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第11話「守りたい想い、すれ違う心」
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馬を駆り、王都を出て半日。西の森に近づくにつれて、空気がどんどん淀んでいくのが肌で感じられた。植物は枯れ、動物の気配は完全に消え失せている。これが、人為的に増幅された瘴気……。
森の入り口で馬を降り、俺は中へと足を踏み入れた。そこは、昼間だというのに薄暗く、不気味な静寂に包まれていた。
騎士団が野営地を築いている場所はすぐに分かった。剣戟の音と、怒声が聞こえてくる。
俺が駆けつけると、騎士たちは森から湧き出てくる魔物の群れと交戦している真っ最中だった。しかし皆、明らかに動きが鈍い。濃密な瘴気に当てられ、体力を奪われているのだ。
「ぐっ……!瘴気が濃すぎて、息が……!」
「くそ、これじゃ埒が明かない!」
苦しそうな仲間たちの姿を見て、俺は迷わず駆け寄った。
「皆さん、しっかりしてください!」
俺は一番近くで戦っていた騎士の背中に手を当てる。俺の体を通して清浄な気が彼の中に流れ込み、彼を蝕んでいた瘴気が霧散していく。
「……ルカ!?なぜお前がここに!」
浄化された騎士は、驚きに目を見開いた。
「話は後です!俺が皆さんを浄化しますから、今は戦いに集中してください!」
俺は次から次へと苦しんでいる騎士たちに触れ、彼らの穢れを祓っていく。俺の力が流れ込むたびに、騎士たちの動きに本来の力が戻っていく。
「体が軽い……!力が戻ってきたぞ!」
「ルカ様が来てくれた!これなら戦える!」
士気を取り戻した騎士たちは、勢いよく魔物を薙ぎ払っていく。戦況は、明らかに好転し始めていた。
だが、その分俺の体にかかる負担は尋常ではなかった。一度に、これほど多くの、そして濃い瘴気を浄化したことはない。心臓を直接握り潰されるような痛みと、全身から血の気が引いていくような感覚。視界が明滅し、立っているのがやっとだった。
それでも、俺は力を止めなかった。ここで俺が倒れたら、みんなが危ない。
その時、森の奥からひときわ大きな咆哮が響き渡った。地響きとともに現れたのは、巨大な体躯を持つオーガの変異種だった。その全身からは、おぞましいほどの瘴気が立ち上っている。
オーガが振り下ろした巨大な棍棒を、一閃の光が弾き返した。氷竜ゼロに乗った、エヴァンだった。
「ルカッ!なぜここにいる!」
エヴァンは、信じられないものを見るような目で俺を見つめ、そして怒りに顔を歪めた。
「来るなと言ったはずだ!なぜ命令を破った!」
「ごめんなさい!でも、見ていられなかったんです……!俺の力は、このためにあるんですから!」
俺は叫び返した。初めて、彼に正面から反抗した。
「馬鹿を言うな!お前の命がどうなってもいいと言うのか!」
「いいんです!あなたの、みんなの役に立てるなら……!」
「俺はそんなこと望んでいない!」
エヴァンの絶叫が、戦場に木霊する。初めて、俺たちの想いがはっきりとすれ違った。
俺は、彼を守りたい。彼は、俺を守りたい。どちらも相手を想う気持ちは同じなのに、今はその想いが俺たちを分かつ壁になってしまっていた。
俺たちの口論の隙を突き、オーガがゼロに向かって突進する。エヴァンは咄嗟に剣を構えるが、オーガの狙いは彼ではなかった。
オーガは、俺に向かってその巨大な腕を伸ばしてきたのだ。
「しまっ……!」
俺の体が、いとも簡単に掴み上げられる。抵抗する間もなかった。
「ルカ!」
エヴァンの悲痛な叫び声が聞こえる。
その時、オーガの背後から黒いローブを纏った人影が現れた。その顔はフードで隠れて見えないが、邪悪な笑みを浮かべているのが分かった。
「ようやく手に入れたぞ、極上の触媒を」
ローブの男――邪術師が杖を振るうと、俺の足元に黒い魔法陣が浮かび上がる。次の瞬間、俺の体は強い光に包まれ、視界が真っ白になった。
意識が遠のく中、俺の耳に最後に届いたのは、俺の名を叫ぶエヴァンの絶望に満ちた声だった。
森の入り口で馬を降り、俺は中へと足を踏み入れた。そこは、昼間だというのに薄暗く、不気味な静寂に包まれていた。
騎士団が野営地を築いている場所はすぐに分かった。剣戟の音と、怒声が聞こえてくる。
俺が駆けつけると、騎士たちは森から湧き出てくる魔物の群れと交戦している真っ最中だった。しかし皆、明らかに動きが鈍い。濃密な瘴気に当てられ、体力を奪われているのだ。
「ぐっ……!瘴気が濃すぎて、息が……!」
「くそ、これじゃ埒が明かない!」
苦しそうな仲間たちの姿を見て、俺は迷わず駆け寄った。
「皆さん、しっかりしてください!」
俺は一番近くで戦っていた騎士の背中に手を当てる。俺の体を通して清浄な気が彼の中に流れ込み、彼を蝕んでいた瘴気が霧散していく。
「……ルカ!?なぜお前がここに!」
浄化された騎士は、驚きに目を見開いた。
「話は後です!俺が皆さんを浄化しますから、今は戦いに集中してください!」
俺は次から次へと苦しんでいる騎士たちに触れ、彼らの穢れを祓っていく。俺の力が流れ込むたびに、騎士たちの動きに本来の力が戻っていく。
「体が軽い……!力が戻ってきたぞ!」
「ルカ様が来てくれた!これなら戦える!」
士気を取り戻した騎士たちは、勢いよく魔物を薙ぎ払っていく。戦況は、明らかに好転し始めていた。
だが、その分俺の体にかかる負担は尋常ではなかった。一度に、これほど多くの、そして濃い瘴気を浄化したことはない。心臓を直接握り潰されるような痛みと、全身から血の気が引いていくような感覚。視界が明滅し、立っているのがやっとだった。
それでも、俺は力を止めなかった。ここで俺が倒れたら、みんなが危ない。
その時、森の奥からひときわ大きな咆哮が響き渡った。地響きとともに現れたのは、巨大な体躯を持つオーガの変異種だった。その全身からは、おぞましいほどの瘴気が立ち上っている。
オーガが振り下ろした巨大な棍棒を、一閃の光が弾き返した。氷竜ゼロに乗った、エヴァンだった。
「ルカッ!なぜここにいる!」
エヴァンは、信じられないものを見るような目で俺を見つめ、そして怒りに顔を歪めた。
「来るなと言ったはずだ!なぜ命令を破った!」
「ごめんなさい!でも、見ていられなかったんです……!俺の力は、このためにあるんですから!」
俺は叫び返した。初めて、彼に正面から反抗した。
「馬鹿を言うな!お前の命がどうなってもいいと言うのか!」
「いいんです!あなたの、みんなの役に立てるなら……!」
「俺はそんなこと望んでいない!」
エヴァンの絶叫が、戦場に木霊する。初めて、俺たちの想いがはっきりとすれ違った。
俺は、彼を守りたい。彼は、俺を守りたい。どちらも相手を想う気持ちは同じなのに、今はその想いが俺たちを分かつ壁になってしまっていた。
俺たちの口論の隙を突き、オーガがゼロに向かって突進する。エヴァンは咄嗟に剣を構えるが、オーガの狙いは彼ではなかった。
オーガは、俺に向かってその巨大な腕を伸ばしてきたのだ。
「しまっ……!」
俺の体が、いとも簡単に掴み上げられる。抵抗する間もなかった。
「ルカ!」
エヴァンの悲痛な叫び声が聞こえる。
その時、オーガの背後から黒いローブを纏った人影が現れた。その顔はフードで隠れて見えないが、邪悪な笑みを浮かべているのが分かった。
「ようやく手に入れたぞ、極上の触媒を」
ローブの男――邪術師が杖を振るうと、俺の足元に黒い魔法陣が浮かび上がる。次の瞬間、俺の体は強い光に包まれ、視界が真っ白になった。
意識が遠のく中、俺の耳に最後に届いたのは、俺の名を叫ぶエヴァンの絶望に満ちた声だった。
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