40 / 41
第40話 新たな始まり
しおりを挟む
王家と結託して神殿が起こした事件により、貴族たちが立ち上がった。
エリック王は神殿を利用しようとしたようだけど、それは彼にとって致命的な選択だった。事実が発覚して大多数の貴族家が王家に反発し、エリック王の悪事を暴露して、市民たちを味方につけることに成功したのだ。
貴族家は、協会に応援を要請してきた。
代表として来たのは、以前から面識のあるルシウス子爵。彼は協力を求めてきた。協力して王家を打ち倒そうと。
だが、協会はそれを拒否することにした。
「申し訳ございませんが、協会は政治的な争いには関与いたしません」
ジャメルが交渉の場に出て、協力拒否を表明した。私たちの立場を丁寧に説明し、話し合いを穏便に済ませてくれた。貴族側も私たちの理念を理解して、引き下がってくれた。
王家と貴族の争いが激化している最中、協会は陣営に関係なく傷ついた人たちを癒すことに専念した。
王家側の兵士であろうと、貴族側の兵士であろうと、私たちは分け隔てなく治療した。それこそが協会の理念。政治的な対立に巻き込まれることなく、ただ困っている人々を助ける。それが私たちの使命だった。
争いはすぐに終わった。
貴族側が完全勝利し、新しい体制が誕生した。エリック王と王妃エリーゼは捕らえられ、処刑されることになったと聞いた。神殿の老賢者たちも同じ運命を辿った。
王国は新しく生まれ変わり、平穏が訪れた。
協会にも、ようやく平穏が訪れた。新しい政府からも協力要請は来たが、私たちは王国とは協力せず、独立して活動していくことにした。その活動範囲はどんどん広がり、近隣諸国に支部を設けるほどに発展していった。
私たちは徹底して国政には関わらないようにし、独立した組織として活動を続けていく。それが、私たちの選んだ道であった。
王国の状況は落ち着き、協会にも平穏が訪れた。そんな状況の中で、私の心は乱れていた。
今まで仕事が忙しくて、自分の心の状況を見つめるような時間はなかった。協会の設立、そして一連の政治的混乱まで、常に何かに追われていた。
しかし、余裕が出てきたからこそ、自覚してしまったのだ。アレクシスに対する恋心を。
彼と一緒に仕事をして関わる時間が増えた。あの暴走事件の時も、アレクシスに助けてもらった。市民を庇おうとした私が危険な状況に陥った瞬間、彼が駆けつけてくれた。その時のことを思い出すと、とても嬉しくて、胸がドキドキしてしまう。
恋なんてものを知らない私。聖女時代は恋愛など考える余裕もなく、協会設立後も忙しくて自分の気持ちと向き合う時間がなかった。これはどうすればいいのか、悩んでしまう。
そんな気持ちを抱えておくことはできず、ある日、すべてを打ち明けてしまった。
「アレクシス、あの……お話があります」
「どうした?」
執務室で二人きりになった時、私は勇気を振り絞って声をかけた。
「私……あなたのことを……」
言葉が出てこない。心臓が激しく鼓動している。だけど、ここまで来てしまった。もう止まれない。
「私、あなたのことを男性として意識してしまっているんです!」
アレクシスにとっては、突然のことだっただろう。そんなことを急に言われても、彼も困ってしまうかもしれない。言ってしまった後に後悔した。なぜこんな唐突に言ってしまったのか。こんな気持ちなんて打ち明けず、隠し通すべきだった。
「ノエラ」
後悔していた私の名前を、彼は優しく呼んでくれた。
「君の気持ちは、とても嬉しい。そして、私も、君のことを女性として意識している」
「アレクシス……!」
彼の優しい瞳が私を見つめている。
「このような気持ちになるのは君だけなんだ。君と一緒にいると、心が落ち着くし、君を守りたいと思う。それが恋という感情なのだとしたら、私も君と同じ気持ちだ」
嬉しかった。こんなにも嬉しいことがあるなんて。
それから、彼との関係は深くなっていった。
お互いの気持ちを確認し合い、時間を共有することが増えた。仕事の合間の小さな会話も、以前とは違う温かさがあった。協会での仕事に取り組む時も、彼がそばにいてくれることが心の支えになった。
「ノエラ様、おめでとうございます!」
仲間たちが祝福してくれた。エミリーは嬉しそうに手を叩き、ナディーヌは満面の笑みで「頑張って」と応援してくれた。ジャメルも「君たちにはお似合いだ」と温かい言葉をかけてくれた。アンクティワンは商人らしく「今度お祝いの品を用意させてもらいましょう」と笑っていた。
「ありがとう、みんな」
アレクシスとの関係を応援してもらえて、私は改めて頑張ろうと気合を入れた。
協会のリーダーとして、そして一人の女性として。
聖女だった頃の私には想像もできなかった幸せが、今ここにある。記憶と共に姿を消した聖女は、もういない。代わりに、自分の意志で歩む道を選び、大切な人たちと共に歩んでいく私がいる。
これが、私の新たな始まりだった。
エリック王は神殿を利用しようとしたようだけど、それは彼にとって致命的な選択だった。事実が発覚して大多数の貴族家が王家に反発し、エリック王の悪事を暴露して、市民たちを味方につけることに成功したのだ。
貴族家は、協会に応援を要請してきた。
代表として来たのは、以前から面識のあるルシウス子爵。彼は協力を求めてきた。協力して王家を打ち倒そうと。
だが、協会はそれを拒否することにした。
「申し訳ございませんが、協会は政治的な争いには関与いたしません」
ジャメルが交渉の場に出て、協力拒否を表明した。私たちの立場を丁寧に説明し、話し合いを穏便に済ませてくれた。貴族側も私たちの理念を理解して、引き下がってくれた。
王家と貴族の争いが激化している最中、協会は陣営に関係なく傷ついた人たちを癒すことに専念した。
王家側の兵士であろうと、貴族側の兵士であろうと、私たちは分け隔てなく治療した。それこそが協会の理念。政治的な対立に巻き込まれることなく、ただ困っている人々を助ける。それが私たちの使命だった。
争いはすぐに終わった。
貴族側が完全勝利し、新しい体制が誕生した。エリック王と王妃エリーゼは捕らえられ、処刑されることになったと聞いた。神殿の老賢者たちも同じ運命を辿った。
王国は新しく生まれ変わり、平穏が訪れた。
協会にも、ようやく平穏が訪れた。新しい政府からも協力要請は来たが、私たちは王国とは協力せず、独立して活動していくことにした。その活動範囲はどんどん広がり、近隣諸国に支部を設けるほどに発展していった。
私たちは徹底して国政には関わらないようにし、独立した組織として活動を続けていく。それが、私たちの選んだ道であった。
王国の状況は落ち着き、協会にも平穏が訪れた。そんな状況の中で、私の心は乱れていた。
今まで仕事が忙しくて、自分の心の状況を見つめるような時間はなかった。協会の設立、そして一連の政治的混乱まで、常に何かに追われていた。
しかし、余裕が出てきたからこそ、自覚してしまったのだ。アレクシスに対する恋心を。
彼と一緒に仕事をして関わる時間が増えた。あの暴走事件の時も、アレクシスに助けてもらった。市民を庇おうとした私が危険な状況に陥った瞬間、彼が駆けつけてくれた。その時のことを思い出すと、とても嬉しくて、胸がドキドキしてしまう。
恋なんてものを知らない私。聖女時代は恋愛など考える余裕もなく、協会設立後も忙しくて自分の気持ちと向き合う時間がなかった。これはどうすればいいのか、悩んでしまう。
そんな気持ちを抱えておくことはできず、ある日、すべてを打ち明けてしまった。
「アレクシス、あの……お話があります」
「どうした?」
執務室で二人きりになった時、私は勇気を振り絞って声をかけた。
「私……あなたのことを……」
言葉が出てこない。心臓が激しく鼓動している。だけど、ここまで来てしまった。もう止まれない。
「私、あなたのことを男性として意識してしまっているんです!」
アレクシスにとっては、突然のことだっただろう。そんなことを急に言われても、彼も困ってしまうかもしれない。言ってしまった後に後悔した。なぜこんな唐突に言ってしまったのか。こんな気持ちなんて打ち明けず、隠し通すべきだった。
「ノエラ」
後悔していた私の名前を、彼は優しく呼んでくれた。
「君の気持ちは、とても嬉しい。そして、私も、君のことを女性として意識している」
「アレクシス……!」
彼の優しい瞳が私を見つめている。
「このような気持ちになるのは君だけなんだ。君と一緒にいると、心が落ち着くし、君を守りたいと思う。それが恋という感情なのだとしたら、私も君と同じ気持ちだ」
嬉しかった。こんなにも嬉しいことがあるなんて。
それから、彼との関係は深くなっていった。
お互いの気持ちを確認し合い、時間を共有することが増えた。仕事の合間の小さな会話も、以前とは違う温かさがあった。協会での仕事に取り組む時も、彼がそばにいてくれることが心の支えになった。
「ノエラ様、おめでとうございます!」
仲間たちが祝福してくれた。エミリーは嬉しそうに手を叩き、ナディーヌは満面の笑みで「頑張って」と応援してくれた。ジャメルも「君たちにはお似合いだ」と温かい言葉をかけてくれた。アンクティワンは商人らしく「今度お祝いの品を用意させてもらいましょう」と笑っていた。
「ありがとう、みんな」
アレクシスとの関係を応援してもらえて、私は改めて頑張ろうと気合を入れた。
協会のリーダーとして、そして一人の女性として。
聖女だった頃の私には想像もできなかった幸せが、今ここにある。記憶と共に姿を消した聖女は、もういない。代わりに、自分の意志で歩む道を選び、大切な人たちと共に歩んでいく私がいる。
これが、私の新たな始まりだった。
773
あなたにおすすめの小説
【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
婚約破棄は喜んで
nanahi
恋愛
「お前はもう美しくない。婚約破棄だ」
他の女を愛するあなたは私にそう言い放った。あなたの国を守るため、聖なる力を搾り取られ、みじめに痩せ細った私に。
え!いいんですか?喜んで私は去ります。子爵令嬢さん、厄災の件、あとはよろしく。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる