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*番外編*かけがえのないお方②
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眉間にやや皺を寄せながら、鋭い目つきで私を見つめています。
「え、っ...と。ま、迷ってしまって...」
何も悪いことをしていないのに、男性の瞳の鋭さに何だか落ち着かなくなってしまいます。
けれど不思議なことに、怖いと言う感情は湧きませんでした。この男性の雰囲気が何だか優しい方のようにも感じたのです。
口籠もりながら答える私に、男性はふと慌てたような表情になりました。
「あー...すまない。怖がらせるつもりはなかったんだが」
決まり悪そうに頭をかきながら、目線を私から背けるように外へと移しました。
しばらくの沈黙。
私はチラッと男性を見ました。どこかの騎士様でしょうか、私よりもうんと背が高く、腕や胸元は逞しく、鍛えられているのがパッと見ただけでもわかりました。
今までお会いして来た男性と比べ物にならないくらいに体格がいいのです。
そして先程は鋭い目つきで気がつきませんでしたが、瞳がとても澄んでいて綺麗な顔立ちをされていました。
「パーティーの参加者の御令嬢か?」
沈黙を破るように、私に話しかけてくださいました。出来るだけ優しい口調で話そうとしているのが伝わってきます。
こくりと頷くと、男性は言いました。
「そうか、私もだ。少しだけ外の空気を吸いたくてな。...だがあまり私はこういう場所には向いていないようだ」
少しだけ寂しそうな声色がして男性の方へと視線を向けると、男性も私を見つめていました。
ドクンっ...
視線が絡みあった瞬間、私の中でどくどくと心臓が音を立てました。
何だか落ち着かなくなり、そわそわとしている様子に気がついたのか、「...すまない。やはり怖がらせたようだな」
何か勘違いをしたように寂しげな顔をしたかと思うと、「会場はこっちだ。途中まで案内しよう」
そう言って私に背を向け、歩き出しました。
「あのっ、私...」
怖がってなんかいません。何故だか分からないけれど、心臓が落ち着かないんです。
そう言いかけて、これは言っても良い言葉なのかと思い再び口をつぐむと、男性は背を向けたまま言いました。
「安心しろ。中まではついていかない。私と変な噂が立つのは嫌だろう」
しばらく歩いた後、「会場はこのまま真っ直ぐ歩けば着く」といい、男性はさっと私のそばを離れてスタスタと歩いて行ってしまいました。
*****
「ソフィア!全くどこまで行っていたの?」
会場に着くと、カトレーヌが心配そうな顔で近寄って来て、ぎゅっと手を握りました。
「少しだけ迷ってしまって。心配かけてごめんなさい」
「もうっほんとよ!こういう場所って危ないこともあるんだから気をつけるのよ。本当に何もなかったのよね?」
「ええ。名前はわからないけれど、案内してくださった方がいたの。凄く背が高くて体格が良くて...」
「あら。もしかしてアクリウス公爵様かしら」
「アクリウス公爵様...?」
「いや、でもまさかね。あの方は冷たくて無愛想で有名だもの。それより、さっきマリウス公爵様がいらっしゃったのよ!」
興奮気味に話すカトレーヌをよそに、私は先程の男性が気になって仕方がありませんでした。
アクリウス公爵様といえば、皇帝に仕える騎士様で騎士団長を務める雲の上のようなお方。
今までパーティーに参加してこなかった私は、噂こそ聞いたことはあるものの顔や姿は見たことがありませんでした。
あの方が、アクリウス公爵様なのかしら。
それにしても...
さっきの男性の発言を思い返すと、私は何か誤解させてしまったままのような気がしてなりませんでした。
あの時、どうして怖がってなんかいないとお伝えしなかったのかしら。
寂しそうな横顔を思い出し、胸がぎゅうっと締め付けられる感覚がしました。
「え、っ...と。ま、迷ってしまって...」
何も悪いことをしていないのに、男性の瞳の鋭さに何だか落ち着かなくなってしまいます。
けれど不思議なことに、怖いと言う感情は湧きませんでした。この男性の雰囲気が何だか優しい方のようにも感じたのです。
口籠もりながら答える私に、男性はふと慌てたような表情になりました。
「あー...すまない。怖がらせるつもりはなかったんだが」
決まり悪そうに頭をかきながら、目線を私から背けるように外へと移しました。
しばらくの沈黙。
私はチラッと男性を見ました。どこかの騎士様でしょうか、私よりもうんと背が高く、腕や胸元は逞しく、鍛えられているのがパッと見ただけでもわかりました。
今までお会いして来た男性と比べ物にならないくらいに体格がいいのです。
そして先程は鋭い目つきで気がつきませんでしたが、瞳がとても澄んでいて綺麗な顔立ちをされていました。
「パーティーの参加者の御令嬢か?」
沈黙を破るように、私に話しかけてくださいました。出来るだけ優しい口調で話そうとしているのが伝わってきます。
こくりと頷くと、男性は言いました。
「そうか、私もだ。少しだけ外の空気を吸いたくてな。...だがあまり私はこういう場所には向いていないようだ」
少しだけ寂しそうな声色がして男性の方へと視線を向けると、男性も私を見つめていました。
ドクンっ...
視線が絡みあった瞬間、私の中でどくどくと心臓が音を立てました。
何だか落ち着かなくなり、そわそわとしている様子に気がついたのか、「...すまない。やはり怖がらせたようだな」
何か勘違いをしたように寂しげな顔をしたかと思うと、「会場はこっちだ。途中まで案内しよう」
そう言って私に背を向け、歩き出しました。
「あのっ、私...」
怖がってなんかいません。何故だか分からないけれど、心臓が落ち着かないんです。
そう言いかけて、これは言っても良い言葉なのかと思い再び口をつぐむと、男性は背を向けたまま言いました。
「安心しろ。中まではついていかない。私と変な噂が立つのは嫌だろう」
しばらく歩いた後、「会場はこのまま真っ直ぐ歩けば着く」といい、男性はさっと私のそばを離れてスタスタと歩いて行ってしまいました。
*****
「ソフィア!全くどこまで行っていたの?」
会場に着くと、カトレーヌが心配そうな顔で近寄って来て、ぎゅっと手を握りました。
「少しだけ迷ってしまって。心配かけてごめんなさい」
「もうっほんとよ!こういう場所って危ないこともあるんだから気をつけるのよ。本当に何もなかったのよね?」
「ええ。名前はわからないけれど、案内してくださった方がいたの。凄く背が高くて体格が良くて...」
「あら。もしかしてアクリウス公爵様かしら」
「アクリウス公爵様...?」
「いや、でもまさかね。あの方は冷たくて無愛想で有名だもの。それより、さっきマリウス公爵様がいらっしゃったのよ!」
興奮気味に話すカトレーヌをよそに、私は先程の男性が気になって仕方がありませんでした。
アクリウス公爵様といえば、皇帝に仕える騎士様で騎士団長を務める雲の上のようなお方。
今までパーティーに参加してこなかった私は、噂こそ聞いたことはあるものの顔や姿は見たことがありませんでした。
あの方が、アクリウス公爵様なのかしら。
それにしても...
さっきの男性の発言を思い返すと、私は何か誤解させてしまったままのような気がしてなりませんでした。
あの時、どうして怖がってなんかいないとお伝えしなかったのかしら。
寂しそうな横顔を思い出し、胸がぎゅうっと締め付けられる感覚がしました。
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