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8章・変わり行く時代
大夢
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商店区は王都でも人通りの多い場所だ。
そのような場所で、人々が悲鳴を上げたら大変な騒ぎとなる。
そして、現に今、そうなっていた。
衛兵達がなんだなんだと騒ぎを聞き付けてやって来ると、返り血に染まったラジートが居るのだ。
当然、衛兵達はラジートから事情を聴取しようとしたのである。
だが、ラジートは「オレは先を急ぐから、話を聞きたいなら後にしてください」と言うのだ。
この子をラサニッタの孤児院へ連れて行く。
飯をすぐに食べさせなければならない。
しかし衛兵達も引き下がらない。
彼らもこれで仕事を貰っている身。
周囲に民衆が居る以上、はいそうですかと見逃すのは怠慢と断じられる要因に他ならない。
ラジートの服装から騎士階級だということは兵士も分かったので、「いえいえ、そこを何とか」とか「お願いします」と丁寧に食い下がった。
しかし、ラジートも背中の子供が心配だ。
「分かりました。そこまで食い下がるなら仕方ありません。オレは宰相カイエンの息子、ラジートです。文句があるなら、我が父に何なりと申し付けください」
これに衛兵達はたまげたなんて話では無い。
あまりに驚いたので、そのまま歩いて行ってしまうラジートを引き止められなかった程だ。
こうして衛兵から離れ、群衆を掻き分けて歩くラジートとしても、カイエンの名を出したくは無かった。
だが、ラジートは何かを守るためには力が必要だと知っている。
力とは、腕力や暴力のみならず、知力や権力があることも知っていた。
この子を守るため、父の権力が必要だと言うならば、幾らだって父の名を出そう。
父に頼りたくないチンケなプライドと、この子を救うために父という権力を秤にかけるなら、権力を行使しよう。
ラジートはそう思うのだ。
そして、その考えのお陰か、ラジートは無事に子供を孤児院へと連れて行く事が出来た。
「まったく良くやったわ、あなたは。本当に危なかったところね」
ラサニッタはそう言って、職員に消化の良いスープを持ってこさせたのである。
その子が、おいしそうに、それはもうおいしそうに、涙を流してスープを飲む姿を見届けると、ラジートは満足してカーシュへ会いに行った。
カーシュは共同部屋で妹のヘデンと勉強をしている。
カーシュは既に、ラジートが栄養失調で危ないところの子供を連れてきたと言う話を聞いていたらしく、「我等の騎士様じゃないか」と大仰に手を広げて言った。
そのカーシュの冗談に、ラジートは「うるさい奴だな。字が書けないのに勉強か?」と皮肉で返す。
「その字の勉強さ」
カーシュは紙に書かれた、土、砂、泥、火などの文字を見せた。
随分と奇妙な単語ばかりである。
しかも、貧民のカーシュが字の勉強とは奇妙な事だとラジートは思う。
「仕事で使うんだよ」
カーシュもラジート同様十歳。
仕事へ向けて修行する期間だ。
彼は十五になったら孤児院を出て、陶磁工房で働くことにしたのだ。
すでに工房へ行って仕事を教わる事になったのだが、「仕事で使う字くらいは読み書きできるようにってさ」との事で、奇妙な単語ばかりを勉強しており、ついでにヘデンも一緒に勉強しているのである。
「あと、足し算と引き算。金勘定できないと仕事にならないってさ」
陶磁家とは、食器などの日用品から花瓶などの装飾品まで、様々な陶器を作って販売する商売だ。
金の計算ができねば仕事にならない。
彼の勉強していることは、ラジートはとっくの昔に学んだ事だ。
だが、決してラジートはカーシュを馬鹿にはせずに、「頑張ってるんだなぁ」と感心した。
「当たり前だろ。俺は貧民で終わるつもりは無いし、それにヘデンも居るしさ」
カーシュも未来を見据えて行動をしている。
貧民を脱出し、妹に楽な暮らしをさせたい。
それは、陶磁工房で陶器を作って売るという、どこにでもある行動であるが、それでも未来を見据えて行動する事は、ラジートにとって賞賛に値する行為だと思った。
そんなラジートへ、将来はどうするのかカーシュが聞いてくる。
騎士だから、やはり戦争で一旗挙げて領主にでもなるのかとカーシュが言う。
「いや、それじゃ駄目だ」
ラジートが首を左右に振った。
一体、何が駄目だというのだろうか。
ラジートは夢があった。
大きな夢だ。
「この世から貧民を無くしたい」
ラジートはカーシュへそう言うのだ。
貧民に金を分け与えても、問題を一時の先延ばしにしただけにすぎない。
ばかりか、分け与えた金が争いの火種となりかねないのだ。カーシュやヘデンが殺されかけたようにである。
だから、根本から変えねばならない。
その夢の為には、チンケな役人や地方領主ではあまりに力不足。
カーシュはそんな事が出来るわけ無いと言ったが、ラジートは出来ると断言した。
「どうやって?」
「力だ。あらゆる力が必要だ」
腕を組んで、胸を張って言う。
あまりに自信満々に言うので、まるで力があれば貧困の問題を解決出来るようではないか。
「なんだか、ラジートが言うと本当に出来そうな気がしてくるなぁ」
「出来そうじゃあない。やってやるんだ」
ラジートの意思は固く、必ず実行してやるのだという顔であった。
カーシュは期待して待ってるよと言う。
そんな彼の隣に座っているヘデンは、目を輝かせてラジートを見ていた。
ヘデンは、ラジートの夢がとんでもなくでっかい夢に見えたのである。
しかも、ただの夢想家にあらず、ラジートは騎士なのだから、その夢を叶えられるだろう。
ヘデンはラジートと大きな距離を感じた。
ラジートが貴族の子だとは知っている。
しかし、カーシュにもヘデンにも隔てなく接するラジートを、今までヘデンは身近に感じていた。
だが、今、大きな夢を語るラジートを目の前にしながら、そのラジートが遥か遠くの存在だと感じたのである。
ラジートはそんなヘデンの視線に気付き、どうした? と聞く。
だが、ヘデンは顔を俯かせて「なんでもない」と言った。
ヘデンの兄カーシュは、難しい話をしていたから、きっとヘデンは付いて来れなかったに違いないと言うので、ヘデンは「分かるもん」と怒る。
「これからラジートは、戦争とか、そーいうので会えなくなるんでしょ」
なるほどヘデンの言うとおり。
ラジートが大きな夢を叶える為に努力し、功績を挙げたいなら、訓練やら戦争やらで中々会う機会もあるまい。
なので、ヘデンはちょっと待っててと、自分の部屋へ向かい、木彫りの指輪を持ってきた。
本当はちゃんとした指輪で贈りたかったのであるが、ラジートといつ会えるか分からないし、きっともう二度と会えないだろうとヘデンは思ったのである。
不器用ながら、草花のような模様が彫られた木彫りの指輪。
しかし、ラジートの指にはまだまだ大きかった。
ヘデンが目測で造ったので仕方が無かったが、二回り以上も大きかったのである。
大きすぎたと謝るが、ラジートは「いや、気にしないでくれ」と、それを紐に通して首へ提げた。
かつて、姉サニヤが髪飾りをこのように首へ提げていたのを真似したのである。
「大事にするよ」
ラジートはその指輪を服の内側へと入れた。
良く磨かれて滑らかな肌触りだ。
金属の指輪だと、汗に反応して肌をかぶれさせる事もあるので、これは助かる。
「あの、ラジート……」
ヘデンがおもむろに口を開いた。
「どんなに遠くに行っても、その指輪だけは、どうかいつまでも身につけていて欲しいの」と言うのである。
遠く……とは、物理的な距離では無い。
これからラジートが偉くなって、きっとヘデンが会えなくなるほど偉い偉い人になるその距離の事だ。
どんなに離れても、その指輪がラジートと一緒にある限り、きっと自分の魂もラジートと一緒に居られるような気がした。
ヘデンはラジートに好意を抱いていたのである。
だが、生来から引っ込み思案のヘデンだ。
その気持ちをラジートへ伝えられる訳も無く。
指輪を自分の代わりに渡すことしか出来なかった。
結局、ラジートが帰る時になっても、ヘデンは何も伝える事は無かったのである。
しかし、ラジートとて朴念仁にあらず。
ヘデンの好意に気付いていた。
それに気付いた上で、帰りがけにヘデンの頭を撫でて、「オレがお前達みたいな人を助けるからな」と言うに留める。
ラジートはヘデンの好意に気付いたが、しかし、ラジート自身にヘデンへの恋愛感情は無かった。
今は少なくとも、夢へ向かって進みたい。
そこに愛だの恋だのはいらなかった。
そのような場所で、人々が悲鳴を上げたら大変な騒ぎとなる。
そして、現に今、そうなっていた。
衛兵達がなんだなんだと騒ぎを聞き付けてやって来ると、返り血に染まったラジートが居るのだ。
当然、衛兵達はラジートから事情を聴取しようとしたのである。
だが、ラジートは「オレは先を急ぐから、話を聞きたいなら後にしてください」と言うのだ。
この子をラサニッタの孤児院へ連れて行く。
飯をすぐに食べさせなければならない。
しかし衛兵達も引き下がらない。
彼らもこれで仕事を貰っている身。
周囲に民衆が居る以上、はいそうですかと見逃すのは怠慢と断じられる要因に他ならない。
ラジートの服装から騎士階級だということは兵士も分かったので、「いえいえ、そこを何とか」とか「お願いします」と丁寧に食い下がった。
しかし、ラジートも背中の子供が心配だ。
「分かりました。そこまで食い下がるなら仕方ありません。オレは宰相カイエンの息子、ラジートです。文句があるなら、我が父に何なりと申し付けください」
これに衛兵達はたまげたなんて話では無い。
あまりに驚いたので、そのまま歩いて行ってしまうラジートを引き止められなかった程だ。
こうして衛兵から離れ、群衆を掻き分けて歩くラジートとしても、カイエンの名を出したくは無かった。
だが、ラジートは何かを守るためには力が必要だと知っている。
力とは、腕力や暴力のみならず、知力や権力があることも知っていた。
この子を守るため、父の権力が必要だと言うならば、幾らだって父の名を出そう。
父に頼りたくないチンケなプライドと、この子を救うために父という権力を秤にかけるなら、権力を行使しよう。
ラジートはそう思うのだ。
そして、その考えのお陰か、ラジートは無事に子供を孤児院へと連れて行く事が出来た。
「まったく良くやったわ、あなたは。本当に危なかったところね」
ラサニッタはそう言って、職員に消化の良いスープを持ってこさせたのである。
その子が、おいしそうに、それはもうおいしそうに、涙を流してスープを飲む姿を見届けると、ラジートは満足してカーシュへ会いに行った。
カーシュは共同部屋で妹のヘデンと勉強をしている。
カーシュは既に、ラジートが栄養失調で危ないところの子供を連れてきたと言う話を聞いていたらしく、「我等の騎士様じゃないか」と大仰に手を広げて言った。
そのカーシュの冗談に、ラジートは「うるさい奴だな。字が書けないのに勉強か?」と皮肉で返す。
「その字の勉強さ」
カーシュは紙に書かれた、土、砂、泥、火などの文字を見せた。
随分と奇妙な単語ばかりである。
しかも、貧民のカーシュが字の勉強とは奇妙な事だとラジートは思う。
「仕事で使うんだよ」
カーシュもラジート同様十歳。
仕事へ向けて修行する期間だ。
彼は十五になったら孤児院を出て、陶磁工房で働くことにしたのだ。
すでに工房へ行って仕事を教わる事になったのだが、「仕事で使う字くらいは読み書きできるようにってさ」との事で、奇妙な単語ばかりを勉強しており、ついでにヘデンも一緒に勉強しているのである。
「あと、足し算と引き算。金勘定できないと仕事にならないってさ」
陶磁家とは、食器などの日用品から花瓶などの装飾品まで、様々な陶器を作って販売する商売だ。
金の計算ができねば仕事にならない。
彼の勉強していることは、ラジートはとっくの昔に学んだ事だ。
だが、決してラジートはカーシュを馬鹿にはせずに、「頑張ってるんだなぁ」と感心した。
「当たり前だろ。俺は貧民で終わるつもりは無いし、それにヘデンも居るしさ」
カーシュも未来を見据えて行動をしている。
貧民を脱出し、妹に楽な暮らしをさせたい。
それは、陶磁工房で陶器を作って売るという、どこにでもある行動であるが、それでも未来を見据えて行動する事は、ラジートにとって賞賛に値する行為だと思った。
そんなラジートへ、将来はどうするのかカーシュが聞いてくる。
騎士だから、やはり戦争で一旗挙げて領主にでもなるのかとカーシュが言う。
「いや、それじゃ駄目だ」
ラジートが首を左右に振った。
一体、何が駄目だというのだろうか。
ラジートは夢があった。
大きな夢だ。
「この世から貧民を無くしたい」
ラジートはカーシュへそう言うのだ。
貧民に金を分け与えても、問題を一時の先延ばしにしただけにすぎない。
ばかりか、分け与えた金が争いの火種となりかねないのだ。カーシュやヘデンが殺されかけたようにである。
だから、根本から変えねばならない。
その夢の為には、チンケな役人や地方領主ではあまりに力不足。
カーシュはそんな事が出来るわけ無いと言ったが、ラジートは出来ると断言した。
「どうやって?」
「力だ。あらゆる力が必要だ」
腕を組んで、胸を張って言う。
あまりに自信満々に言うので、まるで力があれば貧困の問題を解決出来るようではないか。
「なんだか、ラジートが言うと本当に出来そうな気がしてくるなぁ」
「出来そうじゃあない。やってやるんだ」
ラジートの意思は固く、必ず実行してやるのだという顔であった。
カーシュは期待して待ってるよと言う。
そんな彼の隣に座っているヘデンは、目を輝かせてラジートを見ていた。
ヘデンは、ラジートの夢がとんでもなくでっかい夢に見えたのである。
しかも、ただの夢想家にあらず、ラジートは騎士なのだから、その夢を叶えられるだろう。
ヘデンはラジートと大きな距離を感じた。
ラジートが貴族の子だとは知っている。
しかし、カーシュにもヘデンにも隔てなく接するラジートを、今までヘデンは身近に感じていた。
だが、今、大きな夢を語るラジートを目の前にしながら、そのラジートが遥か遠くの存在だと感じたのである。
ラジートはそんなヘデンの視線に気付き、どうした? と聞く。
だが、ヘデンは顔を俯かせて「なんでもない」と言った。
ヘデンの兄カーシュは、難しい話をしていたから、きっとヘデンは付いて来れなかったに違いないと言うので、ヘデンは「分かるもん」と怒る。
「これからラジートは、戦争とか、そーいうので会えなくなるんでしょ」
なるほどヘデンの言うとおり。
ラジートが大きな夢を叶える為に努力し、功績を挙げたいなら、訓練やら戦争やらで中々会う機会もあるまい。
なので、ヘデンはちょっと待っててと、自分の部屋へ向かい、木彫りの指輪を持ってきた。
本当はちゃんとした指輪で贈りたかったのであるが、ラジートといつ会えるか分からないし、きっともう二度と会えないだろうとヘデンは思ったのである。
不器用ながら、草花のような模様が彫られた木彫りの指輪。
しかし、ラジートの指にはまだまだ大きかった。
ヘデンが目測で造ったので仕方が無かったが、二回り以上も大きかったのである。
大きすぎたと謝るが、ラジートは「いや、気にしないでくれ」と、それを紐に通して首へ提げた。
かつて、姉サニヤが髪飾りをこのように首へ提げていたのを真似したのである。
「大事にするよ」
ラジートはその指輪を服の内側へと入れた。
良く磨かれて滑らかな肌触りだ。
金属の指輪だと、汗に反応して肌をかぶれさせる事もあるので、これは助かる。
「あの、ラジート……」
ヘデンがおもむろに口を開いた。
「どんなに遠くに行っても、その指輪だけは、どうかいつまでも身につけていて欲しいの」と言うのである。
遠く……とは、物理的な距離では無い。
これからラジートが偉くなって、きっとヘデンが会えなくなるほど偉い偉い人になるその距離の事だ。
どんなに離れても、その指輪がラジートと一緒にある限り、きっと自分の魂もラジートと一緒に居られるような気がした。
ヘデンはラジートに好意を抱いていたのである。
だが、生来から引っ込み思案のヘデンだ。
その気持ちをラジートへ伝えられる訳も無く。
指輪を自分の代わりに渡すことしか出来なかった。
結局、ラジートが帰る時になっても、ヘデンは何も伝える事は無かったのである。
しかし、ラジートとて朴念仁にあらず。
ヘデンの好意に気付いていた。
それに気付いた上で、帰りがけにヘデンの頭を撫でて、「オレがお前達みたいな人を助けるからな」と言うに留める。
ラジートはヘデンの好意に気付いたが、しかし、ラジート自身にヘデンへの恋愛感情は無かった。
今は少なくとも、夢へ向かって進みたい。
そこに愛だの恋だのはいらなかった。
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