才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。

キョウキョウ

文字の大きさ
13 / 14

第13話 それぞれの結末※第三者視点

しおりを挟む
 エリアナが話し合いを終えてヴィクターの屋敷を去ってから数週間後、王都では大きな騒動が起きていた。

 アイゼンヴォルク伯爵家とヴァーレンティア子爵家が共同で、驚くべき声明を発表したのである。

 その内容は、古代魔法使いのエリアナが両家との関係修復に積極的であり、古代魔法によって協力してもらえる可能性が非常に高い、というもの。

 震災復興への支援、各国との外交仲介、さらには婚約関係の復活まで——すべてがエリアナが承諾したかのような内容が広く伝えられた。だが、よく確認すると内容は曖昧であり、確定したことは一つも書かれていなかった。わざと誤解させるような、完全な虚偽の発表であった。その発表を聞いたアイゼンヴォルク伯爵家の領民は歓喜した。

 そして、そんな発表をしたヴィクターたちの目論見は即座に破綻した。

 エリアナとソリウス賢者は即座に各国大使館へ緊急抗議文を提出して、同時に決定的な証言も添付した。アイゼンヴォルク家の屋敷で起きた、ヴィクターの魔法攻撃による奇襲についても暴露した。

「前述の声明は完全な虚偽である。私はアイゼンヴォルク伯爵家とヴァーレンティア子爵家、両家との復縁は一切望まず、今後も拒絶する」

 エリアナの冷徹な正式声明は、各国に同時発表された。

 翌日、各国からの抗議が王宮に殺到した。

 とある王国の大使は「信頼する聖女エリアナがこのような虚偽に巻き込まれる事態は遺憾である」と厳しく抗議した。また別の公国からは「古代魔法使いのエリアナの名誉を汚す行為は、彼女に救済された我が国民への冒涜でもある」という強い声明が発表された。

 数カ国から正式抗議が寄せられ、事態は完全に国際問題と化した。ヴィクターたちは、エリアナの国際的な影響力を完全に見誤っていたのである。

 国王は激怒した。大臣を緊急招集して、その日のうちに厳しい処分を決定した。

「王国の威信と友好国との信頼関係を著しく損なった」

 そう断じられたアイゼンヴォルク伯爵家とヴァーレンティア子爵家に下された処分は、爵位の剥奪、全財産の没収、そして王国からの永久追放だった。

 処分は即日執行された。王国近衛騎士団が両家の屋敷に向かい、すべての財産が王国に接収された。

 ヴィクターは隣国に移り住んで日雇い労働者として働いている。身分を隠して、元貴族であることを秘匿しながら、簡素な労働者向け宿舎で暮らしている。同僚からは『無口で陰鬱な男』として見られている。

 ヴァーレンティア家の人々は、各地の遠縁を頼って散り散りになった。だが『虚偽声明一族』として地域住民から敬遠され、受け入れ先でも冷遇されているという。

 エリアナとソリウスの元には、各国からの依頼が絶えることがなかった。事件の後、依頼を受けたとある国からは新たな感謝状を受領し、とある公国での復興支援事業も新たに受託している。

 ある日、エリアナはソリウス師匠と共に新しい土地へ向かう馬車の中にいた。窓の外を流れる美しい風景を眺めながら、彼女はこれまでの道のりを振り返っているようだった。

 魔力不足で見下されていた少女が、古代魔法の使い手として多くの人々に愛されるようになった。一度は彼女を見捨てた人々が、最終的に自らの愚かさによって破滅した。

 今のエリアナには、もう彼らへの怒りも憎しみもない。ただの無関心——過去の遠い記憶として処理されていた。

「師匠、私たちの次の目的地で、どんな人々と出会えるでしょうか」
「きっと、君を必要としている人たちがいるよ。そして君も、彼らから多くのことを学ぶはずだ」

 ソリウス師匠の温かい声に包まれながら、エリアナは未来への希望を胸に抱いているようだった。

 真の愛と信頼に基づく関係。互いを支え合い、成長していける絆。

 これこそが、彼女が本当に求めていたものだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『選ばれなかった令嬢は、世界の外で静かに微笑む』

ふわふわ
恋愛
婚約者エステランス・ショウシユウに一方的な婚約破棄を告げられ、 偽ヒロイン・エア・ソフィアの引き立て役として切り捨てられた令嬢 シャウ・エッセン。 「君はもう必要ない」 そう言われた瞬間、彼女は絶望しなかった。 ――なぜなら、その言葉は“自由”の始まりだったから。 王宮の表舞台から退き、誰にも選ばれない立場を自ら選んだシャウ。 だが皮肉なことに、彼女が去った後の世界は、少しずつ歪みを正し始める。 奇跡に頼らず、誰かを神格化せず、 一人に負担を押し付けない仕組みへ―― それは、彼女がかつて静かに築き、手放した「考え方」そのものだった。 元婚約者はようやく理解し、 偽ヒロインは役割を降り、 世界は「彼女がいなくても回る場所」へと変わっていく。 復讐も断罪もない。 あるのは、物語の中心から降りるという、最も静かな“ざまぁ”。 これは、 選ばれなかった令嬢が、 誰の期待にも縛られず、 名もなき日々を生きることを選ぶ物語。

兄が、姉の幼なじみと婚約破棄してから、家族がバラバラになったように見えていましたが、真実を知ると見え方が変わってきました

珠宮さくら
恋愛
コンスタンス・オクレールは兄と姉がいたが、兄が姉の幼なじみと婚約したのだが、それが破棄となってから興味ないからと何があったかを知らないままでいた。 そのせいで、家族がバラバラになっていくとはコンスタンスは思いもしなかったが、真実を知ってしまうと1番大人気なかったのは……。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。 でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

幼なじみで私の友達だと主張してお茶会やパーティーに紛れ込む令嬢に困っていたら、他にも私を利用する気満々な方々がいたようです

珠宮さくら
恋愛
アンリエット・ノアイユは、母親同士が仲良くしていたからという理由で、初めて会った時に友達であり、幼なじみだと言い張るようになったただの顔なじみの侯爵令嬢に困り果てていた。 だが、そんな令嬢だけでなく、アンリエットの周りには厄介な人が他にもいたようで……。

処理中です...