うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

文字の大きさ
153 / 166
第5章 戦争

合流 7

 雷鳴が轟く。
 昼夜を逆転させたかのように夜空が白く染め上げられる。
 サユリの放った万雷雨は、野営の準備を進めていたグリドール軍を直撃した。より派手に、より広範囲に放った光は、地面に直撃した際に、けたたましい程の音をあげた。

 グリドール軍から悲鳴が上がり、マストールお抱えの精鋭達は大混乱へと陥った。
 訓練によって磨かれてきた肉体は、突然の急襲によって萎縮してしまっていた。見たこともない程の大規模魔法の顕現により、彼らは精神的な恐怖を刷り込まれてしまったのだ。

「敵襲!敵襲~!!」

 それでも、直ぐに幾人かの指揮官が、混乱に陥った自軍をまとめ上げようと声を張り上げた。

 一方『視界認識阻害魔法ジャミング』によって姿を隠したリズ達一行は、音も静かにグリドール軍の真ん中へと着地すると、混乱する軍勢の隙間を、縫うように目当ての『兵器』へと突進した。
 リズは、それらの兵器を便宜的に『ホワイトゴーレム』と呼称した。
 ホワイトゴーレムは、前方約100メートル程でその巨体を素早く動かし警戒態勢へと移行すると、頭部を振りながら、混乱するグリドール兵の周囲を索敵し始めた。

「警戒されてるわ!散開!!」

 リズは、人の有視界的には隠れている自分達を、ホワイトゴーレムは見つけ出すことが可能だと仮定して指示を出した。
 蜘蛛の子を散らしたかの様に散開したリズ達は、ホワイトゴーレムの全方位から、各個に攻撃を開始した。

 ──ホワイトゴーレムは、攻城目的や対軍を相手とする殲滅兵器。しかし、近接戦闘においても無類の強さを誇ることは間違いないわ。

 リズはそう見ていた。
 だが、その運用についてはマストールは明らかに素人だ。
 本来、巨大な自律兵器であるならば、その周囲に兵など配置しない方が良い。圧倒的な力を使用するには、周囲に自軍がいても邪魔になるだけだ。
 だが、心配症のマストールは新しい兵器を近くに配置するだけでなく、信頼に足る私兵も周囲に配置してしまった。

「そんなに近くに兵達がいれば、指揮官がいる近くで暴れることはできないわよね!!──ベス!」

 リズが念話を飛ばすと、ホワイトゴーレムの後方から迫っていたベスが、ゴーレムの膝関節目掛けて一撃を入れた。

 ──ガインッ!

 金属音が響き渡り、その巨体が軽くよろめく。
 ホワイトゴーレムの全高は10メートル超だろうか。ベスの一撃はゴーレムに対して損傷を与えることはできなかったが、『女神の調律』によって、腕力を飛躍的に上昇した重みのある斬撃は、僅かに隙を作ることに成功した。

「次は私が。『影縛りシャドーバインド』」

 マルティが、小さく呪文を唱えると、地面から無数の漆黒の腕が突如として湧き上がり、ホワイトゴーレムの上体に取り付いたかと思うと、地面に向かって引っ張った。
 ベスの一撃によって態勢を崩していたホワイトゴーレムは、宙を仰ぐ様に手を振ったが、その手は虚しく空を斬るばかりであった。
 本来は、人や小型の魔族を拘束する程度の魔法だが、こちらも大幅な能力強化により、ゴーレムの巨体をものともせず、ホワイトゴーレムを地面へと引き倒した。

 不可視の攻撃によって、突如として虎の子のゴーレムが倒されたことにより、グリドール軍の混乱はここに極まった。
 何しろ、地形をも変える力を持つゴーレムが突如として倒れたのだ。
 グリドールを出る際、誰もが、この巨大な兵器に打ち勝つことはできない。そう、それは勇者とて例外ではないだろう。
 グリドール兵は言葉には出さないものの、このゴーレムは龍種ともやり合える程の力を持つと感じていたのだ。
 だが、その巨体は呆気なく眼前で倒されてしまった。
 グリドール兵達は、最早安全な所などないと本能的に察知すると、見えない敵に対して怯える様に仲間同士で背中合わせとなると、敵からの攻撃に備えた。

 ──キュウンッ

 ホワイトゴーレムは、地面に倒されてなお、頭部をグルグルと回転させると、自分を倒した敵の索敵を開始した。
 このゴーレムに対してマストールが指示していたのは、敵を倒すことと、将軍である自分の生命を最優先に守ることだった。

 ホワイトゴーレムは、その命令を忠実に実行するために最適な攻撃方法を選択しようとした。

 1 無差別衝撃波による殲滅:マストールに致命傷──却下
 2 腕部誘導弾の発射:マストールに被弾する可能性86%、マストールの生命を危険に晒す可能性大──却下
 3 肉弾戦による敵勢力の殲滅:拘束からの脱出に要する時間、約6秒──時間的脆弱性を考慮し、優先順位を低下
 4 頭部レーザーによるピンポイント狙撃:マストールへの危害リスクを排除可能──行動選択開始

 コンピューター以上の演算能力を持つホワイトゴーレムは、瞬時に敵を最も効率的に排除するための行動を起こそうと試みた。しかし演算の結果、その攻撃方法のほとんどがマストールにも危害を加える恐れがあると判断し、ホワイトゴーレムは本来の能力の90%程を制限した中での最適解を導き出した。

 それこそが、頭部のピンポイントレーザーによる攻撃である。これならば、射線上にマストールがいなければ危害を与えることはない。
 ホワイトゴーレムは有視界に敵が映らないことから、熱探知と空間の歪みを認識する位相探知に切り替え、敵を補足しようと試みた。

 頭部は回転を増し、ホワイトゴーレムはその動きの途中でこちらに迫ってくる敵を補足した。
 瞬時に体内回路から、敵を貫くための熱量を頭部に供給させる。
 そして、今まさに高出力のレーザーを放とうとした直前、ホワイトゴーレムは一番近くにいる敵をロックオンすると、レーザーの射出口を開いた。

 キュインッ!

 ホワイトゴーレムは、頭部から人を融解させる程の熱量を発射したと認識した瞬間。同時に、自分の回路が焼き切れることを認識し、それと同時に活動を停止した。

「ふむ、しっかりこっちを狙ってくれること程、やりやすいことはありませんな」

 ローガンはそう言うと、熱を帯び白煙を上げる剣を一振りすると、静かに鞘へと戻した。
『鏡返し』
 完璧なタイミングで、敵の攻撃を相手へと跳ね返す技だ。
 魔素を纏った剣は、ホワイトゴーレムの熱線が放たれると同時に剣戟を放つと、寸分違わずにその熱線をゴーレムの頭部へと撃ち返したのだ。
 射出口に向かって完璧に熱線を跳ね返されたホワイトゴーレムは、『影縛りシャドーバインド』によって地面に貼り付けられたまま活動を停止する。

 切り札の呆気ない活動停止に、グリドール軍は大混乱に陥った。
 その喧騒の中、リズは闇に紛れ込むようにマストールの天幕へと忍び寄る。
 ご丁寧に、侵入者探知の魔法陣が張られていたが、その分野において右に出るもののいないリズにとっては、魔法陣を解除することは造作のないことだった。
 リズは、ホワイトゴーレムが活動を停止したことを見届けると、自分の作戦が成功したことに小さく笑みを浮かべた。
 ここからが自分の本領発揮だ。
 リズは気を引き締めると天幕の中へと滑り込んだ。
感想 2

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき
ファンタジー
無能テイマーとしてSランクパーティをクビになったオース。 モフモフテイマーという、モフモフモンスター専門のテイマーであった彼は、すぐに最強モンスター『マーナガルム』をテイムするが……。 実はオースこそが、Sランクパーティを支える最強メンバーだったのだ。 あらゆるモンスターへの深い知識。 様々なクラスを持つことによる、並外れた器用さ。 自由になったオースは、知識の力で最高の冒険者へと成り上がっていく。 降って湧いた凶悪な依頼の数々。 オースはこれを次々に解決する。 誰もがオースを最高の冒険者だと認めるようになっていく。 さらに、新たなモフモフモンスターが現れて、仲間も増えて……。 やがて、世界を巻き込む陰謀にオースは関わっていくのだ。