才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。

キョウキョウ

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第12話 圧倒的な実力差

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 一瞬で、黄金色の光の壁が私の周囲に静かに展開された。

 古代魔法による防御――守護の魔法。私を包み込む温かな繭のように、柔らかな光が身を守ってくれる。

 ヴィクターの魔法が黄金の壁に触れた瞬間、彼の放った魔法はあっけなく霧散する。破壊的な魔力は完全に無力化されて、美しい光の粒子となって宙に舞い散った。もちろん、黄金の壁に変化はない。私の髪一筋すら乱れることはない。

「なっ……!?」

 ヴィクターの顔が、血の気を失って青ざめる。まさか自分の奇襲が、まるで子供の戯れのように完全に無効化されるとは、夢にも思っていなかったのでしょう。その表情には、現実を受け入れられない困惑と恐怖が刻まれている。

「不意打ちなのに、この程度ですか」

 私の余裕に満ちた表情を見て、彼の顔には屈辱の色が浮かぶ。

「なにをっ!? ただ古代魔法を使えるだけで、魔力は平民よりも劣るお前がっ! そんなはずない!」

 ヴィクターは理解できずに叫んだ。彼は古代魔法の真の特性を、この期に及んでもまだ理解していない。魔力の多寡など関係ないということを、彼は知らないようね。

 怒り狂ったヴィクターは、理性を完全に失って次々と攻撃魔法を乱射してきた。

「絶対に、許さないっ!」

 火球、氷の槍、雷撃——あらゆる攻撃系魔法を手当たり次第に放つ。彼の魔力が激しく燃え上がり、部屋中に魔法の嵐が吹き荒れる。高価な家具や美術品が次々と破壊され、壁には深い焦げ跡や亀裂が刻まれていく。まるで戦場と化した応接室。

 だが、どれだけ派手に暴れ回ろうとも、その程度の魔法では私は微動だにしない。

 すべての攻撃を古代魔法の防壁で受け流し続ける。黄金の光が部屋を満たし、攻撃される度に美しい光の花びらが舞い散って、破壊された室内を幻想的に彩る。

「くそっ! くそっ! なんで、なんで効かないんだ!」

 ヴィクターは息を荒げながら、さらに攻撃を続ける。彼の額には大粒の汗が滲み、呼吸も次第に乱れてきた。必死の形相で魔法を放ち続けるが、その度に私の防御に阻まれて無力化される攻撃。徒労感と屈辱感が、彼の顔を歪ませていく。

 やがて、彼の攻撃がぴたりと止まった。

「はあ、はぁ……、っく!」

 諦めたわけではない。続けることが物理的に不可能になったのだ。彼は魔力を完全に使い果たしたようだ。顔色は土気色に変わり、全身から力が抜けて震えている。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 荒い呼吸、大量の汗、震える手足。それでも私を憎悪の眼差しで睨み続けているが、もはや指一本動かすこともできない。やがて膝をつき、床に手をついて必死に息を整えようとしている。惨めな姿だった。

 かつて私を『魔力不足で不適格』と責め続けてきた男が、今私の眼前で『魔力切れ』により完全に動けなくなっている。

「もう、終わりですか?」

 私は穏やかな口調で尋ねた。

「……くっ!」

 ヴィクターの表情には、深い屈辱が刻まれている。プライドが粉々に砕かれ、自尊心を完全に打ちのめされた男の顔。かつて私を見下していた傲慢さは跡形もなく消え失せ、そこにあるのはただ惨めで哀れな敗北者の姿だけだった。

「終わりなのであれば、帰らせてもらいます」
「ま、まて……」

 彼が苦しげに息を整えている間に、私は部屋を後にする。この男との関係は、これで完全に終わり。二度と交わることのない道を歩むことになる。

 部屋の扉に手をかけた時、背後から情けない声が聞こえてきた。

「待ってくれ……、行かないでくれ……エリアナ」

 威圧的だった過去の彼はもうどこにもない。ただの哀れな男の、弱々しい懇願でしかなかった。声は掠れ、言葉も途切れがち。

 私の足は止まらない。もう、彼の声は私には届かない。

 扉を開けて廊下に出ると、使用人たちが慌てふためいている様子が目に入った。室内から聞こえてきた破壊音に驚いているのでしょう。面倒なことになる前に、ここを離れさせてもらいましょう。

 アイゼンヴォルク家の屋敷を後にして、私は師匠の待つ拠点へと向かう。馬車に揺られながら、ようやく肩の力が抜けるのを感じた。意外と、緊張していたのかもしれない。過去と向き合うのは、思っていた以上に心労の多いことだった。

 でも、もうすべては終わった。清々しい気持ちで窓の外を眺める。夕日に染まった街並みが、とても美しく見えた。

「おかえり、エリアナ。依頼の話は、どうなった?」

 拠点に到着すると、師匠が穏やかな笑顔で迎えてくれる。その温かな声が、疲れた心を優しく癒してくれた。師匠の前では、自然と表情も和らぐ。

「取るに足らない依頼内容だったので、お断りしてきました。なので気にせず、他の依頼に取り掛かりましょう」
「そうか、わかった。次に受ける依頼を確認しようか」

 師匠は特に詳しく聞こうとしない。私の判断を完全に信頼してくれているから。

 もう過去を振り返る必要はない。ヴィクターとの因縁も、実家での屈辱も、すべて清算された。私には師匠がいて、助けを待つ人々がいて、歩むべき道がはっきりと見えている。
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