73 / 87
第十三章 決定打
第七十三話 光
しおりを挟む
※暴力的なシーンがあります(流血表現はありません)。
苦手な方はご注意ください。
床が硬い。
パトリックは腰をひねりながら、体勢を少し変えた。手足を縛られているため、移動は大変だ。
「……っ」
ひねった拍子に、脇腹に鈍痛が走る。
先程見知らぬ男に蹴られたのが原因だろう。あまりの唐突さに彼は、男の攻撃を身体で浴びるしか無かったのだ。
ふう、とため息をつく。
体勢を変えてもすぐに尻が痛くなってくる。寝転がりたいが、この硬い床では意味を成さないどころか、全身が痛くなる結果しか見えない。
「僕は、どうなるんだろう」
独り言を呟いた後、乾いた笑いが漏れた。
殴られ蹴られ、食事も与えられず、何も無い部屋で放置されるこの状況。
手の自由がきかないため服のポケットに入れている懐中時計は確認できないが、体感的に今は昼頃だろうか。
昨日の朝、王宮に出かける道中で連れ去られたということは、すでに一日以上が経過していることになる。
「疲れたな……」
憔悴しきった己の声が、無機質な室内に響いた。
「ここに入ってろ」
昨日、訳も分からずただ連れて来られた時、パトリックは男にそう言われた。
「早く」
「は、はい」
手は後ろで縛られていたが、この時はまだ足に自由があった。中へ入ると、男が床を指差す。
「ほら、こっち。座れ」
怯えながら男を見ると、舌打ちをされた。
「言うこと聞いてりゃ、悪いようにはしねぇよ」
抵抗したいが、この男をこれ以上苛立たせるのは得策では無い。パトリックは急いで男の指し示す場所に座った。
それから男は出ていき、鍵をかける音がした。
扉を見ると、鍵穴が加工された跡がある。中から開けられないように、細工しているらしい。
それから夜が更け、朝日がのぼっても、彼は放置された。時折誰かの足音がするものの、部屋に入ってくる気配は無い。
「お腹がすいたな」
昨日は男達に危害を加えられるのではないかと怯えてほとんど空腹を感じなかったが、今日のパトリックは空腹を感じられる余裕が出てきている。
しかし、どうせ食事は運ばれてこない。
扉の先の男達にはそうするつもりが無いことを、彼は何となく察しているのだ。
暇を持て余した両目は、部屋のあちこちを観察することになった。
今座っている床は木製だ。所々ささくれていたり、何かを引きずった跡が残っていたりする。
使っていた痕跡があるということはおそらく、空き家なのだろう。何かの事情で家主がいなくなったこの家は、自分を連れ去った男達の隠れ家として機能しているのかもしれない。
壁一面も木製の板が使われていた。それを踏まえて考えると、ここはトリジア王国内のはずだと思った。
連れ去られる時に薬か何かを嗅がされ意識がなくなったため、ここがどこなのか正確には分からない。
しかし少なくとも、ロワイユ王国では無いことは確かだ。あの国は海に面しているせいで塩害が多く、建築物に木材はあまり使われない。
これは、建築事業で勉強した際に覚えた知識だった。
それにしても、がらんとしている。パトリックは改めて室内を見渡した。
机も無い。椅子も無い。時計も無い。寝台も布団も枕も無い。この部屋には何も無い。
一応窓は一つある。貴族の家の窓と比べたら小さいが、城下町や地方の庶民的な家なら普通なのだと思う。
これも建設事業の調査の一環で、一般的な家の構造を確認した際に知った。
「こんなところで役に立つなんて」
何の因果かと苦笑する。するとその時、ふと気付いた。
「そうか……窓だ」
今脱出できる唯一の出入り口。昨日は考えることすらできないほど怯えていたものの、何もない室内と空腹も相俟って、外に出たかった。
手は縛られたままだ。しかし、それさえ解いてしまえばすぐに脱出できるはず。
温和な見た目から脱出などできるはずが無いと思われたのか、窓には鍵を細工した様子が見られなかった。
「どうやって解こう」
パトリックは室内を見渡した。
今度は観察のためではない。縄を切る手段を見つけるためだ。そしてそれは、案外すぐに見つかった。木のささくれである。
壁や床の板から飛び出ているささくれを利用して、縄を切れば良い。強度はかなり心配だが、頑丈そうなものを見繕って千切り、いくつも重ねれば何とかなるだろう。
この部屋で他にやることなどないのだから、時間はたっぷり使える。
「空き家が古くて助かった」
建築事業がもっと早く始動していれば、この空き家は新しく立て替えられていたかもしれない。となると、ささくれ作戦は効力を発揮しない。
もっともその場合は誰かが住むだろうから、犯罪組織の隠れ家に使われることは無いはずだが。
ともかくパトリックは、懸命に縄に切れ込みを入れようとした。縛られたままで手を動かすのは、なかなか難しい。それでもここから逃げるため、彼は必死だった。
そして──。
「切れた……!」
ようやく、縄が解けた。奇跡だった。
久しぶりに自由になった両手を見れば、赤い線がくっきりと浮かんでいる。やや痛みは残っているが、そんなことはどうでも良かった。
ここは二階だ。飛び降りたとしても、死ぬ確率はそれほど高くない。
パトリックの鼓動が高鳴る。
「よし」
鍵を開けようと手を伸ばす。しかし、金具が錆びているらしい。ここにきて、築年数が仇となっている。
やや手こずりながら、彼は金具を小刻みに動かした。
「これさえ開けば……っ」
外界への脱出寸前で、彼は夢中になっていた。夢中になり過ぎて、部屋に近づく足音に気付くのが遅れた。
「おい」
扉が開くのと、パトリックが振り向くのは同時だった。
男と目が合う。光など一切ない、仄暗い目。まずいと思ったその時、彼は床に叩きつけられていた。
「……っ!」
容赦の無い激痛が、背中と頭を襲う。そして次の瞬間には、脇腹にも鈍い圧力が襲いかかった。
痛いという単語では言い表せない。
受け止める準備すら整っていない生身に、大の男の蹴りが命中したらどうなるか。これまでの人生ならば想像することさえ無かった世界線に、パトリックは今、落とされた。
「言うこと聞いてりゃ悪いようにはしねぇって、聞こえなかったか?」
激痛に身悶える暇もなく胸ぐらを掴まれる。男の無表情が、かえって恐怖を助長させた。
「坊っちゃんだと思って厳重に監禁してなかったもんなぁ。まさか縄を解くなんて。ちょっくら仕置きが必要か」
震える息が出るばかりで、言葉にならない。
「こっちはな、場合によっちゃお前が死んでも文句はねぇって言われてんだよ」
低く、抑揚の無い声。人の命を何度も軽々と奪ってきたような、温度の無い声。
出会ったことなどあるはずもないのに、パトリックは悟った。この男は殺し屋だと。
「今やっても良いけどよ、後処理が面倒なんだわ。次はねぇぞ」
「は……はい」
振り絞って返事をすると、男はパトリックの胸ぐらを勢い良く離した。その拍子に再び床に背中を打ち付け、一瞬息が止まる。
男はそんなパトリックの手足をきつく縛って座らせると、窓を板で塞いだ。そして、部屋を出て行く。鍵の閉まる金属音が響き、静寂が訪れる。
日光を取り入れる窓が無くなったことで、室内はかなり暗くなった。壁のささくれを数えることもできないほどに。
それが、つい先程の出来事だ。パトリックは回想から離れ、現実に引き戻された。
もう、脱出は絶望的だ。次見つかれば、おそらく殺されるだろう。
ぼんやりと真正面を見つめながら悟る。
人間が壊れる原因は、精神と肉体のどちらだろうか──暗闇に包まれた部屋の中で、そんな疑問が浮かんできた。
答えは出ない。ただ、絶望と物理的暴力を喰らわされた自分は、このままだとそれほど長くもたないかもしれないということは分かった。
再び、全身に痛みが走る。息が上手く吸えない。壁にもたれるこの体勢ですら、楽とは言えなくなってきた。
ゆっくりと、目を閉じる。
思い浮かんだのは、申し訳なさ。
領地の取引で打撃を受けた両親。画家の卵としての援助を受けられなくなった妹ヴァレリア。
そしてリゼ王女の策略を知りながら、危険を伝えられなかったフォード伯爵令嬢。自分が今拉致されているということは、おそらく彼女も──。
こんなことになるなら、もっと違う選択肢を選べば良かった。他の選択肢など、あったのかどうか分からないが。
いや、無いなら作れば良かったのだ。きっと分岐点は作れた。誰かに助けを求めれば、もしかすると変わったかもしれない。
一人で抱え込んで、悩んで、最悪の結果を引き寄せてしまった。
「殿下への恩返しも、できないままだったな……」
彼への見方が変わって、自分自身も変わって、ようやく新しい舞台へ進もうとしていたところだった。それももう、叶う保証は無い。
他でもない、己の行動のせいで。
「…………ごめんなさい……」
できれば、直接言えたら良かったな。
徐々に薄れる意識の中で、パトリックはそんな風に後悔した。
ところがその時、突然扉の外が騒がしくなった。続いて、誰かの喚き声。何かが倒れる音。近付いてくるのは、複数人の足音だ。それから──。
「見つかりました!!」
扉が開くと同時に、眩しい光が飛び込んで来た。
閉じかけのまぶたと逆光のせいで、相手が誰なのかはよく見えない。しかし、腰にさしているらしき剣が何を示しているのかは分かった。
貴族庶民問わず、誰もが一度は憧れる組織の一員だという証。それを持っているのは、トリジア王国内にただ一つしかない。
王宮警備隊である。
「大丈夫ですか……!」
呼びかけてくれた声の頼もしさ。パトリックは、穏やかな表情で意識を手放した。
苦手な方はご注意ください。
床が硬い。
パトリックは腰をひねりながら、体勢を少し変えた。手足を縛られているため、移動は大変だ。
「……っ」
ひねった拍子に、脇腹に鈍痛が走る。
先程見知らぬ男に蹴られたのが原因だろう。あまりの唐突さに彼は、男の攻撃を身体で浴びるしか無かったのだ。
ふう、とため息をつく。
体勢を変えてもすぐに尻が痛くなってくる。寝転がりたいが、この硬い床では意味を成さないどころか、全身が痛くなる結果しか見えない。
「僕は、どうなるんだろう」
独り言を呟いた後、乾いた笑いが漏れた。
殴られ蹴られ、食事も与えられず、何も無い部屋で放置されるこの状況。
手の自由がきかないため服のポケットに入れている懐中時計は確認できないが、体感的に今は昼頃だろうか。
昨日の朝、王宮に出かける道中で連れ去られたということは、すでに一日以上が経過していることになる。
「疲れたな……」
憔悴しきった己の声が、無機質な室内に響いた。
「ここに入ってろ」
昨日、訳も分からずただ連れて来られた時、パトリックは男にそう言われた。
「早く」
「は、はい」
手は後ろで縛られていたが、この時はまだ足に自由があった。中へ入ると、男が床を指差す。
「ほら、こっち。座れ」
怯えながら男を見ると、舌打ちをされた。
「言うこと聞いてりゃ、悪いようにはしねぇよ」
抵抗したいが、この男をこれ以上苛立たせるのは得策では無い。パトリックは急いで男の指し示す場所に座った。
それから男は出ていき、鍵をかける音がした。
扉を見ると、鍵穴が加工された跡がある。中から開けられないように、細工しているらしい。
それから夜が更け、朝日がのぼっても、彼は放置された。時折誰かの足音がするものの、部屋に入ってくる気配は無い。
「お腹がすいたな」
昨日は男達に危害を加えられるのではないかと怯えてほとんど空腹を感じなかったが、今日のパトリックは空腹を感じられる余裕が出てきている。
しかし、どうせ食事は運ばれてこない。
扉の先の男達にはそうするつもりが無いことを、彼は何となく察しているのだ。
暇を持て余した両目は、部屋のあちこちを観察することになった。
今座っている床は木製だ。所々ささくれていたり、何かを引きずった跡が残っていたりする。
使っていた痕跡があるということはおそらく、空き家なのだろう。何かの事情で家主がいなくなったこの家は、自分を連れ去った男達の隠れ家として機能しているのかもしれない。
壁一面も木製の板が使われていた。それを踏まえて考えると、ここはトリジア王国内のはずだと思った。
連れ去られる時に薬か何かを嗅がされ意識がなくなったため、ここがどこなのか正確には分からない。
しかし少なくとも、ロワイユ王国では無いことは確かだ。あの国は海に面しているせいで塩害が多く、建築物に木材はあまり使われない。
これは、建築事業で勉強した際に覚えた知識だった。
それにしても、がらんとしている。パトリックは改めて室内を見渡した。
机も無い。椅子も無い。時計も無い。寝台も布団も枕も無い。この部屋には何も無い。
一応窓は一つある。貴族の家の窓と比べたら小さいが、城下町や地方の庶民的な家なら普通なのだと思う。
これも建設事業の調査の一環で、一般的な家の構造を確認した際に知った。
「こんなところで役に立つなんて」
何の因果かと苦笑する。するとその時、ふと気付いた。
「そうか……窓だ」
今脱出できる唯一の出入り口。昨日は考えることすらできないほど怯えていたものの、何もない室内と空腹も相俟って、外に出たかった。
手は縛られたままだ。しかし、それさえ解いてしまえばすぐに脱出できるはず。
温和な見た目から脱出などできるはずが無いと思われたのか、窓には鍵を細工した様子が見られなかった。
「どうやって解こう」
パトリックは室内を見渡した。
今度は観察のためではない。縄を切る手段を見つけるためだ。そしてそれは、案外すぐに見つかった。木のささくれである。
壁や床の板から飛び出ているささくれを利用して、縄を切れば良い。強度はかなり心配だが、頑丈そうなものを見繕って千切り、いくつも重ねれば何とかなるだろう。
この部屋で他にやることなどないのだから、時間はたっぷり使える。
「空き家が古くて助かった」
建築事業がもっと早く始動していれば、この空き家は新しく立て替えられていたかもしれない。となると、ささくれ作戦は効力を発揮しない。
もっともその場合は誰かが住むだろうから、犯罪組織の隠れ家に使われることは無いはずだが。
ともかくパトリックは、懸命に縄に切れ込みを入れようとした。縛られたままで手を動かすのは、なかなか難しい。それでもここから逃げるため、彼は必死だった。
そして──。
「切れた……!」
ようやく、縄が解けた。奇跡だった。
久しぶりに自由になった両手を見れば、赤い線がくっきりと浮かんでいる。やや痛みは残っているが、そんなことはどうでも良かった。
ここは二階だ。飛び降りたとしても、死ぬ確率はそれほど高くない。
パトリックの鼓動が高鳴る。
「よし」
鍵を開けようと手を伸ばす。しかし、金具が錆びているらしい。ここにきて、築年数が仇となっている。
やや手こずりながら、彼は金具を小刻みに動かした。
「これさえ開けば……っ」
外界への脱出寸前で、彼は夢中になっていた。夢中になり過ぎて、部屋に近づく足音に気付くのが遅れた。
「おい」
扉が開くのと、パトリックが振り向くのは同時だった。
男と目が合う。光など一切ない、仄暗い目。まずいと思ったその時、彼は床に叩きつけられていた。
「……っ!」
容赦の無い激痛が、背中と頭を襲う。そして次の瞬間には、脇腹にも鈍い圧力が襲いかかった。
痛いという単語では言い表せない。
受け止める準備すら整っていない生身に、大の男の蹴りが命中したらどうなるか。これまでの人生ならば想像することさえ無かった世界線に、パトリックは今、落とされた。
「言うこと聞いてりゃ悪いようにはしねぇって、聞こえなかったか?」
激痛に身悶える暇もなく胸ぐらを掴まれる。男の無表情が、かえって恐怖を助長させた。
「坊っちゃんだと思って厳重に監禁してなかったもんなぁ。まさか縄を解くなんて。ちょっくら仕置きが必要か」
震える息が出るばかりで、言葉にならない。
「こっちはな、場合によっちゃお前が死んでも文句はねぇって言われてんだよ」
低く、抑揚の無い声。人の命を何度も軽々と奪ってきたような、温度の無い声。
出会ったことなどあるはずもないのに、パトリックは悟った。この男は殺し屋だと。
「今やっても良いけどよ、後処理が面倒なんだわ。次はねぇぞ」
「は……はい」
振り絞って返事をすると、男はパトリックの胸ぐらを勢い良く離した。その拍子に再び床に背中を打ち付け、一瞬息が止まる。
男はそんなパトリックの手足をきつく縛って座らせると、窓を板で塞いだ。そして、部屋を出て行く。鍵の閉まる金属音が響き、静寂が訪れる。
日光を取り入れる窓が無くなったことで、室内はかなり暗くなった。壁のささくれを数えることもできないほどに。
それが、つい先程の出来事だ。パトリックは回想から離れ、現実に引き戻された。
もう、脱出は絶望的だ。次見つかれば、おそらく殺されるだろう。
ぼんやりと真正面を見つめながら悟る。
人間が壊れる原因は、精神と肉体のどちらだろうか──暗闇に包まれた部屋の中で、そんな疑問が浮かんできた。
答えは出ない。ただ、絶望と物理的暴力を喰らわされた自分は、このままだとそれほど長くもたないかもしれないということは分かった。
再び、全身に痛みが走る。息が上手く吸えない。壁にもたれるこの体勢ですら、楽とは言えなくなってきた。
ゆっくりと、目を閉じる。
思い浮かんだのは、申し訳なさ。
領地の取引で打撃を受けた両親。画家の卵としての援助を受けられなくなった妹ヴァレリア。
そしてリゼ王女の策略を知りながら、危険を伝えられなかったフォード伯爵令嬢。自分が今拉致されているということは、おそらく彼女も──。
こんなことになるなら、もっと違う選択肢を選べば良かった。他の選択肢など、あったのかどうか分からないが。
いや、無いなら作れば良かったのだ。きっと分岐点は作れた。誰かに助けを求めれば、もしかすると変わったかもしれない。
一人で抱え込んで、悩んで、最悪の結果を引き寄せてしまった。
「殿下への恩返しも、できないままだったな……」
彼への見方が変わって、自分自身も変わって、ようやく新しい舞台へ進もうとしていたところだった。それももう、叶う保証は無い。
他でもない、己の行動のせいで。
「…………ごめんなさい……」
できれば、直接言えたら良かったな。
徐々に薄れる意識の中で、パトリックはそんな風に後悔した。
ところがその時、突然扉の外が騒がしくなった。続いて、誰かの喚き声。何かが倒れる音。近付いてくるのは、複数人の足音だ。それから──。
「見つかりました!!」
扉が開くと同時に、眩しい光が飛び込んで来た。
閉じかけのまぶたと逆光のせいで、相手が誰なのかはよく見えない。しかし、腰にさしているらしき剣が何を示しているのかは分かった。
貴族庶民問わず、誰もが一度は憧れる組織の一員だという証。それを持っているのは、トリジア王国内にただ一つしかない。
王宮警備隊である。
「大丈夫ですか……!」
呼びかけてくれた声の頼もしさ。パトリックは、穏やかな表情で意識を手放した。
11
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
異世界で守護竜になりました
みん
恋愛
【召喚先は、誰も居ない森でした】の続編になります。
守護竜となった茉白のその後のお話です。
竜王国民を護りたいと、守護竜として頑張る茉白。そんな茉白を甘やかしたい近衛のカイルス。茉白はカイルスのそんな気持ちには気付かない上、茉白には密やかな野望もある。
茉白の野望は叶うのか?カイルスの想いは茉白に届くのか?
聖女由茉も健在です。
❋最初は恋愛要素薄目です
❋独自設定あり
❋他視点のお話もあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる