うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第4章 魔導都市レーヴァテイン

作戦開始のようです

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『マスター、これ薬入ってるぜ』

 頭の中に『略奪者プレデター』である方のセライの言葉が響いた。

 うん、なんとなく分かる。
 見た目は華やかな料理が私の眼前には並んでいる。
 そのどれもが、香り良く視覚からしても美味であることは推測できた。

「さぁ、たーんと食べてね」

 テーブルを挟んだ奥、ゴフルがニコニコと笑みを浮かべている。
 私はその顔に、少し引きつった笑みを返しながらスプーンを手に取った。
『危険察知』のスキルはないが、今までに女性を何人も操り人形にしてきた男が相手だ。
 毒くらい入っていたとしても想像に難くない。

 私があからさまな拒否の姿勢を示してはいないのに、薬を盛ってきている当たり、それほどにまでして私のことが欲しいのか。
 私はゾッとしながらも、怪しまれないようにスプーンを口に運ぶ。

 ゴフルは少し舌を出すと軽く下唇を舐めた。
 計画通り!
 こう思ったのだろうけど、こっちだって今はレベルは1900近くまで回復しているんだ。

『まっ、効かないよな』

 セライの言うとおり、これくらいの薬は完全に私の抵抗値が無効化してくれる。

「美味しい!」

 そうなってしまえば、この薬入りの料理もただの美味しいコース料理だ。

「こんなに美味しい料理が食べられるなんて、素敵です」

 どうせなら、堪能させて頂こう。
 笑顔で料理を口に運ぶ私を見て、ゴフルの目は怪しく光っていた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 なんとなく、執事の向けてくる視線が厳しい気がする。
 夕食も終わり、手洗いを借りようと執事に声をかけてみたが、その反応は少し怪訝な表情だった。

「やっぱり怪しまれるかな⋯⋯」

 私は豪華なトイレにかかっている、磨き上げられた鏡に映った自分の顔を見ると困惑した。

 うーん、死んだような目ではない。

 屋敷内で見かけるゴフルの女性達は、皆一様に瞳に光がなかった。
 それが、先程食べた食事に含まれている薬の効果なのだろう。
 そこに、ゴフルのかける催眠魔法が加わることで操り人形が完成する。

 でも、薬に耐性がある私にとって、勿論自我を失ったりすることはないし、無意識になるようなこともない。

『見た目だけ、薬にかかったふりってできないかな?』

 私は脳内のセライに声をかける。

『マスター、細かい注文だな。『最適化オプティマイズ』の応用でやってみる』

 セライの声が脳内に響いた。

「凄い!流石セライ」

 鏡を覗いていると、みるみるうちに私の瞳から光が失われる。
 勿論意識はクリアーなままだ。

 これで問題なし。
 私がトイレから外に出ると、遠くから先程の執事が近付いてくるのが見えた。
 私は、ゆっくりと歩くと軽く会釈をする。

 私の瞳を覗き込むように執事は立っていたが、私の瞳が薬の効果が表れたように見えたのだろう。

「やっと効きましたか──。んんっ、なんでもない。寝室で旦那さまがお待ちです。部屋で着替えたら向かうように」

 執事の言葉に私は頷く。

 いよいよだ。
 私は、部屋に戻るとベッドの上に準備されている寝衣を手に取った。

「うわぁ、趣味丸出し」

 フリフリの装飾が施された純白の寝衣は、肌触りが良く、手に取った瞬間に高級品であることが分かった。
 可愛さを強調するように作られたデザインは、私に着せることで、自分の物となった女性を愛でたいという欲望が透けて見えた。

『服は透けてなくて良かったな。マスター』

 うるさいよ。

 確かに、そっちをシラフで着るとなれば、かなりの覚悟が必要なはずだ。
 そう思うと、私のためにミドラが選んだシースルードレスを着たイスカの覚悟は、相当なものであったと思い返される。

 私は周囲を見渡して服を脱ぐ。
 準備されていた香り付けされた湯で身体を拭こうとすると、脳内にセライの声が響いた。

『これ、ご丁寧に媚薬入りだぜ』

 最早驚くことでもない。勿論、これも効かないのだけど、ここまでしないと女性に拒絶されると分かっているのだとすれば、私はゴフルのことが最早憐れに思えてきた。

「うーん、いい香り」

 感度を上げるための媚薬が入っているのだろうけど、効かなければただのお湯だ。
 身体を拭いてさっぱりとすると、私は着ていた服に隠し持っていた魔法札を取り出し、純白の寝衣に潜ませた。

 よし、準備終わり。

 私は、鏡の前で変な所がないか一回転する。
 うーん、コテコテな服だけど、着てみれば私に合っているところが悔しい。

 部屋を出ると、ゴフルの場所へと向かう。
 指示されている場所は、屋敷の離れだ。
 そこで、ゴフルは起居しているらしい。

 離れに着くと、門の前で待機している護衛の私兵が門を開く。
 入ってしまったら出られないような不安な気持ちが私を襲う。

『大丈夫、さっきレベルは2000を超えたぜ。今のマスターなら、古代龍が来てもワンパンだから心配ないさ』

 セライの声、そして私に同化している『譲渡士』のセライの存在が私に勇気を与えてくれる。
 レベル的には不安な要素はないのだけど、これが生理的な拒否感から来る不安なのだろう。

 私は屋敷の中に足を踏み入れる。
 2階に上がると、重厚な扉が見えた。
 ここが、ゴフルの寝室なのか。


 トントントン

 3回ノックするのは、元日本人としての癖かもしれない。

 ──ゴウン

 まさかの自動扉!
 魔法石による動力なのか、私が触れることもなく、重い扉は左右へと分かれるように開いた。

「待っていたよぉ。ユズちゃん~」

 ネコ撫で声のような甘い声が室内から響き渡った。

 ブッ!

 思わず吹き出しそうになったじゃない。
 なんて格好してるのよ。

 私は、視線の先のゴフルを見てドン引きした。
 私と同じような、真っ白なバスローブに身を包み、特注で作られたであろう椅子に深く身を預けていた彼の格好は思っていた以上に酷い。
 そう、悪役感を通り過ぎてまるでコメディーだ。

 嬉しそうに立ち上がった、彼の股間は既に存在感を主張しており、バスローブごしにも彼が興奮していることが分かった。

 これはきつい。
 確かに、精神がまともであれば逃げ出したくなるはずだ。

 ゆっくりと歩み寄ってくるゴフルに対して、私は立ったまま動かない。

 色んな意味で危険が迫っている。
 見た目は彼の操り人形を演じてはいるが、精神が犯されていない分、近付いてくるゴフルに下手をすれば手を上げてしまいそうだ。

 ゴフルは私の前に立つ。

 私の瞳を覗いて、薬が聞いていることを確認すると、彼は口を開いた。

「んー。ユズちゃんこそ、僕を嫌わない素質があったと思うんだけど、僕は気に入った女の子に対して我慢ができないタイプなんだ」

 欲望に染まったゴフルの顔が、さらに醜くさを増した。

「今晩は、ゆっくりと可愛がってあげるからね。じゃあ、いただきまぁす!」

 ハァハァと鼻息荒く、ゴフルの手が私に伸びてきた。
 その瞬間、私は本当の目的を果たすために身体を動かした。

 パシッ

 軽く、ゴフルの手を掴むと彼が驚く暇も与えずに、足払いをかける。
 ここで、本気を出しちゃだめだ。
 足払いではなく、足折りになってしまう。

 ただでさえ、肥満によってバランスの悪い身体だ。
 相当の重量を脂肪として溜め込んでいるはずだがけど、私のレベルであれば風船を転がすのと同じくらいの重さにしか感じない。

 面白いように、ゴフルの身体が宙でひっくり返る。

 おっと、ここで怪我をされたらたまらない。

 私は、自分の右手一本でゴフルの頭部を保護しつつ床に彼を転がせることに成功した。

『お見事』

 セライが脳内で賛辞を私に送る。

「お!」

 お前って言いたいんでしょ?
 でも、呼ばれたら困るから。
 私は、左手で胸元からリズからもらっていた魔法札を引き抜く。
 胸元が見えたかもしれないけど、それが私にできる最大限のサービスということで。

「お休みなさい。夢の中の私にイイコトしてもらってね」

 私はゴフルの額に魔法札を貼り付ける。

 キュインッ!

 光と共に紫色の魔法陣が展開すると、ゴフルの顔面近くで紋様が宙に刻まれた。

「な──」

 ゴフルは次の言葉を口にできなかった。
 あっという間に顔の筋肉は弛緩し、瞳は虚ろになる。
 そして、次の瞬間に彼は満足そうに夢の中の世界へと旅立った。

 瞳を閉じる彼に、私は安堵しつつ言い放った。

「お休みなさい、裸の王様」



    
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