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第34話 とりのこされるオーブリー王子
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オーブリーは狼狽した。
そもそも、彼の意識の中では『兄』という存在はいない。
ベネットは確かに自分の前に母の王妃から生まれたが、産んだ母自身が、後から生まれた自分たちと同列に彼を扱ってはいない。
彼の存在は王家の必要悪として両親から語られてきたのだ。
オーブリーは彼については『兄』や名前の『ベネット』という語をつかって指ししめしたことはない。
ゆえに当たり前に彼のことを自分の『兄』であるかのように語ったメルに驚かされた。
『ポカン』という言葉にふさわしい表情をオーブリーはしていた。
「私は何かおかしなことを言いましたでしょうか?」
オーブリーの表情を見てメルが問う。
「……」
オーブリーは返す言葉が見つからなかった。
「私に見せた先ほどの気遣いをベネット様に見せて差し上げればお喜びになると思いますわ。ではわたしはこれで」
軽くお辞儀をしてメルはオーブリーから離れた。
この一部始終を物陰から観察していた人物がいる。
ベネットの乳母のサモワである。
「あの第二王子、妹の方が第三王子に傾いているから、メルさまの方に粉かけてきたのですね」
第二、第三王子の王太子の座をかけた争いが静かに激化していっているが、そのキーマンとなるメルの妹エメは、自分と似たような気質の第三王子クレールの方へと傾いている。
それに対する起死回生のためにオーブリーはメルを口説きにかかっていたのだが、その点についてはメルはサッパリ反応せず、逆に『兄』であるベネットの話をされてしまった。
「メルさまも色恋などに関してはわりと鈍い方なのでしょうかね? それともわかっていながら、ああやって話をそらせたのかしら?」
まあいいわ、と、サモワもひそかにオーブリーから離れていく。
一方、取り残されたオーブリーではあるが、メルの意外な反応に今まで信じてきた『家族』の像の土台がぐらつくのを感じた。
ベネットは確かにオーブリーから見た関係は『兄』だが、彼女の言う『気遣う』とか『心配する』とかいう対象にするべきものではなかった。
メルの言葉でオーブリーの気持ちがぐらついているのは、彼の今の立場が非常に不安定なものだからだろう。
今まではベネットという『人外』の存在をつまはじきにすることで、王家の家族はみなまとまっていた。
しかしそのベネットが王宮を去る時が近づき、弟王子との競争で自分が負ける可能性が大きくなり、今度は自身がつまはじきにされる恐れがオーブリーの中で膨らんできた。
その焦りがメルに対しての声かけにつながっていたのであった。
そもそも、彼の意識の中では『兄』という存在はいない。
ベネットは確かに自分の前に母の王妃から生まれたが、産んだ母自身が、後から生まれた自分たちと同列に彼を扱ってはいない。
彼の存在は王家の必要悪として両親から語られてきたのだ。
オーブリーは彼については『兄』や名前の『ベネット』という語をつかって指ししめしたことはない。
ゆえに当たり前に彼のことを自分の『兄』であるかのように語ったメルに驚かされた。
『ポカン』という言葉にふさわしい表情をオーブリーはしていた。
「私は何かおかしなことを言いましたでしょうか?」
オーブリーの表情を見てメルが問う。
「……」
オーブリーは返す言葉が見つからなかった。
「私に見せた先ほどの気遣いをベネット様に見せて差し上げればお喜びになると思いますわ。ではわたしはこれで」
軽くお辞儀をしてメルはオーブリーから離れた。
この一部始終を物陰から観察していた人物がいる。
ベネットの乳母のサモワである。
「あの第二王子、妹の方が第三王子に傾いているから、メルさまの方に粉かけてきたのですね」
第二、第三王子の王太子の座をかけた争いが静かに激化していっているが、そのキーマンとなるメルの妹エメは、自分と似たような気質の第三王子クレールの方へと傾いている。
それに対する起死回生のためにオーブリーはメルを口説きにかかっていたのだが、その点についてはメルはサッパリ反応せず、逆に『兄』であるベネットの話をされてしまった。
「メルさまも色恋などに関してはわりと鈍い方なのでしょうかね? それともわかっていながら、ああやって話をそらせたのかしら?」
まあいいわ、と、サモワもひそかにオーブリーから離れていく。
一方、取り残されたオーブリーではあるが、メルの意外な反応に今まで信じてきた『家族』の像の土台がぐらつくのを感じた。
ベネットは確かにオーブリーから見た関係は『兄』だが、彼女の言う『気遣う』とか『心配する』とかいう対象にするべきものではなかった。
メルの言葉でオーブリーの気持ちがぐらついているのは、彼の今の立場が非常に不安定なものだからだろう。
今まではベネットという『人外』の存在をつまはじきにすることで、王家の家族はみなまとまっていた。
しかしそのベネットが王宮を去る時が近づき、弟王子との競争で自分が負ける可能性が大きくなり、今度は自身がつまはじきにされる恐れがオーブリーの中で膨らんできた。
その焦りがメルに対しての声かけにつながっていたのであった。
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