うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo

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第5章 戦争

最後の戦い 8

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 確かな手応え。
 メナフの身体がゆっくりと崩れ落ちる。

 ──勝った

 僕の胸には安堵感よりも、セラ様を失ったという喪失感が去来していた。
 振り切った剣の周囲から、フッと音もなくフーシェが付与してくれていた『神喰らいゴッドイーター』が消え去った。

「我は⋯⋯我は死なぬぞ」 

 突如聞こえてきた声に、僕は振り返った。
 そんな、まさか──
 振り返ると、腹部から上下に両断されたメナフが苦悶表情を浮かべつつも、四本の腕で地面を押して起き上がろうともがいていた。

「ガアアアッ!!」

 獣の様な咆哮。
 その本能を剥き出しにしたかの様な声に呼応したのか、メナフの上半身の切断面から肉塊が盛り上がった。

「グッ!め、女神め⋯⋯この、身体に何をした!」

 メナフは、おぞましい形に膨張する自らの肉塊を掴むと叫んだ。

「ふふっ、貴方はユズキと違って無理矢理レベルを譲渡したんだもの。セラフィラルの世界で形成されている肉体の貴方が、耐えられるはずないじゃない」

 アマラは空中で浮遊しながら、冷ややかな目でメナフを見つめた。

「セラの世界でたかが一魔族の分際で、本当に私たち神の世界に入れると思ったの?ほんと、単純よねぇ」  

 アマラはケラケラと笑うと、腰に差してした扇子を広げると口元を覆った。

「貴様ぁ!我は神を殺す力を得た存在だぞ⋯⋯グオオッ、その力を持って、貴様を消すことなど容易いのだ──見ろ!この世界の創造主を殺したのは我だ!」

 メナフは、自らの意志に反して膨張し下半身となろうとする肉塊を掴んではもぎ取った。
 しかし、次々と膨れ上がる肉の塊は下半身となれないことを悟ったのか、今度はメナフの胸部を侵食しようとせり上がった。

「それは、あのセラの魂魄がこの世界の肉体に閉じ込められていたからできたこと。鏡に映る世界に干渉できないように、貴方がいくら頑張ったところで、私たち神の世界に来られる訳ないじゃない」

 アマラの声は、本当に地面を歩く虫に気まぐれで喋ってみたと言わんばかりの、興味なさそうな声であった。

「でも、そんな貴方には最後の仕事。もうその身体は崩壊して、直ぐにこの世界を覆い尽くす醜悪な姿へと生まれ変わるの!!セラが愛しんで育てた世界が、グチャグチャになる!これを、そんな特等席で見られるなんて──あぁ、とても興奮するわ」

 恍惚とした表情を浮かべ、アマラは自らの腕で自分の身体を抱きしめた。

「き、ぎさまぁ⋯⋯ウボッ、ゴフッ」

 膨張する肉が肺まで達したのか、メナフが口元から黒い血を吐いた。

「メナ⋯⋯父様!」

 あまりの惨状に、リズが捨てると決意したはずの、『父』という言葉を発した。

「ぐ、見てみろ⋯⋯リズ。全ての者の上に立たねば──ガハッ。蹂躙されるのだ、これが真理⋯⋯グッ!リズの⋯⋯言う他者を分かりあう世界など⋯⋯ただの幻想──ガハッ!」

 血走った目でメナフはリズの瞳を真っ直ぐ捉えた。
 国の全てを自分の支配下に置いてなお、人族や全世界。果てはこの世界の外部にまで支配を広めようとした男は、どこまでも自分以外を信じられず、また、自分の力さえも信じることのできない支配者の末路が広がっていた。

「さぁ!その肉塊をぶちまけなさい!!そのヘドロの如き肉で、セラの世界を貪り尽くすのよ!!」

 勝利を確信したのか、アマラが歓喜の声をあげた。
 理性を完全に失った肉塊が膨れ上がる。
 分断された下半身からも肉塊が盛り上がり、いまや家程の大きさまで膨れ上がっていた。

『マスター、肉塊の増殖が早すぎます。メナフの意識が完全に飲まこまれたら、この一帯は一瞬で肉塊で埋まります!』

「クソッ!その前にメナフに止めを!!」

 僕が大地を蹴った瞬間、肉塊は脅威を悟ったのか、条件反射の様に盛り上がると僕の上へと降り注いだ。

「──グッ、クソッ!!なんて重さだ!」

 僕を押しつぶそうとする肉塊は、レベル9999状態の僕を意にも介さない程に強い力を加えてくる。
 衝撃に視界が歪む。
 純粋な暴力が、これ程までに強いとは。
 あまりの強さに、息ができない。肺が潰れそうだ。

「ユズキさん!」
「ユズキ!」
「ユズキ!!」

 肉塊はメナフの首元まで上がってきていた。
 辛うじて意識が繋ぎ止められているのか、メナフの身体が爆発することはなかったが、それも限界だろう。
 白目をむき、切れそうな意識をメナフが辛うじて留めているのは、アマラへの些細な反抗なのだろうか。

「さあっ、さあっ!!私に楽しい終わりの始まりを見せるのよ!」

 アマラはフワリと空中で身を翻すと、僕の背中側へと周り込んだ。

「ふふっ、最後の無駄なあがきをここで見られるなんて。とっても特等席」

 吐息はないのに、アマラの甘い声が耳元をくすぐってくる。

「みんな!逃げろ!!」

『マスター!今なら『略奪者プレデター』で一気にメナフを倒すことはできます!でも、その場合は皆がっ!!』

 悲痛なセライの声が脳内に響く。
 だが、最早一刻の猶予もない。
 その焦燥を見透かしたのか、アマラは僕の正面に回り込むとクスリといたずらな笑みを浮かべた。

「ふふっ、ざ・ん・ね・んでした──」

 アマラの言葉は突然、僕の直ぐ横を駆けた黒い闇によって遮られることとなった。
 音もなく現れた漆黒に僕は見覚えがあった。

 光さえ通さない闇は次の瞬間には、何事もなかったかの様に消え去っていた。
 その闇が貫いた先、僕が視線を凝らすと、そこには先程まであったメナフの頭部が跡形もなく消え去っていた。
 僕は闇の発生源へと顔を向ける。
 視線の先、そこには地面に伏したまま手を伸ばす、メーシェの姿がそこにはあった。
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