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更に更に、その後。
黒真珠の効能。
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『おはようローシュ』
「昨日、私」
『僕が寝かせた、ごめんね』
「何故」
『色々と嫌だったから、ごめんね』
勝手に涙が出る。
ローシュが言ってたのって、コレなんだと思う。
「アーリス」
『ごめんね、色々と分かった、ごめんね』
悪いと思ったら改善したら良い。
けど、自分のせいでどうしようも無い状況になったら、凄く嫌な気持ちになる。
それが罪悪感、原罪、どうしようも無い罪。
何もせずにはいられない、何かしないとって思う。
だからローシュは自分の意志だけじゃなくて、罪悪感に動かされてた。
したいけどしない、したいと思う事が罪だから。
だから思わない様にする、思って無いと思い込もうとする、思いを捻じ曲げる。
凄く嫌だ、そうあるべきじゃない、あるべき姿じゃない。
「何で泣いてるの?」
『僕が悪い子で、ローシュが可哀想だから』
「可哀想?」
『ローシュは自分が悪いと思って色々してる、何も悪く無いのに、償いをしようとしてる』
「それ、もう別に」
『今でも、何も影響して無いって言える?罪悪感に影響されて無い、ローシュの願いを真っ直ぐに叶えられてるって言える?』
「ごめんなさいアーリス、どの事?」
『ルツの事、偉いから、神様だから一夫多妻が許されるって、それって勝手に人間が決めた事だよね?』
「けど、それが結果的には良い方向へ」
『人による、向き不向きが有る、偉いかどうかは別。けどローシュが不向きだと僕は思わない、ローシュは違うって、なのに』
「アーリス」
『僕を信じてくれない?』
「信じてはいるけど」
『自分を信じられないんだよね、罪悪感を感じてるから、生きてるだけで悪いなんて事は無いって分かってる筈なのに』
「ごめんなさい」
『僕は、僕もルツも王様も、ローシュが生きててくれるだけで良いのに』
アーリスに泣き付かれた、と、姉上がルツと俺の元に。
『それ、時間が必要だと思うんだが』
「そうよね、そうなのだけど」
《私の事は除外して考えて下さい、アナタにも時間は必要でしょうから》
それから俺達にも。
姉上の記憶を取り戻させる為、何をすべきか、そもそも何が出来るのかを調べ始めたばっかりだしな。
「ごめんなさい」
《いえ》
『いや、アレだ、今は真珠の意味を調べてたんだ、効能だとかをな』
《そして人へ贈る際の意味も、白真珠を贈る意味は【神々への信仰】をそのまま表していたんですが。人に贈るとなれば、今の時点で更に意味を加えるべきかと》
「あぁ」
《向こうですと健康長寿、富、純真無垢、等だそうで》
『コッチでも似た感じだが、黒真珠の意味が出ないんだよな』
「世に出回った時に白真珠の量の方が多いからよね、私も昔に軽く調べた時には、日の出国での意味だけしか出なかったし」
『やっぱり有るんだな』
「と言うか使う場合が殆ど葬式限定なのよ、だから追悼だとか哀悼だとか。喪服と同じ、身に着けてる時点で死者を想うって事になる」
『ほう』
《その場合の身に着け方や、作法等は?》
「ぁあ、白はお祝い用だからふんだんに使うけど、黒の首飾りなら1連だけ」
《死が連鎖しない様に、続かない様に、ですかね》
「そう、だから私は1粒だけのを着けてたんだけど、コッチに来た時には無かったのよね」
《金属類はダメだそうなので、それでは?》
「ぁあ、金属の鎖に通してたから」
『アレか?姪っ子の事でか?』
「そうね」
『もっと、こう、良い意味は』
「真珠自体がお守りだとかは有るけど、黒真珠に関して言うなら、ルツが言ってた印象は薄いわね」
《そうなると、やはりコチラで意味を付け加えましょう》
「それ良いのかしら」
《他の物に関しても既に向こうと違う意味を持っています、元は産出国の、献上側が意味を添えて贈る物ですから。コチラでもそう制御出来無いんですよ、神の意志も介在しますので》
「あぁ」
『けど今回は違うだろ、人の手で、それこそ無限に作れると言っても過言じゃ無い』
《なので寧ろ意味を固定すべきかと》
「そう、ね、現地に合わせるべきだし」
『何か無いか?』
「アレの、ダイアモンドの意味は知ってる?」
《いえ》
「真珠と似た感じなんだけど、1つ違うのが、永遠の愛。変質しないだとか硬度、それと商業的な事から、なのだけど」
『けど?』
「諍いの大きさが国家間にまで、それこそ民に影響を及ぼしてるから」
『ぁあ、それで姉上は好きじゃないのか』
「どの宝石も大きいと曰くが付くのだけど、ちょっとね。こう考えると真珠の方が、とは思うのよ、どうしたって平和に解決させるし」
『永遠に取れるしな』
「そうそう、しかも待てば大きく育つし」
『よし、真珠の意味は永遠の愛、としよう。綺麗な海を保てば永遠に取れる、永遠に大きくなる愛、だ』
「けど明るい色の真珠の場合は、よね」
『失った何かへの哀悼、追悼の意で良いんじゃないか?』
「暗くない?」
『良い意味でも有るし悪い意味でも有るが、悲しむ事は悪く無い、失くした事を悲しんでいると表すのは悪い事じゃないだろ?』
「陰鬱、憂鬱、鬱陶しい」
『鬱陶しいって』
「陰鬱さは鬱陶しがられる、迷惑がられる、いつまでも悲しんでいるなと叱られる」
『そんなのはコッチの勝手だろうに』
「長期間憂鬱で何も手に付かないと周りが迷惑する、だから忌避される、嫌がられる」
《そんな事を思う事が、言うのが間違いなんですが》
「嫌がる権利は有る、迷惑だと思っても良い、だって自己主張し過ぎればウザいから」
『1粒だけでも、か』
「場の空気を暗くさせる、悲しんでも死者は蘇らない、時間の無駄だ」
《そう誰かに》
「バラバラに、別々に。今までの積み重ねと姪っ子の事で離婚を決意した、けど逆に死んだ姪っ子の事を持ち出された、あの子は喜ばないだとか何とか。身内に、長年の知り合いに、元夫は流石に何も言わなかったけど。本当に何も言わなかっただけ、次に何か間違えた事を言えば離婚されると分かってるからって、本当に何も言わなかった。それで離婚する際に元夫の性質を理解してくれてる子に同席して貰って、記入させて、その場でなら他人の正論に弱いから。それからありとあらゆる場所で借金させて、全財産を毟り取って、私は引き籠った」
元夫、前の男達だけが悪いんじゃない。
姉上の周りの殆どが腐ってやがる、クソみたいな世界だとクソみたいな人間が育つ、濃度の差は有るが何処もクソ。
本当に、俺らはそんな人間を頼るべきなのか。
いや、姉上みたいなのも居るし、兎に角は見極めか。
『なぁ、もし、ソレが来たら』
「何かの役に立つかも知れない、だから直ぐには殺さない、だけ」
『ソレはコッチに任せてくれ、俺らが見極める』
「宜しくね、もう関わりたくないから」
『おう』
《それで、黒真珠の事なんですが》
『哀悼と追悼の意、1粒だけ身に着けている者には何も言うな。で良いだろ、構わんでも良いって事なんだ、文句を言うのが間違いだ』
「何故?」
『何故って、何だ?』
「良い意味の方が」
『良い意味を持ち過ぎれば無理してでも作らせる事になる、白ならまだしも黒の量産出来る地域は限られる、なら多く得る意味を減らした方が良い。それにな、きっとどうせ意味は変わる、長く経てばな』
《安定した頃に、ですかね》
『おう、そうさせる、させろよ』
《はい》
こうは言ったが、キャラバンが何もしなくても変わるだろう。
人の手に渡れば、広まれば意味は変質する、想像以上の早さで思わぬ方向へと意味は変わる筈。
その舵取りこそ、キャラバンの仕事。
『よし休憩だ、下がれ、姉上もな』
《はい》
「はい」
後はルツと姉上だが。
アレか、頭でも殴るか、アーリスのお陰で怪我は治るんだし。
「お主らは本当に姉弟かと疑ってしまう程、思考回路が似ておるな」
『おっ、スカアハ様』
「物理は止めておけ、そうした問題では無いのだから」
『だよなぁ』
ローシュと何を話すワケでも無く、ただ歩くだけ。
距離が縮まったかと思うと、また離れてしまった。
《すみません、大事にしてしまって》
「アーリスがあんな風に悩むなんて私だって思わなかった、気付かなかった、想定すべきだったのに」
《知る者の責任ですか、なら私も想定すべきでした、同罪ですよ》
「私の方が知ってたのに、考えが足らなかった」
《そう考えて欲しく無いのでは》
「そう言われたけど、まぁ無理よね、知ってるんだから」
《その道の専門家では無いのでしょう、それこそ普通の人間なら、難しいのでは》
「それ甘えって言うのよね、今は立場が違うんだもの」
どんなに良い事をしても、更にその先を思い素直に喜べない。
常に、必ず、罪の意識に苛まれる。
どんな事をしても、何を成しても。
《いつから、そうなんですか?》
「良く目の前で人が怪我したり、座り込んでたり道を聞かれたり、それで助けて良い気になってたんだけど。その事を話した時、本当に良い事をしたかどうか分からない、と言われたのよ」
《どう言う意味で》
「病気を隠してたらバレる事になる、醜態を晒した事がバレる、怒られるかも知れない。その場では助けた事になっても、最終的には不幸にさせたかも知れない、そう考えた事が無くて確かになと思ったの。そうした小さい事で人は簡単に不幸になる、知ってたのに、考えなかった」
《それこそ、妬みでは?》
「昔の男よ?」
《は?》
「どうにも星の巡り合わせなのか、そうした場面に立ち会うって話から、そう言われたの」
《それでも、やはり妬み、嫉妬なのでは》
「は?」
《救える事に喜びを見い出せる者にとっては、探さずとも幸せを満たせる、それこそ英雄になれる機会が定期的にアナタに訪れる。アナタが言っていた英雄願望持ちにしてみれば、羨ましい状況。持たざる者にしてみれば、自慢にしか聞こえないかと》
「けどだって、そんな事は表にも裏にも」
《自身の願望には本人も気付けない、そしてアナタも万能では無い、しかも惚れていたなら見誤る事も有ったかと》
「だとしても」
《嫌味でしょう、そも病気を隠し怒られる事が間違いか正しいか、幸か不幸かは救命した者には関わる義務は無い筈。自殺を止めるならまだしもです、なら困っている者の見極めはどうすべきなのですか、どう見極め助けるかどうか選べと?》
「そこなのよ、そう悩んだまま、また誰かを助ける事になって。また悩んで」
《でしたら答えを出さなかったんですよね、彼は》
「まぁ、そうだけど」
《悩ませる為だけに答えを用意せず、疑問だけを投げ掛ける、そうした意地悪な行為をしそうに》
「する人だった、けどまさかよ、でも後半は有り得ると言い切れる。けど、でも、嫉妬される事って」
《そこまで治安は悪くはない状態、普通の者に助ける機会が多い世ですか?》
「無いから」
《褒められる、認められる、見直される。功を上げる機会と考えれば、大司教と同じかと》
「お礼だとかそんなのは別に要らない、見逃すと気持ち悪いから、罪悪感を消化する為の自己満足でしかないのに」
《ずっとそう思ってた事に疑問を投げ掛け、罪悪感を植え付けた》
「何処までも愛されて無かった証拠ばっかり、そんなのばっかりで、だから私にはその程度の価値しか無いって」
《蟻に価値が無いとしても、蟻が群がる砂糖には価値が有る》
「けど、もうココでは砂糖って」
《庶民にも出回ってはいますが、贅沢品ではありますし。綺麗な飲料水でも良いですね、価値は普遍ですから》
「罪人全てが水を飲んだ事が有る」
《ですが善人の全ても水を飲んだ事が有る、水も刃物も、使う側次第で武器にも救える道具にもなる。そして武器として使われたからと言って刃物にも水にも罪は無い、存在しているだけで罪なワケが無いんですよ》
「でも、救う事に対しては」
《死のとしている者を救う以外、罪悪感を持つべきでは無い。例えどんな事情が有ろうとも、手を差し伸べられた者が恨むのは単なる逆恨み、患者が医師に持つべきでは無い悪しき気持ちだとは思いませんか?》
「ぐぬぬ」
《降参しましたね》
「しました。私には見極める手段が無かった、知識は有っても能力が無かった、あの時は専門家に預けるしか無かった。嘘の理由は分かるけど、それを許すかどうかは私の範囲じゃない、その人と相手の問題。倒れてたから専門家に渡した、無事にと願って、良かれと思って引き渡しただけ」
《それを悪い事かも知れない等とは、流石に穿ち過ぎですよ》
「説得上手」
《ありがとうございます》
ココで、ふと私は疑問に思ってしまった。
私が他より幾ばくかマトモだからこそ、単にローシュが気を許しただけなのでは、と。
私だから、では無く、単にマトモだから。
マトモだと信じてくれたからこそ、好意を一旦は受け入れてくれた、なのに。
「じゃ、ココで」
《私をマトモだと信じてくれていたんですよね、なのに裏切ってしまった、すみませんでした》
「急にどうしたの?」
《私がマトモだからアナタは惹かれたのかも知れない、と》
長い沈黙が辛い、苦しい。
「寧ろ逆よ、私が好きになった人達はアレだったし、だから惹かれるって事はマトモじゃないかも知れない。そう凄く不安だった、見る目が無いから、だからこそ次は他人が勧める惹かれそうも無い人を相手にしようって。なのにアーリスだアナタだ、けど王も神様も勧めるんだし、大丈夫かなって。前はそんな事は無かったから安心してたのだけど、ね」
《すみませんでした》
「アーリスが苦しむ位にアナタも苦しんでるのよね、ずっと」
《彼を巻き込むつもりは無かったんです、私の問題で、それこそ彼の聡明さに甘えていた結果で》
「分かってる、私もアーリスの事は見逃してしまってたから」
『ローシュ、ルツ』
「ただいまアーリス」
『おかえり』
《では、失礼しますね》
「またね」
「昨日、私」
『僕が寝かせた、ごめんね』
「何故」
『色々と嫌だったから、ごめんね』
勝手に涙が出る。
ローシュが言ってたのって、コレなんだと思う。
「アーリス」
『ごめんね、色々と分かった、ごめんね』
悪いと思ったら改善したら良い。
けど、自分のせいでどうしようも無い状況になったら、凄く嫌な気持ちになる。
それが罪悪感、原罪、どうしようも無い罪。
何もせずにはいられない、何かしないとって思う。
だからローシュは自分の意志だけじゃなくて、罪悪感に動かされてた。
したいけどしない、したいと思う事が罪だから。
だから思わない様にする、思って無いと思い込もうとする、思いを捻じ曲げる。
凄く嫌だ、そうあるべきじゃない、あるべき姿じゃない。
「何で泣いてるの?」
『僕が悪い子で、ローシュが可哀想だから』
「可哀想?」
『ローシュは自分が悪いと思って色々してる、何も悪く無いのに、償いをしようとしてる』
「それ、もう別に」
『今でも、何も影響して無いって言える?罪悪感に影響されて無い、ローシュの願いを真っ直ぐに叶えられてるって言える?』
「ごめんなさいアーリス、どの事?」
『ルツの事、偉いから、神様だから一夫多妻が許されるって、それって勝手に人間が決めた事だよね?』
「けど、それが結果的には良い方向へ」
『人による、向き不向きが有る、偉いかどうかは別。けどローシュが不向きだと僕は思わない、ローシュは違うって、なのに』
「アーリス」
『僕を信じてくれない?』
「信じてはいるけど」
『自分を信じられないんだよね、罪悪感を感じてるから、生きてるだけで悪いなんて事は無いって分かってる筈なのに』
「ごめんなさい」
『僕は、僕もルツも王様も、ローシュが生きててくれるだけで良いのに』
アーリスに泣き付かれた、と、姉上がルツと俺の元に。
『それ、時間が必要だと思うんだが』
「そうよね、そうなのだけど」
《私の事は除外して考えて下さい、アナタにも時間は必要でしょうから》
それから俺達にも。
姉上の記憶を取り戻させる為、何をすべきか、そもそも何が出来るのかを調べ始めたばっかりだしな。
「ごめんなさい」
《いえ》
『いや、アレだ、今は真珠の意味を調べてたんだ、効能だとかをな』
《そして人へ贈る際の意味も、白真珠を贈る意味は【神々への信仰】をそのまま表していたんですが。人に贈るとなれば、今の時点で更に意味を加えるべきかと》
「あぁ」
《向こうですと健康長寿、富、純真無垢、等だそうで》
『コッチでも似た感じだが、黒真珠の意味が出ないんだよな』
「世に出回った時に白真珠の量の方が多いからよね、私も昔に軽く調べた時には、日の出国での意味だけしか出なかったし」
『やっぱり有るんだな』
「と言うか使う場合が殆ど葬式限定なのよ、だから追悼だとか哀悼だとか。喪服と同じ、身に着けてる時点で死者を想うって事になる」
『ほう』
《その場合の身に着け方や、作法等は?》
「ぁあ、白はお祝い用だからふんだんに使うけど、黒の首飾りなら1連だけ」
《死が連鎖しない様に、続かない様に、ですかね》
「そう、だから私は1粒だけのを着けてたんだけど、コッチに来た時には無かったのよね」
《金属類はダメだそうなので、それでは?》
「ぁあ、金属の鎖に通してたから」
『アレか?姪っ子の事でか?』
「そうね」
『もっと、こう、良い意味は』
「真珠自体がお守りだとかは有るけど、黒真珠に関して言うなら、ルツが言ってた印象は薄いわね」
《そうなると、やはりコチラで意味を付け加えましょう》
「それ良いのかしら」
《他の物に関しても既に向こうと違う意味を持っています、元は産出国の、献上側が意味を添えて贈る物ですから。コチラでもそう制御出来無いんですよ、神の意志も介在しますので》
「あぁ」
『けど今回は違うだろ、人の手で、それこそ無限に作れると言っても過言じゃ無い』
《なので寧ろ意味を固定すべきかと》
「そう、ね、現地に合わせるべきだし」
『何か無いか?』
「アレの、ダイアモンドの意味は知ってる?」
《いえ》
「真珠と似た感じなんだけど、1つ違うのが、永遠の愛。変質しないだとか硬度、それと商業的な事から、なのだけど」
『けど?』
「諍いの大きさが国家間にまで、それこそ民に影響を及ぼしてるから」
『ぁあ、それで姉上は好きじゃないのか』
「どの宝石も大きいと曰くが付くのだけど、ちょっとね。こう考えると真珠の方が、とは思うのよ、どうしたって平和に解決させるし」
『永遠に取れるしな』
「そうそう、しかも待てば大きく育つし」
『よし、真珠の意味は永遠の愛、としよう。綺麗な海を保てば永遠に取れる、永遠に大きくなる愛、だ』
「けど明るい色の真珠の場合は、よね」
『失った何かへの哀悼、追悼の意で良いんじゃないか?』
「暗くない?」
『良い意味でも有るし悪い意味でも有るが、悲しむ事は悪く無い、失くした事を悲しんでいると表すのは悪い事じゃないだろ?』
「陰鬱、憂鬱、鬱陶しい」
『鬱陶しいって』
「陰鬱さは鬱陶しがられる、迷惑がられる、いつまでも悲しんでいるなと叱られる」
『そんなのはコッチの勝手だろうに』
「長期間憂鬱で何も手に付かないと周りが迷惑する、だから忌避される、嫌がられる」
《そんな事を思う事が、言うのが間違いなんですが》
「嫌がる権利は有る、迷惑だと思っても良い、だって自己主張し過ぎればウザいから」
『1粒だけでも、か』
「場の空気を暗くさせる、悲しんでも死者は蘇らない、時間の無駄だ」
《そう誰かに》
「バラバラに、別々に。今までの積み重ねと姪っ子の事で離婚を決意した、けど逆に死んだ姪っ子の事を持ち出された、あの子は喜ばないだとか何とか。身内に、長年の知り合いに、元夫は流石に何も言わなかったけど。本当に何も言わなかっただけ、次に何か間違えた事を言えば離婚されると分かってるからって、本当に何も言わなかった。それで離婚する際に元夫の性質を理解してくれてる子に同席して貰って、記入させて、その場でなら他人の正論に弱いから。それからありとあらゆる場所で借金させて、全財産を毟り取って、私は引き籠った」
元夫、前の男達だけが悪いんじゃない。
姉上の周りの殆どが腐ってやがる、クソみたいな世界だとクソみたいな人間が育つ、濃度の差は有るが何処もクソ。
本当に、俺らはそんな人間を頼るべきなのか。
いや、姉上みたいなのも居るし、兎に角は見極めか。
『なぁ、もし、ソレが来たら』
「何かの役に立つかも知れない、だから直ぐには殺さない、だけ」
『ソレはコッチに任せてくれ、俺らが見極める』
「宜しくね、もう関わりたくないから」
『おう』
《それで、黒真珠の事なんですが》
『哀悼と追悼の意、1粒だけ身に着けている者には何も言うな。で良いだろ、構わんでも良いって事なんだ、文句を言うのが間違いだ』
「何故?」
『何故って、何だ?』
「良い意味の方が」
『良い意味を持ち過ぎれば無理してでも作らせる事になる、白ならまだしも黒の量産出来る地域は限られる、なら多く得る意味を減らした方が良い。それにな、きっとどうせ意味は変わる、長く経てばな』
《安定した頃に、ですかね》
『おう、そうさせる、させろよ』
《はい》
こうは言ったが、キャラバンが何もしなくても変わるだろう。
人の手に渡れば、広まれば意味は変質する、想像以上の早さで思わぬ方向へと意味は変わる筈。
その舵取りこそ、キャラバンの仕事。
『よし休憩だ、下がれ、姉上もな』
《はい》
「はい」
後はルツと姉上だが。
アレか、頭でも殴るか、アーリスのお陰で怪我は治るんだし。
「お主らは本当に姉弟かと疑ってしまう程、思考回路が似ておるな」
『おっ、スカアハ様』
「物理は止めておけ、そうした問題では無いのだから」
『だよなぁ』
ローシュと何を話すワケでも無く、ただ歩くだけ。
距離が縮まったかと思うと、また離れてしまった。
《すみません、大事にしてしまって》
「アーリスがあんな風に悩むなんて私だって思わなかった、気付かなかった、想定すべきだったのに」
《知る者の責任ですか、なら私も想定すべきでした、同罪ですよ》
「私の方が知ってたのに、考えが足らなかった」
《そう考えて欲しく無いのでは》
「そう言われたけど、まぁ無理よね、知ってるんだから」
《その道の専門家では無いのでしょう、それこそ普通の人間なら、難しいのでは》
「それ甘えって言うのよね、今は立場が違うんだもの」
どんなに良い事をしても、更にその先を思い素直に喜べない。
常に、必ず、罪の意識に苛まれる。
どんな事をしても、何を成しても。
《いつから、そうなんですか?》
「良く目の前で人が怪我したり、座り込んでたり道を聞かれたり、それで助けて良い気になってたんだけど。その事を話した時、本当に良い事をしたかどうか分からない、と言われたのよ」
《どう言う意味で》
「病気を隠してたらバレる事になる、醜態を晒した事がバレる、怒られるかも知れない。その場では助けた事になっても、最終的には不幸にさせたかも知れない、そう考えた事が無くて確かになと思ったの。そうした小さい事で人は簡単に不幸になる、知ってたのに、考えなかった」
《それこそ、妬みでは?》
「昔の男よ?」
《は?》
「どうにも星の巡り合わせなのか、そうした場面に立ち会うって話から、そう言われたの」
《それでも、やはり妬み、嫉妬なのでは》
「は?」
《救える事に喜びを見い出せる者にとっては、探さずとも幸せを満たせる、それこそ英雄になれる機会が定期的にアナタに訪れる。アナタが言っていた英雄願望持ちにしてみれば、羨ましい状況。持たざる者にしてみれば、自慢にしか聞こえないかと》
「けどだって、そんな事は表にも裏にも」
《自身の願望には本人も気付けない、そしてアナタも万能では無い、しかも惚れていたなら見誤る事も有ったかと》
「だとしても」
《嫌味でしょう、そも病気を隠し怒られる事が間違いか正しいか、幸か不幸かは救命した者には関わる義務は無い筈。自殺を止めるならまだしもです、なら困っている者の見極めはどうすべきなのですか、どう見極め助けるかどうか選べと?》
「そこなのよ、そう悩んだまま、また誰かを助ける事になって。また悩んで」
《でしたら答えを出さなかったんですよね、彼は》
「まぁ、そうだけど」
《悩ませる為だけに答えを用意せず、疑問だけを投げ掛ける、そうした意地悪な行為をしそうに》
「する人だった、けどまさかよ、でも後半は有り得ると言い切れる。けど、でも、嫉妬される事って」
《そこまで治安は悪くはない状態、普通の者に助ける機会が多い世ですか?》
「無いから」
《褒められる、認められる、見直される。功を上げる機会と考えれば、大司教と同じかと》
「お礼だとかそんなのは別に要らない、見逃すと気持ち悪いから、罪悪感を消化する為の自己満足でしかないのに」
《ずっとそう思ってた事に疑問を投げ掛け、罪悪感を植え付けた》
「何処までも愛されて無かった証拠ばっかり、そんなのばっかりで、だから私にはその程度の価値しか無いって」
《蟻に価値が無いとしても、蟻が群がる砂糖には価値が有る》
「けど、もうココでは砂糖って」
《庶民にも出回ってはいますが、贅沢品ではありますし。綺麗な飲料水でも良いですね、価値は普遍ですから》
「罪人全てが水を飲んだ事が有る」
《ですが善人の全ても水を飲んだ事が有る、水も刃物も、使う側次第で武器にも救える道具にもなる。そして武器として使われたからと言って刃物にも水にも罪は無い、存在しているだけで罪なワケが無いんですよ》
「でも、救う事に対しては」
《死のとしている者を救う以外、罪悪感を持つべきでは無い。例えどんな事情が有ろうとも、手を差し伸べられた者が恨むのは単なる逆恨み、患者が医師に持つべきでは無い悪しき気持ちだとは思いませんか?》
「ぐぬぬ」
《降参しましたね》
「しました。私には見極める手段が無かった、知識は有っても能力が無かった、あの時は専門家に預けるしか無かった。嘘の理由は分かるけど、それを許すかどうかは私の範囲じゃない、その人と相手の問題。倒れてたから専門家に渡した、無事にと願って、良かれと思って引き渡しただけ」
《それを悪い事かも知れない等とは、流石に穿ち過ぎですよ》
「説得上手」
《ありがとうございます》
ココで、ふと私は疑問に思ってしまった。
私が他より幾ばくかマトモだからこそ、単にローシュが気を許しただけなのでは、と。
私だから、では無く、単にマトモだから。
マトモだと信じてくれたからこそ、好意を一旦は受け入れてくれた、なのに。
「じゃ、ココで」
《私をマトモだと信じてくれていたんですよね、なのに裏切ってしまった、すみませんでした》
「急にどうしたの?」
《私がマトモだからアナタは惹かれたのかも知れない、と》
長い沈黙が辛い、苦しい。
「寧ろ逆よ、私が好きになった人達はアレだったし、だから惹かれるって事はマトモじゃないかも知れない。そう凄く不安だった、見る目が無いから、だからこそ次は他人が勧める惹かれそうも無い人を相手にしようって。なのにアーリスだアナタだ、けど王も神様も勧めるんだし、大丈夫かなって。前はそんな事は無かったから安心してたのだけど、ね」
《すみませんでした》
「アーリスが苦しむ位にアナタも苦しんでるのよね、ずっと」
《彼を巻き込むつもりは無かったんです、私の問題で、それこそ彼の聡明さに甘えていた結果で》
「分かってる、私もアーリスの事は見逃してしまってたから」
『ローシュ、ルツ』
「ただいまアーリス」
『おかえり』
《では、失礼しますね》
「またね」
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