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動乱
78話
しおりを挟む宮廷では着々と宴の準備が進んでいた。
出される料理の献立や、舞や演奏の演目。前回の交流を目的とした宴の時とは違い、妃選びが目的ということもあり、招かれる令嬢が自ら披露するものもある。
蓮花は給仕係の上役から正式に配置を伝えられ、日々作法の確認を行っている。
演目を見る機会があったので簡単に確認をしていると綉礼も招かれており、どうやら綉礼は歌を披露するらしい。
綉礼の口からどんな歌声が聞けるのか今から楽しみだと蓮花は笑みを浮かべる。
「今日も宇民は借り出されてるのかい? 働き者の宇民がいないと忙しいったらありゃしないよ。早く返して貰えるように交渉して欲しいもんだね」
蓮花は忙しい、忙しい、と呟きながら歩き去る男性に気を取られる。
そう、ここ一週間宇民が厨房に現れなくなったのだ。今は宴の準備で忙しいので恐らく宇民も別の部署に助っ人に行っているのだろう。
蓮花も急遽給仕係に割り振られたので宇民も大変だなあと心の中で呟く。
気付けば宴まであと十日程となっていた。
蓮花は最後まで気を抜かないように頭の中で給仕の手順を反芻することにした。
一日の業務が終わり、宮廷を後にした蓮花は市場に買い出しに向かうことにした。
このところ科挙に向けての勉強をより熱心にしている王静に何か甘いものでも買って帰ろうと思いついたからだ。もちろん小さな王偉や玲玲に見つかると王静の分も欲しがりかねないので二人の分と蘭翠の分も買って帰ることにした。
ここ最近はずっと宮廷と家の往復ばかりだったので久しぶりの市場の活気に、蓮花はなんだか懐かしい思いになる。
目当ての甘味屋を見つけて商品を決めて店主に声を掛ける。
「おじさん、これとこれ二つずつくれる?」
「お! 蓮花ちゃんじゃないか! 最近姿が見えなくて寂しかったよ」
冗談めかしてそういう店主に笑い声をあげる。
「もう、おじさんたら。最近ちょっと忙しくてね! 今日は弟達にお土産持って帰ろうと思って」
「うちを選んでくれるなんてありがたいねえ。ほい、商品だよ」
「ありがとう、お代はちょうどだから!」
「毎度あり!」
お目当ての物を手に入れた蓮花は家の食料の補充もついでにしようかとそのままぶらつくことにした。
少しだけのつもりがじっくり見て回るうちに、意外と大荷物になってしまい蓮花は自分の計画性の無さに呆れた。
しかしどうにかして持って帰るしかないと覚悟を決めて歩き始めた時だった。背後から蓮花を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ、蓮花じゃん」
「李星! 偶然ね、あなたも買い物?」
振り返った先にいたのは李星だった。
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