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第2章 交易都市トナミカ
第2章が終わるようです
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身体に一気に押し寄せる脱力感。
急速に、魔力と体力の枯渇が押し寄せ足元がふらつく。
『警告、譲渡可能な残存能力の30%減少を確認。意識低下の危険性があります』
脳内のセラ様AIが僕に警告を告げてくる。
アースドラゴンと対峙した時に、フーシェに全魔力を譲渡した時とは異なる感覚が僕を襲う。
まるで過呼吸になったかのように、呼吸は浅くなり酸素を求める。
「支えます!」
すぐ近くにいるはずなのに、イスカの声がやけに遠くに感じる。
ぼんやりとする意識の中、温かなぬくもりが僕の腕を掴む。
少し楽になったと感じるが、譲渡スキルにより僕の体内の魔力と体力は根こそぎ刈り取られていく感覚だ。
「あっ──」
足元がふらつき、後ろに倒れそうになる僕を、今度は背丈のあるローガンが支えてくれた。
「無茶をなさいますな」
親身な声に安心を覚える。
『残存能力50%、意識消失の危険性があります』
「ユズキ!十分な魔力が私にも供給されているわ!『範囲回復魔法』をかけるわよ!」
リズも『探知』スキルの検索に該当した回復魔法を使用できる人物の1人だ。
リズの声が聞こえたかと思うと、心地良い風が僕の体内をすり抜けていった。
「何とかなりそうだぞ!」
「傷が良くなった!」
負傷者たちの喜びの声が遠くに聞こえる。
『セラ様、お願いがあります』
思考が緩慢になっていく中で、僕は脳内のセラ様AIに話しかける。
『生命維持に必要な分だけを残して、ギリギリまで『譲渡』を行うつもりですね』
さすが僕のスキルの一部なだけあって、理解が早くて助かるよ。
『正直、承服しかねますがやりましょう。大量の『譲渡』を頻回に繰り返したおかげで、『譲渡』スキルの副作用である意識低下や脱力に対する抵抗が高まりそうです』
セラ様AIが何事かを説明してくれているが、僕の頭はその言葉を理解することができない。
考えをまとめようにも、思考に靄がかかったかのように、脳内はぼんやりとしている。
「ユズキ」
フーシェの少し焦ったかのような声が僕の耳に届いた瞬間、僕の視界は暗転した。
『『譲渡』値が危険領域へと進行しました。これより、本スキルはマスターの指示に従い自動モードへと移行します』
最後に忠告のようなセラ様AIの声が響いたかと思うと、僕の意識はそれを最後に深い深い闇の中へと沈んでいった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「グレイン、リズは見つかりませんか?」
レーヴァテインの城内で、魔族の男は前方から歩いてくる巨漢の魔族に対して声をかけた。
黄金色に輝く、煌びやかな甲冑を身に纏った魔族は軽く2メートル50を超えているだろう。
隆々と盛り上がる筋肉を抑え込むように身につけられた甲冑のおかげで、巨漢の魔族に眼前に立たれると、視界は壁を目の前にしたかのような錯覚を覚えてしまうだろう。
「ふむ、今の所手がかりはないな。ドルトンの方はどうだ?」
グレインと呼ばれた巨漢の魔族は、四肢の作りこそ人に酷似しているが、その頭部は獅子のように獰猛なネコ科を思わせる姿をしており、見事なまでのたてがみは、甲冑と同じ金色に輝いていた。
見る者を威圧するようなグレインの風貌と打って変わって、グレインからドルトンと呼ばれた魔族は、見た目はやや青白い肌を持った人族といったところだ。
物腰も、グレインと比べると遥かに柔らかく、その佇まいは執事のようでこそある。
「私も、あのお転婆姫の痕跡を辿ったのですが、グレインが会っていないのであれば、恐らくは『魔王』様から賜った大鎌『宵闇の死』による転位を行ったかと」
ドルトンが口を開くと、そこにはとても人では有り得ない程に発達した犬歯が垣間見えた。
ジャケットを着こなした見た目からは、吸血鬼そのものといってもいいだろう。
「しかし、あの女が逃げたとしても、『宵闇の死』は魔王様と繋がっておられる。いくらなんでも、それくらいは分かっているだろうよ」
グレインとドルトンがあげる、『魔王』とは勿論リズを指すものではなかった。
二人が信愛の情を持って口に出す『魔王』はただ一人。
リズの父親である、魔大陸ドミナントの『魔王』。
メナフ=フォルティナ・ヴァレンタインだ。
「あの姫は、あぁ見えて頭はキレる。しかし、可哀想なものです。あんなに我が『魔王』に認めてもらおうと必死になっていたのに、本当は認めてもらうばかりか、実の父親に捨て駒にされようとしている」
ドルトンの言葉にリズを案ずる気持ちはない。
芝居がかった口調は、道化を演じているように軽薄に聞こえた。
「カッ、白々しい台詞を吐くなドルトン。貴様が一番、あの女の評判を貶めようとしたではないか」
グレインが口元を緩め、ニヤリと笑う。
全ての物を噛み砕けそうな鋭い牙が、顔を覗かせた。
「確かに、レーベンを支配する『魔王』は民のことを重んじない程冷酷で、城に引き籠もって贅の限りを尽くしている悪王である。そう仕向けるように仕立てたのは私です」
下卑た笑いを見られたくないのか、ドルトンは胸ポケットからハンカチを取り出すと口元を覆った。
「ただ、行方知れずのままということは良くない。なんとか探し出して城に連れ戻すか、抵抗するようであれば半殺しにでもして観測を続けてもらわねばな」
「──確かに、お転婆姫の『万象の眼』は唯一無二のスキル。姫が献身的にドミナントに情報を送るお陰で、我らが『魔王』がどれだけお慶びになっておられるか」
ドルトンは、遠いドミナントの地で玉座に座る『魔王』、メナフに対して思いを馳せた。
「『魔王』が必要としているのは、あの女のスキルのみだからな。ここに赴任させたことも、少しでも索敵範囲を上げるためにすぎない。そして、ことが始まれば、そのスキルも最早無用の長物となる。まさしく使い捨て⋯⋯、いや用済みになれば破棄されるということは、子供に与える玩具のようなものだ」
グレインの言葉にドルトンは頷く。
「ただ、転移の先も2つに一つ。1つはドミナント、もう1つはトナミカ。姫のことだ、今ドミナントに行くことはないでしょう。それならば、トナミカに渡ったと考えるのが妥当でしょう」
ドルトンの言葉に、グレインの瞼がピクリと上がる。
少し苛立ちを抱えた表情は、彼の獰猛さを際立たせた。
「よりによって、人族の縄張りに行ったのか?それは、少し厄介ではないのか?」
グレインの言葉に、ドルトンは未だ口元を隠しつつも笑みを作った。
「ふふ、私が人族をそのまま野放しにしているわけがないでしょう。トナミカにも、間者を潜ませてありますよ。戻ってきて仕事をしなければ、──そうですね。少し強めの薬でも盛ってあげれば、すぐに言うことを聞くようになるでしょう」
眼光鋭く話すドルトンに、思わずグレインも背筋が寒くなる思いがして、少し後ずさった。
こういう所が苦手だ。
線の細い、優男といった印象からは想像もできない、得体の知れない気味悪さがグレインは少し苦手であった。
そんな時──
「──あの?グレイン様、ドルトン様?」
一人の少女の声が廊下に響き渡った。
その言葉を聞いて、ドルトンは口元を覆っていたハンカチを戻すと、声の方へと向き直った。
そこには、可憐と言っても過言ではない小柄な少女が立っていた。
見た目は、150cmには少し足りないだろうか?
肌は褐色味を帯び、髪は冬を切り取ってきたかのような純白だ。耳の上部から生える1対の角は髪と同じくらいに白く、少し透き通った色は氷柱のようだった。
ドルトンは、声の主が見知った少女であることを知ると、少し引きつった笑みで少女に話しかけた。
「こら、メーシェ。私は今大事な話をしている所なのです。あっちへ行ってなさい」
嗜めるような口調は、何処か気を使うように神経質なものだ。
「うーん。だって、いつも訓練訓練でつまらないんだもん。少しは遊びたいのに!」
無邪気に笑うメーシェと呼ばれた少女の目線に合わせるようにドルトンは腰を落とす。
ドルトンは、少し躊躇うかのように差し出しかけた手を一瞬止めたが、すぐに意を決したかのようにメーシェの頭に手を置くと、絹のように繊細な髪を撫でた。
「もう少しの辛抱です。もう少しで、とっても楽しいことが起こります。その時は、目一杯遊んで良いのですから。それまでは、いい子でいるんですよ」
「⋯⋯むー」
少し不貞腐れるように、メーシェは頬を膨らませる。
「分かった!でも、楽しいことには絶対メーシェを仲間外れにしないでよ!」
ビシッとメーシェに指を刺されて、ドルトンの顔が少し引きつり青白い額に汗が流れた。
「えぇ、勿論ですとも」
ドルトンの言葉に少女は嬉しそうに微笑む。
そして、少しぎこちなくスカートの裾を摘むと二人に向かって恭しくお辞儀をした。
「それでは、グレイン様、ドルトン様失礼します」
言い終えるや、メーシェは風の様に廊下を走り去ってしまった。
メーシェの姿が扉の向こうに消えたことを確認したドルトンが、肩をガクッと落とした。
「満身創痍だな」
グレインに言葉をかけられる中、ドルトンは再びハンカチを取り出すと、今度は額の汗を拭った。
「当たり前でしょう!?アレに遊ばれるということが、どういうことかはグレインも知っているでしょう?」
顔面蒼白のドルトンだが、グレインはドルトンの豹変ぶりを笑うことはなかった。
「確かに、ドルトンでなければ彼女を御することは難しい。俺もまだ死にたくはないからな」
グレインは呟くと、廊下の窓から見えるレーヴァテインの町並みを見下した。
復興の進まない町並みは、あちらこちらに虫食いのような大小様々な穴が見えた。その景色を見据えたグレインはポツリと呟いた。
「『魔王』は、扱いやすいものが1番さ」
急速に、魔力と体力の枯渇が押し寄せ足元がふらつく。
『警告、譲渡可能な残存能力の30%減少を確認。意識低下の危険性があります』
脳内のセラ様AIが僕に警告を告げてくる。
アースドラゴンと対峙した時に、フーシェに全魔力を譲渡した時とは異なる感覚が僕を襲う。
まるで過呼吸になったかのように、呼吸は浅くなり酸素を求める。
「支えます!」
すぐ近くにいるはずなのに、イスカの声がやけに遠くに感じる。
ぼんやりとする意識の中、温かなぬくもりが僕の腕を掴む。
少し楽になったと感じるが、譲渡スキルにより僕の体内の魔力と体力は根こそぎ刈り取られていく感覚だ。
「あっ──」
足元がふらつき、後ろに倒れそうになる僕を、今度は背丈のあるローガンが支えてくれた。
「無茶をなさいますな」
親身な声に安心を覚える。
『残存能力50%、意識消失の危険性があります』
「ユズキ!十分な魔力が私にも供給されているわ!『範囲回復魔法』をかけるわよ!」
リズも『探知』スキルの検索に該当した回復魔法を使用できる人物の1人だ。
リズの声が聞こえたかと思うと、心地良い風が僕の体内をすり抜けていった。
「何とかなりそうだぞ!」
「傷が良くなった!」
負傷者たちの喜びの声が遠くに聞こえる。
『セラ様、お願いがあります』
思考が緩慢になっていく中で、僕は脳内のセラ様AIに話しかける。
『生命維持に必要な分だけを残して、ギリギリまで『譲渡』を行うつもりですね』
さすが僕のスキルの一部なだけあって、理解が早くて助かるよ。
『正直、承服しかねますがやりましょう。大量の『譲渡』を頻回に繰り返したおかげで、『譲渡』スキルの副作用である意識低下や脱力に対する抵抗が高まりそうです』
セラ様AIが何事かを説明してくれているが、僕の頭はその言葉を理解することができない。
考えをまとめようにも、思考に靄がかかったかのように、脳内はぼんやりとしている。
「ユズキ」
フーシェの少し焦ったかのような声が僕の耳に届いた瞬間、僕の視界は暗転した。
『『譲渡』値が危険領域へと進行しました。これより、本スキルはマスターの指示に従い自動モードへと移行します』
最後に忠告のようなセラ様AIの声が響いたかと思うと、僕の意識はそれを最後に深い深い闇の中へと沈んでいった。
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「グレイン、リズは見つかりませんか?」
レーヴァテインの城内で、魔族の男は前方から歩いてくる巨漢の魔族に対して声をかけた。
黄金色に輝く、煌びやかな甲冑を身に纏った魔族は軽く2メートル50を超えているだろう。
隆々と盛り上がる筋肉を抑え込むように身につけられた甲冑のおかげで、巨漢の魔族に眼前に立たれると、視界は壁を目の前にしたかのような錯覚を覚えてしまうだろう。
「ふむ、今の所手がかりはないな。ドルトンの方はどうだ?」
グレインと呼ばれた巨漢の魔族は、四肢の作りこそ人に酷似しているが、その頭部は獅子のように獰猛なネコ科を思わせる姿をしており、見事なまでのたてがみは、甲冑と同じ金色に輝いていた。
見る者を威圧するようなグレインの風貌と打って変わって、グレインからドルトンと呼ばれた魔族は、見た目はやや青白い肌を持った人族といったところだ。
物腰も、グレインと比べると遥かに柔らかく、その佇まいは執事のようでこそある。
「私も、あのお転婆姫の痕跡を辿ったのですが、グレインが会っていないのであれば、恐らくは『魔王』様から賜った大鎌『宵闇の死』による転位を行ったかと」
ドルトンが口を開くと、そこにはとても人では有り得ない程に発達した犬歯が垣間見えた。
ジャケットを着こなした見た目からは、吸血鬼そのものといってもいいだろう。
「しかし、あの女が逃げたとしても、『宵闇の死』は魔王様と繋がっておられる。いくらなんでも、それくらいは分かっているだろうよ」
グレインとドルトンがあげる、『魔王』とは勿論リズを指すものではなかった。
二人が信愛の情を持って口に出す『魔王』はただ一人。
リズの父親である、魔大陸ドミナントの『魔王』。
メナフ=フォルティナ・ヴァレンタインだ。
「あの姫は、あぁ見えて頭はキレる。しかし、可哀想なものです。あんなに我が『魔王』に認めてもらおうと必死になっていたのに、本当は認めてもらうばかりか、実の父親に捨て駒にされようとしている」
ドルトンの言葉にリズを案ずる気持ちはない。
芝居がかった口調は、道化を演じているように軽薄に聞こえた。
「カッ、白々しい台詞を吐くなドルトン。貴様が一番、あの女の評判を貶めようとしたではないか」
グレインが口元を緩め、ニヤリと笑う。
全ての物を噛み砕けそうな鋭い牙が、顔を覗かせた。
「確かに、レーベンを支配する『魔王』は民のことを重んじない程冷酷で、城に引き籠もって贅の限りを尽くしている悪王である。そう仕向けるように仕立てたのは私です」
下卑た笑いを見られたくないのか、ドルトンは胸ポケットからハンカチを取り出すと口元を覆った。
「ただ、行方知れずのままということは良くない。なんとか探し出して城に連れ戻すか、抵抗するようであれば半殺しにでもして観測を続けてもらわねばな」
「──確かに、お転婆姫の『万象の眼』は唯一無二のスキル。姫が献身的にドミナントに情報を送るお陰で、我らが『魔王』がどれだけお慶びになっておられるか」
ドルトンは、遠いドミナントの地で玉座に座る『魔王』、メナフに対して思いを馳せた。
「『魔王』が必要としているのは、あの女のスキルのみだからな。ここに赴任させたことも、少しでも索敵範囲を上げるためにすぎない。そして、ことが始まれば、そのスキルも最早無用の長物となる。まさしく使い捨て⋯⋯、いや用済みになれば破棄されるということは、子供に与える玩具のようなものだ」
グレインの言葉にドルトンは頷く。
「ただ、転移の先も2つに一つ。1つはドミナント、もう1つはトナミカ。姫のことだ、今ドミナントに行くことはないでしょう。それならば、トナミカに渡ったと考えるのが妥当でしょう」
ドルトンの言葉に、グレインの瞼がピクリと上がる。
少し苛立ちを抱えた表情は、彼の獰猛さを際立たせた。
「よりによって、人族の縄張りに行ったのか?それは、少し厄介ではないのか?」
グレインの言葉に、ドルトンは未だ口元を隠しつつも笑みを作った。
「ふふ、私が人族をそのまま野放しにしているわけがないでしょう。トナミカにも、間者を潜ませてありますよ。戻ってきて仕事をしなければ、──そうですね。少し強めの薬でも盛ってあげれば、すぐに言うことを聞くようになるでしょう」
眼光鋭く話すドルトンに、思わずグレインも背筋が寒くなる思いがして、少し後ずさった。
こういう所が苦手だ。
線の細い、優男といった印象からは想像もできない、得体の知れない気味悪さがグレインは少し苦手であった。
そんな時──
「──あの?グレイン様、ドルトン様?」
一人の少女の声が廊下に響き渡った。
その言葉を聞いて、ドルトンは口元を覆っていたハンカチを戻すと、声の方へと向き直った。
そこには、可憐と言っても過言ではない小柄な少女が立っていた。
見た目は、150cmには少し足りないだろうか?
肌は褐色味を帯び、髪は冬を切り取ってきたかのような純白だ。耳の上部から生える1対の角は髪と同じくらいに白く、少し透き通った色は氷柱のようだった。
ドルトンは、声の主が見知った少女であることを知ると、少し引きつった笑みで少女に話しかけた。
「こら、メーシェ。私は今大事な話をしている所なのです。あっちへ行ってなさい」
嗜めるような口調は、何処か気を使うように神経質なものだ。
「うーん。だって、いつも訓練訓練でつまらないんだもん。少しは遊びたいのに!」
無邪気に笑うメーシェと呼ばれた少女の目線に合わせるようにドルトンは腰を落とす。
ドルトンは、少し躊躇うかのように差し出しかけた手を一瞬止めたが、すぐに意を決したかのようにメーシェの頭に手を置くと、絹のように繊細な髪を撫でた。
「もう少しの辛抱です。もう少しで、とっても楽しいことが起こります。その時は、目一杯遊んで良いのですから。それまでは、いい子でいるんですよ」
「⋯⋯むー」
少し不貞腐れるように、メーシェは頬を膨らませる。
「分かった!でも、楽しいことには絶対メーシェを仲間外れにしないでよ!」
ビシッとメーシェに指を刺されて、ドルトンの顔が少し引きつり青白い額に汗が流れた。
「えぇ、勿論ですとも」
ドルトンの言葉に少女は嬉しそうに微笑む。
そして、少しぎこちなくスカートの裾を摘むと二人に向かって恭しくお辞儀をした。
「それでは、グレイン様、ドルトン様失礼します」
言い終えるや、メーシェは風の様に廊下を走り去ってしまった。
メーシェの姿が扉の向こうに消えたことを確認したドルトンが、肩をガクッと落とした。
「満身創痍だな」
グレインに言葉をかけられる中、ドルトンは再びハンカチを取り出すと、今度は額の汗を拭った。
「当たり前でしょう!?アレに遊ばれるということが、どういうことかはグレインも知っているでしょう?」
顔面蒼白のドルトンだが、グレインはドルトンの豹変ぶりを笑うことはなかった。
「確かに、ドルトンでなければ彼女を御することは難しい。俺もまだ死にたくはないからな」
グレインは呟くと、廊下の窓から見えるレーヴァテインの町並みを見下した。
復興の進まない町並みは、あちらこちらに虫食いのような大小様々な穴が見えた。その景色を見据えたグレインはポツリと呟いた。
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