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朝議
95話
しおりを挟む紅龍から文を貰った翌日。渧淳は綺麗な紅の衣を身につけていた。
皇帝は緑の服を着ることが多かった。しかしこれからは紅龍の時代だ。そして自分はその義父となるのだから、紅の髪色に合わせた紅の衣を用意させていた。
こうすることにより代替わりが行われたことが明確になる。
渧淳は鏡で服の乱れがないかどうか確認したあと、朝議が行われる間へと向かった。
入口の前には既に紅龍と側近の武官がいた。
「紅龍皇子、ご即位誠におめでとうございます」
「これも梠尚書のおかげです。人員掌握の方法を教えていただきましたから、後宮の武官たちを味方につけることが出来ました」
「後宮での紅龍様の手腕はこちらの耳にも入ってきておりました。さすがは紫僑様の血を引かれている」
その一言に紅龍は少し眉を上げたが、すぐ笑顔を見せた。
「梠尚書こそ、後宮に忍び込む手腕はお見事です。父上に見つかればただではすまなかったでしょうに」
「私と紫僑様の間を隔てられるものなどございませんよ。……それからあなたの父はもう私です。あの男のことは父とは呼ばないように」
渧淳は目をぎらりとさせ紅龍に言い聞かせる。
「それは失礼しました――義父上。それでは行きましょう。もう皆、揃っています」
紅龍は入口に立つ武官に指示し扉を開ける。中に居る各部署の尚書、侍郎が一斉にこちらに目を向け驚愕する。
つい先日まで自分たちと同じ席に着いていた渧淳が龍人の紅龍の後ろに着いて歩いているのだから。
紅龍と渧淳は周りから盛れる驚愕の声をものともせず歩き、玉座へと紅龍は腰を下ろす。
少しの間目を閉じ、何かを感じるかのように息を吐いた。そして鋭い目付きで周りを見渡した。
「今日はここに集まってくれたもの達に知らせがある。数日前の宴で飛龍兄上が毒に倒れ、二日前に身罷られた。そしてここ数ヶ月とこに伏せっていた皇帝陛下にとってその知らせは、衰弱していた体に追い打ちをかけるものだった。――陛下は後を追うように昨日身罷られた」
そう紅龍が告げ時の反応は様々だった。
頭を覆い青ざめ涙するもの。渋い表情で地面を見つめるもの。薄ら笑いを浮かべるもの。
ある程度の観察ができたところで紅龍は側近の武官――湖玉に何かを命じ、湖玉は側を離れる。そして紅龍の咳払いがその場に響き、静まり返る。
「皇帝陛下、そして皇位継承者である飛龍兄上が亡くなられたことにより私、姜 紅龍が皇帝となりこの天聖国を治める。今日は皆にそれを通達するため集まってもらった」
「おめでとうございます、皇帝陛下」
渧淳が頭を下げると、先程まで薄ら笑いを浮かべていたものたちがそれに倣い祝いの言葉を続ける。
「それから梠尚書には私の後見となってもらことによりなった。それに伴い我が母晏紫僑と結ばれ、私の義父となる。梠尚書にはこれからも宮廷を共に盛り立ててもらおうと思っている」
その言葉と共に、先程湖玉が消えた扉から湖玉と、美しい女人――紫僑が現れた。
普段後宮にいるはずの紫僑がここに来るとは思っていなかった高官たちは驚きの声を漏らす。
渧淳は待ちきれないと言わんばかりに紫僑の元へと行き手を取り、紅龍の横へと連れてゆく。
玉座に座る紅龍、その横に佇む渧淳と紫僑。
皇帝――泰龍に忠信を誓っていた家臣たちはこれが新しい主達となるのかと絶望した。
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