う方針なのだろう。

「ふう、疲れた~(ぐでー)」
「もう~ガリウスったら。
 男の子なのにだらしないわね」
「仕方ないだろう。
 鍛錬とは違い、精神的にも疲労するし」
「セラの言う通りなの、マスター。
 紳士だったら不眠不休で淑女に尽くす体力が求められるの」
「いや、俺は一介の剣士だし。あとそれ、紳士という名の奴隷だし」
「ん。でもありがとなの、マスター。
 今日は凄く楽しいなの」
「私もよ。
 こんなに自由を謳歌したのは生まれて初めてかもしれないわ」
「そうか……ならば良かった。
 俺も苦労した甲斐があったよ」
「うん。
 だから『今は』ゆっくり休んでなの」
「そうね。
 午後からもまだまだ付き合ってもらいたいし」
「……勘弁してくれ」

 机に突っ伏してヤサぐれる俺。
 そんな俺を労う訳でもなく、どこかおかしそうに微笑み合うセラ達。
 閉口してる間も女同士、よもやま話に会話を弾ませる。
 午後からの苦役を思い気力を失い掛けていた俺だったが、セラの声に復活する。

「あ、ほら。ジュースが来たみたい。
 不貞腐れてないで、さっそくお昼をいただきましょうよ」

 屈託のない笑顔を浮かべると俺の腕を抱えて食事へ誘うセラ。
 他意はないのだろう。
 ただ服越しとはいえ極上の感触が伝わり……俺は慌てて身を起こす。
 無防備というか何というか――まったく、もっと自分の魅力を自覚して欲しい。
 まあいい、ここは思考を切り替えよう。
 さあ、待ちに待った昼ご飯だ。
 狂騒曲を奏でる胃袋が、買ってきた串肉やら炒め物やら甘いスイーツやらの到着を今か今かと待ちわびている。
 獲物を前にした狂戦士のように――俺は本能(食欲)を解放するのだった。
 
 


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妖精の森の、日常のおはなし。

華衣
ファンタジー
 気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?  でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。  あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!? 「僕、妖精になってるー!?」  これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。 ・毎日18時投稿、たまに休みます。 ・お気に入り&♡ありがとうございます!

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...