役立たずと勇者パーティーから追放された俺、人間嫌いの魔族様に「君は私の光だ」と求婚され溺愛される

水凪しおん

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第4話「明かされる孤独と触れ合う心」

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 城での穏やかな日々は、リアムの心の傷を少しずつ癒やしていった。追放された当初の絶望は薄れ、今はゼノンのそばにいることが、ごく自然なことのように感じられた。
 その日も、リアムはゼノンの腕の治療をしていた。淡い光に包まれながら、リアムはずっと気になっていたことを口にした。
「ゼノンさんは、どうしてそんなに人間が嫌いなんですか?」
 ピクリ、とゼノンの肩が微かに揺れた。彼の表情が、一瞬だけ固くなる。触れてはいけない話題だったのかもしれない、とリアムは慌てて口をつぐんだ。しかし、長い沈黙の後、ゼノンは重い口を開いた。
「……昔、一人の人間の男を信じたことがあった」
 それは、ゼノンがまだ若く、今よりもずっと世界に無防備だった頃の話だった。森で怪我をして倒れていた人間の男を助け、介抱したのだという。最初は警戒していた男も、ゼノンの優しさに触れて心を開き、二人は種族を超えた友情を育んだ。ゼノンは彼を唯一の友と信じ、自分の力の源や弱点さえも打ち明けた。
「だが、奴は裏切った」
 男は、ゼノンから聞き出した情報を手土産に、国の騎士団を引き連れてこの森にやってきた。目的は「魔族の討伐」という名誉と報酬。信じていた友に弱点を突かれ、ゼノンは瀕死の重傷を負った。今も腕に残るこの呪いの傷は、その時に受けたものだった。
「人間は、己の欲望のためなら、平気で他者を裏切り、踏みにじる。……それ以来、誰のことも信じてはいない」
 そう語るゼノンの金の瞳には、深い孤独と、決して癒えることのない悲しみの色が浮かんでいた。その瞳を見ていると、リアムは自分の胸まで締め付けられるように痛んだ。
 道具のように扱われ、用済みだと切り捨てられた自分。信じていた仲間に裏切られた、あの日の絶望。
「僕も……同じです」
 リアムは、勇者パーティーで過ごした日々のことを、ぽつりぽつりと話し始めた。どれだけ懸命に尽くしても認められず、便利な道具としてしか見られなかったこと。戦闘能力がないというだけで、存在価値まで否定されたこと。そして、誰にも助けてもらえずに追放されたこと。
 互いの傷と孤独を分かち合ったその夜、二人の間の見えない壁は、完全に取り払われた。
 数日後の夜、ゼノンはリアムを城の外へと誘った。
「見せたいものがある」
 彼に連れられて森の奥深くへと進んでいくと、開けた場所に、月明かりを浴びて銀色に輝く、息をのむほど美しい泉が現れた。水面には星々が映り込み、まるで天空をそのまま閉じ込めたかのようだ。
「ここは、私しか知らない場所だ」
 泉のほとりに腰を下ろし、ゼノンは静かに言った。その横顔は、いつもよりずっと穏やかに見える。
「ここにいると、騒がしい思考が静まり、心が落ち着く」
 リアムも隣に座り、幻想的な光景に目を奪われた。水のせせらぎと、虫の音が優しく耳に届く。
 しばらく二人で黙って泉を眺めていたが、やがてゼノンが、リアムの方を見ずにぽつりと呟いた。
「……リアム。お前がここにいてくれると、この泉のそばにいる時と同じように、心が安らぐ」
 それは、不器用な彼が紡いだ、初めての素直な言葉だった。リアムの心に、温かい何かがじんわりと広がっていく。振り返ったゼノンの金の瞳が、月明かりの下で優しく揺れていた。その瞳に見つめられ、リアムは自分の頬が熱くなるのを感じる。
 孤独だった二つの心が、今、確かに触れ合った。リアムは、この人のそばにいたい、と心の底から強く思った。
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