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第10話「新たなる脅威の影」
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俺の能力に代償があると判明してから、エヴァンによる監視は以前にも増して厳しいものになった。
俺が他の騎士たちの穢れを祓わないように、彼は俺を常に自分の執務室か私室に置き、片時もそばから離そうとしない。騎士たちも事情を知り、俺に助けを求めることはなくなった。
誰も苦しみを癒やせず、ただエヴァンの隣にいるだけの日々。みんなの役に立てないことが、俺には少しだけつらかった。
そんなある日、騎士団に緊急の報せが舞い込んだ。
王都から少し離れた森で魔物が異常発生し、凶暴化しているというのだ。村がいくつか襲われ、被害も出ているらしい。
「現地の調査隊によれば、森全体が異常な濃度の瘴気に覆われているとのことです」
副団長のジークさんが、険しい顔で地図を広げながら報告する。
「ただの魔物の活性化ではない。何者かが、人為的に瘴気を増幅させている可能性があります」
「……邪術師か」
エヴァンが、低い声でつぶやいた。
古代の禁術には、自然界の瘴気を操り増幅させるものがあると聞く。もし本当にそんな邪悪な魔術師が裏で糸を引いているとしたら、これは単なる魔物討伐では済まない、国家を揺るがす大事件に発展する可能性があった。
「竜騎士団は直ちに出撃する。ジーク、編成を急がせろ」
「はっ!」
慌ただしくなっていく団長室。出撃の準備のために、騎士たちが目まぐるしく行き交う。その中で、俺だけが何もできずに立ち尽くしていた。
「ルカ、お前はここに残れ」
出撃の鎧を身に着けながら、エヴァンが俺に言った。
「分かっているとは思うが、絶対に駐屯地から出るな。もちろん、力も使うなよ」
「……はい」
うなずきながらも、俺の心は重く沈んでいた。
濃密な瘴気に満ちた戦場。そこへ向かう騎士たちは、きっとひどく苦しむことになるだろう。エヴァンも、ゼロも。それなのに、俺はここで安全な場所にいることしか許されない。
(俺の力は、こういう時のためにあるんじゃないのか……?)
エヴァンが俺の命を心配してくれているのは、痛いほど分かる。でも、仲間たちが苦しむのを見過ごすなんて、俺にはできなかった。
出撃の準備を終えたエヴァンが、俺の前に立つ。
「……心配するな。必ず、帰ってくる」
彼はそう言うと、俺の額に自分の額をこつんと合わせた。
「俺がいない間、いい子で待っていろ」
まるで幼子に言い聞かせるような口調。彼は俺の頬を一度だけ撫でると、踵を返して部屋を出て行った。
練兵場からは、騎士たちの雄叫びと竜の嘶きが聞こえてくる。やがて、ゼロの巨体が空へと舞い上がり、エヴァンを乗せたその姿はあっという間に西の空へと消えていった。
一人残された部屋で、俺は強く拳を握りしめた。
待っているだけなんて、嫌だ。
俺は、エヴァンさんを守りたい。みんなを守りたい。
たとえ、この命を削ることになったとしても。
「ごめんなさい、エヴァンさん。俺、あなたの命令を破ります」
俺は、初めて自分の意志で彼の言いつけに背くことを決意した。俺の力は、このためにあるのだから。
俺は部屋を飛び出すと、厩舎へと走り一頭の馬に飛び乗った。目指すは、エヴァンたちが向かった西の森。
俺の無力な力が、少しでも彼らの助けになることを信じて。
俺が他の騎士たちの穢れを祓わないように、彼は俺を常に自分の執務室か私室に置き、片時もそばから離そうとしない。騎士たちも事情を知り、俺に助けを求めることはなくなった。
誰も苦しみを癒やせず、ただエヴァンの隣にいるだけの日々。みんなの役に立てないことが、俺には少しだけつらかった。
そんなある日、騎士団に緊急の報せが舞い込んだ。
王都から少し離れた森で魔物が異常発生し、凶暴化しているというのだ。村がいくつか襲われ、被害も出ているらしい。
「現地の調査隊によれば、森全体が異常な濃度の瘴気に覆われているとのことです」
副団長のジークさんが、険しい顔で地図を広げながら報告する。
「ただの魔物の活性化ではない。何者かが、人為的に瘴気を増幅させている可能性があります」
「……邪術師か」
エヴァンが、低い声でつぶやいた。
古代の禁術には、自然界の瘴気を操り増幅させるものがあると聞く。もし本当にそんな邪悪な魔術師が裏で糸を引いているとしたら、これは単なる魔物討伐では済まない、国家を揺るがす大事件に発展する可能性があった。
「竜騎士団は直ちに出撃する。ジーク、編成を急がせろ」
「はっ!」
慌ただしくなっていく団長室。出撃の準備のために、騎士たちが目まぐるしく行き交う。その中で、俺だけが何もできずに立ち尽くしていた。
「ルカ、お前はここに残れ」
出撃の鎧を身に着けながら、エヴァンが俺に言った。
「分かっているとは思うが、絶対に駐屯地から出るな。もちろん、力も使うなよ」
「……はい」
うなずきながらも、俺の心は重く沈んでいた。
濃密な瘴気に満ちた戦場。そこへ向かう騎士たちは、きっとひどく苦しむことになるだろう。エヴァンも、ゼロも。それなのに、俺はここで安全な場所にいることしか許されない。
(俺の力は、こういう時のためにあるんじゃないのか……?)
エヴァンが俺の命を心配してくれているのは、痛いほど分かる。でも、仲間たちが苦しむのを見過ごすなんて、俺にはできなかった。
出撃の準備を終えたエヴァンが、俺の前に立つ。
「……心配するな。必ず、帰ってくる」
彼はそう言うと、俺の額に自分の額をこつんと合わせた。
「俺がいない間、いい子で待っていろ」
まるで幼子に言い聞かせるような口調。彼は俺の頬を一度だけ撫でると、踵を返して部屋を出て行った。
練兵場からは、騎士たちの雄叫びと竜の嘶きが聞こえてくる。やがて、ゼロの巨体が空へと舞い上がり、エヴァンを乗せたその姿はあっという間に西の空へと消えていった。
一人残された部屋で、俺は強く拳を握りしめた。
待っているだけなんて、嫌だ。
俺は、エヴァンさんを守りたい。みんなを守りたい。
たとえ、この命を削ることになったとしても。
「ごめんなさい、エヴァンさん。俺、あなたの命令を破ります」
俺は、初めて自分の意志で彼の言いつけに背くことを決意した。俺の力は、このためにあるのだから。
俺は部屋を飛び出すと、厩舎へと走り一頭の馬に飛び乗った。目指すは、エヴァンたちが向かった西の森。
俺の無力な力が、少しでも彼らの助けになることを信じて。
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