うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第1章 中立自由都市エラリア

レッサードラゴンを狩りに行くようです④

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次の日の朝、僕達は荷物を整理すると大洞窟の中へと足を踏み入れた。
テントはベースキャンプに置いてあった。
フーシェ曰く洞窟内は複雑なため、荷物の軽量化は必須とのことだ。

「うわぁ、綺麗⋯⋯」

洞窟内に足を踏み入れたイスカが感嘆の声をあげる。

洞窟内は真っ暗かと思えば、光が差し込まない所まで進むと、今度は自生するキノコやコケが淡く、黄色い光を放っていた。
照明のような明るさはないが、内部の探索には十分な光量が得られている。

「こんな、景色初めて見たよ」

一応荷物に松明は持っているのだが、この調子であれば必要はなさそうだ。
先を行くフーシェは、当初の目的である中層を目指して歩みを進める。

「ん。コケやキノコは光ることで、人やモンスターをおびき寄せて、胞子を遠くに運んでもらうために光ってるって、おっかぁから聞いた」

背中には小さなリュックを一つ背負うだけまでに軽装化されたフーシェの動きはさらに活発だ。
イスカも、トントンと足場の悪い洞窟内をステップを踏むように歩いていく。

僕も脚力は十分にあるためついていけるが、女性陣に比べると優雅さはないね。

それに、イスカやフーシェの選ぶ足場は効率は良いが繊細さが求められる。危うく踏み外さないように慎重に足を運ばなければならない。

「ん。敵」

小さくフーシェが呟くと、左手で後ろをついて歩く僕達を制止する。

カシャン
カシャン

金属や固いものを打ち付けるような音が、洞窟内に響き渡る。
それなりに広い空洞を進んでいた僕達だが、目の前にはあちこちに鍾乳洞が生えており見通しが悪い。

この音といえば、考えられるのは──

果たして、鍾乳洞の影から姿を現したのは2体のスケルトンだ。

「私が行きます」

レベルが29となったイスカは、素早く僕の側を駆け上がると音もなくスケルトンへと近づく。

「ハッ!」

小さく息を吐きながらイスカは、手前にいたスケルトンに斬りつける。
大腿骨を斬られたスケルトンがバランスを失い転倒する。
イスカは、もう1体のスケルトンが向き直るまでの僅かな隙を見逃さない。
予め、接近する前に組んでいた魔法術式を解き放った。

「『グランドスピアー』!」

アルティナがワイバーン戦で放った魔法『ガイアニードル』より簡易な魔法、初級魔法のグランドスピアーが炸裂する。

ドンッ!

スケルトンは突如足元から現れた鍾乳洞によって、串刺しにされた。

骨盤は砕かれ、脊髄が粉々になる。

「イスカ!スケルトンは核を狙って!」

叫ぶフーシェの声に応えるようにイスカが剣を振るう。

キンッ!
キンッ!

イスカは一瞬で、崩れ落ちるスケルトンの身体から赤い核と思われる石を見つけると、剣で両断した。

核を壊されたスケルトン達は、魔力による支えを失って地面へと転がった。

「ふぅ、どうでしたか?」

イスカは振り返ると僕達に感想を求めてくる。

「ん。洞窟内で火魔法はかなり危険。使わずに倒せたのは良い判断」

親指を立てるフーシェに見られて、イスカは少し恥ずかしそうにはにかむと笑みを見せた。

そう、レベルが上がりにくいフーシェはイスカに対して戦いぶりを評価する役を買って出ていた。
レベルばかりは高い僕達だが、求められる状況判断や戦闘センスは実戦の中でしか磨かれない。

圧倒的に実戦経験が不足している僕達にとっては、今回のダンジョンでは、そういった戦闘スタイルや仲間との連携を確立するための訓練機会も担っていた、

特に、洞窟内の戦闘では、町で色々と調べていた僕のスキルの検証も兼ねて実証実験が行われていた。
そこで得られた情報は以下の通りだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【レベル貸与】対象に一律レベル10までのレベルを貸与できる。時間は1時間。1日1回が限度。

【能力値譲渡】
最大2つまでの能力値を最大限まで変更できる。
一回5分。1日3回まで。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ワイバーンの時には無我夢中で使ったスキルではあるけど、やっぱり無敵の様な能力ではなかった。
特に、どちらのスキルともに時間制限が設定されることから、使い所を誤ってしまえば、あっという間に窮地に陥ってしまうだろう。

そういう意味でも、僕達は戦い方を確立しなければならなかった。

「イスカ、まるで忍者のようだったよ!」

興奮する僕に対してイスカは小首を傾げる。

「忍者って何ですか?」

確かに、そう言われればここは異世界だったね。
僕は慌てて、イスカに対して忍者とは何かを説明しなければならなくなってしまっていた。

そういう風に、僕達は自分達の戦い方を確認するように戦闘を繰り返しながら、表層を進んでいく。
休憩を挟みながら6時間程歩くと、フーシェは突如立ち止まった。

周りのキノコやコケが光っているのは同じなのだが、何か違和感がある。

「ん。ここからヒカリキノコとヒカリゴケの色が青色に変わった。ここからが中層」

そうか!
僕が、感じていた違和感は光るキノコやコケの色が少しずつ黄色から青へと変化していたことだったんだ!

「このキノコやコケは洞窟に流れる空気によって色が変わる。この洞窟で冒険者達は、キノコ達の色が変わったら中層と呼んでいる」

「休むかい?」

僕の提案に二人は頷く。
ここには、既に冒険者達の姿はなくマジックポーチも使い放題だ。

僕達は、少し固めの非常食のようなパンを齧った。

うん、美味しくないけどこれも生き残るためだ。

「あんまり美味しくないです」

正直な感想をイスカが言ってくれる。
その様子を見たフーシェは首を横に振った。

「ん。仕方ない。強い香りは魔物をおびき寄せる」

そう、この洞窟内の大気の流れは地下から地上へ向かって吹いていた。
森林であれば風によって拡散する香りも、ここではどこから臭ってきているのか特定することは容易だ。

休憩中に、魔物が乱入してくることは避けたいところだ。

「あ、でもユズキが全部倒してくれたら。美味しい臭いをさせても問題ない」

いや、それだと休憩がモンスターハウスにならない?

仕方なく、僕は現状を受け入れてまた味気のないパンを口に放り込むことに専念するのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


中層に着くと、一つ大きな出来事があった。
そう、他の冒険者パーティーと出会ったのだ。
しかし、その冒険者達の様子がおかしかったのは、誰もが傷つき、そのうちパーティーの一人は男性隊員の背中に背負われ浅い呼吸を繰り返していた。
出血は酷く、背負っている男性の上衣を真紅に染め上げてしまっている。

聞けば5人パーティーの彼らはB級パーティーではあるが、中層探索で回復アイテムを使い切ってしまったそうだ。

出血によるショックを起こしている!

そう考えた僕は、パーティーのリーダーの男性に掛け合い治療をすることを提案した。勿論、願ったり叶ったりと頼み込んで来た彼らに対し、僕はスキル『体力譲渡』をかけてあげる。

「なんだこれ!」
「傷口が全く見えないぞ!」
「⋯⋯あれ?皆がピンピンしてるなんて、私死んだのかな?」

彼らは、僕からの信じられないくらいの回復を受けたことに驚嘆する。
特に、死にかけていた女の子は現実を受け止められない様子だ。

「レッサードラゴンが出た」 

彼らはひとしきり、回復によるお互いの無事を喜びあった後、忠告として僕達に教えてくれた。
その繰り出された一撃で、四人が戦闘不能となり、先程まで背負われていた女の子だけが助かり、皆に回復アイテムを使ったとのことだった。
しかし、回復させる途中で女の子もレッサードラゴンの一撃を受けてしまい致命傷を負ったのだという。

感謝の印として、彼らは僕達に食料袋を1つと青く輝く宝石を1つ差し出してくれた。
断ろうとも思ったが、半ば押し付けられるように僕は受け取ってしまった。

その後、フーシェから言われたのは──

「ユズキの回復による正当な対価」

と、言われるのだから、受け取って良かったのだろう。



そして今僕たちは、彼らから別れて1時間程歩き続けていた。



敵は確かに強くなった。
それも、スケルトンの様な人と同じくらいの背格好のものより、より巨大でより驚異を増す攻撃を僕達に繰り出してきた。
特に、魔物によっては魔法を使ってくることは多いに僕達を悩ませた。
単調な魔法を使う敵ばかりであることが救いだ。

「イスカ、なんか嫌な予感がするんだ」

休憩を少しずつ取ってはいるものの、初めてのダンジョンでいきなり中層奥深くまでやってきたことは、確実にイスカの精神を削っているのか、顔からは疲労の色が色濃く見えた。

「レッサードラゴンの件ですか?」

そう。先程のパーティーの話を疑いたい訳ではなかったが、何かが引っかかるのだ。

「レッサードラゴンに出会って、ここまで逃げ切る。──できる?」

僕の言葉に、イスカはハッとした顔をする。

そうなのだ、パーティー5人中4人が倒れた際、残り1人が回復に奔走している中、レッサードラゴンがそれを見逃してくれるのだろうか?

「ん。確かにそれは無理」

そう言い終えると、フーシェも確かに変だと思ったのか、瞳を少し見開いた。

「でも!あの人達が嘘をついているとは思わないです!」

「そうだよね。背負われていた女の子の回復術師は瀕死だったし、僕達に嘘をつくメリットは何もない」

だからといって、彼らは口を揃えてレッサードラゴンと言うのだ。
ドラゴン種を他の種族と間違うものなのだろうか?

いや、絶対にないよね。

となると、最低でもドラゴンに似た驚異が現れたと仮定するしかなかった。

「──よし、今日はここでキャンプ」

フーシェは、僕達の表情を読み取ったのか、高らかに宣言する。

「こんな時に寝れないよ」

僕はそう言うが、フーシェは駄目だという。

「ユズキはリーダー、そのリーダーが正常に頭が働いていないのは良くない。休む時は休む」

そんなに酷い顔をしていたとはね⋯⋯。

フーシェは洞窟の岸壁の中から適度な大きさの窪みを見つけると、僕のマジックポーチから預けていた薄い布を出すことを要求した。

僕は言われるがまま、布を差し出す。少しくたびれた茶色の布は人一人が包まるにはよさそうな大きさだ。

「これ、おっかぁと一緒に探索していた時に使っていた魔物避けの布。でも、これ1枚しかないから」

「それじゃあ、交代で寝るってことですよね?」

疲れからか、イスカの耳は少し力なく垂れ下がっている。
フーシェはフルフルと首を横に振ると、先程の窪みに入るよう僕とイスカに告げた。

まるで、ソファーに吸い込まれるように僕とイスカはその窪みに身体を寄せる。

「ん。フーシェも入るから少し空けておく」

そう言うと、フーシェは布の四方に麻紐をくくりつけるとピンと張り、窪みの上が外からは見えないように巧みに岩の凹凸に縛りつけた。

すると、フーシェは僕の右側へとスルリと身を滑らせる。
真ん中に僕、左側がイスカ、右側がフーシェといった格好だ。

美女と美少女に囲まれて嬉しいはずだが、体力は限界のようだ。

視界が布によって暗くなったことから、トロンと僕の瞼は重くなる。
左を見れば、イスカも小さく欠伸をあげている。

こんなダンジョンで寝てしまうなんて。

「⋯⋯、この布って絶対に見つからないの?」

僕の問いにフーシェは答えない。
そっと、右側を見るとフーシェは深く眼を閉じると、小さく規則正しく寝息を立てていた。

はやっ!

とは思わない。思い返せば、僕はフーシェに頼ってばかりだ。
フーシェからすれば、慣れない僕とイスカをダンジョン案内するためには、かなりの神経を使っていたはずだ。
さっきの質問を起こしてまで聞こうとは思わなかった。

ここで死ぬなら、皆一緒だ。

それよりも、抗えないくらいに眠気が強い。
少しでも布の外から僕達が見えることがないよう、僕はイスカとフーシェの肩を抱き寄せる。

あぁ、もう限界だ。

クラッとした眠気が襲ったかと思うと、僕の意識は深い闇の中へと飲み込まれていった。
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