うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
108 / 166
第4章 魔導都市レーヴァテイン

大事になる予感です

しおりを挟む
「ふぅ、一気に色々なことがあったなぁ」

 僕はふかふかのベッドに横になると、疲れきった身体を沈み込ませる様に眼を閉じた。
 レーヴァテイン城の客間に僕は今、一人横になっていた。
 イスカ達女性陣は風呂に行っている為、広い客間に一人だと少し落ち着かない気分になる。

 中庭は半壊したものの、城そのものは戦闘による被害は少なく、中のインフラはほとんどが生きていた。
 リズはその間、『魔王』として部下に指示を出し、ドルトンとグレインが倒れたことで、本来持っていたリーダーシップを遺憾なく発揮していた。

 右往左往していた魔族達も、リズの的確な指示を受けている間に、リズのことを少しずつ『魔王』として認めているようだ。
 特にラゴスの張り切りぶりは凄まじく、長年地下通路への番人として追いやられていた鬱憤を晴らすかの様に、荒れた城の復旧に尽力していた。

 眠気はあったが、イスカが帰って来ていないのに先に寝てしまうのは申し訳ない。
 イスカの昼間の状態、フーシェの『覚醒進化』に対する異常な程の魔力消費。確認したいことは色々とあったが、城の簡易的な魔法障壁を作るために、リズや仲間達と共に作業をしていると、じっくりと話す暇はなかった。

 リズが作ったシステムであるため、簡易的な魔法障壁は陽が落ち切る前には完成され、内部にも転移魔法陣がないことは確認されていた。
 これによって、突然メナフが襲撃してくる様な事態は当面避けられるとのことだった。

 ──コンコン

 扉がノックされる音がする。
 イスカとは異なるノックの癖に、その音を出したのがリズだと僕は分かった。

「開いてるよ」

 僕は身体を起こしてドアに向かって声をかけた。

「──失礼するわ」

 僕の予想通り入ってきたのリズだった。
 風呂からあがってきたのか、顔は上気し、水色の髪は濡れており、肌に吸い付く様に張り付く様は、どこか艶めかしい色気を感じた。

 リズは部屋をグルリと見回すと、少しもじもじとした様子で窓の外を眺めていたが、チラと僕の顔色を伺うと、更に顔を赤らめた。

「ねぇ、そっちに行っていい?」

 その言葉に僕はドキリとする。

「あ、うん。いいよ」

 リズは静かにベッドに近づくと、無言で僕の横に座る。
 甘い花の様な香りが僕の鼻をくすぐった。
 少し気まずさを感じさせる様な沈黙が続いた。

「あの!」
「あのさ!」

 こういう時の間の限界は、同じ時に起こるものらしい。
 僕の言葉は、見事にリズのタイミングと一致してしまった。

「──ふふっ、悪かったわ。こういう間って、案外難しいものなのね」

 茶目っ気たっぷりに笑う姿は、200歳を超えているとは思えないあどけなさが感じられた。

「フウッ。でも、お陰で緊張が解けたわ。ねぇ、ユズキ?貴方達はこれからどうするの?」

 その言葉に僕は少しドキッとする。
 僕とイスカ、そしてフーシェの旅の目的は、フーシェの故郷であるレーヴァテインを見に来ることだった。
 だが、目的が達成されたわけではない。
 フーシェのルーツは未だ謎を多く残したままだった。

「まずはフーシェのことを調べようと思ってる。でも、連れ去られたメーシェのことも心配なんだ」

 僕の言葉にリズは頷く。

「ユズキならそう言うと思っていたわ。間違いなくお父様は、メーシェを兵器として使うことを考えている。そして、その最終目標は⋯⋯」

 リズの言葉の続きは分かっていた。

「セラ」

「そう。まさか、お父様が世界だけではなく、この世界の創造神であるセラを究極の目標と考えていたことは誤算だったわ」

 日中対峙した、リズの父親であるメナフ。
 彼の、セラを目の当たりにした時の表情は、完全に常軌を逸していた。
 歓喜の裏には狂気が、隠すことなく現れていた。
 この先、どこにいてもメナフは最後にはメーシェの『消失エリミネーション』の力を以て、セラの生命を狙うだろう。

「守るよ。セラは、いやセラ様は前世で死んだ僕をこの世界に導いてくれた。今では、イスカやフーシェだけじゃなく、こうやって魔族であるリズとも仲良くなれた。セラ様は、世界中の人が仲良くなってほしいと思ってるんだよ。だから、そんなセラ様を悲しませたくない」

 僕の言葉にリズは頷く。
 しかし、次の瞬間には顔を曇らせた。

「えぇ、分かってるわ。でも、ユズキ。よく聞いて、貴方達は明日にもこのレーヴァテインを発つべきよ」

 リズの表情は固く、その瞳には悔しさが現れていた。

「──何か理由が!?」

 リズは立ち上がると、僕の前に向かい合う。

「これを見て」

 リズは軽く瞳を閉じると魔力を集中する。
 すると、僕とリズの間にはテーブル程の大きさの地図が青白く写った。

「『万象のまなこ』か」

 地図には、レーベンと思わしき大陸が投影されている。
 そこには、一際強く光り輝く光の柱が五本立ち昇り、そのうちの一本は目も眩むような光だ。

「分かってると思うけど、この一番強い光がユズキね。あとの4本は、ユズキからレベルを譲渡されてる私達の光ね。これらは、光が強すぎるから消すわね」

 リズがそう言うと、圧倒的な光を放っていた五本の光が消える。その跡には、強い光に隠されていた小さな光の粒達がが輝いていた。

「これらが、このレーヴァテインに住む魔族の光よ。これだと縮尺が見にくいから、広くするわね」

 リズの言葉と共に、一気に魔大陸レーベンの全体像が明らかになるまで、地図の縮尺が縮小された。

 そのまま、レーベンから南へと映るように画面は動いていく。

「こ、これは⋯⋯!」

 僕はその光景に息を飲んだ。

 レーベンから海を隔てた大陸側、一つ一つの光は小さく、僕達が放っていた様な強い光は存在しない。だが、幾万もの無数の光がトナミカへと向かっている様子が克明に描き出されていた。

「えぇ、これはグリドール帝国の兵士達よ。その数はおよそ20万はいるわ」

「に、にじゅう!?」

 瞬く光は、地上に生まれた星々のようだ。
 そして、その行きつく先は──

「トナミカか──」

 まだ距離はあるものの、向かう先にある方向は一つしかなかった。

「グリドールは、自分達の船をトナミカに向かわせてる。本格的にトナミカから、このレーベンに向かってくるつもりよ。でも、何故このタイミングで──?」

 僕も一目で、その兵力が向かっている先はレーベンであると理解できた。
 しかし、何故このタイミングなのか。
 そこが僕には引っかかった。

「勇者のジェイク達がどんなに急いでも、まだ船の上よ。きっと、本国でもジェイク達がどのような状態か分からないはず。なのに、このタイミングで兵を出してきたということは、何か仕組まれていると思うの」

 大陸に瞬く光達を見て、リズは肩を落とす。
 大地を埋め尽くす様な光と比べると、レーベンの光は、強い光も混ざってていれど、その数は圧倒的に少ない。

「お願い、ユズキ。私は、レーベンを戦場にしたくない!私では人族を止められない。お父様は、レーベンが戦場となれば、本当にこの島ごと人族を葬るつもりだわ。でも、私はこの島の魔族を守りたい!」

 僕の眼の前にいるのは、最早、トナミカの宿に奇襲を仕掛けてきた、半ば破れかぶれのように挑んできた『魔王』の姿ではなかった。
 民のために、『魔王』としての責務を果たそうとする指導者の姿があった。

「そうか──。寂しくなるね、一緒に行こうと行ったのに」

 僕が寂しさを隠すことができず呟く。
 すると、リズはパッと眼前に広がっていた地図を消してしまった。
 そして、リズは足早に僕の手前まで歩いてきた。

「まさか!私はユズキとの旅を諦めてなんかないわよ!でも、私は『魔王』ですから。やるべきことはちゃんとやる。こう見えて、長寿ですから。待つことには慣れているつもりよ」

 スッと間合いに入るようにリズが顔を近付けてくる。

「ま、待っ!」

 慌てて眼を閉じてしまった僕の頬に、熱く柔らかな感触が触れた。
 感触は一瞬、しかし次の瞬間にはリズの顔は僕から離れていった。

「も、もう!見ないでよ!こう見えて、恥ずかしいんだから。いい!魔族には奥さんは一人だけってルールはないんだから!イスカがユズキと結婚するのは祝福するけど、そこに入っちゃいけないって決まりはないの。だから、ええっと──これは予約みたいなものよ!」

 ビシッと面食らった表情の僕を指差すと、リズは顔を真っ赤にして叫んだ。

「──イスカには了解、もらってるから──」

 小声でぼそっと告げたリズの言葉に、僕は顔を真っ赤にしてしまうのだった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...