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第9話:仕組まれた濡れ衣
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カイゼルからの溺愛に心が満たされる一方で、学園での俺の立場は、もはや風前の灯火だった。
エレノアの巧妙な策略により、俺はすっかり「嫉妬深く陰湿な悪役」として、学園中の生徒たちから認識されるようになっていた。
そして、ついに決定的な事件が起こる。
その日、俺は教師に頼まれ、古い資料を東棟の書庫へ運び、その帰路についていた。人気の少ない、古い階段を降りていた時だった。
背後から、可憐な声がした。
「リオン様、お待ちください!」
振り返ると、そこにいたのはエレノアだった。また面倒なことに巻き込まれる、と直感し、俺は足を速めようとした。
しかし、彼女の方が一枚上手だった。
彼女は俺のすぐ後ろまで駆け寄ると、突然、甲高い悲鳴を上げた。
「きゃあああっ!」
そして、俺の目の前で、自分からバランスを崩すようにして、階段から転げ落ちていったのだ。
数段を転がり落ち、踊り場でぐったりと倒れるエレノア。あまりにわざとらしい、三文芝居。
(やられた……!)
そう思った瞬間には、もう遅かった。
物音と悲鳴を聞きつけた生徒たちが、ぞろぞろと集まってくる。そして、その中には、アルフォンス王太子の姿もあった。
「エレノア! 大丈夫か!?」
アルフォンスは血相を変えて駆け寄り、倒れているエレノアを抱き起こす。
エレノアは、彼の腕の中で、か細い声で涙ながらに訴えた。
「うっ……アルフォンス様……。リオン様が……私が殿下とお話ししているのが、お気に召さなかったようで……急に、突き落とされて……」
その言葉に、アルフォンスの顔が怒りで歪んだ。彼は憎悪に満ちた目で、階段の上に立つ俺を睨みつけた。
「リオン・フォン・ヴァインベルク! やはりお前だったか! なんて卑劣なことを!」
「違います、殿下! 私は何もしていません!」
俺は必死に無実を訴えるが、誰も聞いてはくれない。
現場には、俺とエレノアしかいなかった。そして、被害者である彼女が、俺に突き落とされたと証言している。状況は、圧倒的に俺に不利だった。
「リオン様が、エレノアを……」
「なんて恐ろしい……」
「悪魔のような人だ」
周囲の生徒たちの囁き声が、俺の心を抉る。
その時、集まった人垣をかき分けるようにして、一人の男が前に進み出た。
義兄のゲオルグだ。彼は、心配するふりをしながら、その目は愉快そうに笑っていた。
「リオン、お前、なんてことをしてくれたんだ! エレノア嬢は、王太子殿下が大切に思われている方だぞ! 我が家の恥さらしめ!」
ゲオルグの言葉が、決定打となった。
(こいつが、仕組んだのか……!)
エレノアとゲオルグ。利害の一致した二人が、俺を完全に陥れるために、この罠を仕掛けたのだ。
王太子妃の座を狙うエレノアにとって、婚約者である俺は邪魔な存在。
俺を憎み、公爵家から追い出したいゲオルグにとっても、これは絶好の機会。
アルフォンスは、エレノアを優しく抱きかかえると、俺に向かって宣告した。
「リオン! お前の罪は、公の場で裁かれなければならない! 覚悟しておくがいい!」
逃げ場のない、完璧な濡れ衣。
俺は、ただ唇を噛みしめることしかできなかった。
原作で描かれた、悪役令息の断罪イベント。その舞台が、ついに整ってしまったのだ。
エレノアの巧妙な策略により、俺はすっかり「嫉妬深く陰湿な悪役」として、学園中の生徒たちから認識されるようになっていた。
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背後から、可憐な声がした。
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振り返ると、そこにいたのはエレノアだった。また面倒なことに巻き込まれる、と直感し、俺は足を速めようとした。
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「うっ……アルフォンス様……。リオン様が……私が殿下とお話ししているのが、お気に召さなかったようで……急に、突き落とされて……」
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「リオン・フォン・ヴァインベルク! やはりお前だったか! なんて卑劣なことを!」
「違います、殿下! 私は何もしていません!」
俺は必死に無実を訴えるが、誰も聞いてはくれない。
現場には、俺とエレノアしかいなかった。そして、被害者である彼女が、俺に突き落とされたと証言している。状況は、圧倒的に俺に不利だった。
「リオン様が、エレノアを……」
「なんて恐ろしい……」
「悪魔のような人だ」
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その時、集まった人垣をかき分けるようにして、一人の男が前に進み出た。
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