うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第3章 城壁都市ウォール

暫く女性のままだそうです

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「ほら、顔をあげて──」

細くしなやかな指が、優しく私の髪を解いてくれるのが心地よい。
リズが、ひとしきり泣いた私の頭を優しく撫でてくれていた。
どうもこの姿だと、情緒面でも変化が現れるらしい。

「うぅ、リズが生き返って良かったよぉ~」

多分私の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていると思う。
でも、それでも直ぐにリズの顔を見たくて私は顔をあげた。

「あら、可愛いお顔。そんなに泣いてたら美人が台無しよ。──って、あれ?なんで私は生きているのかしら?イスカやフーシェ、ローガンも集まって。⋯⋯まって、ユズキはどこ?」

周囲に見慣れた顔が揃っていることにリズは驚く。
イスカは目に涙を浮かべ、フーシェは少し嬉しそうに微笑む。
ローガンは目頭を抑え、軽く俯いていた。

「あ、ええっと」

セラ様が人差し指で涙を払いながら、困ったような顔で私を指差す。

「リズさん、私もよく分からないのですが──、その女性がユズキさんです」

沈黙があった。

リズは、これが現実だと確かめるために自分の胸元に残る血の跡を眺めた後、軽く頬をつねった。

「え?」

困惑するリズとは裏腹に、生き返った喜びから私は満面の笑みを浮かべて、リズに飛びついた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


リズの蘇生後、私は改めて分かっていることを皆に伝えた。
私の職業、『譲渡士』がかつては別の世界の『魔王』が有していたスキル、『最適化オプティマイズ』から生まれた職業であること。その魔王の『譲渡士』になる前の職業が『略奪者プレデター』であることをだ。

この2つの職業の能力を、完全にユズキと合体させた時、姿まで変化してしまうことを私は皆に説明した。

「ほんとだわ。貴女の波長はユズキとほとんど同じよ。──性別まで変わってしまうのは、未だに信じられないけど」

リズの困惑顔に、イスカがおずおずと手をあげた。

「そしたら、ユズキさんはこれからもこの姿ってことですか?」

恋人がいきなり女性になったら、確かに困惑する。
私は、安心させる為にイスカに軽く手を振った。

「大丈夫、大丈夫。『略奪者プレデター』から『譲渡士』になれたし、この能力を解除すれば、また男性の姿に戻れるから。今戻るね」

私が意識を内部に集中させようとした瞬間──

「クシュンッ!!」

可愛いくしゃみがすぐ隣から聞こえた。

「──んっ!」

何?いきなり身体がビリっと来たような。
私は、くしゃみの主を見て嫌な予感がした。

「す、すみません──鼻が少しムズムズしちゃって」

鼻をかるくすするのはセラ様だった。
なんか、フラグな気もするけど──
再び私は意識を内部に集中する。



フッと、私の視界の前には劇場の扉が現れた。
しかし、その扉は固く閉ざされており開く気配がない。

『セライ!そっちから開けられない?』

私は、劇場の中にいる少年のセライに声をかける。
ピタッと扉に耳をつけると、中から大声をあげる少年の声が聞こえた。

「駄目だ!マスター。見えない力によって全然開かない!」

その声を聞いて、脳内から『譲渡士』のセライの声が聞こえた。

『多分、セラ様の力によって一時的に扉がロックされたみたいです。『劇場』に戻らないと、私は消滅してしまいますから、しばらくは合体したままでいるしかないでしょう』

「え、ええ~っ!!」



瞳を開く。 
はい、フラグ回収です。
私は鼻をさすっている、セラ様の肩を思わず揺さぶった。

「なんて時にクシャミするんですか!!暫く男に戻れなくなっちゃったじゃないですか!」

訳が分からないと言った風に、私に肩を揺さぶられていたセラ様だったが、またしてもクシャミが私に影響を及ぼしたのだと知ると顔を真っ赤にさせた。

「えっと──ごめんなさい。でも、天変地異が起こらなかっただけマシとしてください」

「なんで、ほぼ人族とか言っときながら、そんな時こそ女神さまの力を発揮するんですかぁ~。この身体、いつ戻るんですか~」

私が目に涙を浮かべて、セラ様を揺さぶっていると、2つの気配がピリッとしたものに変わった。

「女神?」 
「ほんとに?」

その気配は、リズとエアだ。
リズの気配は特に顕著に変わり、蘇生したばかりなのに、その気配は敵意が籠もっていた。

「ユズキ、あなたが転生したということは聞いていたわ。でも、その娘がこの世界の神だということを私は聞いていないわよ」

「朝に話そうとしたけど、ジェイクの襲撃があったでしょ?あれで言いそびれていたのよ」
 
私が、ピリピリとした気配からリズから守るために、セラ様の身体をギュッと抱きしめた。

「それに、肉体が死んだリズの魂を助けてくれたのは、セラだよ。そんなにピリピリしないで」

その言葉を聞いたリズが、発していた敵意を緩める。
再び、自分の身体を見つめて小さく頷く。

「やっぱり、私は一度死んだのね⋯⋯」

「エアも含めて、皆でリズの生命を修復したの。本当に助かって良かった」

私が微笑むと、リズは困ったように顔を反らした。

「私達、魔族にとって『女神』は、敵と同じように憎む存在だけど、生命の恩人と言うのなら、失礼なことはできないじゃない」

『敵』?
何故リズはセラ様のことを『敵』と思うのだろう。

──『魔大陸』は、神から見捨てられた土地。

前にフーシェが話してくれた言葉が頭をよぎった。

「それは、魔大陸が神から見放された土地という理由が原因?」

私がそう言うと、リズとエアは同時に頷いた。

「かつて、人族と魔族は共に生活をしていた。しかし、魔族と人族に揉め事が起きるようになり、怒った神々は身体の弱い人族を住みやすい中央大陸へ、そして魔族は争いを起こす存在として4つの大陸へと追放した。──魔族なら子供でも知っているお話ね」

エアがそう言うと、リズも頷いた。

「だから、私達魔族は神のことを恨んではいても、慕ってはいないわ。神は人族を優遇して、魔族を見捨てたんだって」

リズの言葉を聞いたセラ様は、その言葉を受け止めるように聞いていたが、やがてスッと立ち上がると瞳を閉じて胸の前で腕を組んだ。

──ブワッ!

眩い光と共に、セラ様の背中から純白の羽が広がった。
神々しいという表現しかできない、美しい羽。
日が陰って来ている森林に、まるで朝日が差し込んだかのような光が広がった。

「な、なんという──」

ローガンが、眼から涙をこぼしながら、膝をつき祈りを捧げていた。
それはそうだろう。この姿を見てしまったなら、圧倒的なまでのオーラに、神が降臨したことを一目で信じ切ってしまうのも無理がない。

「私はとある理由でこの地に受肉して、一人の人族として生を終えるまでこの地に留まります。そう、貴女達が恐れ憎む存在。それがこの私、『セラフィラル』における唯一神、女神セラです」

神々しい口調は、その見た目からは想像ができない程の気品に溢れている。
羽ばたくことのない翼なのに、セラ様の足は地から離れている。

ただ、とある理由が。クシャミで私をうっかり死なせたことと、アマラ様の世界にちょっかいをかけたことの罰と知ったならば、この二人はどんな顔をするのだろうか。
勿論、セラ様の威厳を守るために、事情を知っている私とイスカは笑ってしまわないように、必死に下を向く。
そんな私達を横目で見たセラ様は、少し顔を赤くすると、コホンと咳払いをした。

「リズさん、エアさん。貴女達に私はどう見えますか?この短時間しか私は貴女達と過ごしていません。しかし、貴女達は私が魔族を『追放』するように見えましたか?」

その言葉を聞いて、リズとエアは思わず顔を見合わせる。
半魔族のフーシェは、特に気になることでもないのか、女性になった私の側に来ると、スンスンと匂いを嗅ぐと、嬉しそうにすり寄ってきた。
その様子を見て、そそっとイスカも腕を絡めるように私の側に近寄ってくる。

何ここ、いい香りしかしない。

ダメダメ、ちょっと頭がポーッとしてしまった。

「⋯⋯見えないわ」

リズが声を押し殺したように呟いた。

「そうですね。全てを話すことはできませんが、私の想い。それを皆さんにお話しましょう」

スッとセラ様は地面へと降り立つ。
後光が差し込むかのような光に、すっかりリズとエアの顔からは敵意が消え去ってしまっていた。






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