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決断
109話
しおりを挟むあれから李星に別れを告げ帰宅した蓮花。
夕食を終え、自室に戻ろうとした時に王琳から文を渡される。誰からだろうと文の後ろを見るとそこには《飛》と書かれていた。
驚きつつ王琳にお礼を言って自室に下がる。
何が書かれているのだろうと緊張しながら文を開く。
【明日蓮花の仕事終わりに、初めて会ったあの木の場所で待ってる】
たった一文が綺麗な筆跡で書かれていた。
蓮花は李星の言葉を思い出す。何もせずに終わるより、出来ることはしてから終わりたい。蓮花もそう考えていた。
たとえそんな目で見られないと言われても。
身分が違うと言われても。
自分の気持ちを伝えずになかったことにはしたくない。
蓮花は明日の飛龍との時間に思いを馳せて眠りについた。
翌日、蓮花は終業の時間が近づくごとにそわそわしていた。
もうすぐで約束の時間がくる。早く来て欲しいような、来て欲しくないような。
しかし時の進みはそんなことは知らないと言わんばかりに進んでゆく。
「蓮花、今日はもう終わって大丈夫だよ。思っていたより明日の下準備が早く終わったみたいだ」
楊さんが笑顔で蓮花にそう言ってくれる。蓮花もその言葉に甘えて上がらせてもらうことにした。
荷物をもち手鏡を覗き、変なところがないか確認する。派手な化粧はできないが、少しでも好きな人には綺麗な姿で会いたい。
身なりを整え、高鳴る胸を抑えてあの木の下に向かった。
蓮花が木の場所に到着すると、まだ飛龍は来てなさそうだった。今のうちに、ともう一度鏡で自分の姿を確認し、前髪を整える。
「んんっ」
「え! ……飛様!」
「驚いたか?」
どこかから咳払いが聞こえたかと思うと木の後ろからひょこっと顔を出した飛龍がいた。
そういえば初めて会った時も飛龍は木の後ろ側にいた。まるで悪戯が成功したかのような 笑顔に、先程の様子を見られていたのかと恥ずかしくなる。
「もう、来てたなら仰ってください!」
「悪い悪い。今日は来てくれてありがとう。柳左僕射には言ってあるんだが、今日は一緒に夕食を取りたいと思ってるんだ。後からの確認で悪いが蓮花は大丈夫か?」
「もちろんです。ありがとうございます」
王琳が了承しているのであれば蓮花が断る理由は無い。
飛龍は蓮花を連れて歩き出した。
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