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番外編「独占欲の在り処」
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俺、カイ・ヴァレンシュタインは、物心ついた時から、ずっと何かを探していた。
ヴァレンシュタイン公爵家の嫡男として生まれ、αとしての優れた才を授かり、若くして騎士団長の地位に上り詰めた。
誰もが俺を羨み、敬ったが、俺の心は常にどこか満たされない乾きを抱えていた。
父も母も、政略によって結ばれた、愛のない夫婦だった。
体が弱く、儚げな笑みを浮かべることしかできなかった母は、俺に「運命の番」の存在を教えてくれた人だった。
『カイ。この世界にはね、魂で惹かれ合う、たった一人の相手がいるのよ。その人に出会えたら、きっと、あなたの心も満たされるわ』
母の言葉を信じ、俺は永い間、運命の番を探し続けてきた。
数多のΩと出会ったが、心が動くことは一度もなかった。
俺の魂が求める、特別な相手はどこにもいなかった。
諦めにも似た感情が、俺の心を氷のように冷たく閉ざしていった。
そんな俺の前に、リヒト・アシュフィールドは現れた。
王家の夜会。
きらびやかな人々の群れの中で、彼はひっそりと、まるで自分の存在を消すかのように佇んでいた。
みすぼらしい礼服、うつむきがちな翠の瞳。
だが、なぜか俺は、彼から目を離すことができなかった。
そして、彼とすれ違った瞬間、ふわりと、今まで嗅いだことのない甘い香りがした。
それは、俺の心の奥底に眠っていた何かを、揺り動かすような香りだった。
確信があったわけではない。
ただ、猛烈に、彼に惹きつけられた。
彼をもっと知りたい。
その思いだけで、俺はアシュフィールド領へと足を運んだ。
領地で再会した彼は、夜会で見た時よりも、ずっと生き生きとしていた。
領地改革について語るその姿は眩しく、彼が作る素朴だが心のこもった料理は、俺の乾いた心をじんわりと潤してくれた。
そして、俺は気づいてしまった。
彼に近づくたびに、あの甘い香りが濃くなることに。
彼は、何かを隠している。
その正体が、王城の書庫で明らかになった時、俺は歓喜に打ち震えた。
ヒートを起こし、潤んだ瞳で俺を見上げるリヒト。
彼の体から立ち上る、むせ返るような甘いフェロモン。
ああ、やっと見つけた。
俺が、永い間探し続けていた、俺だけの番。
彼を腕に抱いた時、パズルの最後のピースがはまったように、俺の心は完璧に満たされた。
この温もりを、この香りを、誰にも渡したくない。
俺だけのものにしたい。
だが、彼は俺から逃げた。
俺の想いを、ただのαの本能だとでも思ったのだろうか。
必死にアプローチをしても、するりとかわされてしまう。
そのもどかしさが、俺の中の独占欲をさらに掻き立てた。
エリアスが現れた時は、本気で殺意を覚えた。
あの男が、リヒトに不躾な視線を向けた瞬間から、俺は奴を敵だと認識した。
リヒトは俺の番だ。
誰にも指一本触れさせるものか。
彼が、俺をかばって嘘の自白をしたと知った時は、胸が張り裂けそうだった。
愚かで、そして、どうしようもなく愛おしい人。
必ず助け出す。
俺のすべてを賭けてでも、お前を取り戻す。
その一心で、俺はシルヴァーナの闇を暴いた。
地下牢で再会したリヒトが、俺の胸で泣きじゃくった時、俺は神に感謝した。
彼を守れたことを。
そして、彼が俺を信じてくれたことを。
ようやく、名実ともに俺の番になったリヒト。
俺の腕の中で、幸せそうに眠る彼の寝顔を見ていると、どうしようもないほどの愛しさがこみ上げてくる。
もう二度と、この手は離さない。
俺の独占欲は、きっとこの先も、彼を少しだけ困らせるのだろう。
だが、それも仕方がないことだ。
なにせ、永い間探し続けた俺の半身なのだ。
この愛の重さを、存分に受け止めてもらうとしよう。
「……愛している、リヒト」
眠る彼の額にキスを落とす。
俺の人生は、彼という光を見つけたことで、ようやく始まったのだ。
ヴァレンシュタイン公爵家の嫡男として生まれ、αとしての優れた才を授かり、若くして騎士団長の地位に上り詰めた。
誰もが俺を羨み、敬ったが、俺の心は常にどこか満たされない乾きを抱えていた。
父も母も、政略によって結ばれた、愛のない夫婦だった。
体が弱く、儚げな笑みを浮かべることしかできなかった母は、俺に「運命の番」の存在を教えてくれた人だった。
『カイ。この世界にはね、魂で惹かれ合う、たった一人の相手がいるのよ。その人に出会えたら、きっと、あなたの心も満たされるわ』
母の言葉を信じ、俺は永い間、運命の番を探し続けてきた。
数多のΩと出会ったが、心が動くことは一度もなかった。
俺の魂が求める、特別な相手はどこにもいなかった。
諦めにも似た感情が、俺の心を氷のように冷たく閉ざしていった。
そんな俺の前に、リヒト・アシュフィールドは現れた。
王家の夜会。
きらびやかな人々の群れの中で、彼はひっそりと、まるで自分の存在を消すかのように佇んでいた。
みすぼらしい礼服、うつむきがちな翠の瞳。
だが、なぜか俺は、彼から目を離すことができなかった。
そして、彼とすれ違った瞬間、ふわりと、今まで嗅いだことのない甘い香りがした。
それは、俺の心の奥底に眠っていた何かを、揺り動かすような香りだった。
確信があったわけではない。
ただ、猛烈に、彼に惹きつけられた。
彼をもっと知りたい。
その思いだけで、俺はアシュフィールド領へと足を運んだ。
領地で再会した彼は、夜会で見た時よりも、ずっと生き生きとしていた。
領地改革について語るその姿は眩しく、彼が作る素朴だが心のこもった料理は、俺の乾いた心をじんわりと潤してくれた。
そして、俺は気づいてしまった。
彼に近づくたびに、あの甘い香りが濃くなることに。
彼は、何かを隠している。
その正体が、王城の書庫で明らかになった時、俺は歓喜に打ち震えた。
ヒートを起こし、潤んだ瞳で俺を見上げるリヒト。
彼の体から立ち上る、むせ返るような甘いフェロモン。
ああ、やっと見つけた。
俺が、永い間探し続けていた、俺だけの番。
彼を腕に抱いた時、パズルの最後のピースがはまったように、俺の心は完璧に満たされた。
この温もりを、この香りを、誰にも渡したくない。
俺だけのものにしたい。
だが、彼は俺から逃げた。
俺の想いを、ただのαの本能だとでも思ったのだろうか。
必死にアプローチをしても、するりとかわされてしまう。
そのもどかしさが、俺の中の独占欲をさらに掻き立てた。
エリアスが現れた時は、本気で殺意を覚えた。
あの男が、リヒトに不躾な視線を向けた瞬間から、俺は奴を敵だと認識した。
リヒトは俺の番だ。
誰にも指一本触れさせるものか。
彼が、俺をかばって嘘の自白をしたと知った時は、胸が張り裂けそうだった。
愚かで、そして、どうしようもなく愛おしい人。
必ず助け出す。
俺のすべてを賭けてでも、お前を取り戻す。
その一心で、俺はシルヴァーナの闇を暴いた。
地下牢で再会したリヒトが、俺の胸で泣きじゃくった時、俺は神に感謝した。
彼を守れたことを。
そして、彼が俺を信じてくれたことを。
ようやく、名実ともに俺の番になったリヒト。
俺の腕の中で、幸せそうに眠る彼の寝顔を見ていると、どうしようもないほどの愛しさがこみ上げてくる。
もう二度と、この手は離さない。
俺の独占欲は、きっとこの先も、彼を少しだけ困らせるのだろう。
だが、それも仕方がないことだ。
なにせ、永い間探し続けた俺の半身なのだ。
この愛の重さを、存分に受け止めてもらうとしよう。
「……愛している、リヒト」
眠る彼の額にキスを落とす。
俺の人生は、彼という光を見つけたことで、ようやく始まったのだ。
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