うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

最後の戦い 2

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『この三人はお父様の捨て駒でしかないわ。必ずお父様は、メーシェの『消失エリミネーション』を撃ってくる。それをフーシェには防いでもらいたいの』

 先程のリズから送られてきた念話が、僕の脳内で反芻される。
 ──自分の子供達ごと撃ってくる?
 にわかには理解し難い感覚だったが、メナフがリズに行ってきたことを考えれば、充分にありえる話ではあった。

「ヒッ、ヒッ。エルフの女とは上物だぜぇ!」

 クロースがダラリと、長い舌を垂らしながら、両手の曲刀を振るう。

「シッ!」

 タイミング良くイスカがクロースの曲刀を剣を振るって撃ち落とす。
 金属音が響き渡り、クロースの懐に明らかな隙が生まれた。

「そこっ!!」

 腹部に目掛けて斬撃を放ったイスカだが、その動きを見たクロースがニヤリと笑った。

「ケッ、甘いなぁ!」

 突如、剣戟で弾かれたはずの腕が軟体動物の様な動きを見せると、関節を無視した動きで、懐に飛び込んだイスカを斬り払うべく腕を振るった。

「『氷雪の花弁アイスペタル』」

 イスカの言葉に応じて、突如イスカの背後に氷の花弁が生じた。

 ──キインッ!

 涼やかな音を立てて、クロースの一撃は氷の花弁によって阻まれた。

「『重攻撃ヘビースラッシュ』」

 突如つむじ風が巻き起こり、イスカの刀身に風が纏わりつく。無詠唱で風魔法を刀身に付与したのだ。
 そのままイスカはクロース目掛けて斬撃を放った。

「──チィッ!」

 クロースは忌々しげに叫ぶと、地面を蹴ってイスカとの距離を取った。
 しかし、イスカの一撃はクロースに届いていたようだ。
 クロースは一文字についた腹部からの出血を煩わしそうに眺めた。

「ムンッ!ムンッ!!」

 僕の前には、僕の身長より頭1つ抜き出る程の大男、ストムスが息をつかせぬ連撃を放ってきた。

「これくらい!」

 譲渡されていたレベルが戻ってきた僕にとって、ストムスの連撃は受け止めることが余裕だ。

「フッ!」

 片手でストムスが放った右ストレートを受け止めると、僕はそのボディーに向かって掌底を叩き込んだ。

「──!?」

 巨岩をも吹き飛ばす程の一撃を受けたにも関わらず、ストムスの身体は1歩も動くことはなかった。
 ストムスはニヤリと笑うと、左手で僕の頭部を叩き潰そうと腕を振り下ろす。その手を僕は受け止めるが、圧倒的なレベル差があるはずなのに、押し返すことができなかった。

 困惑する僕に、イズが嬉しそうに声をあげる。

「アハッ!それがストムスのスキル『無効インヴァリッド』よ。物理的な攻撃はおろか、魔法攻撃も無効になるの。お父様が、人族の貴方対策に彼を選んだの!さあっ!今ですはお父様──!!」
「フーシェっ!!」

 イズが叫び終わる前にリズが叫んだ。

「ん。『虚無』バリア」

 覚醒進化による臨戦態勢を取っていたフーシェの、金髪から覗く二対の紫色の角が紫紺に輝いた。
 それと同時に、音もなくガイアスピアーで開けた大穴を塞ぐ様に漆黒の壁が出現すると、直ぐにフーシェの眉がピクリと動いた。

「吸い込んだ。さすがリズ、最高のタイミング」

何かの手応えを得たのか、フーシェが眉間に皺を寄せた。

「な、何よ!?その能力、まるであのメーシェとかいうガキと同じ能力じゃない!」

 イズが驚愕した声をあげる。

「フーシェ、いいわよ」

 イズがフーシェに気を取られた瞬間に、『万象のまなこ』を発動していたリズが、フーシェに声をかけた。

「分かった。初めてだけど、かなり疲れるね」

 フーシェは直ぐにスキル『虚無』を解除する。
 漆黒の壁が、まるで初めから存在しなかったの様にパッと消え去った。

「なっ!!」

 壁が消えた跡を見たイズが、穴の先に広がった光景に息を飲んだ。
 そこには、ガイアスピアーで開けた隆起のある壁はなく、まるで円状に綺麗にくり抜かれた空間が存在していた。

「何これ⋯⋯こんな範囲だと、私達ごと──」

「そう、お姉様達ごと綺麗さっぱりメーシェの『消失エリミネーション』で消そうとしたのよ。お父様は」

 現実を受け止めきれない様子のイズに、リズが達観したように言葉を投げかけた。

「そんなはずないっ!!お父様は、私に『これはイズにしかできないことだ』って、言ってくださったもの!アンタなんかと違って!!私はお父様の寵愛を受けているもの!」

 無詠唱でイズが空間上に無数の鋭く尖った金属を精製する。

「私は!!お父様に期待されてるの!」

 悲痛な声とも取れる、何かに縋る様な声でイズがリズに向かって金属を発射した。

「リズッ!」

 ストムスの手を離した僕は一瞬で、金属の射線に飛び込むと、リズを目掛けて飛来した鋭利な金属片達を剣で弾き飛ばした。

「ストムス!あの人族の動きを止めなさい!」

「ムンッ、分かった」

 イズの命令にストムスが僕を目掛けて走ってくる。
 イズの金属の連撃は、魔法をストックでもしているのか無数に飛来し続ける。

 クソッ、風魔法だと金属が周囲に飛び散ってイスカやフーシェに当たる可能性もある!確かに、このストムスのレベル差を無視したスキルは僕と相性が悪すぎる!

「ん」

 フーシェが小さく右手を掲げた。
 次の瞬間、顔に優越感に満ちた笑みを浮かべながら走り寄って来たストムスの左半分が円球状に消え去った。次に右脇腹、左膝。
 漆黒の球体を確認できた時には、ストムスの身体は穴だらけになり、バランスを失った身体は地面へと崩れ落ちた。

「ヒィッ!!」

 突然の惨劇に、イズが魔法を止めた。

「『神喰らいゴッドイーター』。ユズキと相性が悪いなら、私が守る」

 ストムスが倒れた先には、怒気を含んだ漆黒の瞳で3つの『神喰らいゴッドイーター』の球体を操るフーシェの姿があった。

「世界樹よ!私に力を貸してっ!!」 

 イスカの金色の右眼が光を増す。
 次の瞬間、足元から光り輝く木の根が出現すると、あっという間にイズとクロースを縛りあげた。

「地面があれば、世界樹の力を少しだけ借りられるんです。転移してきた島でしたが、マナの流れは感じれましたから」

 イスカはそう言うと、油断なく剣先をクロースに向けて構えた。

「クソッ!なんでこんな奴らに力負けするんだ!?能力的にはイズ姐の方が高いはずだろ!?」

「わ、私にだって分からないわよ!リズ!!これはきっと間違いよ!お父様が私達ごとリズを殺そうとする訳がないもの!」

 世界樹の根に縛り上げられたイズとクロースが口汚く罵り合う。
 ストムスはフーシェの攻撃によって完全に息絶えたらしく、ピクリとも動くことはなかった。

「ハアッ!なんで、こんなにリズが強いのよ!攻撃魔法なんてほとんど使えなかった無能のくせに!ちまちま、薄汚い魔法ばかり研究してる貴女が、『魔王』なんて、名ばかりの空っぽだって皆笑っていたのに!」

 イズは悪態をつきながらも、世界樹の根を焼き尽くそうと火魔法を唱えた。

「無駄ですよ。世界樹はエルフの知の結晶。半端な魔法は全部マナに分解されますから」

 イスカが告げると、イズが唱えようとした火魔法はたちまち魔素に分解されると、マナへと還元されて世界樹が吸い取ってしまった。

「リズ、この人達は⋯⋯」

 リズは僕の顔を見ると、少し情けなさそうに笑った。

「ふふっ、こんな人達に今まで怯えてたなんて思うと、少し笑っちゃうわ。きっとユズキにレベルをもらってなくても、今の私はこんな二人に負ける気がしないですもの」

 リズはそう言うと、小さく魔法を唱える。

 空中に描かれた魔法陣を見て、イズの顔が真っ青になる。

「ま、待ってリズ⋯⋯!そんな魔法を実の姉にかけたりしないわよね?」

「おい、イズ姐!!あれはなんだよ!」

 ただならぬ様子のイズに、恐怖を覚えたのかクロースが世界樹から逃れようと、軟体動物の様に関節を外してもがいた。

「逃しません」

 イスカが右手をクロースに向ける。
 手足を外して逃れようとしたクロースの身体に、更に世界樹の根は纏わりつくと、握っていた曲刀をも締め上げて奪い去ってしまった。

「では、イズ姉様。クロース兄様、もうお会いすることはないでしょうけど、せめてもの姉妹の温情で、生命は取らないことにします。続きは、夢の中でお過ごし下さい」

 フッと、リズは空中に描いていた魔法陣に息を吹きかけた。
 魔法陣は、ホロリと解ける様に煙に変わると、顔を真っ青にするイズとクロースの鼻腔へと吸い込まれた。

「あ──」

 程なくして、イズとクロースの瞳孔が見開かれ、次の瞬間には瞼を閉じて意識を失ってしまった。


「あの二人にかけた魔法は?」

 僕の問いかけにリズは少し苦々しげに笑った。

「『洗脳』魔法の一種よ。──二人は目覚めることのない夢の中に入ったわ」

 リズは暫く、世界樹から解き放たれて地面に横たわった二人を眺めていたが、直ぐに気を取り直した様に顔をあげた。

「さ!早くお父様の所へ行きましょう!」

 僕達はリズに促され走り出した。

「──子供の頃は、よく一緒に遊んでくれたわよね。⋯⋯せめて終わらない夢の中で、子供の私と遊び続けて」

 リズは寂しげに呟くと、顔を前に向けた。
 フーシェの『消失エリミネーション』によってくり抜かれた空間を、四人はメナフの元に向けて駆け出した。



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