うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

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「誰だ!!」
 フワリと、突如翻った天幕の幌にマストールは心臓を掴まれたように怯えた声を挙げた。

「将軍大丈夫です。我々がついております!」

 マストールは、闇を払うかの如く光り輝いた雷魔法にすっかり怯えてしまい、天幕の中に最も優秀な兵を5名引き入れると、自らを取り囲む様に配置した。

 先程、重みのある衝撃が地面を揺らしたが、まさか『兵器』が潰されたのか?
 いや、そんなことはあるまい。地形を変える程の武装を搭載し、その一撃は帝都の城門程の厚い鉄の塊を、いとも容易くうち貫くのだ。

 マストールは、祈る気持ちで兵士たちの背中を見つめていた。

「あ⋯⋯」

 突如、マストールを取り囲んでいた兵の一人が小さく声を発したかと思うと、フラリと身体を傾けた。

「おい!」

 マストールが声を挙げる前に、二人、三人。直ぐに自分を守っていた5人の兵は酔っ払ったかの様に足をもつれさせると、その場に倒れ込み眠り込んでしまった。

「──!!」

 大声をあげようとしたマストールは、自分の首元に冷たい刃が当てられることに気付き、声を挙げることができなかった。

「ご機嫌よう、マストール将軍。声は小さくお願いするわ、首が飛ぶのは嫌でしょう?」

 そう、『認識阻害魔法』で近付いたリズだ。
 彼女は、音もなく忍び寄ると、一息で屈曲な兵士たちを夢の中へと魔法で送り込むと、動揺するマストールの首にピタリと短剣をあてがった。

「お前が──さっきの魔法を使った魔法使いか?」

 マストールの言葉にリズは小さく笑った。

「あら、さっきの魔法は私の仲間の一人よ。そして、あのゴーレムもどきかしら?アレも私達でもう一体は倒したわ」

「!!」

 マストールは、驚愕の余り声を失った。
 しかし、先程の地響きが証拠であるならば、トナミカは龍種をも圧倒する力を持っていることとなる。

──くそ!あの兵器に勝てる者はいないのではなかったのか?くそ占い師め!!

マストールは、自分に兵器を授けた占い師の事を思い出し、内心毒づいた。

「──貴様、まさか魔族か!?」

 刃を首に押し付けられ、顔をリズの側へとむけることができないマストールは、絞り出す様に声を出した。

「御名答、レーベンを統べる魔王。リズ=フォルティナ・ヴァレンタインよ。ゆっくり話したいところだけど、将軍。もう、貴方に会うことはないでしょう。──それではいい夢を」

 マストールが声を挙げる前に、リズはマストールに向かって魔法をかけた。
 リズの得意な魔法の一つ『催眠』だ。

「ふわっ」

 欠伸を挙げる様にトロンとマストールの瞼が下がった。
 そしてそのまま、深く椅子に座るように眠り込んでしまった。

「さて、これでOK。撤収ね」

 リズは念話で仲間たちを呼び寄せる。

 スルリと天幕から抜け出ると、混乱を極めるグリドール軍の中で、リズは念話によって仲間たちを集めた。
 直ぐに、マストールの天幕へと報告するために兵士が駆けて行くのが見えた。

「ふふっ、ついでに睡眠魔法も付与しておいたから、明日の昼まではグッスリのはずよ」

 リズはそう言うと、仲間たちの無事を確認して撤収を開始する。
 アルティナが隆起させた岩の上を一気に駆け抜けていく。

「やりましたな」

 隣にまで戻ってきたローガンがニヤリと笑う。
 ローガン自身、グリドール軍に大きな被害が出ていないのは嬉しいのだろう。

「えぇ、睡眠魔法は気付かれるでしょうけど、高度に仕掛けた催眠魔法を見抜く魔法使いは、グリドールの本国にいれば御の字といったところね。これで、目覚めたマストールは恐怖心に支配されて、トナミカに攻める気持ちが起きないはずよ」

「なんか、非道の魔法です」

 マルティの言葉に、リズは眼をパチクリとさせた。
 次に意地悪そうに笑うと片目を瞑った。

「あら、グリドールにとって魔王は天敵なのでしょう?でも、生命まで取らないのだから、可愛いものよ」

 リズはそう言うと視線を前に向けた。
 陸側はこれで、暫くは進軍を開始することができない。
 しかし、海側に突然現れたドミナントのことを考えると、動悸が早まった。

「絶対にお父様の仕業ね──ユズキ、みんな。どうか無事でいて⋯⋯」

 はやる気持ちを抑え、リズはアルティナ達が待つ山間部に向かって、進む速度を上げた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 一方その頃、潜水艇に乗り込んでいたイスカとフーシェ達にも、ユズキのスキル、『女神の調律』は届いていた。
 潜水艇の分厚い鉄の壁をすり抜けて届いたの力に、イスカは『譲渡士』のスキルが体内に満ちていくのを感じた。

 潜水艇には、イスカとフーシェ。トナミカのギルドマスターのニンムスに、エレナをはじめとした『蒼天の灯台ブルートーチ』の面々が乗船していた。

 潜水艇には、機械技術の粋であるソナーやレーダーなどは備え付けられていない。
 海水に含まれる水のマナと、海底などに含まれる土のマナの違いを読み取り、障害物を避けるのが主な仕組みだ。
 そのため、操船には高い技術を要することは言うまでもなく、その安全性もかなり低い。
 しかし母艦を失い、レグナント号もまともな航行が不可能な現在、潜水艇はトナミカに近付く唯一の方法だった。
 制海権は取られてはいないものの、海上に浮上して移動する危険を犯すことを避けるため、浅い水深を潜水しながら潜水艇は滑る様にトナミカの港付近まで近づいていた。

「ギルドマスター、トナミカ港湾まであと少し。浮上しますか?」

 船員の言葉にニンムスは頷く。

「総員、我々はこれより海面へ浮上する。各員は速やかにウォーレンの指揮に入って戦闘に参加するのじゃ!イスカ、フーシェは、ユズキ達と急ぎ合流してあの落下して来た島の対処に当たるのじゃ!」

『おう!』

蒼天の灯台ブルートーチ』の面々が、響く艦内で静かに呼応する。
 ザザッと、船体が水面を切り裂く音が響いた。
 船体が海面へと浮上したのだ。
 ハッチから飛び出そうとする最前列にフーシェ、次にイスカが並ぶ。戦闘力の高い二人は、露払いの役割を担っていた。

「ハッチ、開きます!」

 エレナの言葉に、フーシェは双剣『アースブレイカー』の柄を握りしめた。
 重い頭上の扉が開かれると共に、フーシェとイスカは勢い良く船外へと飛び出していった。
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