帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

文字の大きさ
47 / 53
プロポーズ

第47話 ハヤトの配信活動

しおりを挟む
 窓の外は、雪が舞っていた。ハヤトは自宅のマンションで配信の準備をしながら、季節の移り変わりを感じていた。

 莉々が開発したゲームを公開してから数ヶ月が経過していた。その間に彼らの配信活動は新たなステージに入っていた。視聴者数は倍増して、メディアからの注目度も高まり、もはや単なる趣味の活動とは言えないほどの影響力を持ち始めていた。

「よし、機材のチェックは大丈夫だな」

 ハヤトはマイクとカメラの設定を最終確認し、モーションキャプチャーのシステムを動作確認する。以前は莉々が担当していた技術面について、今では彼自身が習得してセッティングできるようになっていた。

 配信の準備が一通り整うと、テストモードでアバターの動きを確認する。画面上の勇者の姿が、ハヤトの動きに合わせて自然に反応した。

 スマートフォンが鳴り、城介からのメッセージが届いた。

『今日の配信、少し遅れそうだ。会議が長引いている。先に始めてくれないか?』

 ハヤトは微笑んで返信した。

「了解。こっちはいつでも大丈夫だよ」

 返信してからパソコンの前に座る。今日は一人で配信を始める。カメラとマイク、モーションキャプチャー用システムの最終確認を終えた。スケジュール通りの時間になると、ハヤトは配信ボタンを押した。

 画面上にハヤトのアバターが現れ、元気な声で挨拶する。

「みなさん、こんばんは! ハヤトです。今日もよろしくお願いします」

 コメント欄には瞬く間にメッセージが流れ始めた。

-ハヤトさん、こんばんは!
-勇者!
-待ってました!
-今日も頑張ってね!
-配信楽しみにしてました!

 ハヤトは最近の視聴者数の増加に、いまだに驚きを感じていた。ゲーム公開前は平均1万人程度だった同時視聴者数が、今では3万人を超えることも珍しくなくなっていた。コメントの流れる速度も格段に上がり、すべてを読み切ることは難しくなっていたが、彼は可能な限り目を通すよう心がけていた。

「今日はまず、俺一人から始める。ジョンは少し遅れるらしいが、もうすぐ合流するはず。到着するのを楽しみに待っていてくれ」

 ハヤトは視聴者と雑談しながら、画面の隅に表示されるチャンネル登録者数のカウンターに目をやった。100万人という数字を超えた数値が表示されている。とんでもない数字だ。配信を始めた当初、彼はこれほどの人々に見てもらえるとは想像もしていなかった。

「いつも応援してくれている皆さん、本当にありがとう。でもやっぱり、チャンネル登録者人数が100万人を超えたこと、まだ信じられない気持ちだ」

 コメント欄には祝福のメッセージが溢れた。中には、最初の頃から見ていたという視聴者からの温かいメッセージもあった。

「リリアの開発したゲームを公開した頃から、本当に多くの方に知っていただけるようになった。彼女の才能には本当に感謝しているよ」

 ハヤトは感謝の気持ちを伝えながら、莉々のことを思い出していた。彼女は今、受験勉強に集中している。時々短い配信に参加することはあるが、以前のような頻度ではない。莉々にとっては、現実の高校生としての将来を考える大切な時期だ。

「リリアを心配してくれている声も多いな。前にも説明した通り、彼女は今、とても大事な時期なんだ。だから、そちらを優先させている」

 ハヤトは莉々について、詳細は隠しながらも軽く触れた。彼女がしばらく活動の頻度を減らすことは、以前の配信で正式に発表していた。

 多くのファンが残念に思ってくれたが、同時に彼女を応援して送り出してくれた。そして、いつか彼女が戻ってくる日を待ち望んでいる。

 コメント欄にはリリアへの応援メッセージが続々と流れていく。

-この時期ということは、勉強頑張って!
-リリアが戻ってくる日を楽しみにしてる
-本当に人生の大事な時期だから、そっちを優先して!
-視聴者は活動している姿を見たいけれど、一番はリリアに幸せになってもらうことだから!

「皆の応援、本当にありがとう。リリアもきっと喜んでいると思う。いつか彼女自身から、皆さんに感謝の気持ちを伝える日が来るだろう」



 配信の途中で城介が合流し、二人で最新のアクションゲームのマルチプレイに挑戦した。ハヤトの異世界で培った反射神経と直感力は、ゲームプレイでも遺憾なく発揮される。複雑な操作も一度見ただけでマスターし、難易度の高いステージもスムーズにクリアしていく。

「さすがハヤト、上達が早いな」

 ジョンのアバターで配信している城介が感心した声で言うと、視聴者からも驚きのコメントが相次いだ。

-プロゲーマーみたい
-このゲームも上手いんかい
-発売されたばかりなのに、この動き
-参考になる
-やっぱ上達スピードは異常
-どこで、そんなゲーム技術を磨いてきたの!?
-ハヤトさんの動き方、本当にスムーズ!
-反射神経が尋常じゃない

 ハヤトは苦笑いしながら答えた。

「昔は、こんなにゲームが得意だったわけじゃないけどね。色々とあったんだ。長い間、生き抜くために反射神経を鍛えてきたというか」

-なるほど、勇者だもんね
-さすが勇者
-これが勇者の力
-勇者の力をゲームに活用するなんて(笑)

 城介がその言葉の真意を理解して笑う。異世界での経験が、本当に活きているのだ。

 配信が終わった後、ハヤトは莉々に短いメッセージを送った。彼女は配信を見ていないだろうけど、報告しておきたかった。

「今日も配信、盛り上がったよ。登録者数が130万人を超えたぞ。みんな君のことを応援している」

 もちろん、返信はすぐに来なかった。彼女は今頃、勉強を頑張っているのだろう。それなら返信がない方が嬉しいかもしれない。ハヤトは配信の後片付けをした。



 それから、また時間が経過していく。配信活動は順調に続き、ファンの数も着実に増えていった。警備会社での仕事と配信活動の両立は、時に大変だったが、ハヤトは充実した日々を送っていた。

「Vtuberゲーム大会の出場枠が決まったぞ」

 春の陽気が感じられる三月のある日、城介からの連絡でハヤトは驚いた。

「え? 俺達も参加していいやつ?」
「ああ。主催者から直接オファーがあった。出場してほしいそうだ」

 招待されたのはFPSゲームの大会らしい。ハヤトは少し考え込んだ。

「俺達が出るべきかな?」
「出るべきだろう。練習する時間が少なくてもお前のゲームセンスなら大丈夫」

 城介の言葉に、ハヤトは決意を固めた。

「よし。なら、やってみよう」

 それから二週間、ハヤトは大会で使用されるゲームの練習に励んだ。警備会社での仕事と配信活動の合間を縫っての練習だったが、彼の異常な上達速度は健在だった。城介はビジネスの合間に時間を作り、ハヤトとオンラインでチームの連携力を高めた。



 大会当日。会場はハヤトが想像していた以上に大きなイベントホールで、多くのVtuberファンで溢れかえっていた。ステージ上には大型スクリーンが設置され、出場者のアバターが次々と紹介されていく。ハヤトのアバターが大型スクリーンに映し出されると、大きな歓声が上がった。

 自分たちの知名度が、予想以上に高まっていたことが実感できる瞬間だった。

「こんなに注目されているとは」

 バックステージで準備するハヤトに、城介が冷静な声で言った。

「こういうゲームの大会に参加したのは大きな成功。お前の配信活動の積み重ねがあったからだろう。莉々も喜ぶだろう」

 ハヤトは頷いた。

「今日は、応援してくれるファンのために、いい結果を残したいな」

 大会は予選から決勝まで、一日がかりで行われた。ハヤトは予選を順調に勝ち進み、準決勝では遭遇した強豪Vtuberのパーティーを見事に倒していく。彼の動きは無駄がなく、相手の攻撃パターンを素早く見抜いては的確なカウンターを繰り出していく。城介もまた、冷静な判断と戦略的な動きで、チームの勝利に貢献した。

 会場の大型スクリーンには試合の様子が映し出され、観客からは歓声と拍手が絶えなかった。

-あれ、プロの実力あるんじゃないの?
-ハヤトさん、強すぎる!
-まさに勇者
-ジョンの冷静な判断力も素晴らしい!
-やっぱり異世界パーティーは強い!

 観客の興奮した声が会場に響く。その声援を力に変えるように、ハヤトたちは次々と勝ち進んでいった。

 決勝戦は、当時最も人気のあったVtuberグループのエース、カイトとの対決となった。彼は実績豊富なプレイヤーで、これまで数々の大会で優勝してきた実力者だった。客席は両方のファンで埋め尽くされ、緊張感と興奮が入り混じる空気に包まれていた。

「いよいよ直接対決! ハヤト率いるチームと、カイト率いるチームで正面衝突! 撃ち合っていくうぅ!」

 対戦が始まると、両者一歩も譲らない接戦が続いた。カイトの巧みな技術に対し、ハヤトは直感的な判断力と反射神経で対抗する。城介はバックアップに回り、相手の動きを分析しながら戦術的なアドバイスをハヤトに送る。

 最終ラウンド、残り体力がわずかになった場面で、ハヤトは相手の攻撃を見切り、完璧なタイミングで突撃を決めた。会場が割れんばかりの歓声に包まれる。

「勝者!  ハヤトチーム!」

 トロフィーを手にしたハヤトたちのプレイヤーキャラクターが、大型スクリーンに表示される。会場全体が拍手と歓声に包まれた。

「やったな、ハヤト」

 城介が誇らしげに言った。彼の声には、チームとしての勝利を心から喜ぶ感情が込められていた。

「ああ、君のサポートがあったからこそだ。一人では無理だった」

 ハヤトは心から感謝の気持ちを伝えた。異世界でも現代でも、仲間の力は何物にも代えがたい支えだった。



 その夜、大会の模様はインターネット上で大きな話題となり、勝利した瞬間の切り抜き動画が出回った。ハヤトたちの配信チャンネル登録者数は一気に150万人を突破し、SNSでは「#異世界パーティー優勝」というハッシュタグがトレンド入りしていた。

 ハヤトが自宅のマンションに戻ると、久しぶりに莉々からの電話があった。

「ハヤト、おめでとうございます! 大会、リアルタイムで見てましたよ! すごく興奮しました!」
 
 彼女の声は嬉しそうだった。受験勉強の合間に大会の様子を見ていたらしい。勉強は大丈夫なのか。莉々なら多分、大丈夫だと思うけど。

「莉々、ありがとう。勉強の調子はどう?」
「順調です。来週、模試があるので、今はそれに向けて勉強しています。でも、ハヤトたちの大会は特別だから、時間を作って見ました。あの最後の動き、本当に素晴らしかったです!」

 莉々の声には、純粋な喜びと誇らしさが溢れていた。

「模試か。頑張って。良い結果が出ることを祈ってるよ」
「はい! 頑張ります」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

俺の武器が最弱のブーメランだった件〜でも、レベルを上げたら強すぎた。なんか伝説作ってます!?〜

神伊 咲児
ファンタジー
守護武器とは、自分の中にあるエネルギーを司祭に具現化してもらって武器にするというもの。 世界は皆、自分だけの守護武器を持っていた。 剣聖に憧れた主人公マワル・ヤイバーン。 しかし、守護武器の認定式で具現化した武器は小さなブーメランだった。 ブーメランは最弱武器。 みんなに笑われたマワルはブーメランで最強になることを決意する。 冒険者になったマワルは初日から快進撃が続く。 そんな評判をよく思わないのが2人の冒険者。立派な剣の守護武器の持ち主ケンゼランドと槍を守護武器とするヤーリーだった。 2人はマワルを陥れる為に色々と工作するが、その行動はことごとく失敗。その度に苦水を飲まされるのであった。 マワルはドンドン強くなり! いい仲間に巡り会える! 一方、ケンゼランドとヤーリーにはざまぁ展開が待ち受ける! 攻撃方法もざまぁ展開もブーメラン。 痛快ブーメラン無双冒険譚!! 他サイトにも掲載していた物をアルファポリス用に改稿いたしました。 全37話、10万字程度。

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...