うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第1章 中立自由都市エラリア

レッサードラゴンを狩りに行くようです③

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僕達はテントを設営し終えた後、近くの丸太を拾ってくると焚き火を中心に、円を描くように座っていた。

フーシェが朝に作ってくれていたサンドイッチをマジックポーチから取り出し一噛みすれば、魔法の力で鮮度が落ちないのか、朝に切った瑞々しい野菜達が口の中で踊った。

肉は豚肉に近い味がし、少し酸っぱめのソースは酸味が程よく疲れが落ちていくようだ。

「美味しい!疲れが吹き飛びます」

「フーシェ凄い!美味しいよ!」

僕とイスカが笑顔で褒めると、フーシェは嬉しくなったのか小さく頷く。
そのフーシェといえば、全く疲れを見せる素振りもなく、テキパキとテントを設営するのだから、体力が無尽蔵のように思えてしまう。

「ん。良かった」

設営を終えたテントは3~4人用で、中にはシュラフが3つ準備されているが、交代で休憩を取るため皆が一緒に中に入ることはない。
二人が警戒、一人が休憩というシフトを組んで交代する予定だ。

「昼のことなんだけど、『3つ目の壁』を壊したいって?」

ゴブリンとの戦闘により聞きそびれていたことを、僕はフーシェに聞いてみる。

フーシェは、小さな口でサンドイッチを頬張ると、しばし思慮するように咀嚼を終えると話始めた。

「フーシェは、2つ目の壁は突破したと思う。大体、20前後が『才能の壁』。でも『試練の壁』は、人によっていつあるのか分からない」

「レベル20から25で壁ができるって、何か特殊な事情がありそうですね」

確かに才能の次に来る壁が試練であるのならば、フーシェの場合そのレベル差はかなり少ない。

「ユズキの力は、その制約を壊してレベルを上げてくれると思う。でも、それだけだときっと、そのことに甘えたままの自分で終わりそう」

フーシェは、最後のサンドイッチの一切れを口に入れる。
飲み込み終わると、フーシェは僕の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「だけど、エラリアにいるだけでは何も変わらない。だから、ユズキと一緒に行きたい。──きっと、フーシェに足りない何かが見つかる気がするから」

真剣な表情に、イスカが少しだけ羨ましそうな顔をする。

「いいなぁ、フーシェちゃんにはずっと夢があるんだね」

フーシェは頷く。

「ん。フーシェの夢は、故郷、魔大陸レーベンの探索」

そう語るフーシェの声は少し嬉しそうだ。

「でも、フーシェの街は滅んだって──」

僕の脳裏に、奴隷商館でのやり取りが思い出されていた。
そう。フーシェは王族でありながら、国が滅んだために一度は奴隷にされ、ミドラに出会ったことでエラリアに暮らすようになっていた。

僕が言いたいことを察したのか、フーシェは小さく頷く。

「ん。フーシェの住んでた町、レーヴァテインは隣にある魔大陸によって滅ぼされた。ちなみに魔大陸は4つある。神々に見放された土地、それが魔大陸」

指を4本立てたフーシェの声に怒りは感じ取ることができなかった。

しかしだ──

セラ様は、人族や魔族に対して中立であることを公言されていた。ならば、フーシェの話す魔大陸の認識もセラ様の預かり知らぬ所で生まれたものなのかもしれない。

だって、あの優しい女神さまは魔族だからといって見放すことなど絶対にしないと確信できるからだ。

ただ、思想や意見の対立で争いが起こるということは、悲しいことに思えた。

セラ様はきっと争いは望んでいないから。
少しポンコツな女神さまではあるけれど、セラ様が自分の世界で争いが止まないことを悲しまないわけがない。

「レーヴァテインは戦争に負けた。それは別にいい。でも、住んでいたのは5歳まで。フーシェは産まれた故郷の世界をもっと見てみたい」

彼女の中の夢を熱く語る姿は、抑揚や表情は少ないが、その言葉には興奮の熱が籠もっている。

「いい夢だね」

僕の返事に、フーシェは頷いたが、すぐにあることに気付き慌てたように腕を振った。

「ユズキ、イスカも一緒に行く」

おっと、それなりの平穏をモットーに生きたいのに、何故か魔大陸に行くことが目標になっているぞ。

でも、そんなフーシェのペースが今はなぜだか心地が良い。

「魔大陸ですか⋯⋯クルトスに住んでいた私にとっては夢の世界です」

まだ見ぬ遠くの景色に思いを馳せるような表情のイスカにフーシェが力強く頷く。

「ん。記憶の中のレーベンは凄くいいところ」

魔大陸と名前だけを聞くと、恐ろしさしか感じないが、きっとまだ見ぬこの世界には素敵な景色が溢れているのだろう。

「でも、町の外はかなり高レベル。25ではすぐ死ぬ」

あ、なんかかなりやばいのでは?

秘境は危険というけれど、高レベルモンスターがわんさかといる故郷はとても物騒だ。

「そのためのレベルアップをしたいんですね」

イスカの言葉にフーシェは親指を立てる。

「ん。まずはおっかぁのレベル43を目指す」

身近な人物の目標ではあるが、レベルが頭は打ちとなった今、その目標はフーシェにとっては高い目標なのだろう。

だったら、僕はその目標を叶えられるようサポートするだけだ。
そう思いつつ、また僕達は少しだけ談笑する。

立ち上る煙の先には、地球では見ることもできない壮大な天の川に似た星々の大河が流れていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



次の日、僕達は何回か野生のモンスターと遭遇したが、そのどれもが草食性のモンスターであり、戦闘になることはなかった。

僕達の目標はあくまでもレッサードラゴンの討伐。
レベルを上げたいというフーシェだが、彼女も不必要な戦闘は回避することには同意していた。
曰く、

「もう、かなりレベル25から戦ったのにレベルが上がらない。だから、無用な戦闘は消耗に繋がって非効率」

とのことだった。
ゲームで言えば、特殊イベントが起こればフーシェのレベルも上がりそうなものなのだが⋯⋯

まだまだ分からないことが多いため、僕達はフーシェの言葉に従い、ひたすらに大洞窟を目指した。

昨日の曇り空は夜から晴れ渡り、今朝も森林の中には陽射しが差し込んでいる。

日差しが丁度僕達の真上にかかる頃、フーシェが森林の果て、山裾にポッカリと口を開けている大洞窟を指さした。

「あれが大洞窟⋯⋯ってあれ?」

大自然の中にある大洞窟と言えば、人類未踏の地。人工物の形跡なんてないと思っていたのだが──

僕の言わんとしていることを察したのか、フーシェは僕を見上げると声をかけた。

「ん。大洞窟は様々な素材やアイテムが埋まっているダンジョン。だから、同じように冒険者が挑んでいる」

そう、僕の目の前にはテントがいくつか点在しており、そこには明らかに人類の営みが築かれていた。

「たまに、魔物が来るからみんなテント暮らし。でも、多分商人もいる」

商魂逞しいけど、僕が商人なら絶対にここでは商売をしないと心に誓おう。

「私、ダンジョンって初めてです。こんな風になっているんですね」

テントは岩肌や木々に隠れるように建てられており、そのいくつかには明らかに放置されたと思われる、人気のないテントも散在していた。

先を行くフーシェは、足取り軽く荷物を背負ったまま進んで行く。

人の生活圏内に入った所で、僕達は正面から歩いてくる中年男性を見かけた。

腰に一本剣をさげてはいるが、防具を身につけることはせず、眠そうに口元を抑えている。

「ん。おっちゃんだ」

面識があるのか、フーシェは男性に気づいてもらえるよう手をビシッと伸ばした。

「あ、あー。ん?ってフーシェじゃないか、久しぶりだな。っておいおい!髪どうした髪!!あの髪ないから、一瞬名前が出てこなかったぞ!」

欠伸途中にフーシェに気づいたのか、男は立ち止まるとポリポリと頭を掻いた。

「今日はミドラはいないのか──ん?お前らもしかしてフーシェのパーティーか?」

男性は、フーシェの後ろに立つ僕達に気づくと無遠慮にジロジロと視線を向けた。
その視線に、思わずイスカが僕の影に隠れる。

大分、人族にも慣れてきているイスカだが、不躾な視線はイスカの不信感を買っているようだ。

「おぅ、俺はケンって言うんだ。C級パーティー『闇の息吹ダークブレス』の一員だ」

うん、なかなかの中ニ感。いいね。

そして、絶妙にパーティーレベルが強くないのも中二心をくすぐられるものがある。

少し笑いそうになるが、イスカも特にツッコミを入れようとしないため、僕だけが笑わないように必死になってしまう。

「お前らパーティー名は?」

ケンと名乗った男性の一言で僕は凍りつく。

え?まさかパーティー名って必須なのかな?

何も考えていなかったけど、下手なパーティー名を決めてしまったら、ずっとネーミング下手のレッテルを押されてしまいそうだ。

「ん。まだない。でも、ユズキが素晴らしい名前を決めてくれる」

おい!
勝手にハードルをあげないでほしい。

小さい頃買っていたミックス犬の名前は、『ワンジロー』だよ?

もう、絶望的なんだけど。

僕の心の絶望なんていざしらず、ケンはふーんとだけ言うと、また眠そうに瞼を擦った。

「ん。またおっちゃん達は採掘?」

フーシェの質問にケンは頷く。

「あぁ、いつも通りせこせこ採掘をしてお金稼ぎさ。今回は大体1週間。今日で4日目だな。昨日は賭けが白熱してな。さっき目覚めたんだけど、さすがにそろそろ働かないとな」

そう言うと、ケンはゴソゴソとポケットを探ると「戦利品」と言って2枚の銀貨を見せてくれた。
どうやら、賭けには勝ったみたいだ。

「フーシェは、またレベル上げか?というか、後ろの二人はフーシェのレベルについていけるのか?」

不審がる男に反論したのは、僕ではなくフーシェだ。

「ん。ユズキは私より強い。イスカもそこそこ強い」

断言してくれるのは有り難いけど、余り話題を出されると困ってしまう。
有り難いことに、ケンはそれ以上聞いてくることはなかった。

「そうか、まぁ頑張れよ。そうそう、なんだか洞窟内が騒がしい。フーシェなら目標は中層だろうけど、あまり奥に入らない方がいいかもな」

ケンは盛大にフラグを建設すると、手をヒラヒラと振りながら立ち去ってしまった。

「ちょっと、怖いですね」

怖がるイスカにフーシェは首を横にふる。

「ダンジョンが騒がしくて、問題になることはある。ただ、深層のモンスターや魔物が出てくることはほとんどない。今日はここでキャンプ」

明日からダンジョン攻略をするならば、準備はしっかりと整えておきたかった。
僕達はフーシェに促されるまま、テントを張るために岩肌へと歩みを進めた。

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