34 / 51
第34話 とりのこされるオーブリー王子
しおりを挟む
オーブリーは狼狽した。
そもそも、彼の意識の中では『兄』という存在はいない。
ベネットは確かに自分の前に母の王妃から生まれたが、産んだ母自身が、後から生まれた自分たちと同列に彼を扱ってはいない。
彼の存在は王家の必要悪として両親から語られてきたのだ。
オーブリーは彼については『兄』や名前の『ベネット』という語をつかって指ししめしたことはない。
ゆえに当たり前に彼のことを自分の『兄』であるかのように語ったメルに驚かされた。
『ポカン』という言葉にふさわしい表情をオーブリーはしていた。
「私は何かおかしなことを言いましたでしょうか?」
オーブリーの表情を見てメルが問う。
「……」
オーブリーは返す言葉が見つからなかった。
「私に見せた先ほどの気遣いをベネット様に見せて差し上げればお喜びになると思いますわ。ではわたしはこれで」
軽くお辞儀をしてメルはオーブリーから離れた。
この一部始終を物陰から観察していた人物がいる。
ベネットの乳母のサモワである。
「あの第二王子、妹の方が第三王子に傾いているから、メルさまの方に粉かけてきたのですね」
第二、第三王子の王太子の座をかけた争いが静かに激化していっているが、そのキーマンとなるメルの妹エメは、自分と似たような気質の第三王子クレールの方へと傾いている。
それに対する起死回生のためにオーブリーはメルを口説きにかかっていたのだが、その点についてはメルはサッパリ反応せず、逆に『兄』であるベネットの話をされてしまった。
「メルさまも色恋などに関してはわりと鈍い方なのでしょうかね? それともわかっていながら、ああやって話をそらせたのかしら?」
まあいいわ、と、サモワもひそかにオーブリーから離れていく。
一方、取り残されたオーブリーではあるが、メルの意外な反応に今まで信じてきた『家族』の像の土台がぐらつくのを感じた。
ベネットは確かにオーブリーから見た関係は『兄』だが、彼女の言う『気遣う』とか『心配する』とかいう対象にするべきものではなかった。
メルの言葉でオーブリーの気持ちがぐらついているのは、彼の今の立場が非常に不安定なものだからだろう。
今まではベネットという『人外』の存在をつまはじきにすることで、王家の家族はみなまとまっていた。
しかしそのベネットが王宮を去る時が近づき、弟王子との競争で自分が負ける可能性が大きくなり、今度は自身がつまはじきにされる恐れがオーブリーの中で膨らんできた。
その焦りがメルに対しての声かけにつながっていたのであった。
そもそも、彼の意識の中では『兄』という存在はいない。
ベネットは確かに自分の前に母の王妃から生まれたが、産んだ母自身が、後から生まれた自分たちと同列に彼を扱ってはいない。
彼の存在は王家の必要悪として両親から語られてきたのだ。
オーブリーは彼については『兄』や名前の『ベネット』という語をつかって指ししめしたことはない。
ゆえに当たり前に彼のことを自分の『兄』であるかのように語ったメルに驚かされた。
『ポカン』という言葉にふさわしい表情をオーブリーはしていた。
「私は何かおかしなことを言いましたでしょうか?」
オーブリーの表情を見てメルが問う。
「……」
オーブリーは返す言葉が見つからなかった。
「私に見せた先ほどの気遣いをベネット様に見せて差し上げればお喜びになると思いますわ。ではわたしはこれで」
軽くお辞儀をしてメルはオーブリーから離れた。
この一部始終を物陰から観察していた人物がいる。
ベネットの乳母のサモワである。
「あの第二王子、妹の方が第三王子に傾いているから、メルさまの方に粉かけてきたのですね」
第二、第三王子の王太子の座をかけた争いが静かに激化していっているが、そのキーマンとなるメルの妹エメは、自分と似たような気質の第三王子クレールの方へと傾いている。
それに対する起死回生のためにオーブリーはメルを口説きにかかっていたのだが、その点についてはメルはサッパリ反応せず、逆に『兄』であるベネットの話をされてしまった。
「メルさまも色恋などに関してはわりと鈍い方なのでしょうかね? それともわかっていながら、ああやって話をそらせたのかしら?」
まあいいわ、と、サモワもひそかにオーブリーから離れていく。
一方、取り残されたオーブリーではあるが、メルの意外な反応に今まで信じてきた『家族』の像の土台がぐらつくのを感じた。
ベネットは確かにオーブリーから見た関係は『兄』だが、彼女の言う『気遣う』とか『心配する』とかいう対象にするべきものではなかった。
メルの言葉でオーブリーの気持ちがぐらついているのは、彼の今の立場が非常に不安定なものだからだろう。
今まではベネットという『人外』の存在をつまはじきにすることで、王家の家族はみなまとまっていた。
しかしそのベネットが王宮を去る時が近づき、弟王子との競争で自分が負ける可能性が大きくなり、今度は自身がつまはじきにされる恐れがオーブリーの中で膨らんできた。
その焦りがメルに対しての声かけにつながっていたのであった。
74
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢扱いで国外追放?なら辺境で自由に生きます
タマ マコト
ファンタジー
王太子の婚約者として正しさを求め続けた侯爵令嬢セラフィナ・アルヴェインは、
妹と王太子の“真実の愛”を妨げた悪役令嬢として国外追放される。
家族にも見捨てられ、たった一人の侍女アイリスと共に辿り着いたのは、
何もなく、誰にも期待されない北方辺境。
そこで彼女は初めて、役割でも評価でもない「自分の人生」を生き直す決意をする。
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし
香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。
治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。
そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。
二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。
これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。
そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。
※他サイトにも投稿しています
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
厄介払いされてしまいました
たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。
十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。
しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる