帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

文字の大きさ
25 / 53
仲間たちと挑戦

第25話 アバターの再現

しおりを挟む
 星華からの連絡は、ハヤトが警備会社の仕事を終えて帰ってきた直後に入った。

「ハヤト、今日は時間あるかしら? イラストレーターとの打ち合わせ、進展があったの」
「ああ、もちろん。会って話す? それとも電話で?」
「できれば会いたいわ。大事な話だし、見せたい物もあるから」

 約束した時間になり、玄関のチャイムが鳴った。ハヤトは扉を開けて、彼女を迎え入れた。

「出迎えありがとう。仕事だったのよね? 調子はどう?」
「うん。かなり慣れてきたよ。それより、イラストレーターとの話はどうだった?」

 廊下を歩きながら、会話を交わす。リビングに入って、二人は向かい合うようにソファーに腰掛けた。星華は、いつもの冷静さで話し始めた。

「順調よ。私がメインで打ち合わせを担当したけど、皆からの要望はしっかり伝えたわ」

 星華の言葉に、ハヤトは感謝の気持ちを込めて頷いた。

「イラストレーターの沢田さんも、かなりやる気でね。『異世界から現代に転移してきた勇者とその仲間たち』っていう設定を聞いて、興奮しちゃって。特に、Vtuberとして異世界の記憶を語るっていうコンセプトに惹かれたみたいね」

 ハヤトは感心した表情を浮かべた。異世界の記憶は、フィクションとして語れば、現代の人々にとって新鮮な物語になるだろう。それは彼らの実体験でありながら、聴衆にとっては創作として受け取られることになるはず。

「それで、デザインはどうなった?」

 星華はカバンの中から、タブレットを取り出して操作しながら答えた。

「基本的には、異世界での姿をそのまま再現するっていう方針で大丈夫そう。ほら、記憶にある姿を再現してもらった。私たちが生まれ変わった今の姿とは明確に違うもの」
「なるほど。確かに懐かしいな」

 デザインを見て、ハヤトは異世界の記憶を鮮明に思い出した。画面上のキャラクターは、まさに彼が知っていた仲間たちそのものだった。見ていると、最後の戦いの情景までが脳裏に浮かび、胸が熱くなる。仲間たちの犠牲を思い出し、少し泣きそうになるぐらい。

「ただ、ハヤトのデザインだけは……少しアレンジをお願いしたのよ」
「アレンジ?」
「あなたは異世界の姿をそのまま再現したら、今と変わらない姿が完成してしまうかもしれない。だから、身バレするリスクを避けるため、忠実に再現しすぎないように色々と変更してみたの」
「なるほど、配慮してくれてありがとう」
「あくまでもネット上でのアバターだから。これが、デザイン案」

 見せてもらったデザインは、現実の自分よりもカッコよく描かれていた。このデザインを見て、自分という感じがしない。けど、カッコよく書いてくれるのならいいかな。そう考えて、ハヤトはそれを異世界での自分の姿として受け入れることにした。

 その日、ハヤトと星華の二人で一緒にデザイン案を確認し、細部についての調整点を話し合った。



 週末の夜、ハヤトのマンションには星華と莉々、城介もやって来た。完成したデザインを4人でチェックすることになった。

「剛は?」
「重要な取引の関係で、どうしても抜けられないそうだ。彼の分のデザインも一緒に確認して、後でデータで送ることになっている」

 ハヤトの質問に城介が答える。残念ながら、剛は仕事の都合で来れないという。

 四人はリビングのソファに腰を下ろした。テーブルの上には、星華が持ってきてくれたタブレット。夜景の見える窓際から柔らかな光が差し込み、集まった仲間たちの表情を優しく照らしていた。

「もう見ました?」

 莉々の問いかけに、ハヤトが答える。

「うん。俺と星華は先に」
「なるほど。じゃあ、俺達もちょっと見させてもらおうか」

 ハヤトの答えに頷いて、それを聞いた城介がタブレットを手に取って操作する。

「私も」

 その横から、莉々が覗き込むようにして画面を見ていた。

「なるほど。これは、懐かしいな」
「うん、懐かしい。あの頃の私たちだ」

 画面に表示されたアバターを見て、二人の表情が柔らかくなる。その姿を見て、異世界での日々を思い返していた。精緻に描かれたイラストは、彼らの記憶を呼び起こすに十分な完成度だった。武器や防具、装飾品の細部まで記憶通りに再現されていて、まるで過去の写真を見ているかのような感覚に襲われる。

「いい感じですね」
「これで、問題なさそうだ。剛も納得するだろう」

 それから、色々と考える莉々と城介。

「このデザインから3Dモデルを生成して、モーションを割り当てることになります」

 莉々が専門的な視点から説明を始めた。彼女は既に頭の中でプログラムの構造を組み立てているようだった。画面上のキャラクターに命を吹き込むためのロードマップが見えているかのようで、自信に満ちた表情で語る。

「最初は基本的な動きだけで、徐々に表情や細かい動きも加えていく予定かな」

 一方、城介は別の角度から考察していた。彼はタブレットを手に取り、各キャラクターを順番に見ながら分析していく。

「マーケティング的には、このデザインはかなりインパクトがある。視聴者の興味を引くだろう。特に異世界ファンタジーの流行も手伝って、注目を集めやすいと思う」

 その後、それぞれのイラストの細部をチェックしていく。装備品の細部、表情の微妙なニュアンス、立ち姿の雰囲気。記憶通りに再現されていることに、改めて細かくチェックしたことで見えてくるものに、皆で感嘆の声を上げた。ここまで深く書き込んでくれるなんて、と感動する。

「星華、君の伝え方が完璧だったんだな」
「ありがとう。でも、本当に沢田さんの才能よ。私の説明だけでここまで再現できるなんて……」

 星華は少し照れたように微笑んだ。彼女の手がタブレットの画面をなでるように触れる。それは、失われた過去の仲間たちの姿で再会できたような喜びの表れだった。記憶に残っていた大切なものが、こうやって再現できた。それが、とても嬉しい。

「次のステップは3Dモデル化ですね。それから実際の動きのシミュレーションを行って」
「配信の内容も考えないと」

 ハヤトが言った。彼は窓の外を見つめながら、自分たちの物語をどう語るべきか考えていた。

「異世界での冒険を、どんな風に語ればいいかな?」
「最初の召喚から始まって、仲間たちとの出会い、冒険、そして最後の決戦まで……時系列に沿って語っていくとか」

 城介の提案に、ハヤトは考え込むように頷いた。そんな会話をしていると、莉々が笑顔で割り込む。

「実は、それも考えていることがあるんです」
「どうするんだ?」
「RPGのゲームにして……っと。これを語ると長くなりそうなので、とりあえず今はデビューに関する課題に集中しませんか?」
「たしかにな。でも、ゲームか。それも面白そうだ。いずれ詳しく聞かせてくれ」
「もちろんです!」

 莉々は嬉しそうに目を輝かせた。彼女の頭の中には既に具体的なアイデアがあるようだが、今はそれよりも優先して考えるべきことがある。全員がそちらに集中するべきだという意見に同意して、デビューに向けての具体的な準備について話し合った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

俺の武器が最弱のブーメランだった件〜でも、レベルを上げたら強すぎた。なんか伝説作ってます!?〜

神伊 咲児
ファンタジー
守護武器とは、自分の中にあるエネルギーを司祭に具現化してもらって武器にするというもの。 世界は皆、自分だけの守護武器を持っていた。 剣聖に憧れた主人公マワル・ヤイバーン。 しかし、守護武器の認定式で具現化した武器は小さなブーメランだった。 ブーメランは最弱武器。 みんなに笑われたマワルはブーメランで最強になることを決意する。 冒険者になったマワルは初日から快進撃が続く。 そんな評判をよく思わないのが2人の冒険者。立派な剣の守護武器の持ち主ケンゼランドと槍を守護武器とするヤーリーだった。 2人はマワルを陥れる為に色々と工作するが、その行動はことごとく失敗。その度に苦水を飲まされるのであった。 マワルはドンドン強くなり! いい仲間に巡り会える! 一方、ケンゼランドとヤーリーにはざまぁ展開が待ち受ける! 攻撃方法もざまぁ展開もブーメラン。 痛快ブーメラン無双冒険譚!! 他サイトにも掲載していた物をアルファポリス用に改稿いたしました。 全37話、10万字程度。

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...