20 / 38
第20話 甘やかし ※マルク王子視点
しおりを挟む
「もしかして、またか?」
「はい! また、逃げてきました」
前も同じような光景を見た。部屋に入ってきたアイリーンに呆れて、私はため息を吐く。
「まったく、キミは……。逃げるなんて、ダメじゃないか」
「でもぉ……」
「早く戻るんだ」
涙目になりながら訴えてくるけど、私は心を鬼にして言い聞かせる。だってこれは彼女のためでもあるから、仕方ない。
お願いして緩くしてもらった内容でも、彼女は大変だという。しかし、必要最低限の礼儀作法ぐらいは学んでおかないと。彼女は、次期王妃なんだから。
緩くしてもらった内容もサボっていたら、王妃として認められないかもしれない。
それでは私が困るし、何より彼女が可哀想だ。彼女には立派な王妃になってもらいたいと心から願っている。そのためにも、頑張ってもらわなければ。
「わかった。次は、何が欲しいんだ? 新しいドレスか? それとも、宝石か?」
「今日は、そんな気分じゃないんです。本当に休みたいんですよ」
「そうか」
逃げてくるたび、彼女にドレスや宝石などを買い与えて、やる気を出させている。だけど今日は、それじゃあダメらしい。
「だが、そんなこと言っていたら、いつまでたっても妃教育は終わらないぞ」
「本当に、大変なんですからね! それに、ちょっとずつ進んでますよ!」
「まあ確かに、お前は頑張っていると思うが」
「分かってくれますか!? そうなんですよ! 私は、頑張っているんです」
必死に訴えるアイリーンを見ていると、可愛いなと思ってしまう。
平気でこなすよりも、こうやって素直に本音をさらけ出して、あんなのは無理だと言って逃げてくる方が人間味を感じる。彼女らしくて、いいなと思った。
それに比べて、オリヴィアは……。
前の婚約相手と、今の婚約相手を比較すると、今の方が断然良いな。そんなことを考えているともう一人、中年の女性が部屋にやって来た。
「失礼します、殿下」
「どうした?」
「あっ!?」
入ってきたのは、アイリーンの教育係。逃げ出したアイリーンを追って、ここまで連れ戻しにきたのだろう。教育係の顔を見たアイリーンは、慌てて私の背後にまわり込んで隠れた。ばっちり見られているので、逃げ道がない。
「アイリーン様! まだ、授業は終わっていませんよ! 今すぐ戻って、続きをやりなさい」
「嫌です! もう、勉強なんてしたくありません!」
教育係は、私の背後にいるアイリーンにそう叫ぶ。しかし、アイリーンも負けじと叫び返した。
「殿下からも、アイリーン様に言ってください!」
「マルク様は私の味方よ! そうですよね? マルク様!」
教育係が私に訴えてきて、アイリーンは私の背後からそう言ってくる。間に挟まれた私は、ただ苦笑いを浮かべることしかできなかった。
こうなってしまったアイリーンに言うことを聞かせるのは、無理だろう。
けれど、アイリーンがこれだけ強く拒絶するなんて。内容を見直してもらった後の妃教育も相当厳しいんだろう。
もう少し、アイリーンには頑張ってほしいという気持ちもある。でも、無理しないように休ませてあげたいという思いもある。
「こんな状態だ。無理強いしても良くないぞ。もう少しだけ、アイリーンを休ませてあげてくれ」
「そうやって殿下が彼女を甘やかすせいで、後々大変なことになるんですよ」
もう、手遅れかもしれませんが。教育係の言葉が、妙に耳に残った。
「はい! また、逃げてきました」
前も同じような光景を見た。部屋に入ってきたアイリーンに呆れて、私はため息を吐く。
「まったく、キミは……。逃げるなんて、ダメじゃないか」
「でもぉ……」
「早く戻るんだ」
涙目になりながら訴えてくるけど、私は心を鬼にして言い聞かせる。だってこれは彼女のためでもあるから、仕方ない。
お願いして緩くしてもらった内容でも、彼女は大変だという。しかし、必要最低限の礼儀作法ぐらいは学んでおかないと。彼女は、次期王妃なんだから。
緩くしてもらった内容もサボっていたら、王妃として認められないかもしれない。
それでは私が困るし、何より彼女が可哀想だ。彼女には立派な王妃になってもらいたいと心から願っている。そのためにも、頑張ってもらわなければ。
「わかった。次は、何が欲しいんだ? 新しいドレスか? それとも、宝石か?」
「今日は、そんな気分じゃないんです。本当に休みたいんですよ」
「そうか」
逃げてくるたび、彼女にドレスや宝石などを買い与えて、やる気を出させている。だけど今日は、それじゃあダメらしい。
「だが、そんなこと言っていたら、いつまでたっても妃教育は終わらないぞ」
「本当に、大変なんですからね! それに、ちょっとずつ進んでますよ!」
「まあ確かに、お前は頑張っていると思うが」
「分かってくれますか!? そうなんですよ! 私は、頑張っているんです」
必死に訴えるアイリーンを見ていると、可愛いなと思ってしまう。
平気でこなすよりも、こうやって素直に本音をさらけ出して、あんなのは無理だと言って逃げてくる方が人間味を感じる。彼女らしくて、いいなと思った。
それに比べて、オリヴィアは……。
前の婚約相手と、今の婚約相手を比較すると、今の方が断然良いな。そんなことを考えているともう一人、中年の女性が部屋にやって来た。
「失礼します、殿下」
「どうした?」
「あっ!?」
入ってきたのは、アイリーンの教育係。逃げ出したアイリーンを追って、ここまで連れ戻しにきたのだろう。教育係の顔を見たアイリーンは、慌てて私の背後にまわり込んで隠れた。ばっちり見られているので、逃げ道がない。
「アイリーン様! まだ、授業は終わっていませんよ! 今すぐ戻って、続きをやりなさい」
「嫌です! もう、勉強なんてしたくありません!」
教育係は、私の背後にいるアイリーンにそう叫ぶ。しかし、アイリーンも負けじと叫び返した。
「殿下からも、アイリーン様に言ってください!」
「マルク様は私の味方よ! そうですよね? マルク様!」
教育係が私に訴えてきて、アイリーンは私の背後からそう言ってくる。間に挟まれた私は、ただ苦笑いを浮かべることしかできなかった。
こうなってしまったアイリーンに言うことを聞かせるのは、無理だろう。
けれど、アイリーンがこれだけ強く拒絶するなんて。内容を見直してもらった後の妃教育も相当厳しいんだろう。
もう少し、アイリーンには頑張ってほしいという気持ちもある。でも、無理しないように休ませてあげたいという思いもある。
「こんな状態だ。無理強いしても良くないぞ。もう少しだけ、アイリーンを休ませてあげてくれ」
「そうやって殿下が彼女を甘やかすせいで、後々大変なことになるんですよ」
もう、手遅れかもしれませんが。教育係の言葉が、妙に耳に残った。
2,095
あなたにおすすめの小説
好きだった幼馴染みに再会→婚約者を捨ててプロポーズした侯爵令息
星森
恋愛
侯爵家の令息エドモンドは、幼い頃に結婚を誓い合った幼馴染コレットへの執着を捨てられずにいた。
しかし再会した彼女は自分を避け、公爵令息アランと親しくする姿ばかりが目に入る。
嫉妬と焦燥に駆られたエドモンドは、ついに“ある計画”に手を染めてしまう。
偶然を装った救出劇、強引な求愛、婚約破棄──
すべてはコレットを取り戻すためだった。
そして2人は……?
⚠️本作はAIが生成した文章を一部に使っています。
婚約者を借りパクされました
朝山みどり
恋愛
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。
わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。
兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。
わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。
家族も婚約者も大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。
そのうえ、わたしは、さえない留学生のお世話を押し付けられてしまった。
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
婚約破棄されてしまいましたが、全然辛くも悲しくもなくむしろスッキリした件
瑞多美音
恋愛
真面目にコツコツ働き家計を支えていたマイラ……しかし、突然の婚約破棄。そしてその婚約者のとなりには妹の姿が……
婚約破棄されたことで色々と吹っ切れたマイラとちょっとしたざまぁのお話。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
エミリーと精霊
朝山みどり
恋愛
誰もが精霊と契約する国。エミリーの八歳の誕生日にやって来たのは、おもちゃのようなトカゲだった。
名門侯爵家の娘としてありえない恥。家族はエミリーをそう扱った。だからエミリーは居場所を得るために頑張った。役に立とうとした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる