うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第2章 交易都市トナミカ

ギルドで初老の男と出会うようです

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僕たち3人とウォーレンは、エレナと共にトナミカギルドへと足を進めていた。
 エレナは、先ほど捕まえた男の報告と報酬をもらいにギルドへ用ができたとのことだった。
 話によれば、エレナは元々この町の出身ではないらしい。トナミカに来て、この町の風土が好きになったため、活動拠点をトナミカに移したと僕たちに話してくれた。

「ふふっ、ギルドの近くにある食堂がこれまた海鮮が美味しくてね。良かったら今度一緒に行かない?」

 エレナは、その闊達な気性でイスカとフーシェが息つく暇もなく、この町の魅力を熱く語ってくれる。
 そんな、グイグイとくる彼女の姿勢にイスカとフーシェも当初は引き気味ではあったけど、エレナの熱く語る口調に段々と心動かされたのか、今ではすっかり美味しいお店やアクセサリー店の情報収集を始めてしまうのだから、女性陣の持つパワーは凄まじい。

 僕はと言えばこの町での拠点を手に入れるべく、なるべく治安が良く安全な宿を確保したいため、宿に関する情報収集をウォーレンから行っている最中であった。結論からすれば、ウォーレンの上げてくれた候補から条件を絞ると、どうやら『水海月亭みずくらげてい』が良さそうだ。

「さぁ、あそこがトナミカギルドだ」

 そう言って、隣を歩くウォーレンが前方を指さす。
 そこには、エラリアのギルドと同じように石造りの堅牢なギルドが、広大な広場の中央に居を構えていた。
 ちなみに、この場所。広場と言いながら半面は海に面している。イメージ的にはイタリアのヴェネツィアといったようなところか。
 違うところは、石造りの壁も真っ白に塗られ、屋根は真っ赤に彩られているところあたりだろうか。

 海から吹く風は少し冷気をまとっているが、これは遅い春がもたらすものだろう。
 エラリアと比べれば、北部に位置するため体感的にも少し冷たい。

 ウォーレンに案内されるままにギルドの中へと足を踏み入れると、外とは違うムワッとした熱気に包まれた。

「凄い人です!」
「ん。ここなんか臭い」

 イスカは僕の手を取り、フーシェはその鋭敏な嗅覚でギルド内に立ち込める臭いに耐えられなくなったのか、鼻をつまんでしまった。

「ここは、交易都市だからね。ここからだと、魔大陸への便も出ている。あっちへ行きたい冒険者も準備を整えるためにギルドを活用したりしているから人の出入りは多いんだよ」

「へぇ、確かに沢山の種族の方々がいますね」

「ん。同族の匂いもする」

 見れば、獣耳や尻尾を生やした亜人族も多く見かけ、体は人族だが頭部は爬虫類であるリザードマン。果てには背中に翼を生やした有翼族の冒険者もいるのだから、その存在は多種多様だ。

「キャッ!」

 突如、イスカの後ろに人がぶつかり、イスカは小さく声を上げる。

「あぁ、ごめんなさい。──ってクォーターか。そっちが気をつけなさい」

 ぶつかってきたのは、女性。それも、エラリアでは見たことがないイスカと同族のエルフだ。
 しかし、イスカと決定的に違うのはその瞳。翡翠色に輝くイスカの瞳とは全く異なる黄金色の瞳。その輝きはシトリンのように光輝いている。

 ぶつかってきたのは、そっちだろう?

 僕が前に出るよりも早く、ウォーレンが前に立つとエルフの女性を窘めた。

「おい、先にぶつかって謝っておいて、相手を見て態度を変えるのはやめるんだ。トナミカギルドでは、特に種族間のトラブルを重く見ているぞ」

 ウォーレンの服装がギルド職員の服であることに気づいたのか、エルフは罰が悪そうに視線を逸らした。

「くっ、ウォーレンがそこのクォーターの肩を持つなら分が悪いわね。分かったわ、気を付けます気を付けます」

 最後は悪びれる様子もなく、視線も合わさずにエルフは去って行ってしまった。

「あのエルフ、イスカに向かってあんな風に言うなんて。イスカ、大丈夫?」

 僕がまだ内心の怒りを隠しきれないように呟くと、フーシェも同意する。

「ん。あいつ、締め上げる?」

 おぉ、それはちょっと物騒この上ないね。

 そんな僕たちの様子にウォーレンは慌ててしまう。

「おいおい、折角止めたんだ。さらに争いごとはやめてくれよ」

「いいんです、エラリアではそんなに面と向かって言われたことはないから忘れていましたが、本来クォーターという立場は、これが一般的だと知っていましたから」

 そう言われると、僕も心苦しくなってしまう。
 やはり、同じ種族の血が流れていたとしても、純血種から見れば混血種の存在は下に見てしまうのだろうか。
 どこの世界でも同じような問題が起こるということは、悲しいことだけど、僕はイスカがこの世界で唯一の存在であることを知っている。
 うなだれるイスカに、僕は卑下する必要はないと証明してあげたかった。

「あのエルフの言っていることは間違っている。僕は、色んな種族を見てきたけれど、星屑亭のみんなやエラリアの多くの人がイスカに優しかったことを知っている。それに、種族なんて関係ないって僕たちのパーティーを見ていたらそう思うだろ?」

 そう、人族の僕。エルフクォーターのイスカ、半魔族のフーシェ。相手の存在を認めることができなければ、パーティーを組むことなんてできないんだ。

「ん。大丈夫。あんなゴミエルフなんて、イスカの腕一本で吹っ飛ばせる」

 さっきから、物騒な言葉をフーシェは並べるが、それだけ彼女もイスカのことで腹を立てているのだろう。

「ありがとうございます。ユズキさんにフーシェ⋯⋯それに庇ってくれてありがとうございます。ウォーレンさん、もしかしてこのギルドで偉い立場の方なんですか?」

 目尻を軽く押さえて微笑むイスカに少し安堵したような表情をウォーレンは浮かべる。

「全員があんな感じではないんだけど、来て早々嫌な思いをさせてしまってすまないね。一応、私はこのギルドのナンバー2だよ」

 その言葉を聞いて僕たちは驚いてしまう。

 でも、エラリアに単身で調整に赴くことを考えれば、確かにそれなりに偉くなければ大役を務められないよね。

「ん。強そうに見えないのに偉いなんて不思議」

「フーシェ!強いことだけが立場に反映されるわけじゃないんだよ」

 失礼な物言いに、僕も慌ててしまう。しかし、その言葉を一向に介さないかのようにウォーレンは笑った。

「ははっ、確かに私は冒険者の人たちよりも弱いよ。でも、僕の戦いは剣じゃなくてココだからね」

 そう言うと、ウォーレンは頭と口をトントンと叩くと笑みを浮かべた。

「ま、といっても家に帰れば妻の天下。自慢の調整力も家では役立たずさ」

 自嘲気味に笑うウォーレン。
 うん、切実さが感じられていたたまれないです。

「さて、その考え方ということは、もしかしてフーシェちゃんは魔族かな?」

 ドキリとした。
 奴隷商館のフローリアも同じだったが、ウォーレンも言葉の端々から人物像を描き出すことに長けているらしい。
 一気に緊張した面持ちの僕とイスカに、ウォーレンは慌てて手を振った。

「誤解ないように言うけど、魔族だから駄目ということはないよ。ここ、トナミカは数少ない魔大陸にも船を出す町だからね。数は少ないけど、魔大陸出身の冒険者もこのギルドには在籍しているんだよ」

 そう言うと、何かに感づいたのかウォーレンはポンと手を叩いた。

「もしかして、君たちがこの町に来た理由って、魔大陸に行きたいのかな?」

 うーん、さすがにギルドのナンバー2。鋭い。

「えっと、今すぐにではないですけど、渡れる便があるなら乗りたいですね。勿論、渡る前に準備をこの町で進めていく予定です」

 ウォーレンは黙って僕の言葉を聞いていたが、僕が言い終えると困ったような表情をした。

「はぁー、まさか目的地が魔大陸だとはね。失礼だけど君たちのギルドランクは?」

「C級です」

 嫌な予感しかしないが、嘘はつけないので正直に僕は答える。
 対するウォーレンは、やっぱりかという風に表情を曇らせた。

「言いづらいんだけど、最低でもB級に上がって尚且つ僕かギルドマスターの証書がなければ魔大陸には行けないんだよ」

 確かに、フーシェが言っていた通りレベル25でさえ死のリスクが非常に高い土地。無暗に冒険者を送り出すこともできないのだろう。

 実績は、ワイバーン討伐とドラゴン討伐という破格の依頼をこなしてはいるのだけれど、実質達成依頼2個では信憑性が少なすぎる。

 だから、これの出番だ。

 僕はポーチから1つの書面を取り出すと、ウォーレンへと差し出す。

「何々、これって──。これ、エラリアギルドのギルドマスター、ラムダン氏からの推薦状じゃないか!?──拝見させてもらっても?」

 ウォーレンは驚くと、僕の手からラムダンの推薦状を受け取った。
 口を軽く開きながら、小声で文章を追いかけていたウォーレンだったが、最後には大きく目を見開いてしまっていた。

「──であるからにして、エラリアギルドマスターであるラムダンは、ユズキとそのパーティーが如何なる依頼も受注できるものであると承認し、他のギルドへも同等の便宜を図るよう推薦するものとする!?」

 最後は驚きと共に、ウォーレンは書面と僕たちを交互に見返すこととなってしまった。

「──はぁ。全くもって信じられないけれど、この筆跡とこのギルドでしか取り扱っていない紙の生地⋯⋯本当のことだと信じなければならないな」

 ウォーレンの驚き様から、ラムダンがエラリアを離れる前に手渡してくれた書面の効力の凄まじさを垣間見たようだった。

「ん。てことはフーシェ達は魔大陸に行けるってこと?」

 小首を傾げるフーシェにウォーレンは大きく頷いた。
 その時だ。

「お嬢さんがた、それはお辞めになった方がいい」

 物腰柔らかだが、筋の通った初老の男性の声。
 有無を言わさないその力強い声に僕たちは、声の主を求めて振り返ることになった。

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