帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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仲間たちと挑戦

第26話 活動拠点

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 約束の時間、集合場所には既に莉々、星華、城介の三人が集まっていた。ハヤトが近づくと、莉々が元気よく手を振った。

「ハヤト、おはようございます!」
「おはよう。剛以外のみんなは、もう揃ってたか」

 ハヤトが挨拶すると、城介がスマートフォンを見ながら答えた。

「剛からメッセージが来ているぞ。直接現地で会おうとのことだ」
「どんな場所なんだろうね」

 星華が期待を込めた声で言った。

「行ってみよう」

 城介の案内で、四人は駅から徒歩10分ほどの場所にある高層ビルに向かった。ガラスとスチールで構成された近代的なビルは、周囲の建物の中でも特に高級感があった。

 ビルのエントランスに入ると、大理石の床が足音を吸い込むように静かで、温かみのある照明が落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

「ここが」
「剛のメッセージによると、ここの12階らしい」

 エレベーターで12階に上がると、廊下の突き当たりに立派な扉が見えた。どうやらそこが、目的地らしい。

「お、来たな! 待ってたぞ」

 扉が開いて、剛が満面の笑みで彼らを出迎えた。彼はいつものビジネススーツではなく、カジュアルな服装だった。

「さあ、入ってくれ」

 一同が中に入ると、そこは予想をはるかに超えた空間だった。ワンフロア全体を使った広々としたオフィスには、高級感のある家具が配置され、最新のオフィス機器が整然と並んでいた。窓からは都会の街並みが一望でき、自然光が室内を明るく照らしていた。

「すごっ!」

 莉々が息を呑む声を上げた。星華も目を見開いていた。

「剛、これは」

 ハヤトが問いかけると、剛は誇らしげに腕を広げた。

「Iron Village Entertainment、略してIVE。鉄村グループの完全子会社として立ち上げた新しいプロダクションだ。実は、もう会社として登記済みなんだ」

 その言葉に、一同は驚きの声を上げた。

「会社を立ち上げたのか。さすがだな」

 城介が感心した様子で言った。彼自身も会社経営者として、そうした動きの意味と影響をすぐに理解したようだった。

「そう、正式な会社だ。資本金は鉄村グループからの出資で、オフィスも機材も全て揃えた。これからは、このIVEの所属タレントとして活動してもらいたいと思っている」

 剛の説明は続いた。彼によれば、立ち上げたプロダクションは鉄村グループ傘下の子会社として、安定した経営基盤を用意し、高額機材の調達や人材確保も容易になるという。

「でも、こんな大規模な」

 ハヤトは戸惑いを隠せなかった。当初は仲間内での小さな活動のつもりだったが、気がつけばプロフェッショナルな体制が整えられていた。

「俺は、この活動を全力でサポートしたいんだ」

 剛の声には真摯さがあった。

「記憶を物語として伝えていく―その活動には、最高の環境が必要だと思ったんだ。さあ、施設を案内するぞ」

 剛は一同を奥へと案内した。広いフロアの一角には、最新のPC、高性能カメラ、録音機材などが並ぶスペースがあった。

「ここが配信スタジオだ。グループ内の電機部門の最新技術を惜しみなく投入してある」

 莉々はその説明を聞くや否や、機材に近づき、興奮した様子で確認し始めた。

「すごい! これは最新のキャプチャーシステムですね! そして、この編集ソフト。これ、企業向けソフトライセンスで利用する場合でも凄く高いんですよ」

 彼女の目は輝き、手は専門家のようにスムーズに機材を操作していた。

「気に入ってもらえたようだな」

 剛は満足そうに微笑んだ。

 続いて、オフィススペースが紹介された。メンバーそれぞれに専用のデスクが用意され、会議室や応接室なども完備されていた。

「将来的な拡張も視野に入れてある。必要なら、上下のフロアも借りられる手はずになっている」

 そんな説明をしながら、剛は一同を別の部屋へと案内した。そこには数人の人物が待機していた。

「そして、これからみんなをサポートしてくれるスタッフたちだ」

 剛の紹介に従い、スタッフたちが一人ずつ挨拶した。編集のプロフェッショナル、音響技術者、マーケティング担当など、それぞれの分野のスペシャリストが揃っていた。

「彼らは鉄村グループから『出向』という形で来てもらった。グループ内で希望者を募ったんだ」
「希望者?」

 星華が首を傾げた。

「そう、実はVtuber活動に興味を持っている社員が結構いてね。特に、若手社員から多くの応募があったんだ」

 そう説明すると、スタッフたちも頷いた。彼らの中には、Vtuber文化に詳しい若手もいれば、メディア制作の経験豊富なベテランもいた。

「よろしくお願いします」

 ハヤトたちとスタッフが互いに挨拶を交わすと、和やかな空気が流れた。

 案内が一通り終わり、会議室に集まった一同。ハヤトは改めてこの状況の規模の大きさに驚いていた。

「剛、ここまでやってくれるとは思わなかった」
「当たり前だろう。俺たちの物語を伝えるんだ、中途半端なことはしたくなかったんだよ」

 剛は真剣な表情でそう言った。

「それに、これはビジネスとしても可能性がある。単なる趣味の活動ではなく、きちんとした事業として成り立たせていきたいんだ」

 城介が感心したように頷いた。

「さすがだな、剛。ビジネスの視点も忘れていない」
「それぞれの契約や待遇については、個別に相談させてほしい」

 剛は机から書類を取り出した。

「基本的には鉄村グループとの業務委託契約になるが、報酬や活動条件なども含めて、一人ひとりの状況に合わせて調整するつもりだ」

 城介はすでに書類に目を通し始めており、星華も興味深そうに覗き込んでいた。莉々は少し緊張した様子だったが、期待に目を輝かせていた。

「いつから始められそうだ?」
「莉々の準備が終われば、いつでも大丈夫、という感じかな」

 ハヤトの問いかけに、剛が答える。そして、皆の視線が莉々へ向けられる。

「私の準備も、すぐに終わると思います。3Dモデル化したアバターのデータをこっちに持って来て、動きの調整をすれば大丈夫かな。それから、配信ソフトの設定とか見直して――」
「プロモーションを進めて、初配信の告知をして。という感じで、約1ヶ月後ぐらいには、配信開始できるだろう」

 莉々の状況を聞き、城介が予定を調整してく。それを聞いて、皆が把握していく。実現まで、驚くほどスピーディーな展開だった。

「よし、決まりだな! これから、Iron Village Entertainmentとして、新たな冒険の第一歩を踏み出そう」

 剛が手を差し出すと、他のメンバーも続いて手を重ねた。五本の手が重なった瞬間、かつて異世界で命を懸けて交わした誓いの記憶が鮮明に蘇る。それぞれの表情に決意と懐かしさが交錯する。

 それは、現代での新たな「勇者の冒険」の幕開けを告げるかのようだった。
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