うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第4章 魔導都市レーヴァテイン

全員集合のようです

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 ビリビリと地下全体が震える。
 手から放たれた『水光アクアレイ』は、直径3メートル程のジェット水流となって、天井を穿った。

 高圧力の水流で、薄い鉄板を加工する原理と同じだ。
 もしも天井との抵抗によって威力が減衰することになれば、大量の水は全てこの地下室に返ってくる。

「行けえっ!」

 魔力出量を引き上げて僕は叫ぶ。

「む。むぅっ!!」

 ラゴスが飛び散る石の破片からメーシェを守った。

 ──キュウンッ!

 金属音が確かに、地上を貫通したような音が聞こえた。
 スキルを止めると、頭上には直径約3メートル程の大穴が開き、見上げると薄い雲を『水光アクアレイ』が撃ち抜いたためか、その雲間から陽光しが地上へと差し込んでいた。

「やりすぎだ!下手すれば死ぬとこだぞ!」

 ラゴスは口を真一文字に結んで愚痴をこぼしたが、本気で怒っているわけではないようだ。

「ごめんごめん。よし、ここから脱出しよう。今度は僕がラゴスを背負うから、ラゴスはメーシェを背負ってあげて」

 僕が背を向けると、ラゴスは呆れたように口を開いた。

「こんな10m程ある穴、二人背負ってを跳び上がるだと?できないってことは──ないのだろうな。最早お主、人族ではないわ」

 ブツブツと言いながらも、ラゴスは僕に覆いかぶさるように乗ってきた。
 尾を入れると4mはあるかと思われるラゴスが僕に乗ると、殆ど完全に僕の身体は見えなくなった。

「平然と俺を背負っているだけで驚きなのだが、本当に跳べるのか」

 背中に背負った二人の重さは気にはならない。
 むしろ、上手に飛ばないとラゴスを穴の縁にぶつけてしまわないか心配だった。

「うん、大丈夫。身体をなるべく小さくしてしっかり捕まってて。舌は出さずに。じゃ、行くよ!」

 ──ビキッ!

 力一杯に足場を踏み込むと、氷を割ったような音が響き渡った。

「──くうっ!」

 あまりの衝撃に、ラゴスが歯を食いしばる。
 瞬間、僕達の身体は文字通りレーヴァテイン城の上空に投げ出された。

「やばっ。跳びすぎた!」

「待て!お主、今ヤバイと言わなかったか!?俺は高い所が苦手で眼を開けとらんのだ!」

 うーん、絶対今は眼を明けない方が良いだろう。
 眼前には、レーヴァテイン城の全景が見渡すことができている。
 どうやら、制御装置があった部屋の上部は中庭だったらしく、僕は中庭に降りるべく場所を定めた。
 と言っても、殆ど自由落下なのだが。

「ま、待て!なんだ!この股間が寒くなるような浮遊感は!」

 リザードマンでも玉ヒュンするのかな?
 絶叫マシンが苦手じゃなくて良かった。
 僕は自分の体質に感謝しつつ、自由落下に身を任せる。

 見れば、中庭で何人かが僕達を見上げて矢を番えている。

「くっ!迎撃しないと!」

 僕は魔法術式を展開しようと思ったが、そこで僕の両手は二人を背負っているため、2つとも塞がっていることに、はたと気付いてしまった。

「放てっ!」

 微かに、中庭の兵士の声が聞こえた。
 合図によって矢が兵士の手から放たれる。
 まずい!
 風魔法が付与されているのか、矢は一直線に僕達に向かって飛翔してきた。

「『風障壁ウインドシールド』!」

 遠くから、聞き慣れた声が響いた。
 この声は!
 落下する僕の眼は、レーヴァテイン城の屋根で魔法術式を展開する一人のエルフクォーターの姿を捉えた。

「イスカ!」

 僕達の足元に、足場になるように風の障壁が出現する。

 ──キンッ、キンッ!

 放たれた矢は、障壁に当たると呆気なく弾き返された。
 魔法が付与された矢をものともしない、堅牢な障壁に僕は足をつける。

 まるで金属の板に乗っているかのような安定感。
 障壁は僕達を乗せたままゆっくりと地面へと降下する。

「降りて来た所を狙え!」

 ぞろぞろと、数十名の兵士が手に槍や剣を持って中庭へと集まってきた。

「ラゴス、眼を開けて!敵に囲まれる!」

「い、嫌だ!俺は浮遊感が落ち着かぬと眼を開けれん!」

 筋金入りの高所恐怖症だね。
 仕方ない、ラゴスを障壁におろして戦いに行くべきか。
 僕の逡巡より早く、中庭に一人の影が踊り出た。

「ユズキ様!ここは私にお任せを!」

 凛とした頼もしい声。

「ローガン!」

「ん。私もいる」

 ローガンの影からパッと踊り出るように、小柄な人影が飛び出した。
 フーシェだ。

「『桜吹雪』」

 鞘からシュピンッ!と、金属がしなるような音が発せられた。

 ローガンの放った一閃は、一瞬のうちに数名の兵士の鎧に火花を飛び散らせた。
 無数の火花はまるで、桜の花びらが風によって吹き荒れたかのように咲き誇った。

「ふむ、今まで大した活躍はしておりませんでしたからな。ユズキ様にも、芸術にまで昇華したと帝国中に言わしめた、私の技もお見せしたかったのです」

 満足そうな笑みを僕に向けつつ、ローガンは襲いかかってきた兵士を振り返ることもなく対処した。

「す、凄い」

 レベルを譲渡しているためだけでは、あの動きはできないはずだ。
 自らの身体を熟知して、鍛錬に鍛錬を積み重ねた末に会得したと納得させられる技。
 レベルリバースから、更に技に磨きをかけたことで産み出された剣技がそこにはあった。

「しかも、峰打ちでございます。リズ様からは無用な殺生をしないように言われておりますので」

 にこやかに笑うローガンを見て、僕は模擬戦ならば、まず勝つことはできないと感じさせられた。

 一方のフーシェは淡々と兵士を処理していた。
 近場の敵から敵へと飛びかかり、交差の際に首に一撃を喰らわすと相手を無力化している。

「ん。殺さない方が難しい」

 そう言いつつも、レベル97のフーシェの動きは最早影が襲いかかっているようにしか見えない。

「レベル50もらってるから、早い早い。ん。慣れが必要」

 そんなことをぼやきつつも、その動きには全く戸惑っているように見えないから恐ろしいものだ。

「よっ、到着」

 イスカの『風障壁ウインドシールド』に乗っていた僕とラゴス、そして意識を失ったままのメーシェは地上に着地する。

「お疲れ様、流石ねユズキ。──で、ラゴスはなんでそんなに怯えたようにユズキに乗っかってるのよ」

 背後から、リズの声が聞こえた。

「な、なっ!?これは、リズ様!大変お見苦しい所をお見せしました!」

 大慌てでラゴスは僕の背中から飛び降り、メーシェを背負ったまま姿勢を正すと、冷汗を垂らした。

「ふふっ、高い所が苦手なのは190年前から知ってるわよ。私が魔法の練習で高い屋根に落っことした、大切なぬいぐるみを震えながら取ってくれたことは今でも覚えているわ」

「ひ、ひゃくきゅうじゅう⋯⋯」

 まさかの長命に僕の方が絶句する。

「ん、んんっ。俺はリザードマンだが、家系に龍種の者がいるのだ。そのため、他のリザードマンからは遥かに長命でな。長年レーヴァテイン家に仕えてきたのだ」

 そう話すラゴスの顔は少し照れ臭いのか、赤みを帯びて見えた。

 この人、本当に見た目に反して優しいなぁ。
 思わず僕の方も、頬が緩んでしまう。

「リズ様の前で、このような姿勢で大変申し訳ありません。自分も知らない娘が地下にいたたため、こちらのユズキ⋯⋯殿が気を失わせた次第でございます」

 ラゴスはそう告げると、その大きな背中からゆっくりとメーシェを降ろす。
 僕はラゴスから受け取るように、華奢なメーシェの身体を腕に抱くと、そっとメーシェの腰を地面へと降ろした。

「リズ。この子がリズの言っていた不確定要素?」

 僕はメーシェの顔をリズに見せるために、抱いている身体の向きを変えようとした。 

 その時だった。

「ご紹介は結構ですよ」

 ゾワリと背筋が泡立つ感覚。
 その声は、忘れもしない。声が鼓膜を震わせるだけで怒りがこみ上げてくる。

 ゾブッ

「なっ!」

 突然、手に抱いていたはずのメーシェの身体が真っ黒な影のような物に包まれた。
 そのまま影は僕の手からメーシェを奪い取ると、まるで水面に没するように地面へと吸い込まれた。

「ドルトン!メーシェをどこにやった!」

 次の瞬間、中庭の通路の柱から、一人の青白い魔族の姿が現れた。
 見間違えるはずもない。リズを一時は死の淵へと落とした、憎き相手がそこには立っていた。
 しかし、その顔は初めて対峙した時の様な余裕はない。
 特に、僕の姿は彼にとっては脅威なはずだ。
 ドルトンもそのことを分かっているのか、視線は油断なく周囲を見渡している。

「心配せずとも、彼女はここですよ」

 そう告げると、ドルトンは先程僕の手からメーシェを奪っていった影を出現させる。
 メーシェの両目は帯の様な影によって遮られ、両手は後ろ手で影によって縛られていた。

「この前はどうも。そして、ありがとうございます。こうして、私の元に

 ドルトンはそう告げると、勝利を確信したかのように歪な笑みを僕達に向けるのだった。
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