帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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仲間たちと挑戦

第30話 異世界の記憶

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 ハヤトは深呼吸をして、記憶を辿り始めた。スタジオの空気が一瞬凝固したように感じる。

「約10年前、俺はある日突然、まばゆい光に包まれて……」

 ハヤトは言葉を選びながら語った。その声には懐かしさがあった。

「気がつけば見知らぬ世界にいた。そこで最初に出会ったのが」

 ハヤトがリリアのアバターに視線を向けると、その表情が柔らかくなった。彼の声のトーンも自然と優しくなる。

「リリアだった」

 そう言われたリリアのアバターも懐かしい記憶を辿るように目を細めた。彼女の瞳には過去の光景が映っているかのようだ。

「私は……とある儀式の担当者だった」

 彼女も言葉を選びながら話した。その慎重さには、何かを隠しているわけではなく、表現を探っている様子が窺える。大切な思い出を語るために。

「そして、その儀式によって現れたのがハヤト。予想していたのとは少し違った人が来て」

 彼女は含み笑いをした。その笑みには、当時の困惑と今の愛おしさが混ざり合っていた。

「最初は戸惑ったわ」

 ハヤトが一番最初に出会った仲間がリリアだった。冒険の始めから、仲間たちとの出会い。もう10年も前のことだから記憶も薄れている。だけど、はっきり覚えていることもある。それを思い出しながら、語り合う。

 莉々が求めていたのは、きっとこういう場所なんだろうとなとハヤトは理解した。異世界のことを隠すことなく語り合える場所。ずっと隠し続けるのは大変だから。

 自分が警備会社に就職して、全力で体を動かせる場所を求めたように。仲間たちと異世界のことを話し合える場所。仲間たちの心の拠り所になれるように。向こうの世界のことを忘れないために。

 城介はモニターの端でこれらの反応を分析するように目を走らせながら、ジョンのアバターも昔話に参加する。

「その頃、俺は王都の市場で情報屋として生きていた。勇者を召喚するっていう噂を耳にして、それを探っていた」

 ジョンのアバターは洗練された動きで、言葉に合わせて軽く肩をすくめる。その仕草には、情報屋だった彼の性格が表れていた。

「ジョンとの出会いも偶然だったな。俺は勇者として認めてもらうための試練を与えられて、古い遺跡に向かうことになった」

 ハヤトは過去を思い出すように視線を落とした。

「最初は、本当に色々と大変だったな。正直、怖かったよ」

 ハヤトは素直に認めた。

「何もわからない状態で、そんな場所へ行けって言われたんだから」
「でも、あなたは行った」

 リリアの声は静かに、しかし何かを確かめるように響いた。

「それが、私があなたを信じるきっかけになったの」

 彼女の言葉には、長い時を経ても色褪せない確信があった。

「俺も、偶然だが仲間として同行することになって、今まで関係が続いている」

 最初の冒険は、ハヤトとリリア、それからジョンの三人で。そんな会話をしている最中、小さなハプニングもあった。画面上のアバターが一瞬フリーズして、不自然な角度で固まってしまう。

「あれ?」
「モーションの追跡が一瞬途切れたみたいね」

 莉々が素早くキーボードを叩く。眉間にかすかな緊張の皺が寄るが、その場の対応は冷静そのもの。

「大丈夫、すぐに復旧するわ」

 一瞬の沈黙の後、アバターの動きが再び滑らかになった。急いで対処して、すぐに問題は解消された。

 コメント欄でも反応があった。

-リアルタイムで直したの?
-すごい技術力!
-一瞬だけだったね、全然気にならない
-むしろ生々しさが増した感じ

 ハヤトはなるべく問題には触れずに、会話を再開する。

「とにかく、ジョンと市場で出会った時に」
「そんなこともあったな」

 懐かしそうに応じるジョン。

「君の情報がなければ、俺たちは何度も危機に陥っていただろうね」

 ハヤトの言葉には、かつての苦難と仲間への感謝が込められていた。

 それから、セレスティアのアバターが優雅に頷いた。その仕草には気品があって、かつてのエルフの神官の面影を感じさせる。

「私とハヤトが出会ったのは、彼が負傷して森の神殿に運ばれてきた時ね」
「あの時は」

 ハヤトは言葉に詰まり、どこか遠くを見るような目をした。

「あの世界に召喚されて、しばらく時間が経った頃。戦いを重ねて運良く生き残ったが、慢心していた時期だった」

 その声には自省の念が滲んでいた。

「あれもこれも助けようとして、無謀という言葉がぴったりな状況だったわね」

 セレスティアは優しく微笑んだ。

「でも、その時のあなたの選択が、多くの者たちを救ったのも事実」

 彼女の言葉には、過去への肯定と受容が感じられた。

「ガレットと出会ったのは、それよりもっと後のことだった」

 ハヤトは話題を変えるように、別のアバターに視線を移した。ガレットのアバターは他の四人と比べて体格が良く、その存在感はスクリーンを通しても伝わってくる。

「そうだな」

 ガレットのアバターが深く頷いた。その低い声には、力強さの中に温もりが感じられる。

「あの戦いで、危機に瀕していた我々を助けてくれたお前たちを見て」

 ガレットがその時のことを思い出し、言葉を選びながら続けた。

「最初は人間なんて信じられなかったが、お前たちが戦う姿を見て、共に歩むことを決めたんだ」

 彼らは交互に語り、それぞれの視点から同じ出来事を思い出しながら話した。時には冗談を交えながら、時には真剣に、かつての冒険の記憶を紡いでいく。

 出会いの思い出を語っているだけで、あっという間に時間が過ぎていく。それだけ彼らの記憶は濃密だった。

「おっと、もうこんな時間だ」

 終わりの予定の時間になっていたことに気付くハヤト。コメント欄は熱気に満ちていた。

-このストーリー、めちゃくちゃ引き込まれる!
-妙なリアル感があるな
-キャラクター同士の絡みが自然すぎる
-アバターの完成度が高いからか、感情が伝わってくる
-それで、続きは? どうなった?

 莉々はコメントを見ながら小さく微笑んだ。彼女の願いは叶い始めていた。異世界での記憶を、この世界の人々と共有している。ハヤトの活躍を、多くの人が知ってくれている。まだまだ、彼の英雄譚は始まったばかりだ。

「とりあえず、今日の配信はここまで、ですね」

 まだまだ話足りない。心残りな気持ちを抱えながらも、莉々は締めくくりの言葉を述べた。コメント欄も反応する。

-えー、もっと聞きたい
-続きが気になる
-すごい話だった。のめり込んだ

 視聴者たちのコメント。楽しんでもらえたようで良かった。そう思うハヤトたち。

「続きは、次回の配信でお話ししましょう」

 ハヤトが優雅に一礼した。

「皆さん、今日は本当にありがとうございました」

 ハヤトが柔らかな笑顔で。

「ありがとうございます」

 セレスティアが穏やかに微笑み。

「またな」

 ジョンが軽く手を振って。

「また配信に遊びに来てくれ」

 ガレットが力強く頷く。

「待ってるね」

 そして、リリアが柔らかな笑顔で締めくくった。

 五人のアバターが次々と視聴者にお別れと感謝の言葉を述べ、ハヤトが配信終了のボタンを押した。そして、ほっと一息つくハヤト。

「ふぅ……」

 配信が終わった瞬間、彼らはそれぞれほっとした表情を見せた。緊張から解放されたように肩の力が抜ける。特にメインで喋っていたハヤトは椅子に深く身を沈めて、疲労と達成感が混ざった表情を浮かべていた。

「ごめんなさい。一瞬、モーションキャプチャーのシステムが不具合を起こしてしまって」

 莉々は申し訳なさそうに言った。彼女の完璧主義的な性格からすれば、小さなミスでも気にしてしまった。

「それは、仕方ないさ。すぐ対処できたし、大きな問題にならなくて良かった」

 ハヤトが励ますように言う。どんなに完璧に準備を完了したと思っても、そういうこともあるだろう。だから、仕方ない。

「そう、ですね」

 莉々は一瞬、悔しそうな表情を浮かべたが、すぐに決意の表情に変わった。その眼差しには、次への挑戦への意欲が燃えていた。

「次回までには完全に修正しておきます」

 ハヤトは莉々を信頼していた。彼女の真剣な目を見れば、次回までには必ず問題を解決するだろうことが分かる。それに、今回のトラブルも大きな問題にならなかったのは幸いだった。

「それにしても、予想以上の反応だったな」

 城介がタブレットを手に、データを確認していた。その表情には、満足感が浮かんでいる。

「視聴者のコメント、すごく温かかったわね」

 星華が感慨深げに言った。

「久しぶりに仲間と過去を振り返るのは……不思議な感覚だったわ。でも、この世界で私たちの物語を共有できるというのは、いいものね」
「ですね!」

 星華と莉々が頷き合っている。

「楽しかったな」

 剛も、モニターを見ながら満足そうに頷いていた。

 スタジオに拍手が沸き起こった。

「お疲れ様でした!」
「素晴らしかったです!」
「初回から大成功ですね!」

 スタッフたちが次々と労いの言葉をかけてくる。その表情には純粋な興奮と感動が浮かんでいた。

 視聴者も多く、ハヤトたちの話を興味を持ち聞いてくれて、コメント欄の反応も良かった。

 こうして、ハヤトたちの初配信は大成功のうちに終わった。かつて異世界で戦い抜いた彼らの物語は、現代の技術を通じて新たな命を吹き込まれ、多くの人々の心に届き始めたのだった。
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