うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第4章 魔導都市レーヴァテイン

消失同士の戦いのようです

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 ドルトンは、自らの持つスキルによって縛り上げたメーシェの頭に右手をのせる。

「ふふっ、このまま起きられると面倒ですからね」

 ドルトンの魔法術式が、メーシェの額の上に展開する。
 視界を影によって遮られたメーシェがピクリと反応するが、覚醒したわけではないようだ。

「あれは、『傀儡』の魔法術式!」

 リズが遠目ながらも、展開する魔法術式を読み取ると声を荒げた。

「対象を操り人形にする危険な術よ。酷いやつは、正気を保たせたまま魔法をかけて仲間を襲わせるわ」

 リズの言葉にドルトンは頷く。

「正直、姫様を見たときは本当に驚きましたよ。どうして死んだはずの貴女が生きているのか?ですが、そこの人族の男がいるなら納得です。大方、その男の力かなにかでしょう」

 ドルトンは鋭い視線を僕に送る。

「この魔法は、魔法抵抗力が強い者には抵抗されますからね。ですが、こうやって、気絶している状態であれば安心して魔法をかけられる」

 ドルトンの言葉を待たずに攻撃を仕掛けたい所だが、影によって縛られたメーシェが、僕達が動くことでどうなってしまうかが計りかねた。

「フーシェ、あの女の子に見覚えは?」

 フーシェは、対峙する兵士を軽くあしらうと、メーシェに視線を移した。

「ん。誰?あれ。ユズキの新しい女?」

「え、あれっ。うそ?まさか知らないの?」

 眼を瞑り、一瞬考えるかの表情のフーシェ。
 すぐに瞳を開けると、小さく首を振った。

「国がなくなる時までの記憶でも、私に妹はいない。でも、あの子は私に似てる」

 どういうことだ?
 メーシェは確かに、フーシェのことを姉と言った。
 フーシェの父親の隠し子か、それとも、ただ親族であるだけで年の近いフーシェのことを一方的に姉と呼んでいるのか。
 肝心のメーシェは気を失っているし、フーシェはメーシェに面識がないという。

「ドルトン、お前はフーシェのことを知っているようだったな」

 一番聞きたくはない相手だが、あのリズが死にかけた森で、確かにドルトンはフーシェのことを見て、何かを知っている様子だった。

「ほう、よく気付いてましたね。あの戦闘狂のような状態で」

 やっぱり、ドルトンはフーシェのことを知っているようだ。

「えぇ、勿論知っていますよ。何故なら、そちらのフーシェは、魔導都市レーヴァテインの産んだなのですから」

 挑発するかのように、やけに甲高い声でドルトンは告げる。

「お前っ!」

 リズだけではなく、フーシェをも貶められたことに眼の前が真っ赤になる。

 ドルトンに向かって僕は跳躍する。

「駄目!」

 強い衝撃が僕の身体を襲い、僕の身体は地面へと転がった。
 その僕の身体の上には、何か柔らかい物が覆いかぶさっていた。

「チッ、余計な真似を」

 ドルトンの悔しさが滲んだ声を聞き、思わず先程まで僕が立っていた場所を見返すと、そこにはメーシェのスキル『消失エリミネーション』で作られた球体が浮かんでいた。

「大丈夫か?フーシェ!?」

 僕は、自分の身体に覆いかぶさっているのがフーシェと気付いて上体を起こす。

「ん。『限定覚醒』してなかったらヤバかった」

 ほっそりとしたフーシェの身体とは異なる、色々と膨らみを増した身体。成長した肢体は、『限定覚醒』をしたフーシェの姿だ。

「ごめん。助けられた」

 自分の判断の甘さを殴ってやりたい。
 ドルトンは僕を挑発することによって、直線的に狙いに行った所を『消失エリミネーション』によって迎撃するつもりだったのだ。

「そう、その姿はなんなのです?まるで人族にでもなったかのような姿」

 ドルトンは、汚らわしい物を見るような侮蔑の視線をフーシェに送った。

「ん。この姿は、ないすばでぃだから気に入ってる」

 そうフーシェは告げると、僕を抱き抱えると跳躍した。

「私のために怒ってくれるのは嬉しいけど、無鉄砲は困る」

 母性をも宿したような優しげに表情に、僕は思わずドキリとする。

 数十メートル離れたリズとローガンの場所までフーシェは跳躍すると、僕を地面へと降ろした。

「全く、しっかりしなさいよね!」

 リズの言葉には返す言葉もない。

「ユズキさん!上空にも敵が!」

 城の屋根の方からイスカの声が響いた。

「空中の敵は魔法術師の方が相性がいいわ。ドルトンはぶっ飛ばしたかったけど、ここは任せたわよ」

 リズはポンと僕の肩を叩くと、一気に跳躍した。

 ──パンッ!

 しっかりしろ。
 僕は、自分に言い聞かせるように頬を叩く。

「冷静になられると厄介なんですがね。まぁ、いいでしょう」

 ドルトンが両手を広げる。
 ブンッという小さな音と共に、後方に浮かんでいた漆黒の球体が2つに分かれた。

「みんな、あれに触れるな!防御を無視して削り取られるぞ!」

「ん」
「かしこまりました」

 クイッとドルトンが手をこまねくと、球体の1つが急加速をして背後からローガンを狙う。

「ふっ」

 ローガンは最小限の動きで球体を交わす。
 球体は、そのまま勢いを殺すことなく、更に今度は加速して僕を狙ってくる。

「くっ!」

 見切れるし避けられるが、受け止めることはできないため、どうしても大振りに避けることになる。

 ドルトンが指揮するように、両手をタクトを振るようにしならせると、まるで呼応するかのように球体が踊りだす。

「ん。速くなってきた」

 球体が音もなく地面へと突き刺さると、まるで豆腐を削り取ったかのような跡が次々に生まれる。

「『一つ斬り』」

 フーシェがスキルを放つ。
 不可視の斬撃が空間を刈り取るように真空波を放った。

「おっと、これならどうでしょう?」

 ドルトンが握っていた掌を開く。
 すると、球体だった『消失エリミネーション』は、パッと傘の様に開くと、ドルトンを目掛けて飛来したスキルを闇の中へと沈ませていった。

「形を変えてくる!二人共気をつけて!」

 くそ!
 ドルトンが防御のために球体を変えなければ気づくことはできなかった。
 あのように、思い通りに形を変えられるのだとしたら、安全な箇所などどこにもない。

「面で駄目ならこれで!『花舞踊はなぶよう』」

 ローガンが突きを放つ。
 変幻自在のレイピアの先が散る花びらのように不規則な軌道を描き、ドルトンへと急襲する。

「それならば、こうしましょう」

 ドルトンが胸の前で両手をパンッと打つと、まるで巻物を広げるように両手を広げた。

「なっ!」

 傘の様に開いた『消失エリミネーション』は、今度は長い黒板に似た形を取ると、ドルトンの眼前へと展開する。

 ──

 無数のレイピアの斬撃は、刃先が『消失エリミネーション』の板へ触れた瞬間に、音もなく消失してしまった。

「そして、これで終わりです」

 ふっと、ドルトンが両手を押し出す。
 無音でローガンの眼前に広がった『消失エリミネーション』の壁が、せり出すようにローガンへと迫った。

「やめろ!」

 間に合う!
 そう思って駆け出した瞬間。

 ──バチッ!

 まるで雷鳴の様な爆音が爆ぜた。

「むっ!」

「ぐっ!」

 土煙が視界を塞ぎ、轟音が耳を震わせる。

「ローガン!大丈夫?」

 僕が荒れた視界の中、ローガンへと近づく。

 すぐに視界が晴れる。
 いや?吸い込まれている?

 土を掘り起こした様な煙は、空中で所々が虫食いの様に晴れている。
 いや、晴れているのではない。
 消されているのだ。
 無数の黒い球体が宙に浮き、ローガンを襲おうとした『消失エリミネーション』を食い止めている。

 全ての物を消し去る消失を食い止めることができる。
 それができる人物は、この中には一人しかいない。

『限定進化』

 僕の頭の中にその言葉が浮かぶ。

「な、なんとかできた」

 後ろを振り返る。
 そこには、『限定覚醒』のように人族に近しいフーシェの姿はなかった。
 いつものショートカットの黒髪。身長は『限定覚醒』の時と背丈は変わらない。しかし頭につけた角隠しのためのカチューシャは、今や屹立した一対の紫色の角によって千切れていた。

 浅く早い呼吸。
 その表情は如何にも辛そうだ。

 その彼女の眼前では、お互いの力が拮抗するように板状に広がった『消失エリミネーション』と『神喰らいゴッドイーター』の球体がせめぎ合っていた。

『マスター!今すぐフーシェに魔力譲渡を。あの状態、とんでもない速度で魔力を消費しているぞ!』

 脳内で『略奪者プレデター』のセライが叫ぶ。

「お、おねえ⋯⋯ちゃん?」

 その時だ。
 まるで、『神喰らいゴッドイーター』のスキルに反応するかのように、ドルトンの影に囚われているメーシェが、小さく声をあげた。
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