33 / 51
第33話 第二王子との会話
しおりを挟む
「今日はあの乳母を連れていないのですね」
オーブリーは言った。
乳母とはおそらくばあやのサモワのことだろう。
「あなたこそおひとりとはおめずらしい」
いつも第三王子のクレールやエメと連れ立って歩いているのに。
「私にもいろいろ考えることがありますからね。それにしてもメル殿がおひとりの時に出会えるとは、なんと運がいい」
「……?」
オーブリーの言葉にメルは首をかしげる。
「メル殿は王太子妃の立場を辞せば実家に帰られるのでしょうが、それはなんとももったいないこと、と、私は常々思っておりました」
私だって帰りたいわけじゃないわよ。
メルは内心思っていたが言葉には出さなかった。
「ご自分で思ったことはございませんか?」
「何をでしょう?」
オーブリー王子の質問にメルは質問で返す。
「このまま、王家や侯爵家の捨て石としての立場を甘んじて受けることに疑問を感じたことはありませんか?」
捨て石とは言い妙である。
「あなたの妹のエメ殿とメル殿の違いなど、髪や目の色による雰囲気でしかない。エメ殿を本当の王太子妃候補と父や母も見なしているが、正直言って、浪費とダンスしか取り柄のない女より、メル殿が引き続き王太子妃でいてくださる方がよっぽど王家のためになるというもの」
「意外ですわ、そんなに高く評価してくださっていたなんて」
メルは本気で思った。
「クレールの奴は中身のない妹御を妃に迎えても、王太子としてつつがなくやっていけると思っているようですが私は違う。いかがでしょう。すでに王太子妃としての業務の実績のあるあなたなら……」
「どういう意味でしょう?」
「やつとは白い結婚のまま何事もないのであれば、廃嫡されたのち、新たに王太子となったものの妃となっても何ら問題はないはず」
「えっ、つまり……?」
「次期王太子妃として私と一緒に国を治めれば、実家の侯爵家も引き続きあなたを軽んじることはない、私はあなたなら……」
オーブリー王子の言葉は次第に熱を帯びてった。
しかし、メルは彼と同じ熱をもってその話を聞き入れる気分にはなれなかった。
「あの、オーブリー殿下……。疑問があるのですが、あなたは私が王家や侯爵家から捨て石のように扱われていることをご心配くださっています。それは非常にありがたいことですが、その捨て石的な立場に置かれている存在というのなら、あなたには私より先に気づかうべき存在がいるのではないですか?」
「はあっ……?」
オーブリーにはメルの言っている意味が分からなかった。
「ベネット様ですわ。あなたの兄君こそ、あなた方王家の人間からそれこそ『捨て石』のような扱いを受けていらっしゃるのに、それを差し置いて、私の立場を気遣うのは順序が逆というものですわ」
オーブリーは言った。
乳母とはおそらくばあやのサモワのことだろう。
「あなたこそおひとりとはおめずらしい」
いつも第三王子のクレールやエメと連れ立って歩いているのに。
「私にもいろいろ考えることがありますからね。それにしてもメル殿がおひとりの時に出会えるとは、なんと運がいい」
「……?」
オーブリーの言葉にメルは首をかしげる。
「メル殿は王太子妃の立場を辞せば実家に帰られるのでしょうが、それはなんとももったいないこと、と、私は常々思っておりました」
私だって帰りたいわけじゃないわよ。
メルは内心思っていたが言葉には出さなかった。
「ご自分で思ったことはございませんか?」
「何をでしょう?」
オーブリー王子の質問にメルは質問で返す。
「このまま、王家や侯爵家の捨て石としての立場を甘んじて受けることに疑問を感じたことはありませんか?」
捨て石とは言い妙である。
「あなたの妹のエメ殿とメル殿の違いなど、髪や目の色による雰囲気でしかない。エメ殿を本当の王太子妃候補と父や母も見なしているが、正直言って、浪費とダンスしか取り柄のない女より、メル殿が引き続き王太子妃でいてくださる方がよっぽど王家のためになるというもの」
「意外ですわ、そんなに高く評価してくださっていたなんて」
メルは本気で思った。
「クレールの奴は中身のない妹御を妃に迎えても、王太子としてつつがなくやっていけると思っているようですが私は違う。いかがでしょう。すでに王太子妃としての業務の実績のあるあなたなら……」
「どういう意味でしょう?」
「やつとは白い結婚のまま何事もないのであれば、廃嫡されたのち、新たに王太子となったものの妃となっても何ら問題はないはず」
「えっ、つまり……?」
「次期王太子妃として私と一緒に国を治めれば、実家の侯爵家も引き続きあなたを軽んじることはない、私はあなたなら……」
オーブリー王子の言葉は次第に熱を帯びてった。
しかし、メルは彼と同じ熱をもってその話を聞き入れる気分にはなれなかった。
「あの、オーブリー殿下……。疑問があるのですが、あなたは私が王家や侯爵家から捨て石のように扱われていることをご心配くださっています。それは非常にありがたいことですが、その捨て石的な立場に置かれている存在というのなら、あなたには私より先に気づかうべき存在がいるのではないですか?」
「はあっ……?」
オーブリーにはメルの言っている意味が分からなかった。
「ベネット様ですわ。あなたの兄君こそ、あなた方王家の人間からそれこそ『捨て石』のような扱いを受けていらっしゃるのに、それを差し置いて、私の立場を気遣うのは順序が逆というものですわ」
53
あなたにおすすめの小説
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
レイブン領の面倒姫
庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。
初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。
私はまだ婚約などしていないのですが、ね。
あなた方、いったい何なんですか?
初投稿です。
ヨロシクお願い致します~。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる