うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第3章 城壁都市ウォール

野営?いえ、グランピングのようです

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「さて、神が魔族を追放した。その話は魔族の人々には長く伝わる伝承です。では、それは神である私が『そんなことは言っていない』といったらどうします?」

 セラ様の口から、静かだが誰も否とは言えない口調で真実が語られる。

「う、嘘」

 エアが青い肌を白くして震えている。
 対するリズは考え事をしているのか、眉間にしわを寄せて額に手を当てていたが、やがてスッと頭を上げるとセラ様に対して跪いた。

「セラ様、数々のご無礼を失礼致しました」

「し、信じるんですか!?」

 エアが驚いたように声をあげる。
 しかし、リズはエアを見つめると力強く頷いた。

「そう、私達は神が魔族を見放したと信じていた。でも、誰も神と会ったことがないのに?そう考えると、私達の信じていたことは根本的に誤りであったと考えても不思議ではないわ」

「こ、この女の子が偽物という可能性だってあるじゃないですか」

 エアの言葉に、リズは首を振る。

「私のスキルは、その者が持つ波動を読み取れるわ。今、目を閉じた時に波動を感じたのだけど、明らかにセラ⋯⋯様の波動はおかしいのよ。人族と同じような波動を出しているのに、その奥には天空に吸い込まれそうな光と闇が見えているよう。こんな波動を持つ者は、人でも魔族でもない。本当に別の存在よ」

『観測の魔王』という称号は伊達じゃない。
 私には分からないセラ様の深淵を、リズは感じ取ったのだろう。

「何故、魔族と人族が大陸を分けたのか。その理由は私は語れません。それは、今を生きる貴女達が真相を見つけなければいけないからです。ただ一つ私が言えることは、人族であれ魔族であれ、全ては私が生み出した等しく愛おしい生命です。ですから、この人としての寿命を全うするまで、貴女達のことは近くから見守っていますよ」

 セラ様はそう言うと、少し震えているエアと強張った表情のリズに歩み寄ると、二人をそっと抱きしめた。

 ──!

 見間違いかもしれない。
 でも、私の目には一瞬だけだが、出会った時の荘厳な姿のセラ様の御姿が映し出された。
 純白な翼が、そっと二人の肩を寄り添うように包み込む。

「ん。あのフワフワの羽、羨ましい」

 その様子を見ていたフーシェが眼をキラキラとさせている。

「フフッ、良ければ今度はフーシェさんもどうぞ」

 そんな簡単に女神様の羽って触ってもいいものなのかな?
 おかしいな、私は初めて会った時に触ったら吹き飛ばされたのに。

 ちょっと納得がいかない所はあるが、仕方がない。
 私は、その暫し荘厳な光景に息を呑みつつも、リズとエアが落ち着くまで見守るしかなかった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 気が付くと、周囲は陽がほとんど差し込むこともなくなってきていた。

 リズのスキル『万事のまなこ』を使って、探知をしたことで分かったことは、ここはウォールの町から10キロ離れた山奥ということ。
 あと5キロ北東に進めば、『レーヴァテイン』との中間の町、『リビアン』に着くということだが、このまま夜の山道を進むことは危険ということになった。

「周囲に大型の魔物の存在がほとんどいないわ──もしかしたら、ユズキの『略奪者プレデター』の力の危険性を感じ取って、皆この周囲から逃げたんでしょうね」

 私が『略奪者プレデター』の能力で生命を刈り取り、白色に変えてしまった一帯を中心に、魔物が逃げてしまったらしい。
 それならばと、今夜はここで一晩明かしてから移動することになったのだ。

「リズ様!お手伝いします!!」

 セラ様から真実を知った後、エアはリズに対して、首を絞めてしまったことを謝罪をした。
 リズも今のレーヴァテインが置かれている状況を話した後、『魔王』として、領民の生活を困窮させたことを謝罪していた。
 決して、リズが行ったことではなく、ドルトンとグレインによって画策されたことではあったのだが、この地を治める『魔王』として、リズはその責務から逃れようとはしなかった。
 その後、暫く二人は話し合っていたようだが、リズはエアに、レーベンにおける初めての友人となって欲しいとお願いしたのだ。

 そこからは、エアも野営の準備を率先してリズと一緒に行うようになっていた。

「色んなことは、ほとんど話し合いで解決できるのですが⋯⋯。些細な行き違いが、誤解や争いを生むのは悲しいです」

 二人の様子を見ながら、一緒に焚き木となる枝を探していたセラ様が私に声をかける。

「それは、私の前世の地球でも同じですもんね」

「その通りです。難しいものなんですよ」

 私がセラ様と話をしていると、ローガンが駆けて来た。
 手には、何やら水晶柱の様な物を五本握っている。

「すみません、ユズキ様を探しておりました」

 私の横にセラ様が立っていることから、その声は少し緊張している。

「ローガンさん、さっき言った通り、この人生の一瞬だけは私を人として扱って下さい」

 セラ様の無邪気な笑顔に、ローガンはたじろいでしまう。

「え、えぇ。とはいえ、私は敬虔なセフィラム教の信者ですから、流石に信仰神を人として接するということは⋯⋯」

 その狼狽えぶりは、少し可哀想になってくる。

「ローガン、私に用事だったんでしょ?」

 助け舟として出したつもりだが、うーん。自然と一人称が私になる、恐るべしだ。
 そして、背がきっと160を下回るこの身体では長身のローガンを見るときは、どうしても見上げてしまうような形になってしまった。

「う、うぅ。すみません、まるで娘を見ているようで──。し、失礼しました。実はこれに魔力を注いでもらいたいのです」

 ローガンは、そう言うと手に握っていた物を私に見せた。

「これは、グリドール帝国の軍で野営の時に使っている魔除けの水晶です。これに魔力を注いで、周囲の地面に刺してやると魔除けの効果が発揮できるのですよ。魔力量の多いユズキ様にお願いできればとお持ちした次第です」

 私はキラキラとした水晶を一つつまんでみる。
 ひんやり冷たく、ツルッとした表面はガラスのように指に吸い付き心地良い。

「わぁ、キレイ⋯⋯」

 私が、本当に眼をキラキラさせていたのだろう。
 ローガンが困ったように咳払いした。

「あ、あの。差し出がましいですが、その御姿の時はユズキ様を女性として扱った方が良いでしょうか?」

「あ、えーっと。──うん、ごめんローガン。そうしてくれると助かる」

 正直、考え方はユズキとして変わりはないのだが、立ち居振る舞いは完全に男の時とは変わってしまっていた。
 無理に男性らしくしようと試みたけど、残ったのは疲労感ばかりだった。

「はぁ、今後ころころと性別が変わられるとしたら、私の方が参ってしまいそうですぞ」

 しょんぼりとするローガンの肩を私は軽く叩く。

「ま、まぁ。いつもの姿に戻った時は一緒に飲もうね」

「なんか、絵面が娘に心配される父親ですなぁ」

 私は嘆くローガンから水晶柱を受け取ると、魔力を込めてみた。

 ──ヒュオンッ

 心地良い音と共に、水晶柱が淡い黄色に輝く。

「おおっ!流石です!!こんな光を見たことはありません!」

 ローガンの驚きからするに、かなりの力を水晶が発揮しているのだろう。

「じゃあ、残りもやっちゃうね」

 私は、ホイホイと次々に水晶へ光を灯していく。

「これを配置したら、まさに結界ですな。普通の魔物は絶対に寄ってきませんよ」

 そりゃそうだ。誰だって魔物からビクビクして寝たくはない。
 魔力を強めにかけて魔除けになるのならと思って、かなりの量の魔力を注いでいた。

 先程レベルを確認してみると、私のレベルは325まで戻ってきている。
 油断は禁物だが、充分な魔力を供給できたのは少し安心だ。

 ローガンは私に礼を告げると、水晶柱を配置するために去っていった。

「そろそろ戻りましょう」

 私の言葉にセラ様が嬉しそうに頷く。
 私達は揃って、イスカ達がテントを設営している場所へと戻っていった。

「うーん、これはどうすれば⋯⋯」

 私とセラ様が戻ってみると、何やらイスカ達がテントと格闘していた。

「あの──セラ様?あれって」

 私は、イスカが苦戦しているテントの正体を見て絶句した。
 私の目の前に広がっていたテントは、明らかにこの世界のテントではない。
 すべすべとした光沢を宿した素材。明らかにこの世界とミスマッチなそれは──

「なんで、グランピングで使うようなテントなんて予備で入れているんですか!しかもこれ、高いやつですよ!」

 私は、セラ様が『魔法袋マジックポーチ』に予備のテントを入れておいてくれたことは知っていた。
 だけど、ドラゴン退治に行くときはフーシェの準備したテントを常に使っていたため、その予備を出そうとは思わなかったのだ。

 しかし、フーシェの持っていたテントは正直、私が男の姿で小柄なイスカとフーシェの3人で使うとかなり狭かった。
 今回は、かなりの大所帯でレーベンへと渡ってきたのだが、元々テントは怪しまれないために、魔族領であるウォールで調達をかけようと思っていた所だったのに、朝にジェイクの襲撃だ。

 人数的に使わなければいけないと開いてみたら、なんとまぁ。

「実は──最近こんなのが地球で流行ってるんだって知ったから、つい入れちゃったんです」

 小声のセラ様に私はガックシと肩を落とした。

「こんなの!メチャクチャ、ファンタジーの世界にナイロン素材とかそっち系の物を持ってきたら駄目ですって!」

 私は、この世界では決して見ることのできない素材で組み上がっているテントのパーツを見ながら、目を丸くしている仲間達を指差した。

「何これ!こんなに細いのにしなやか!」
「何この薄くて軽い素材。信じられないわ」

 皆のやり取りを見てセラ様が困ったように笑う。

「ま、まぁ。ユズキさんのお陰で、今日は魔物も来ないでしょうし、今日はキャンプをしませんか?」

 うーん。なんだか、失敗を隠しているように見えないでもない。
 私は、『魔法袋マジックポーチ』を全部調べることが怖くなってしまった。

「──ふぅ。こんなの他の土地じゃ使えないですよ。今日だけですからね!」

 私がそう言うと、セラ様の顔が見る見る内に喜びに染まる。

「いいんですか!やったぁ!神の世界だと覗くことしかできなかったから、とっても気になっていたんです!」

 セラ様は嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねた。
 その仕草は、夕方に見せた気品は微塵もなく、本当に同一人物かと疑ってしまうほどだ。

「あ、やば。これお姉ちゃんになった気分かも──」

 セラ様の純粋な笑顔に、私は胸がキュンとする気持ちに包まれた。

「ユズキさーん!手伝って下さいよぉ!」

 テントに悪戦苦闘しながら、イスカがバッチリと日本語の取り扱い説明書が書かれた紙をヒラヒラとさせていた。
 私は、ついに笑いをこらえきれなくなりながらも、イスカの元へと走り出した。
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