芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

22話

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 天聖国には羽州うしゅう虎州こしゅう蘇州そしゅう渓州けいしゅう梠州ろしゅうの五つの州がある。王族が住まう州である羽州は王都として栄えている。今回の宴には各州二名ずつの上級貴族の令嬢が招かれている。
 宴の会場は円形状になっていて内側を向くように席を用意する。中心にある舞台で舞や演奏を披露する催しらしい。

「あなたには蘇州から来られる方の一人についてもらいます」
「かしこまりました。具体的に給仕係は何を行えばいいのでしょうか」

 突然の指名のため普段どんな仕事をしているのかなど、全く前情報がない。そんな状態で接待をしても逆に失礼なことをしてしまいかねないので、改めて女性に確認する。

「そんなに難しいことはしないから安心して。運ばれた料理の簡単な説明や飲み物を注ぎ足したり、いわば小間使いのようなものね」
「なるほど、それだったら私にもできそうですね。安心しました」
「あ、でも、あなたに担当してもらう方は別で注意事項があるの。――絶対に林檎の入っているものをお渡ししてはだめよ」

 ほっと胸をなでおろした蓮花に慌てて女性が言葉を加えた。なぜ林檎かと疑問に思ったが答えはすぐ女性が教えてくれた。

「蘇州のご令嬢、ソウ 綉礼シュウライ様とおっしゃるんだけど、林檎が入っているものを食べると肌に発疹が出来てしまうようなの」
「発疹が……。確か聞いたことがあります。何かしらの特定の食物を食べると発疹や呼吸困難の症状が出る人がいるとか」
「そうよ。綉礼様は林檎で症状がてるの。献立の中にタレに林檎が含まれているものがあるから、それは別のものと取り替えるように。忘れないでね」
「分かりました」

 人の身体に関わることなので間違いは許されない。蓮花は一層気を引き締めて仕事に当たろうと改めて決意した。



 
 開始時間が近づくと給仕係全員で会場に向かい、それぞれの担当の机で待機の指示が出る。内側にある舞台の上部は吹き抜けになっていて、沢山の光が当たっていた。昼間は太陽の光が差し込み、夜になると舞台の周りに明かりを灯す作りのようだ。
 
  蓮花が周りを観察していると、隣の机で待機している子が暇を持て余していたからか話しかけてきた。蓮花は周りの様子を見つつ大丈夫そうだと確認するとそのお喋りに乗ることにした。


  
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