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第5章 戦争
作戦会議のようです
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グリドールを退けた歓喜に湧いた町も、2日後からは、来たる決戦に向けて静かな緊張に包まれていた。
そんな中、ニンムスが僕達をギルドに集めたのは、作戦開始予定の前日だった。
僕達も装備を新調し、機能性が良く動きやすい服を身に纏った。
「よし、集まったな。では、作戦を説明する」
ウォーレンは、室内に集まった人々を見回し、軽く確認するようにニンムスに頷くと、改めて皆へと向き直った。
室内には30人はいるだろうか。
それぞれが部隊長クラスと思われる、精鋭達は顔にピリッとした緊張を漂わせつつも、気力に満ちた表情で、地図を囲んでいる。
エラリアから参加しているベスが、僕を見るとグッと、親指を立てた。
連日の警備で疲れが少し残っているのか、エレナが大きく息を吸い直した。
「よし、では諸君。この地図と駒を見て分かる通り、現在トナミカは、2方向からグリドールによる進軍を受けている」
巨大なトナミカの周辺地図には、グリドール軍を示す駒が海上と山を越えた東南方向の平原に置かれている。
「まず、海側だが。こちらは、作戦上向かう船は一艘で向かう。使う船は、旗艦『トルルージュ』、乗船するのは、当ギルドマスターのニンムス。そして、『蒼の灯台』、それにそこにいるイスカとフーシェ、これらを主力として出発する。旗艦を使うが、戦闘に突入することを主眼に置いていない。先日の戦いで捕虜にしたジェイク達、『希望の剣』を使った交渉。及び、グリドール軍の引き止めだ」
何人かの部隊長が、僕達を訝しむ様に見たが、ニンムスはそれを察すると一つ咳払いをした。
「その二人は、クラーケン討伐の時と、先日のグリドールとの戦いにおいても実績を残しておる。それは、ギルドマスターのワシが保証しよう」
ジロリと、文句を言いたそうな部隊長達へと睨みを効かせると、視線を向けられた者達は、そそくさと視線を反らした。
「──続けるぞ」
ウォーレンが、一息置いて再び地図に視線を落とす。
「海側は基本的には遅滞行動に徹する。交渉が決裂した場合、グリドールは一気にトナミカへと船団を進めるだろう。そのため、本日より残りのトナミカ船団は、トナミカへの航路上に機雷を敷設する。対魔法攻撃様の護符を貼っておくため、広域魔法の機雷撤去にも、ある程度耐えれるだろう。機雷を仕掛ける場所は追って伝える」
今度は、ウォーレンがトナミカの南方。山脈側を指差した。
「次に山脈側だ。こちらは、元々交通のための街道が細く、大規模な軍を送るには適さない地形だ。そのため、この街道を一時的に、物理的に通過できないようにする」
ウォーレンは、そう言うと街道が特に細くなっている地域を指差した。
「ここが、街道を封鎖するには最も行いやすいだろう。ここの封鎖は、エラリアからの増援である『城壁の守護者』と、そちらのユズキに行ってもらう他、我々の部隊を数個つける。残りの部隊は、トナミカの一般人を西方へ避難させるための準備とその護衛。また、町の最終防衛線の保持だ。幸い、ここトナミカは海洋都市で殆どの家庭が、避難のための備えを行っている。一時的な避難であれば直ぐに一般人も西方へ下げることができるだろう」
ウォーレンは、地図上の西方。海上を指差した。
「この辺りまで出れば、西方の補給隊と合流できるだろう。ここまで護衛できれば、避難を担当した部隊はトナミカへと反転してほしい。万が一、グリドールの船団がトナミカへと到着していた場合。陸地からの応戦に、左側方から挟撃する形を取ってもらいたい」
ウォーレンの説明を、皆神妙に聞いていたが、やがて一人の巨躯の男性が手を挙げた。
「──ギルドマスターよぅ。俺は、このトナミカが好きだが。どうも頂けねぇことがある。それは、何故このトナミカの命運を決する場面で、海も山も主力が部外者達なんだ?俺はその判断が信用ならねぇ」
きっと、同じ様な不満を抱いている者達がいたのだろう。
数人の部隊長が、男性の言葉に軽く頭を縦に振っていた。
男性の言葉を聞いたニンムスが、面倒くさそうな表情を浮かべる。
「バグダスか──。なんじゃ、ワシの決定に文句があるのか?」
ニンムスの言葉にバグダスは頷く。
「そうだ、エラリアの連中はまだいい。だが、何で他のメンバーがガキと、使い物にならないエルフクォーターと、おまけにちびっこなんだ?そんなに俺達が信用ないのか?」
僕が反論する前に、ニンムスが軽く手で僕を制した。
「そのエルフと、ちびっこがグリドールの勇者パーティーを抑え込んでいたのを見ていなかったのか?それに、そのエルフクォーターは、ワシより強いぞ?なんなら、ワシに勝てるようになってから、挑むんじゃな。あと、それはエルフの血が流れる者への侮蔑とワシは受け取って良いんじゃな?」
言葉に静かな怒気が満ち、ニンムスの周囲の空気が震える。
ニンムスが放つ魔素が空気に干渉しているのだ。
「──クッ、あんたとやり合う気はないさ。だが、本当にトナミカを守れるんだろうな?戦力差は絶望的だぞ。それに、ギルドマスターを含め、初めは駐屯を許可していたのは上の連中じゃねえか。それをひっくり返す根拠がねぇと、俺達も納得できねえってわけだ」
バグダスの言葉に、室内が重苦しい雰囲気に包まれた。
皆、戦力差は絶望的であることを理解しているのだ。
ジェイク達、S級パーティー『希望の剣』を倒したことは、トナミカの士気を大いに高めたが、死者こそ出なかったものの、先日の消耗を考えれば、20万の大軍は絶望的なものにうつったはずだ。
「根拠か。──そうじゃのう、グリドールの目的はレーベンを超えてドミナントじゃ。今はレーベンが防波堤になっておるが、ドミナントの目的も人族の排除じゃ。そうなると待っておるのは、遅かれ早かれトナミカの破滅じゃ。ワシはこの愛してやまぬ町を守りたい。その気持ちは、皆同じではないのか?」
ニンムスの言葉に、幾人もの部隊長が頷いた。
バグダスは罰の悪そうな顔をしたが、それ以上言葉を続けることはなかった。
「よし、これで会議を終了する!作戦開始は明日の正午!細部の計画は夕方の会議で達する。以上、解散するのじゃ!」
バッ!と、ニンムスが手を振った。
いよいよ、戻ることのできない戦いが始まるのだ。
そんな中、ニンムスが僕達をギルドに集めたのは、作戦開始予定の前日だった。
僕達も装備を新調し、機能性が良く動きやすい服を身に纏った。
「よし、集まったな。では、作戦を説明する」
ウォーレンは、室内に集まった人々を見回し、軽く確認するようにニンムスに頷くと、改めて皆へと向き直った。
室内には30人はいるだろうか。
それぞれが部隊長クラスと思われる、精鋭達は顔にピリッとした緊張を漂わせつつも、気力に満ちた表情で、地図を囲んでいる。
エラリアから参加しているベスが、僕を見るとグッと、親指を立てた。
連日の警備で疲れが少し残っているのか、エレナが大きく息を吸い直した。
「よし、では諸君。この地図と駒を見て分かる通り、現在トナミカは、2方向からグリドールによる進軍を受けている」
巨大なトナミカの周辺地図には、グリドール軍を示す駒が海上と山を越えた東南方向の平原に置かれている。
「まず、海側だが。こちらは、作戦上向かう船は一艘で向かう。使う船は、旗艦『トルルージュ』、乗船するのは、当ギルドマスターのニンムス。そして、『蒼の灯台』、それにそこにいるイスカとフーシェ、これらを主力として出発する。旗艦を使うが、戦闘に突入することを主眼に置いていない。先日の戦いで捕虜にしたジェイク達、『希望の剣』を使った交渉。及び、グリドール軍の引き止めだ」
何人かの部隊長が、僕達を訝しむ様に見たが、ニンムスはそれを察すると一つ咳払いをした。
「その二人は、クラーケン討伐の時と、先日のグリドールとの戦いにおいても実績を残しておる。それは、ギルドマスターのワシが保証しよう」
ジロリと、文句を言いたそうな部隊長達へと睨みを効かせると、視線を向けられた者達は、そそくさと視線を反らした。
「──続けるぞ」
ウォーレンが、一息置いて再び地図に視線を落とす。
「海側は基本的には遅滞行動に徹する。交渉が決裂した場合、グリドールは一気にトナミカへと船団を進めるだろう。そのため、本日より残りのトナミカ船団は、トナミカへの航路上に機雷を敷設する。対魔法攻撃様の護符を貼っておくため、広域魔法の機雷撤去にも、ある程度耐えれるだろう。機雷を仕掛ける場所は追って伝える」
今度は、ウォーレンがトナミカの南方。山脈側を指差した。
「次に山脈側だ。こちらは、元々交通のための街道が細く、大規模な軍を送るには適さない地形だ。そのため、この街道を一時的に、物理的に通過できないようにする」
ウォーレンは、そう言うと街道が特に細くなっている地域を指差した。
「ここが、街道を封鎖するには最も行いやすいだろう。ここの封鎖は、エラリアからの増援である『城壁の守護者』と、そちらのユズキに行ってもらう他、我々の部隊を数個つける。残りの部隊は、トナミカの一般人を西方へ避難させるための準備とその護衛。また、町の最終防衛線の保持だ。幸い、ここトナミカは海洋都市で殆どの家庭が、避難のための備えを行っている。一時的な避難であれば直ぐに一般人も西方へ下げることができるだろう」
ウォーレンは、地図上の西方。海上を指差した。
「この辺りまで出れば、西方の補給隊と合流できるだろう。ここまで護衛できれば、避難を担当した部隊はトナミカへと反転してほしい。万が一、グリドールの船団がトナミカへと到着していた場合。陸地からの応戦に、左側方から挟撃する形を取ってもらいたい」
ウォーレンの説明を、皆神妙に聞いていたが、やがて一人の巨躯の男性が手を挙げた。
「──ギルドマスターよぅ。俺は、このトナミカが好きだが。どうも頂けねぇことがある。それは、何故このトナミカの命運を決する場面で、海も山も主力が部外者達なんだ?俺はその判断が信用ならねぇ」
きっと、同じ様な不満を抱いている者達がいたのだろう。
数人の部隊長が、男性の言葉に軽く頭を縦に振っていた。
男性の言葉を聞いたニンムスが、面倒くさそうな表情を浮かべる。
「バグダスか──。なんじゃ、ワシの決定に文句があるのか?」
ニンムスの言葉にバグダスは頷く。
「そうだ、エラリアの連中はまだいい。だが、何で他のメンバーがガキと、使い物にならないエルフクォーターと、おまけにちびっこなんだ?そんなに俺達が信用ないのか?」
僕が反論する前に、ニンムスが軽く手で僕を制した。
「そのエルフと、ちびっこがグリドールの勇者パーティーを抑え込んでいたのを見ていなかったのか?それに、そのエルフクォーターは、ワシより強いぞ?なんなら、ワシに勝てるようになってから、挑むんじゃな。あと、それはエルフの血が流れる者への侮蔑とワシは受け取って良いんじゃな?」
言葉に静かな怒気が満ち、ニンムスの周囲の空気が震える。
ニンムスが放つ魔素が空気に干渉しているのだ。
「──クッ、あんたとやり合う気はないさ。だが、本当にトナミカを守れるんだろうな?戦力差は絶望的だぞ。それに、ギルドマスターを含め、初めは駐屯を許可していたのは上の連中じゃねえか。それをひっくり返す根拠がねぇと、俺達も納得できねえってわけだ」
バグダスの言葉に、室内が重苦しい雰囲気に包まれた。
皆、戦力差は絶望的であることを理解しているのだ。
ジェイク達、S級パーティー『希望の剣』を倒したことは、トナミカの士気を大いに高めたが、死者こそ出なかったものの、先日の消耗を考えれば、20万の大軍は絶望的なものにうつったはずだ。
「根拠か。──そうじゃのう、グリドールの目的はレーベンを超えてドミナントじゃ。今はレーベンが防波堤になっておるが、ドミナントの目的も人族の排除じゃ。そうなると待っておるのは、遅かれ早かれトナミカの破滅じゃ。ワシはこの愛してやまぬ町を守りたい。その気持ちは、皆同じではないのか?」
ニンムスの言葉に、幾人もの部隊長が頷いた。
バグダスは罰の悪そうな顔をしたが、それ以上言葉を続けることはなかった。
「よし、これで会議を終了する!作戦開始は明日の正午!細部の計画は夕方の会議で達する。以上、解散するのじゃ!」
バッ!と、ニンムスが手を振った。
いよいよ、戻ることのできない戦いが始まるのだ。
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