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プロポーズ
第48話 大学受験合格
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雪解けの季節を迎えた三月のある日、ハヤトのスマートフォンが鳴った。
「ハヤト! 無事、合格しました!」
莉々の弾んだ声が耳に飛び込んできた。ハヤトは思わず立ち上がった。彼女が受験結果を知る日だということは分かっていたが、この数日間、彼は密かに落ち着かない気持ちでいた。
「おめでと! 第一志望の大学だね」
「そうです! コンピュータサイエンス専攻の」
莉々の声は興奮と喜びに震えていた。その声からは、努力してきた成果を実感している充実感が伝わってきた。ハヤトはほっとした表情を浮かべながら、彼女の喜びを自分のことのように感じていた。
「この大学、人工知能やVR技術の研究でも最先端なんです。プログラミングについて、もっと深く学べる環境があって」
莉々は、自分によく合った大学を選んだ。彼女の声は嬉しさのあまり早口になっていた。情熱を持って語る彼女の姿が、電話越しにもはっきりと想像できる。ハヤトは微笑みながら、それを聞いていた。
「本当におめでとう。君の努力が実ったんだね」
「ありがとうございます! 無事に合格できたのは、ハヤトのおかげです。配信活動を代わりに頑張ってくれたから、私は勉強に専念できました」
莉々の声には心からの感謝が込められていた。ハヤトはそんな彼女の言葉に、少し照れくさい気持ちになった。
「俺は応援していただけだよ。合格したのは、君の実力だ」
電話を切った後、ハヤトはすぐに城介に連絡を入れた。この知らせは、仲間たちと早く共有したかった。
「莉々が合格したよ」
「そうか! よかった」
城介の声にも喜びが感じられた。彼もまた、この結果を心待ちにしていたのだろう。
「お祝いの会をしよう。俺のマンションでどうだろう? 彼女の卒業式の後で」
「いい考えだ。準備は任せてくれ。星華と剛にも連絡しておこう」
すぐに賛成して動き始める。いつものことだけど、彼の行動力は頼もしいなと思うハヤトであった。
それから三週間後、莉々の高校卒業式が行われた。桜の花も少しずつ咲き始め、春本番を告げる陽気の中、彼女は学生生活の区切りを迎えた。
その日の夕方から、ハヤトのマンションで大学合格と高校卒業を祝う会が開かれる予定になっていた。
玄関のドアベルが鳴り、ハヤトが開けると、莉々が立っていた。彼女は卒業証書を入れた筒を大事そうに抱え、晴れやかな表情を浮かべていた。
「高校卒業おめでとう、莉々」
ハヤトが優しく言うと、彼女は嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます。今日は、本当に不思議な気分です。高校生活を終えるのは寂しいけど、新しい一歩を踏み出せるのが楽しみです」
リビングに入ると、城介、星華、剛が待っていた。部屋は「おめでとう」の文字が書かれた横断幕で飾られ、テーブルには料理やケーキが並んでいた。今日のために、かなり気合を入れて準備した城介たち。
「莉々、おめでとう!」
皆が口々にお祝いの言葉を掛ける中、星華が彼女に近づき、優しく抱擁した。
「来てくれたんですね、星華」
「もちろんよ。こんな大切な日に来ないわけにはいかないわ」
星華が優しく彼女を抱きしめる。莉々は、それを嬉しそうに受け入れた。
「莉々が合格したのは、難関中の難関だろう。流石だ」
剛が感心した様子で言った。彼の声には本心からの尊敬が込められていた。
「これは、特別なお祝いの席だからね」
城介が高級シャンパンを取り出した。細く長いフルートグラスに金色の泡が弾け、華やかな雰囲気が広がる。
「もちろん、ちゃんと未成年用にノンアルコールも用意してある」
皆からお祝いのプレゼントが贈られた。ハヤトは新しいカバン、城介からは最新のプログラミング関連の書籍セット、星華からは大学生活を健康に過ごすためのアロマセットと小型の空気清浄機、剛の家族からは楓、陸、葵の直筆メッセージが書かれたカード。そして、イラストレーターのサワからリリアのアバター姿をモチーフにした特別なイラスト色紙が届いていた。
「皆さん、本当にありがとうございます」
様々なお祝いに歓喜して、莉々の目に涙が浮かんだ。ひとつひとつのプレゼントを手に取り、彼女は深い感謝の気持ちを伝えた。
皆でケーキを切り分け、賑やかな歓談が続く中、莉々はハヤトに温かい視線を向けた。
「ゲーム開発に没頭したいときも、受験勉強に集中したいときも、いつも背中を押してくれて。本当に感謝しています」
彼女の言葉には、心からの思いが込められていた。
「俺達こそ、莉々に感謝しているのよ」
「そうよ。莉々には、本当に感謝しているの」
ハヤトの答えに、星華も同意して優しく言った。
「君のゲームのおかげで、私たちの異世界での記憶は形になった。とても話題になったし、とても嬉しかった」
「そうだな」
剛がそう言って、城介も頷く。
「あのゲームは、私たちの記憶の欠片。絆を形にしたものだから」
配信活動や、ゲームについて思いを馳せる莉々。いろいろな記憶が蘇ってくる。
「さて」
ハヤトがグラスを持ち上げた。部屋の明かりに照らされたグラスが輝きを放つ。
「莉々の合格と卒業、そして彼女の新たな船出を祝して、乾杯」
「乾杯!」
皆がグラスを合わせる音が響いた。その音色には、彼らの強い絆と新しい門出への祝福が込められていた。
その後の数時間、彼らは食事しながら、思い出話や将来の夢について語り合った。莉々は大学で学びたいことや、配信活動への復帰について熱心に話した。城介はビジネスの観点から助言し、星華は大学生活での健康管理について専門的なアドバイスを、剛はこれからの社会との関わり方について語った。彼らの会話は、異世界での経験と現代での知識が自然と混ざり合い、莉々にとって貴重な導きとなっていた。
徐々に夜が更けていき、最初に剛が家族のもとへ帰り、次に星華も病院の早朝勤務を理由に退出した。最後に城介も帰り際、ハヤトに意味深な視線を送った。
「じゃあ、後は任せるよ」
その言葉には、何か隠された意味があるかのようだった。ドアが閉まると、リビングには莉々とハヤトだけが残された。
「楽しい会でした。皆に祝ってもらえて嬉しかったです」
彼女は穏やかに微笑みながら言った。しかし、ハヤトには彼女の表情に何か別の感情が隠されていることが分かった。少し緊張した様子、そして決意のようなものが見て取れた。
片付けが終わり、二人はソファに腰掛けた。窓の外では、夜空に星が瞬き、静かな雰囲気が部屋を包んでいた。
「あの、ハヤトさん……」
莉々が真剣な表情になった。彼女はソファの端に座り、手を膝の上で組んでいる。
「……伝えたいことがあります」
彼女の瞳には決意の色が浮かんでいる。彼女は少し息を吸い、言葉を続けようとした。ハヤトはその意図を悟った。彼は静かに手を上げて、莉々の言葉を遮った。
「待って、莉々」
ハヤトは深く息を吸い、莉々と向かい合った。彼の心は決意で満ちていた。今夜、この瞬間、この場で自分の気持ちを伝えるべきだと感じていた。
「先に俺から、キミに伝えておきたいことがある」
莉々の目が大きく見開かれた。彼女はハヤトの真剣な表情に、何かを予感したように息を呑んだ。
「莉々……、そして、リリア。異世界でも、この世界でも、君との出会いは俺の人生を大きく変えた」
ハヤトの声は静かだが、揺るぎない決意に満ちていた。彼の目は莉々をまっすぐに見つめ、その中には長い旅路の末に見つけた確かな想いが浮かんでいた。
「異世界では勇者と賢者として共に戦い、この世界では仲間として支え合ってきた。でも、今の俺の気持ちはそれだけじゃない」
莉々の顔が赤くなり、期待に満ちた表情を浮かべる。彼女の呼吸が少し速くなり、ソファの上で体が少し緊張した様子だった。それをまっすぐ見つめて、ハヤトは続ける。
「どんな世界でも、君と一緒にいたい。結婚を前提に、俺と付き合ってくれないか」
莉々の目から涙があふれ出した。彼女は喜びに満ちた表情で、何度も頷いた。その顔には、異世界から現代まで、命を懸けて守ってきた最愛の人へのすべての感情が溢れていた。
「はい! はい、喜んで!」
莉々は感情を抑えきれず、勢いよく立ち上がった。そして、隣に座っていたハヤトの首に腕を回してギュッと抱きついた。密着する二人の間に流れる温かさ。しばらくして、莉々は顔を上げて照れたように言った。
「実は私も、同じことを言おうと思っていたんです」
彼女はポケットから小さな紙を取り出した。そこには彼女の気持ちを伝える言葉が丁寧に書かれていた。細かな字で綴られた想いの数々は、彼女がどれだけこの瞬間を考えていたかを物語っていた。
「ハヤトに、先を越されちゃいました」
彼女は明るく笑った。それは、異世界でのリリアの笑顔と、現代の莉々の笑顔が完全に一つになったような、純粋な喜びの表情だった。
「そう思って、先に言わせてもらった」
「さすが勇者様、決断が早いです」
莉々のその言葉に、二人は笑い合った。そして、自然な流れで、ゆっくりと顔を近づけた。初めてのキスは、優しく、温かく、長い旅路の末についに見つけた安らぎのようだった。
しばらくして、二人はソファに寄り添って座り、互いの気持ちについて語り合った。いつからお互いのことを意識していたのか。どんな瞬間に特別な感情が芽生えたのか。そんな話に花が咲いた。
「異世界では、正直そんな余裕はなかったと思います。魔王との戦いに全力だったから……」
「そうだね。俺も同じだ」
命がけの戦いの中で、そういう気持ちを考える余裕はなかったと思い返すハヤト。
「でも、この世界で記憶を取り戻して、あなたを探し出したとき、なぜそんなに必死だったのか、自分でも不思議だったんです」
彼女は静かに続けた。
「それが『仲間だから』という以上の感情だったのだと、徐々に気づいていきました。一緒に過ごす時間が増えるにつれて、その気持ちは確信に変わっていきました」
「俺も似たような感じかな。この世界で、仲間と一緒に過ごしている時間は本当に楽しかった。とても、愛おしかった」
ハヤトは、彼女の手を優しく握った。
「君がまだ学生だったから、この気持ちは意識的に抑えていたんだ。だけど、高校を卒業した今なら、正直に伝えてもいいと思った」
「待っていてくれたんですね」
莉々が感謝の眼差しで見つめた。
「ありがとうございます。でも、私、生まれ変わりですから、実際の年齢は」
ハヤトはその言葉をやさしく遮った。
「俺は君を『リリア』であり『高橋莉々』としても愛している」
ハヤトは真剣な表情で言った。そして、二人は微笑み合った。
「これからどうしましょう?」
莉々が尋ねる。
「まずは正式に両親に挨拶したいな」
「そうですね。他にも色々と、やらないといけないことがありますね。私も大学生活もありますし、配信活動も再開したいですし」
「焦る必要はないよ。一歩ずつ、一緒に進んでいこう」
「ハヤト! 無事、合格しました!」
莉々の弾んだ声が耳に飛び込んできた。ハヤトは思わず立ち上がった。彼女が受験結果を知る日だということは分かっていたが、この数日間、彼は密かに落ち着かない気持ちでいた。
「おめでと! 第一志望の大学だね」
「そうです! コンピュータサイエンス専攻の」
莉々の声は興奮と喜びに震えていた。その声からは、努力してきた成果を実感している充実感が伝わってきた。ハヤトはほっとした表情を浮かべながら、彼女の喜びを自分のことのように感じていた。
「この大学、人工知能やVR技術の研究でも最先端なんです。プログラミングについて、もっと深く学べる環境があって」
莉々は、自分によく合った大学を選んだ。彼女の声は嬉しさのあまり早口になっていた。情熱を持って語る彼女の姿が、電話越しにもはっきりと想像できる。ハヤトは微笑みながら、それを聞いていた。
「本当におめでとう。君の努力が実ったんだね」
「ありがとうございます! 無事に合格できたのは、ハヤトのおかげです。配信活動を代わりに頑張ってくれたから、私は勉強に専念できました」
莉々の声には心からの感謝が込められていた。ハヤトはそんな彼女の言葉に、少し照れくさい気持ちになった。
「俺は応援していただけだよ。合格したのは、君の実力だ」
電話を切った後、ハヤトはすぐに城介に連絡を入れた。この知らせは、仲間たちと早く共有したかった。
「莉々が合格したよ」
「そうか! よかった」
城介の声にも喜びが感じられた。彼もまた、この結果を心待ちにしていたのだろう。
「お祝いの会をしよう。俺のマンションでどうだろう? 彼女の卒業式の後で」
「いい考えだ。準備は任せてくれ。星華と剛にも連絡しておこう」
すぐに賛成して動き始める。いつものことだけど、彼の行動力は頼もしいなと思うハヤトであった。
それから三週間後、莉々の高校卒業式が行われた。桜の花も少しずつ咲き始め、春本番を告げる陽気の中、彼女は学生生活の区切りを迎えた。
その日の夕方から、ハヤトのマンションで大学合格と高校卒業を祝う会が開かれる予定になっていた。
玄関のドアベルが鳴り、ハヤトが開けると、莉々が立っていた。彼女は卒業証書を入れた筒を大事そうに抱え、晴れやかな表情を浮かべていた。
「高校卒業おめでとう、莉々」
ハヤトが優しく言うと、彼女は嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます。今日は、本当に不思議な気分です。高校生活を終えるのは寂しいけど、新しい一歩を踏み出せるのが楽しみです」
リビングに入ると、城介、星華、剛が待っていた。部屋は「おめでとう」の文字が書かれた横断幕で飾られ、テーブルには料理やケーキが並んでいた。今日のために、かなり気合を入れて準備した城介たち。
「莉々、おめでとう!」
皆が口々にお祝いの言葉を掛ける中、星華が彼女に近づき、優しく抱擁した。
「来てくれたんですね、星華」
「もちろんよ。こんな大切な日に来ないわけにはいかないわ」
星華が優しく彼女を抱きしめる。莉々は、それを嬉しそうに受け入れた。
「莉々が合格したのは、難関中の難関だろう。流石だ」
剛が感心した様子で言った。彼の声には本心からの尊敬が込められていた。
「これは、特別なお祝いの席だからね」
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「もちろん、ちゃんと未成年用にノンアルコールも用意してある」
皆からお祝いのプレゼントが贈られた。ハヤトは新しいカバン、城介からは最新のプログラミング関連の書籍セット、星華からは大学生活を健康に過ごすためのアロマセットと小型の空気清浄機、剛の家族からは楓、陸、葵の直筆メッセージが書かれたカード。そして、イラストレーターのサワからリリアのアバター姿をモチーフにした特別なイラスト色紙が届いていた。
「皆さん、本当にありがとうございます」
様々なお祝いに歓喜して、莉々の目に涙が浮かんだ。ひとつひとつのプレゼントを手に取り、彼女は深い感謝の気持ちを伝えた。
皆でケーキを切り分け、賑やかな歓談が続く中、莉々はハヤトに温かい視線を向けた。
「ゲーム開発に没頭したいときも、受験勉強に集中したいときも、いつも背中を押してくれて。本当に感謝しています」
彼女の言葉には、心からの思いが込められていた。
「俺達こそ、莉々に感謝しているのよ」
「そうよ。莉々には、本当に感謝しているの」
ハヤトの答えに、星華も同意して優しく言った。
「君のゲームのおかげで、私たちの異世界での記憶は形になった。とても話題になったし、とても嬉しかった」
「そうだな」
剛がそう言って、城介も頷く。
「あのゲームは、私たちの記憶の欠片。絆を形にしたものだから」
配信活動や、ゲームについて思いを馳せる莉々。いろいろな記憶が蘇ってくる。
「さて」
ハヤトがグラスを持ち上げた。部屋の明かりに照らされたグラスが輝きを放つ。
「莉々の合格と卒業、そして彼女の新たな船出を祝して、乾杯」
「乾杯!」
皆がグラスを合わせる音が響いた。その音色には、彼らの強い絆と新しい門出への祝福が込められていた。
その後の数時間、彼らは食事しながら、思い出話や将来の夢について語り合った。莉々は大学で学びたいことや、配信活動への復帰について熱心に話した。城介はビジネスの観点から助言し、星華は大学生活での健康管理について専門的なアドバイスを、剛はこれからの社会との関わり方について語った。彼らの会話は、異世界での経験と現代での知識が自然と混ざり合い、莉々にとって貴重な導きとなっていた。
徐々に夜が更けていき、最初に剛が家族のもとへ帰り、次に星華も病院の早朝勤務を理由に退出した。最後に城介も帰り際、ハヤトに意味深な視線を送った。
「じゃあ、後は任せるよ」
その言葉には、何か隠された意味があるかのようだった。ドアが閉まると、リビングには莉々とハヤトだけが残された。
「楽しい会でした。皆に祝ってもらえて嬉しかったです」
彼女は穏やかに微笑みながら言った。しかし、ハヤトには彼女の表情に何か別の感情が隠されていることが分かった。少し緊張した様子、そして決意のようなものが見て取れた。
片付けが終わり、二人はソファに腰掛けた。窓の外では、夜空に星が瞬き、静かな雰囲気が部屋を包んでいた。
「あの、ハヤトさん……」
莉々が真剣な表情になった。彼女はソファの端に座り、手を膝の上で組んでいる。
「……伝えたいことがあります」
彼女の瞳には決意の色が浮かんでいる。彼女は少し息を吸い、言葉を続けようとした。ハヤトはその意図を悟った。彼は静かに手を上げて、莉々の言葉を遮った。
「待って、莉々」
ハヤトは深く息を吸い、莉々と向かい合った。彼の心は決意で満ちていた。今夜、この瞬間、この場で自分の気持ちを伝えるべきだと感じていた。
「先に俺から、キミに伝えておきたいことがある」
莉々の目が大きく見開かれた。彼女はハヤトの真剣な表情に、何かを予感したように息を呑んだ。
「莉々……、そして、リリア。異世界でも、この世界でも、君との出会いは俺の人生を大きく変えた」
ハヤトの声は静かだが、揺るぎない決意に満ちていた。彼の目は莉々をまっすぐに見つめ、その中には長い旅路の末に見つけた確かな想いが浮かんでいた。
「異世界では勇者と賢者として共に戦い、この世界では仲間として支え合ってきた。でも、今の俺の気持ちはそれだけじゃない」
莉々の顔が赤くなり、期待に満ちた表情を浮かべる。彼女の呼吸が少し速くなり、ソファの上で体が少し緊張した様子だった。それをまっすぐ見つめて、ハヤトは続ける。
「どんな世界でも、君と一緒にいたい。結婚を前提に、俺と付き合ってくれないか」
莉々の目から涙があふれ出した。彼女は喜びに満ちた表情で、何度も頷いた。その顔には、異世界から現代まで、命を懸けて守ってきた最愛の人へのすべての感情が溢れていた。
「はい! はい、喜んで!」
莉々は感情を抑えきれず、勢いよく立ち上がった。そして、隣に座っていたハヤトの首に腕を回してギュッと抱きついた。密着する二人の間に流れる温かさ。しばらくして、莉々は顔を上げて照れたように言った。
「実は私も、同じことを言おうと思っていたんです」
彼女はポケットから小さな紙を取り出した。そこには彼女の気持ちを伝える言葉が丁寧に書かれていた。細かな字で綴られた想いの数々は、彼女がどれだけこの瞬間を考えていたかを物語っていた。
「ハヤトに、先を越されちゃいました」
彼女は明るく笑った。それは、異世界でのリリアの笑顔と、現代の莉々の笑顔が完全に一つになったような、純粋な喜びの表情だった。
「そう思って、先に言わせてもらった」
「さすが勇者様、決断が早いです」
莉々のその言葉に、二人は笑い合った。そして、自然な流れで、ゆっくりと顔を近づけた。初めてのキスは、優しく、温かく、長い旅路の末についに見つけた安らぎのようだった。
しばらくして、二人はソファに寄り添って座り、互いの気持ちについて語り合った。いつからお互いのことを意識していたのか。どんな瞬間に特別な感情が芽生えたのか。そんな話に花が咲いた。
「異世界では、正直そんな余裕はなかったと思います。魔王との戦いに全力だったから……」
「そうだね。俺も同じだ」
命がけの戦いの中で、そういう気持ちを考える余裕はなかったと思い返すハヤト。
「でも、この世界で記憶を取り戻して、あなたを探し出したとき、なぜそんなに必死だったのか、自分でも不思議だったんです」
彼女は静かに続けた。
「それが『仲間だから』という以上の感情だったのだと、徐々に気づいていきました。一緒に過ごす時間が増えるにつれて、その気持ちは確信に変わっていきました」
「俺も似たような感じかな。この世界で、仲間と一緒に過ごしている時間は本当に楽しかった。とても、愛おしかった」
ハヤトは、彼女の手を優しく握った。
「君がまだ学生だったから、この気持ちは意識的に抑えていたんだ。だけど、高校を卒業した今なら、正直に伝えてもいいと思った」
「待っていてくれたんですね」
莉々が感謝の眼差しで見つめた。
「ありがとうございます。でも、私、生まれ変わりですから、実際の年齢は」
ハヤトはその言葉をやさしく遮った。
「俺は君を『リリア』であり『高橋莉々』としても愛している」
ハヤトは真剣な表情で言った。そして、二人は微笑み合った。
「これからどうしましょう?」
莉々が尋ねる。
「まずは正式に両親に挨拶したいな」
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