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更に更に、その後。
黒真珠。
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《ローシュ》
「ルツ、いつ起きたの」
《今さっきです、おはようございます》
「おそよう」
《おそようございます》
「コレ、夢?」
《残念なお知らせなんですが、コレは夢じゃないですし、実は意識が有ったのか話は全て聞こえてました》
「もー」
死ぬ程恥ずかしい。
穴が無くても掘って埋まりたい程に恥ずかしい、死んでやろうかしら。
《ローシュ》
「死にたい」
《死なないで下さい、どうぞ、黒真珠です》
「コレって」
《涙を溜め、魔法で作り上げました》
「あんな戯れ言の為に泣いたの?」
《いえ、元は勝手に流れたモノが溜まっていたんです、冥界渡りで製法と魔導具の涙壺を得ました。壊れてしまいましたけどね》
頭上の照明置き場に、自壊した様に大きな硝子の破片達が散らばっている。
青と緑のグラデーションの破片達。
「綺麗ねコレ」
《黒真珠より喜んでませんか?》
「だって、その真珠、何処に有ったのかしらと」
《枕元に、多分、頭上に置いていた涙壺からかと》
この部屋に来た時点で目に入ってる筈なのに、見覚えが全く無い。
「コレ、有った?」
《はい、アナタには多分、認識阻害で見えていなかったのかと》
「ふふっ、そうよね、流石に胃に入ってたら溶けそうだし」
《本気で切り裂こうとしていたからこそ、スカアハ神が現れたのでしょうね》
「ぁあ、ずっと意識が有ったなんて」
《ずっとでは無いですよ、人の声を、聞かされていたんだと思います。夢を見てたんです、アナタが泣いてる悪夢を、反論出来ずに悔しいままで何回も》
「それで起きたの?」
《それも、ですね、アナタの為に。愛してます、ずっと一緒に居て下さい》
口説くと言うか、本当にプロポーズよね、コレ。
とんでもないプロポーズの方法。
「アーリスが居るわよ?」
《アーリスには悪いですが、アナタが私を受け入れてくれないなら、決闘を申し込んでどちらかが死ぬまで戦います》
「大人げない」
《実質、情操教育をなされていない子供と同じですから。真珠はどうですか?気に入りませんでしたか?》
黒く暗いけれど、涙壺の色を混ぜた様な青緑色で綺麗。
「コレ、早く人の手だけで作り出せたら良いのに」
《そう焦った部分も有ります、すみませんでした》
「枕元にって言うけど、もしかして、口から」
《確かに想像はしましたよ、材料を飲み込んだので、そうなれば胃か、下からか》
「下からはちょっと」
《ですよね》
「全く、コレだから異世界人は困るのだよ、せめて手の中から現れた。とでも思えば良いモノを」
「スカアハ様」
「お主なぁ、人魚の涙の異名を知っておろうよ、お主とルツの涙が混ざり生み出されたのだ。全く、口からでは美しく無かろう」
「この大きさを、ぐふっ」
「もー」
《コレは流石に窒息するかと》
「ふふっ」
「全く、もう少し魔法を美しく考え、使って欲しいモノだな」
《以後気を付けさせて頂きます》
「うむ、魔法は何でも出来るのだ、精進せい」
「はい」
《ご心配お掛けしました》
「全くだ」
そうしてスカアハ様は影へ。
「魔法は何でも出来る、そうね、確かにそう。ふふふふふ」
《本当に口からでは無いですからね》
「はいはい、ふふっ」
神様的にはルツはアリって事よね、こうして助力したり後押ししたりしてるんだし。
違うって事よね。
今までの男とは違う、手助けするだけの価値が有る。
《ダメでしょうか、結婚は》
「何が良いか、未だに理解に苦しむのよね。それに寧ろアナタが一夫多妻制を叶えられる立場だし、私達が一緒になるのは、逆に国の不利益に繋がる可能性も出る」
《王は私とアナタを信じています、それこそ対等な仲間だと。自信満々にスカアハ神に語ってらっしゃいましたよ、コイツらは俺を好きだ、と》
「凄い、ブラドらしいわね、本当」
《家族愛でもと一瞬揺らぎましたが、抱きたいので無理ですね、愛してます》
マジで聞こえてたのね。
と言うか悪夢を何回もって、安穏と眠ってたワケじゃないって事よね。
「どんな悪夢だったの?」
《口に出したくも無いんですが……王やアーリスの脅しが、そのまま目の前で再現されたんです。脳が勝手に再現したんでしょうね、そうなるのは嫌だと思うと同時に、目の前で見る事になる》
「で、内容は?」
《私が眠ったままで、アナタがウムトに靡く。有り得ないとは思うんですが、想像する前に、嫌だと思った瞬間に目の前にアナタ達が現れて。弱っているアナタに、ウムトが言い寄る。有り得ないとは分かっているのに、苦痛でした》
「有り得ない、とどうして言い切れるのよ」
《私を飛び越してアナタを得る気は無いと、一応、彼の伯父として関わっているので》
「伯父」
《見た目がこうなので、今は従兄弟として対外的には接しているんですが、はい》
「伯父、従兄弟」
《彼の倍は生きてますから》
ウムトって、25は過ぎてるのよね、その倍。
「50年モノの童貞の真珠、ふふっ」
ダメだわ、何かツボに入っちゃった。
『こう、良い流れになると思うだろ普通』
「だって、もう、ふふっ」
《もうずっとこうなので、ご説明に参ろうかと》
『お帰りルツ』
《はい、ただいま戻りました》
で、何で姉上が笑いっぱなしかって言うと。
「50年モノの童貞の真珠って、何かもう、ふふっ」
『50年も生きるのかな、真珠貝って』
「アレよ、色艶を気にしないなら、真珠層持ちの貝なら何でもいける筈よ多分。ふふふふ」
《しかも、若干、私が口から生み出したと》
「冗談よ」
《一瞬でも疑いはしましたよね?》
「だってルツは貝だし、もしかしたら」
《あの大きさは普通に窒息しますからね?》
「だからこそ、こう、ポンって」
《穏やかに目覚めたらアナタと私自身の間に有ったんです》
「それにこの大きさが下からだったら大変よね、とか」
《そこは流石に渡しませんよ、ダイダロス神に涙壺の欠片を渡して、相談します》
「見たかったわ、元の涙壺」
《ソッチの方が気に入ってませんか?》
「両方好きよ、特に色が、ふふふ」
《こうやって返事を頂けない事も有って、伺ったんです》
『姉上ェ』
「だって、何かもう、ルツが生み出したのかと思うと」
《ですから、私の体内から排出されたワケでは無いですからね?》
『涙はじゃんじゃん出してたろ、もうさ、俺の前でもポロポロポロポロ』
《王》
「あら、見たら気が変わるかも?」
『ほらな、だから言っ』
もう泣けないかも、とか言ってたクセに、秒で泣くとか。
何だよ、マジで思春期じゃねぇかよ、ルツ。
「ちょ、そんな」
《泣き落としは、嫌だったんですが、もし本当にダメなら》
「ごめんってば、分かったから泣き止んで」
《何をしても、アナタの愛を得たいんです、アナタに愛して欲しい》
簡単に絆され無いのが姉上の良い所なんだが。
絆されてくれよ、俺まで苦しいわ。
「ルツ、初恋にしがみついても良い事って無かったりもするのよ?」
《アナタだから良いんです、初めてかどうかでは無く》
「それ証明不可能よね、初めてなんだし」
『姉上、ルツの何がダメなんだ?』
「ダメと言うか、見誤るなって言ってるの。執着と情愛を履き違えて、後で間違いに気付いてやっぱりダメってなるのが嫌なの、慣れて無くて初めてだからこそよ」
『だけか?』
「多夫一妻制はちょっと、王がしてないのに無理よ」
コレ、僕のせいだよね。
僕が居るから、僕が横取りみたいな事をしたから。
『ごめんねローシュ』
『アーリス、お前』
『眠らせただけ、コレ、記憶が戻るか僕が死ぬかしないと無理だよ。ごめんねルツ』
《アーリス》
『結婚してないなら良いかって、けど横取りと同じで。こうなってるの凄く嫌だ、こう悪くてズルいのはローシュは嫌いだから、嫌だ』
『だけどなぁ、お前は別に悪くは』
『悪いよ、国の為だからってローシュは僕と契約しただけなのに、ちゃんと愛してくれた事に甘えてた。しかもココまで1人だけって決めてたのに、良かれと思ってルツも加えてグチャグチャにしたのは僕、ルツを後押しして決断させたのは僕』
《それでも》
『アシャとの事、僕が居るから許さなかった、ルツとローシュだけならもっとローシュは強引に話し合おうとした筈。けど僕が居るから、縁が切れない僕が居るから、僕だけで我慢するのが正しいと思って諦めたのかも知れない。ルツだって自分の心が良く分からなかったでしょ、きっとローシュも無自覚に諦めたんだと思う、だから、コレは、間違いだから』
『アーリス、アーリス、落ち着けアーリス。記憶を戻させれば良いだけだろ?』
『それ、世界ちゃんと同じで、悩ませる事にもなる。だから、僕が』
『死んでも同じだろうに、姉上は悲しむぞ?』
『でも、ルツを虐めてるみたいで嫌だ』
『すまん、俺が悪かった、もっとルツに学ばせるべきだった』
《それこそ私も、私がもっと進んで学ぼうとすれば》
『でも、僕が、横取りしたからぁ』
悪い方法で手に入れれば、その倍の悪い事で償う事になる。
アーリスが恐れているのはローシュの死。
《いえ、君は悪い方法でローシュを得たワケでは無いんですよ》
『でも、もっとローシュやルツと話し合って、ちゃんとした順番だったら』
『アレ結構な緊急事態だったし、それは少し難しいだろうに』
《そうですよ、間違いが有ったにしても、少し順番を》
『ちょっとの事でも、今は凄い大きい間違いになってるし、僕がルツなら僕を殺したくなる。だから悪い事だよ、凄く悪くてズルい』
『で、お前が死ぬのか?』
『悪い事をすると、罰を受けるでしょ』
《なのでいつかローシュを失うかも知れない》
『うん、ローシュが1番大事だから』
《苦しませたくない、悩ませたくないのは分かりますが、ローシュは選ぶ事を望む筈ですよ》
『けど本人が望む事が幸せに繋がるかは別じゃない、だから親が子供の事を決めるんだし、王様が大事な事を決めるんだし』
『そら子供の場合な、モノが分からない場合だ。姉上は大人で分かってる、分かって無いなら分らせるのが俺らの役目だ』
『でも』
『絶対に姉上は記憶を取り戻したがる筈だ。んで改めてダメだと思ったら今度は記憶を消す方法を自分で探るだろうし、俺らもダメだと思ったら手伝う、過保護はダメだぞアーリス』
『でもルツが苦しむのは嫌だ、僕は望んでない』
『ならお前の記憶も次は消す。つか姉上はお前を悪いとは思わんだろうに、どうした』
《原罪の影響かと、罪悪感を煽る考え方ですから。罪悪感を知り、覚えてしまった弊害かと》
『ぁあ、ウチでは絶対に広めるな、だからお前もルツも忘れろ。コレは王命だ、分かったな』
いつもなら直ぐに返事をするアーリスが、今回に限っては。
《アーリス、記憶を取り戻させてから、ローシュに君との事を尋ねてみましょう》
『でもローシュは優しいから、悪くないって言う筈』
『マジで厄介だな、罪悪感』
《ではアーリス、先ずはローシュをベッドまで運んでから、話し合いの続きをしましょう》
『ぅん』
ローシュが原罪の考えに囚われ、私たや神々に都合の良い様に使われてしまった。
その衝撃はアーリスには大きく。
『どうだ、アーリスと姉上は』
《ローシュは眠ったままですが、アーリスは、私の顔を見ると泣き出します》
『あー、堪えてたんだろうな、それこそ黒真珠を得て何とかなると思ってたのに、コレじゃな』
《すみません》
『いや、元は姉上の前の男達が悪い。何だよ、好いてる筈の女の目の前で他の女を口説くとか、酔ってたにしてもどうかしてるだろ』
《だとしてもです。ローシュが言っていた見えない禁足地に、私は立ち入ってしまった、しかも大暴れですからね》
『気配が無かったなら無罪だろ』
《ですがローシュに触れずに相手を褒めたのは事実です、しかも仕事だとの言い訳が出来る状態で、卑怯で悪いのは私なのに》
『共有が大前提、望まぬ独占だしな』
《そもそも、アーリスに協力させた事が》
『待て、今は記憶を取り戻させる方法だ。つか黒真珠を得れば良かった筈だよな?』
《もしかして、薬として飲ませるべきなのかと》
『よし、勿体無いからそれは2番目の作戦にしとく、記憶を取り戻させる方法を探るのが最優先だ』
《はい》
「ルツ、いつ起きたの」
《今さっきです、おはようございます》
「おそよう」
《おそようございます》
「コレ、夢?」
《残念なお知らせなんですが、コレは夢じゃないですし、実は意識が有ったのか話は全て聞こえてました》
「もー」
死ぬ程恥ずかしい。
穴が無くても掘って埋まりたい程に恥ずかしい、死んでやろうかしら。
《ローシュ》
「死にたい」
《死なないで下さい、どうぞ、黒真珠です》
「コレって」
《涙を溜め、魔法で作り上げました》
「あんな戯れ言の為に泣いたの?」
《いえ、元は勝手に流れたモノが溜まっていたんです、冥界渡りで製法と魔導具の涙壺を得ました。壊れてしまいましたけどね》
頭上の照明置き場に、自壊した様に大きな硝子の破片達が散らばっている。
青と緑のグラデーションの破片達。
「綺麗ねコレ」
《黒真珠より喜んでませんか?》
「だって、その真珠、何処に有ったのかしらと」
《枕元に、多分、頭上に置いていた涙壺からかと》
この部屋に来た時点で目に入ってる筈なのに、見覚えが全く無い。
「コレ、有った?」
《はい、アナタには多分、認識阻害で見えていなかったのかと》
「ふふっ、そうよね、流石に胃に入ってたら溶けそうだし」
《本気で切り裂こうとしていたからこそ、スカアハ神が現れたのでしょうね》
「ぁあ、ずっと意識が有ったなんて」
《ずっとでは無いですよ、人の声を、聞かされていたんだと思います。夢を見てたんです、アナタが泣いてる悪夢を、反論出来ずに悔しいままで何回も》
「それで起きたの?」
《それも、ですね、アナタの為に。愛してます、ずっと一緒に居て下さい》
口説くと言うか、本当にプロポーズよね、コレ。
とんでもないプロポーズの方法。
「アーリスが居るわよ?」
《アーリスには悪いですが、アナタが私を受け入れてくれないなら、決闘を申し込んでどちらかが死ぬまで戦います》
「大人げない」
《実質、情操教育をなされていない子供と同じですから。真珠はどうですか?気に入りませんでしたか?》
黒く暗いけれど、涙壺の色を混ぜた様な青緑色で綺麗。
「コレ、早く人の手だけで作り出せたら良いのに」
《そう焦った部分も有ります、すみませんでした》
「枕元にって言うけど、もしかして、口から」
《確かに想像はしましたよ、材料を飲み込んだので、そうなれば胃か、下からか》
「下からはちょっと」
《ですよね》
「全く、コレだから異世界人は困るのだよ、せめて手の中から現れた。とでも思えば良いモノを」
「スカアハ様」
「お主なぁ、人魚の涙の異名を知っておろうよ、お主とルツの涙が混ざり生み出されたのだ。全く、口からでは美しく無かろう」
「この大きさを、ぐふっ」
「もー」
《コレは流石に窒息するかと》
「ふふっ」
「全く、もう少し魔法を美しく考え、使って欲しいモノだな」
《以後気を付けさせて頂きます》
「うむ、魔法は何でも出来るのだ、精進せい」
「はい」
《ご心配お掛けしました》
「全くだ」
そうしてスカアハ様は影へ。
「魔法は何でも出来る、そうね、確かにそう。ふふふふふ」
《本当に口からでは無いですからね》
「はいはい、ふふっ」
神様的にはルツはアリって事よね、こうして助力したり後押ししたりしてるんだし。
違うって事よね。
今までの男とは違う、手助けするだけの価値が有る。
《ダメでしょうか、結婚は》
「何が良いか、未だに理解に苦しむのよね。それに寧ろアナタが一夫多妻制を叶えられる立場だし、私達が一緒になるのは、逆に国の不利益に繋がる可能性も出る」
《王は私とアナタを信じています、それこそ対等な仲間だと。自信満々にスカアハ神に語ってらっしゃいましたよ、コイツらは俺を好きだ、と》
「凄い、ブラドらしいわね、本当」
《家族愛でもと一瞬揺らぎましたが、抱きたいので無理ですね、愛してます》
マジで聞こえてたのね。
と言うか悪夢を何回もって、安穏と眠ってたワケじゃないって事よね。
「どんな悪夢だったの?」
《口に出したくも無いんですが……王やアーリスの脅しが、そのまま目の前で再現されたんです。脳が勝手に再現したんでしょうね、そうなるのは嫌だと思うと同時に、目の前で見る事になる》
「で、内容は?」
《私が眠ったままで、アナタがウムトに靡く。有り得ないとは思うんですが、想像する前に、嫌だと思った瞬間に目の前にアナタ達が現れて。弱っているアナタに、ウムトが言い寄る。有り得ないとは分かっているのに、苦痛でした》
「有り得ない、とどうして言い切れるのよ」
《私を飛び越してアナタを得る気は無いと、一応、彼の伯父として関わっているので》
「伯父」
《見た目がこうなので、今は従兄弟として対外的には接しているんですが、はい》
「伯父、従兄弟」
《彼の倍は生きてますから》
ウムトって、25は過ぎてるのよね、その倍。
「50年モノの童貞の真珠、ふふっ」
ダメだわ、何かツボに入っちゃった。
『こう、良い流れになると思うだろ普通』
「だって、もう、ふふっ」
《もうずっとこうなので、ご説明に参ろうかと》
『お帰りルツ』
《はい、ただいま戻りました》
で、何で姉上が笑いっぱなしかって言うと。
「50年モノの童貞の真珠って、何かもう、ふふっ」
『50年も生きるのかな、真珠貝って』
「アレよ、色艶を気にしないなら、真珠層持ちの貝なら何でもいける筈よ多分。ふふふふ」
《しかも、若干、私が口から生み出したと》
「冗談よ」
《一瞬でも疑いはしましたよね?》
「だってルツは貝だし、もしかしたら」
《あの大きさは普通に窒息しますからね?》
「だからこそ、こう、ポンって」
《穏やかに目覚めたらアナタと私自身の間に有ったんです》
「それにこの大きさが下からだったら大変よね、とか」
《そこは流石に渡しませんよ、ダイダロス神に涙壺の欠片を渡して、相談します》
「見たかったわ、元の涙壺」
《ソッチの方が気に入ってませんか?》
「両方好きよ、特に色が、ふふふ」
《こうやって返事を頂けない事も有って、伺ったんです》
『姉上ェ』
「だって、何かもう、ルツが生み出したのかと思うと」
《ですから、私の体内から排出されたワケでは無いですからね?》
『涙はじゃんじゃん出してたろ、もうさ、俺の前でもポロポロポロポロ』
《王》
「あら、見たら気が変わるかも?」
『ほらな、だから言っ』
もう泣けないかも、とか言ってたクセに、秒で泣くとか。
何だよ、マジで思春期じゃねぇかよ、ルツ。
「ちょ、そんな」
《泣き落としは、嫌だったんですが、もし本当にダメなら》
「ごめんってば、分かったから泣き止んで」
《何をしても、アナタの愛を得たいんです、アナタに愛して欲しい》
簡単に絆され無いのが姉上の良い所なんだが。
絆されてくれよ、俺まで苦しいわ。
「ルツ、初恋にしがみついても良い事って無かったりもするのよ?」
《アナタだから良いんです、初めてかどうかでは無く》
「それ証明不可能よね、初めてなんだし」
『姉上、ルツの何がダメなんだ?』
「ダメと言うか、見誤るなって言ってるの。執着と情愛を履き違えて、後で間違いに気付いてやっぱりダメってなるのが嫌なの、慣れて無くて初めてだからこそよ」
『だけか?』
「多夫一妻制はちょっと、王がしてないのに無理よ」
コレ、僕のせいだよね。
僕が居るから、僕が横取りみたいな事をしたから。
『ごめんねローシュ』
『アーリス、お前』
『眠らせただけ、コレ、記憶が戻るか僕が死ぬかしないと無理だよ。ごめんねルツ』
《アーリス》
『結婚してないなら良いかって、けど横取りと同じで。こうなってるの凄く嫌だ、こう悪くてズルいのはローシュは嫌いだから、嫌だ』
『だけどなぁ、お前は別に悪くは』
『悪いよ、国の為だからってローシュは僕と契約しただけなのに、ちゃんと愛してくれた事に甘えてた。しかもココまで1人だけって決めてたのに、良かれと思ってルツも加えてグチャグチャにしたのは僕、ルツを後押しして決断させたのは僕』
《それでも》
『アシャとの事、僕が居るから許さなかった、ルツとローシュだけならもっとローシュは強引に話し合おうとした筈。けど僕が居るから、縁が切れない僕が居るから、僕だけで我慢するのが正しいと思って諦めたのかも知れない。ルツだって自分の心が良く分からなかったでしょ、きっとローシュも無自覚に諦めたんだと思う、だから、コレは、間違いだから』
『アーリス、アーリス、落ち着けアーリス。記憶を戻させれば良いだけだろ?』
『それ、世界ちゃんと同じで、悩ませる事にもなる。だから、僕が』
『死んでも同じだろうに、姉上は悲しむぞ?』
『でも、ルツを虐めてるみたいで嫌だ』
『すまん、俺が悪かった、もっとルツに学ばせるべきだった』
《それこそ私も、私がもっと進んで学ぼうとすれば》
『でも、僕が、横取りしたからぁ』
悪い方法で手に入れれば、その倍の悪い事で償う事になる。
アーリスが恐れているのはローシュの死。
《いえ、君は悪い方法でローシュを得たワケでは無いんですよ》
『でも、もっとローシュやルツと話し合って、ちゃんとした順番だったら』
『アレ結構な緊急事態だったし、それは少し難しいだろうに』
《そうですよ、間違いが有ったにしても、少し順番を》
『ちょっとの事でも、今は凄い大きい間違いになってるし、僕がルツなら僕を殺したくなる。だから悪い事だよ、凄く悪くてズルい』
『で、お前が死ぬのか?』
『悪い事をすると、罰を受けるでしょ』
《なのでいつかローシュを失うかも知れない》
『うん、ローシュが1番大事だから』
《苦しませたくない、悩ませたくないのは分かりますが、ローシュは選ぶ事を望む筈ですよ》
『けど本人が望む事が幸せに繋がるかは別じゃない、だから親が子供の事を決めるんだし、王様が大事な事を決めるんだし』
『そら子供の場合な、モノが分からない場合だ。姉上は大人で分かってる、分かって無いなら分らせるのが俺らの役目だ』
『でも』
『絶対に姉上は記憶を取り戻したがる筈だ。んで改めてダメだと思ったら今度は記憶を消す方法を自分で探るだろうし、俺らもダメだと思ったら手伝う、過保護はダメだぞアーリス』
『でもルツが苦しむのは嫌だ、僕は望んでない』
『ならお前の記憶も次は消す。つか姉上はお前を悪いとは思わんだろうに、どうした』
《原罪の影響かと、罪悪感を煽る考え方ですから。罪悪感を知り、覚えてしまった弊害かと》
『ぁあ、ウチでは絶対に広めるな、だからお前もルツも忘れろ。コレは王命だ、分かったな』
いつもなら直ぐに返事をするアーリスが、今回に限っては。
《アーリス、記憶を取り戻させてから、ローシュに君との事を尋ねてみましょう》
『でもローシュは優しいから、悪くないって言う筈』
『マジで厄介だな、罪悪感』
《ではアーリス、先ずはローシュをベッドまで運んでから、話し合いの続きをしましょう》
『ぅん』
ローシュが原罪の考えに囚われ、私たや神々に都合の良い様に使われてしまった。
その衝撃はアーリスには大きく。
『どうだ、アーリスと姉上は』
《ローシュは眠ったままですが、アーリスは、私の顔を見ると泣き出します》
『あー、堪えてたんだろうな、それこそ黒真珠を得て何とかなると思ってたのに、コレじゃな』
《すみません》
『いや、元は姉上の前の男達が悪い。何だよ、好いてる筈の女の目の前で他の女を口説くとか、酔ってたにしてもどうかしてるだろ』
《だとしてもです。ローシュが言っていた見えない禁足地に、私は立ち入ってしまった、しかも大暴れですからね》
『気配が無かったなら無罪だろ』
《ですがローシュに触れずに相手を褒めたのは事実です、しかも仕事だとの言い訳が出来る状態で、卑怯で悪いのは私なのに》
『共有が大前提、望まぬ独占だしな』
《そもそも、アーリスに協力させた事が》
『待て、今は記憶を取り戻させる方法だ。つか黒真珠を得れば良かった筈だよな?』
《もしかして、薬として飲ませるべきなのかと》
『よし、勿体無いからそれは2番目の作戦にしとく、記憶を取り戻させる方法を探るのが最優先だ』
《はい》
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──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
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