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第22話 通行止め ※ギオマスラヴ王子視点
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「止まれ!」
男の声が聞こえて、馬車が止まる。何事かと前方を見ると、武装している者たちが道を塞いでいた。よく見ると、門がある。左右に柵があって、男たちを無視して通り抜けるのは無理そうだ。
盗賊なのかと思ったが、その雰囲気はない。正規の兵士のように見える。だけど、王国の兵士ではないような。彼らは、他国の兵士なのか。
なぜ、こんな所に関所があるのか。ここは国境ではなくて、イステリッジ公爵領に向かう道の途中。そのはずだ。
もしかして、馬車を操縦する者が道を間違えたのか。そうだとすると、かなり時間ロスになる。これから来た道を戻らないといけないのか。乗り心地の最悪な馬車で、再び来た道を耐えないといけない。本当に最悪だ。
もう、こいつらに任せておけない。俺が対応しないといけないか。馬車を降りて、兵士のところまで行く。
「お前たち、ここを通るつもりなら通行証を見せるように」
「いや、違う。どうやら私達は、道を間違えたようだ」
「そうか。それは、災難だな」
関所を守る兵士に状況を伝えると、彼らは同情してくれた。それなのに、こちらの部下である兵士は不満そうな顔をしている。何か、言いたいことがあるようだが。
「我々は、道を間違えていません。この先が、イステリッジ公爵領です!」
「なに? どういう事だ」
道を間違えていないと強く主張する兵士。それなら、この関所は何なのか。ここを守って居る彼らは一体。
「あぁ、つい先日までイステリッジ公爵領だったが、今は帝国領になったんだよ」
「はぁ? 帝国、だと!?」
思わず声を上げてしまった。どうしてそんなことに。いつの間に戦いが起こって、帝国に領土が奪われてしまったのか。そんな話は聞いていないぞ。この領地を任せていたはずのイステリッジ公爵家は、何をしていたのか。
そして、目の前にいるのが帝国の兵士だという事が判明した。まさか、こんな所に帝国の人間が居るなんて予想外である。だけど、普通に話せた。敵意はない。
俺が、王国の王子であることもバレていないか。それなら身分を隠したまま、少し話を聞いてみる。この兵士は、色々と知っているようだったから。とにかく、情報が必要だった。
「帝国領になったということは、戦いがあったのか?」
「いいや、戦いは起きていない」
戦いに負けて、領土を奪われたわけじゃないのか。それなら、どういう事なのか。門を守る兵士が、続けて教えてくれた。
「ジヨホウナント辺境伯様の交渉が成功して、イステリッジ公爵家が領地ごと帝国に招かれることになったそうだ」
イステリッジ公爵家が帝国に行った!? つまり、公爵家は王国を裏切ったのか。王家との関係を終わらせたのも、このために。
くそ、なんてことだ! イステリッジ公爵家め、帝国側に行くとは。そんな勝手なことをして、絶対に許さないぞ!
「領地替えの話し合いが行われている真っ最中で、領地の権利は一時的に皇帝陛下が持っているんだ。近いうちに新しい領主も決まって、ここを治めてくれるだろう」
領地替えということは、イステリッジ公爵家は裏切って帝国に行ったというのに、結局は領地を奪われてしまったのか。ここは元々王国の土地だったのに、勝手に利用して、それをあっさり他国に奪われてしまうなんて。愚かな……!
「君たちは最近の出来事を何も知らないのに、こちら側に来ようとしていたのか? とにかく、ここを通るためには通行証が必要だ。持っていないか?」
こんな状況になっているのを知らなかった。だから当然、通行証なんて持っているはずがない。
男の声が聞こえて、馬車が止まる。何事かと前方を見ると、武装している者たちが道を塞いでいた。よく見ると、門がある。左右に柵があって、男たちを無視して通り抜けるのは無理そうだ。
盗賊なのかと思ったが、その雰囲気はない。正規の兵士のように見える。だけど、王国の兵士ではないような。彼らは、他国の兵士なのか。
なぜ、こんな所に関所があるのか。ここは国境ではなくて、イステリッジ公爵領に向かう道の途中。そのはずだ。
もしかして、馬車を操縦する者が道を間違えたのか。そうだとすると、かなり時間ロスになる。これから来た道を戻らないといけないのか。乗り心地の最悪な馬車で、再び来た道を耐えないといけない。本当に最悪だ。
もう、こいつらに任せておけない。俺が対応しないといけないか。馬車を降りて、兵士のところまで行く。
「お前たち、ここを通るつもりなら通行証を見せるように」
「いや、違う。どうやら私達は、道を間違えたようだ」
「そうか。それは、災難だな」
関所を守る兵士に状況を伝えると、彼らは同情してくれた。それなのに、こちらの部下である兵士は不満そうな顔をしている。何か、言いたいことがあるようだが。
「我々は、道を間違えていません。この先が、イステリッジ公爵領です!」
「なに? どういう事だ」
道を間違えていないと強く主張する兵士。それなら、この関所は何なのか。ここを守って居る彼らは一体。
「あぁ、つい先日までイステリッジ公爵領だったが、今は帝国領になったんだよ」
「はぁ? 帝国、だと!?」
思わず声を上げてしまった。どうしてそんなことに。いつの間に戦いが起こって、帝国に領土が奪われてしまったのか。そんな話は聞いていないぞ。この領地を任せていたはずのイステリッジ公爵家は、何をしていたのか。
そして、目の前にいるのが帝国の兵士だという事が判明した。まさか、こんな所に帝国の人間が居るなんて予想外である。だけど、普通に話せた。敵意はない。
俺が、王国の王子であることもバレていないか。それなら身分を隠したまま、少し話を聞いてみる。この兵士は、色々と知っているようだったから。とにかく、情報が必要だった。
「帝国領になったということは、戦いがあったのか?」
「いいや、戦いは起きていない」
戦いに負けて、領土を奪われたわけじゃないのか。それなら、どういう事なのか。門を守る兵士が、続けて教えてくれた。
「ジヨホウナント辺境伯様の交渉が成功して、イステリッジ公爵家が領地ごと帝国に招かれることになったそうだ」
イステリッジ公爵家が帝国に行った!? つまり、公爵家は王国を裏切ったのか。王家との関係を終わらせたのも、このために。
くそ、なんてことだ! イステリッジ公爵家め、帝国側に行くとは。そんな勝手なことをして、絶対に許さないぞ!
「領地替えの話し合いが行われている真っ最中で、領地の権利は一時的に皇帝陛下が持っているんだ。近いうちに新しい領主も決まって、ここを治めてくれるだろう」
領地替えということは、イステリッジ公爵家は裏切って帝国に行ったというのに、結局は領地を奪われてしまったのか。ここは元々王国の土地だったのに、勝手に利用して、それをあっさり他国に奪われてしまうなんて。愚かな……!
「君たちは最近の出来事を何も知らないのに、こちら側に来ようとしていたのか? とにかく、ここを通るためには通行証が必要だ。持っていないか?」
こんな状況になっているのを知らなかった。だから当然、通行証なんて持っているはずがない。
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