13 / 16
第12話「永遠を誓う場所」
しおりを挟む
オルコット侯爵の失脚は、驚くほどあっけなかった。
リアムが捕らえた男たちの証言と、彼の諜報部隊が掴んでいた侯爵の不正の証拠。
それらが国王アルフォンスの前に突きつけられると、侯爵に弁明の余地はなかった。
爵位を剥奪され、領地を没収されたオルコット侯爵は王都から追放された。
貴族社会に蔓延っていた古い膿が一つ取り除かれた瞬間だった。
事件が解決した後も、リアムはカイのそばを片時も離れようとしなかった。
カイが少しでも視界から消えると、すぐに「カイ、どこだ」と探し回る始末。
その過保護ぶりは屋敷の使用人たちが微笑ましく思うほどだった。
カイはそんなリアムの姿を愛おしく思う反面、彼に心配をかけてしまったことを申し訳なく感じていた。
ある夜、リアムはカイを自室に招いた。
暖炉の火が静かに揺らめいている。
リアムはカイの前に跪くと、その両手を取った。
「カイ」
真剣な眼差しに、カイは息をのむ。
「今回の件で俺は思い知らされた。番だと言いながらお前を危険に晒してしまった。俺は、まだお前の本当の守り手にはなれていない」
「そんなこと……!」
「いや、事実だ。だから改めてお前に誓いたい」
リアムはカイの手の甲に、そっと口づけを落とした。
「カイ・フォン・グレイフォード。お前を俺の正式な番としてアークライト家に迎えたい。法と神の前で永遠の愛を誓わせてほしい。俺の全てで、お前の一生を守らせてくれ」
それは紛れもないプロポーズだった。
「俺と、番になってくれないか」
カイの瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。
嬉しかった。
心の底から。
この人となら生きていける。
この人のために生きていきたい。
この事件を通して、カイもまたリアムへの愛情が揺るぎないものであることをはっきりと自覚していた。
「……はい」
涙で濡れた声でカイは頷いた。
「俺も……あなたの番になりたいです。あなたのそばで、一生あなたのためにご飯を作りたい」
その答えを聞いて、リアムの顔が見たこともないほど優しく綻んだ。
彼はカイを抱きしめ、何度も何度もその名を呼んだ。
二人の影は暖炉の火に照らされ、一つに重なっていた。
***
カイとリアムの番いの儀式は、国王アルフォンスの計らいで王宮の至聖堂で執り行われることになった。
本来、貴族同士の儀式とはいえ、ここまで大々的に行われることは異例だ。
それは国王が二人の結びつきを国として祝福していることの証だった。
儀式当日。
カイは日の光を浴びて輝くステンドグラスの下に立っていた。
リアムの髪の色に合わせた、深い青の美しい礼服。
胸元には銀糸でアークライト家の紋章が刺繍されている。
隣には純白の騎士礼装に身を包んだリアムが、誇らしげに胸を張って立っている。
祭壇の前には立会人である国王アルフォンスが、厳かな表情で座っている。
参列席には王都の主だった貴族たちが顔を揃えていた。
その中には招待された辺境伯一家の姿もあった。
すっかり落ちぶれ、やつれた様子の彼らは末席でただ俯いている。
神官が荘厳な声で誓いの言葉を述べる。
「汝、リアム・フォン・アークライトはカイを唯一無二の番とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、彼を愛し、敬い、慈しむことを誓うか」
「誓う」
リアムの迷いのない声が聖堂に響き渡る。
「汝、カイはリアム・フォン・アークライトを唯一無二の番とし、彼を愛し、敬い、支え続けることを誓うか」
カイは隣に立つリアムの顔を見上げた。
青い瞳が優しく、そして熱っぽくカイを見つめている。
カイは微笑んだ。
人生で最高の、幸せな笑顔で。
「はい、誓います」
二人は誓いの証として、互いの薬指に銀の指輪をはめた。
その瞬間、聖堂が祝福の光に包まれたかのような温かい空気が満ちた。
国王アルフォンスが立ち上がり、高らかに宣言する。
「ここに、二人の番の成立を認める! 新たなアークライト夫妻に、神の祝福があらんことを!」
参列者から割れんばかりの拍手が送られた。
不遇な運命を背負って生まれた青年が、最高の幸せを手に入れた瞬間だった。
冷たい物置部屋で一人震えていたカイは、もうどこにもいない。
隣には誰よりも強く優しい番がいる。
二人の未来は、至聖堂のステンドグラスのように色鮮やかな光に満ちているように思えた。
リアムが捕らえた男たちの証言と、彼の諜報部隊が掴んでいた侯爵の不正の証拠。
それらが国王アルフォンスの前に突きつけられると、侯爵に弁明の余地はなかった。
爵位を剥奪され、領地を没収されたオルコット侯爵は王都から追放された。
貴族社会に蔓延っていた古い膿が一つ取り除かれた瞬間だった。
事件が解決した後も、リアムはカイのそばを片時も離れようとしなかった。
カイが少しでも視界から消えると、すぐに「カイ、どこだ」と探し回る始末。
その過保護ぶりは屋敷の使用人たちが微笑ましく思うほどだった。
カイはそんなリアムの姿を愛おしく思う反面、彼に心配をかけてしまったことを申し訳なく感じていた。
ある夜、リアムはカイを自室に招いた。
暖炉の火が静かに揺らめいている。
リアムはカイの前に跪くと、その両手を取った。
「カイ」
真剣な眼差しに、カイは息をのむ。
「今回の件で俺は思い知らされた。番だと言いながらお前を危険に晒してしまった。俺は、まだお前の本当の守り手にはなれていない」
「そんなこと……!」
「いや、事実だ。だから改めてお前に誓いたい」
リアムはカイの手の甲に、そっと口づけを落とした。
「カイ・フォン・グレイフォード。お前を俺の正式な番としてアークライト家に迎えたい。法と神の前で永遠の愛を誓わせてほしい。俺の全てで、お前の一生を守らせてくれ」
それは紛れもないプロポーズだった。
「俺と、番になってくれないか」
カイの瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。
嬉しかった。
心の底から。
この人となら生きていける。
この人のために生きていきたい。
この事件を通して、カイもまたリアムへの愛情が揺るぎないものであることをはっきりと自覚していた。
「……はい」
涙で濡れた声でカイは頷いた。
「俺も……あなたの番になりたいです。あなたのそばで、一生あなたのためにご飯を作りたい」
その答えを聞いて、リアムの顔が見たこともないほど優しく綻んだ。
彼はカイを抱きしめ、何度も何度もその名を呼んだ。
二人の影は暖炉の火に照らされ、一つに重なっていた。
***
カイとリアムの番いの儀式は、国王アルフォンスの計らいで王宮の至聖堂で執り行われることになった。
本来、貴族同士の儀式とはいえ、ここまで大々的に行われることは異例だ。
それは国王が二人の結びつきを国として祝福していることの証だった。
儀式当日。
カイは日の光を浴びて輝くステンドグラスの下に立っていた。
リアムの髪の色に合わせた、深い青の美しい礼服。
胸元には銀糸でアークライト家の紋章が刺繍されている。
隣には純白の騎士礼装に身を包んだリアムが、誇らしげに胸を張って立っている。
祭壇の前には立会人である国王アルフォンスが、厳かな表情で座っている。
参列席には王都の主だった貴族たちが顔を揃えていた。
その中には招待された辺境伯一家の姿もあった。
すっかり落ちぶれ、やつれた様子の彼らは末席でただ俯いている。
神官が荘厳な声で誓いの言葉を述べる。
「汝、リアム・フォン・アークライトはカイを唯一無二の番とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、彼を愛し、敬い、慈しむことを誓うか」
「誓う」
リアムの迷いのない声が聖堂に響き渡る。
「汝、カイはリアム・フォン・アークライトを唯一無二の番とし、彼を愛し、敬い、支え続けることを誓うか」
カイは隣に立つリアムの顔を見上げた。
青い瞳が優しく、そして熱っぽくカイを見つめている。
カイは微笑んだ。
人生で最高の、幸せな笑顔で。
「はい、誓います」
二人は誓いの証として、互いの薬指に銀の指輪をはめた。
その瞬間、聖堂が祝福の光に包まれたかのような温かい空気が満ちた。
国王アルフォンスが立ち上がり、高らかに宣言する。
「ここに、二人の番の成立を認める! 新たなアークライト夫妻に、神の祝福があらんことを!」
参列者から割れんばかりの拍手が送られた。
不遇な運命を背負って生まれた青年が、最高の幸せを手に入れた瞬間だった。
冷たい物置部屋で一人震えていたカイは、もうどこにもいない。
隣には誰よりも強く優しい番がいる。
二人の未来は、至聖堂のステンドグラスのように色鮮やかな光に満ちているように思えた。
256
あなたにおすすめの小説
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない
こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる